2003年2月YAHOOオークションで入手
70年代 サイクルショップトモダ オーダーキャンピング


2月のある日、乗鞍岳を自転車で登るヒルクライムレースに出場しようと、新たな自転車を組んでいた。
40を過ぎてから急激に無くなっていった冒険心。
体力も衰え、意欲は無くなり、無為に過ごす毎日にあせりを感じ始めていた厳寒のある日。
晴れているのだが、気温は0度。バイクに乗るのはつらい。
で、3年ぶりぐらいにロードレーサー(自転車)を引っ張り出した。
購入してすでに6年ぐらいたつのだが、いまだ200kmぐらいしか走っていない。
で、走り出した。
しかし情けないことに200mぐらい走ったところで田んぼに倒れこんでしまった。(うちを出たところからずっと登りだった)
動悸が激しく、目の前が真っ暗である。
いかん、ここまで腐っていたのか!俺の体は。
「兄ちゃん大丈夫か」通りがかる車から皆さん声をかけてゆく。
忘れてたなあ、こういうの。
結局30分、田んぼで日向ぼっこをした後、再び走り出す。
もう大丈夫だった。必死にペダルを踏み、峠越え。
翌週から自転車漬けである。
サイクルスポーツ誌を探し出し隅ずみまで読んでいたらヒルクライムなるレースがあることを知った。
早速貯金を崩し、オークションですべての部品をそろえる。
しかし昔の知識が役に立たないので往生した。規格が違うのである。
ISISってなに!STIって?SISなんてのもあるし、アヘッド?オーバーサイズ?シールドベアリング?
パーツカタログを購入し、使えない部品も数点購入し、やっと部品が揃おうかというころ。
何の気なしにヤフーオークションのキャリアのページを眺めていたら古い自転車が映っていた。
背中に電流が走る。「買え!買うんだ!」どこかで誰かが叫んでいる。
入札者は5人ほど。現在の価格は1500円。残り時間は6時間。
気がついたら2万円で入札していた。
「まあ2万で落ちなかったらあきらめよう」
6時間後、私が落札していた。
出品者への質問の欄は、昔乗っていたとか、懐かしいとか、いくらなら売りますかとか結構意欲のある質問が乗っていたため負けると思っていたのに。
で、落札価格は?どこまであがった?
驚いた。と同時に・・・・なさけない。みんなの情熱はそんなものか?というぐらいの値段である。
落札したものの何か釈然としない私であった。
早速その週の金曜日夜に家を出て、250km先の大阪へ。
朝5時に受け取り、いろいろこの自転車にまつわる話を伺った。
世界一周を目指して自転車をオーダーしたこと、結局乗ることは無かったこと。
落札されなかったら粗大ごみとして出そうと思っていたこと等々。
私はこの自転車に出会えてよかった。
今目の前にあるのは私の中学時代の夢を形にしたものといっていい。
今となっては時間をさかのぼらない限り絶対作れない、タイムカプセルのようなものである。
さあ、レストアの手順を考えなくっちゃ。
北海道に間に合うかなー。

今じゃ絶対見ることの無いごついシルエット。
これをかっこいいと思うのは私だけだろうか。
私のランドナーと同世代だから、20万以上かかっていることは想像できる。
私のは部品代だけで15万円かかったから。
フレーム単体で10万円ぐらいかな。
今この構成でオーダーしたらいくらかかるんだろう。
フロントまで回りこんだ超大型のフロントサイドキャリア。12mmと10mmの当時の標準的なパイプ製。
リア用の大型のサイドバッグを付けることができる。
サイドキャリアは簡単に取り外せる。
こちらは当時の標準的な構成を見せるリアサイドキャリア。
さびてはいるが中まで逝っていないので、ブラストをかけて再めっきするか、粉体塗装を施せば何の問題もなさそうだ。
大型のフロントキャリア。
8mmのパイプ製。
キャンピングらしくフロントバッグサポーターもでかい。
マッドガードは本所の650B。
唯一むちゃくちゃスムーズに動く、多分シマノデュラエースのレバー。
表面に曇りすらない。
高いだけのことはある。
トップチューブが長い(イコール、ホイールベースが長い)ため、ステムはこの長さで十分前傾となる。今じゃワイヤレスとなったスピードメーターはユーレーの製品で、当時は高級品。他の自転車からの移植品なので1581kmをさしているとのこと。私は、このタイプじゃなく、ホイールに付けた爪が1回転に1回つめをはじき距離を出す距離計を使っていた。 あまりに汚いのできづかなかったが、チェーンホイールは当時の最高級品、TAのトリプルである。私もTAのギアを使っていたがさすがにクランクは買えず、杉野のプロダイナミックと組み合わせていた。
これの研磨は一仕事だ。オリジナルのシールははがしたくないし。
ペダルは極東プロエースのロード用に、ミカシマの皮巻きトゥクリップを組み合わせている。Fディレーラーはシマノクレーン。ぼろぼろだ。
この自転車の最大の特徴。
ダウンチューブとシートチューブを同径のパイプで結んである。
下の写真のようにワイヤーがトップチューブ下面を横切るため自転車を担ぐときここを持つとのこと。
われわれの世代の定番ブレーキレバー、ダイアコンペクィックレリーズ。
スイスのワイマンのぱくりだが安くて壊れない。
ハンドルは日東ランドナー。
フロントキャリアはフォーククラウンの肩で止めてある。
ねじは手締めで、輪行の際キャリアはワンタッチで外れる。
斜めに横切っているのはスピードメーターワイヤー。
パイプの継ぎ手、ラグはイタリアンとコンチネンタルの折衷。
キャンピング車の証、クロスドシートステイ。
リアキャリアの荷物がカンティブレーキのワイヤーに干渉しないようにオフセットしている。また、溶接接点が2箇所増えるため頑丈になる。
ブレーキワイヤーの処理がオーダーらしい。
セライタリアのシームレス(懐かしい言葉だ)
驚いたことに痛みは無くこのまま使える。
シートポストはやぐらと別体なのに肉抜きしてある。はじめてみた。
サイクルショップトモダのヘッドマーク。
サンセットはアルプスのクィックエースとともに輪行車のトップブランドだった。
キャリアはさび落しして、再めっきする予定。
前から。
オーダーの証、フロントサイドキャリアのループ。
これのおかげで後ろ用のでかいバッグを使える。
リアから。
ええなー。
リアキャリアの取り付け部分。
サイドキャリアは別体で、ねじ止めだ。
すべてのキャリアは輪行出来るようにばらばらになる。
フロントキャリア取り付け部分。
車輪取り付けは懐かしい杉野のウィングナット。
車軸から前(右)に向かって出ているのはスピードメーターケーブル。
当時シマノの最高級コンポーネントだったクレーン。
ワイヤーの付け根のアルミアジャスターは触っただけで崩れてしまった。
オーバーホールするより、オークションで新品が手に入るので交換か?
ご覧のとおりめっき部品は全滅。
ただ、塗装はほこりまみれなだけで、いまだ光っている

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