すでにここから普通でないぶりが伺える。どこにメジャーデビュー第1作をビデオクリップで発売する新人がいる。 昨今の一般的な展開は〔勝負シングルCDを3枚ほど発売→TV・ラジオ・CMタイアップ等で知名度を上げ、アルバム発売→シングルカット発売→シングル曲が4本ほど溜まったらビデオクリップ集発売〕である。 それを彼らは〔ビデオクリップ発売→アルバム発売→シングルカット発売〕という慣例に反した、わざわざ新たなファンを獲得しにくい、つまり、適度に遅れてきたファンをターゲットとしていない、珍妙な展開をしていたのである。いい根性しとる。 クリップ映像はいたってシンプル。セットらしいセットはなく、特に凝ったカメラワークでもなく、撮影・ヘアメイクなどスタッフをクレジットしたペーパーも入っていない。ビデオ=クリップというより、見た形こそ違え、まるきりシングルCDである。 この当時まだパソコンが一般的でなく、CDエクストラもなく、インターネットも普及していない。彼らがやりたかったことをビデオ発売という形でしか表せなかったかのようなシンプルさ。 注目すべきは初代ドラマー sakura のドラムさばきだが無念、堪能できるほど映っていなかった。楽曲自体はアルバム「Tierra」に入っている。よって、遅れてきたファンにとってはコレクターズ=アイテムなる一品。 ようこそメジャーへ。ようこそ遅れてきたファンのいるフィールドへ。遅れてきたファンにとってこれが、彼らの産声。 −2001.12.29−
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