紙おむつを買いにちょっと飛行機で


「なっちゃん連れてサイパンに行きたい!!」

妻のこの一言で全ては始まった。

二人きりの旅行とは違う。当然、子供中心に行動しなければならない。サイパンと言えば、マリンスポーツのメッカであるが、幼児を連れてスポーツなど出来るわけが無い。いったい妻は何をしに行きたいんだ?と問い掛けてみた。
「なっちゃんにきれいな海を見せてあげたいの!!」
1才9ヶ月の幼児の記憶にどれだけ残るか判らないが、新婚旅行で行った思い出の地、サイパンの青い海をなっちゃんに見せるべく具体的なプランを練る事になる。


なぜ、サイパンなのか?

私ら夫婦の新婚旅行の思い出の地でもある。そもそも、新婚旅行にサイパンを選んだ理由が「飛行機は恐いから、空飛んでいる時間がなるべく短い場所がいい」と私が駄々をこねたからであった。当然、今回の行き先にもその主張が反映されている。(妻は長距離の旅行に私が同意するわけが無いと最初から諦めていると思う。)
まあ、その前に子供が6時間とか10時間も長い時間狭い機内でおとなしくしているはずもなく、3時間半で着いてしまうサイパンが限度であると思う。それ以上は寝てくれればいいが、ぐずり始めたら地獄を見る事になりそうだ。

ツアーを選ぶ

妻の要求は高い。
ホテルは海が見える部屋で「ニッコウサイパン」(一番高いお値段)か、中心街ガラパンにあるホテルでなきゃイヤだと言う。まあ、この際、金額には目をつぶろう。子連れの旅行だ。快適に過ごせる事を最優先とする事にした。
「ニッコウサイパン」は値段も高いが確かに良いホテルである。眺めを最高。部屋も奇麗である。新婚旅行ではここに泊まった。ショッピングセンター「ラ・フィエスタ・サンロケ」の目の前でもある。ただ、中心街であるガラパンからはかなり離れているので積極的に行動しないと行動範囲が狭くなってしまうという難点がある。
やはり、今回はガラパンをフラフラしてみたい。ガラパンのホテルにしよう。
ガラパンの中心にあるホテルといえば、第一ホテル、ハファダイビーチ、ハイアットリージェンシーだ。
もっとも真ん中に位置する第一ホテルにしよう。
出発は子供連れだからなるべく時間のかからない名古屋空港発がいい。我が家は静岡である。成田は遠い。名古屋は近い。簡単な算術である。旅慣れた人に聞くと名古屋空港のほうが手続き的にも時間がかからないそうである。名古屋発のツアーを探す。
無い!!
調べ尽くしたかどうか判らないが、名古屋発で第一ホテルを指定できるツアーが無いのだ。ツアーを申し込むまでどのホテルになるか判らないのだ。(ホテルのグレードを指定するタイプのツアー)
これではだめだ。
諦めて成田発で探したら、好みのツアーはいっぱいある。なぜだろう。
該当するツアーの中で一番安いツアーに申し込みをした。
JALのサイパン便は10:00発である。8時にJALカウンターに集合だそうだ。静岡をいくら早く出発しても9:30に成田着。これでは間に合わない。しょうがない、前日に成田泊である。ツアーと一緒に成田のホテルも申し込む。
2才未満の子供の場合、座席等を要求しない限り、ツアー料金は1万円程度である。これが今回の狙いでもある。

パスポートを申請する

2才未満の幼児といえども国外に出るにはパスポートが必要である。
私のパスポートはまだ期限が残っているからそのまま使えるが、妻は旧姓のパスポートなので今回取り直す事にした。子供のパスポートの取得は妻に一任した。
そして事件は起こった。

パスポートの申請が終わったはずのその日、私が会社から帰宅し、妻にたずねた。
「申請できた?」
「・・・」
「どした?」
「・・・実は・・・出来なかったの〜」
「何で?」

理由を聞くと申請書に添付する写真が不備だったようである。
写真屋に撮ってもらって不備なんてあるかい!と思って更に理由を聞くと、写真は写真屋に撮ってもらってないと言う。んじゃあ、何の写真を持っていったのかと追求!!妻は恐る恐る数枚の写真を差し出した。
な、な、なんと!!
普段バシバシと撮っているスナップ写真ではないか。
中には、ニコニコしている夏生の後ろで風呂上がりバスタオルを巻いただけの私が写っている写真もあるではないか!!

お気に入りの写真を持っていったのか?!

これを見せられた係の人は何と思ったのかな〜?
妻はまた一つ伝説を残した。(申請窓口の歴史にも残ったかもしれない。)

後日改めて申請のために写真を撮りに写真屋さんに・・・
これがなかなか大変!
夏生はじっとしていない上にあれこれ言われて嫌気が差したのか、泣き出してしまった。椅子に座っての撮影は無理となり、母が抱きかかえて頭上に掲げ、それを撮影した。匠の技である。
泣き顔で涙目になり、パスポート申請は微妙かもしれない。と不安な事を言われたが、2回目の申請は無事に終わり、夏生もパスポートを手に入れた。

さあ、出発!!

続く


Copyright(C) 1997 Takashi Yamamoto