1994年式 ホンダST1100
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モデルは持ち主である真ん中の弟。 身長176CM。体重65KG。 ST1100の車重は乾燥で290KGもあるが足がべったりつくため恐怖感はない。 ハンドルが高めで前傾にならないためか、重心がかなり低いように感じる。 タンクはプラスチックのダミー。 ひざがエンジン後ろ側のカウルにあたるのがちょっと気になる。 |
ご覧のとおり、エンジンは完全に囲われているため熱気は直接人間にはこないようになっている。が、ダミータンクが内側からかなり熱くなる。 パニアケースは純正品。 本来ワンタッチで外れるが、前の持ち主がなぜかボルトを1本追加して固定しているため外れない。 スクリーンはかなり背が高いが、エアインテークから入ったエアがスクリーン内側に沿って流れるため、乱流が起きない。 |
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かなりでかいフロントビュー。 ご覧のとおりウィンカーはミラーと一体となっていて、手の部分のカウルもかねている。 このミラーは腰の高さにあるため視線の移動が大きくなるが、後方視界は抜群にいい。 車体下側左右に張り出しているのはバンパーである。 ホンダロゴの上がカウル内の乱流を制御するエアインテーク。 |
パニアケースはさすがに専用設計なので張り出しが少ない。 今のレベルからするとリアタイヤがかなり細いが不満は感じない。 タンクは28リッターも入るため満タンにするには勇気が必要。 タンクはダミータンク内の後ろ半分と、シート下まで占拠している。 よって満タンにしても重心はあまり高くならない。 リアのシート下から荷かけフックが出てくるのは便利だ。(ただしシートを一度はずし、フックを引っ張り出してからまたシートをつける必要がある) |
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カウルから見えるシリンダーヘッドカバー。 VFRと違い、カムはGL1500同様タイミングベルトで駆動する。 オイルは自動車と同じようにここから入れる。 ここ以外エンジンは仕上げ無しの鋳物地肌がむき出しだ。 カウル右にはキー付の小物入れがある。 左側にはトラクションコントロールをキャンセルするスィッチがある。 |
真下がゼロになるメーター。 最近のマルチエンジンにしては低い8000回転がレッドゾーン。 左から、ライトの光軸調整ノブ、トリップリセットボタン、240KMのスピードメーター、水温計、燃料系、1万回転の回転計、時計。 上にあるのはABS、TRC、燃料等のインジケーター。 |
2002年4月28日深夜。
東京の人から購入したXL250Sを取りに、ライトエースで行こうとしたら、「俺が運転しちゃる」と真ん中の弟が言ってきた。
東京の品川区にあるバイク屋に、見たいバイクがあるらしい。(ここ数日GOOバイクを熱心に見ていたが、そこにしかないらしい。)
地図を広げたら、区は違うがなんとXL250Sがある家の隣の駅である。10KMほどしか離れていなかった。
こうして、片道350KMの野郎2人旅は始まった。
29日朝4時に目的地近くの平和島競艇場近辺に到着。仮眠をした。が、交通量が多すぎうるさくて眠れない。
朝8時に大田区大森でXL250Sを受け取り、店の開く10時まで国技館となりの江戸東京博物館を見学。(ここは江戸お宅のわたしには天国だった)
ついつい長居をし、12時に品川にある店到着。バイクを見せてもらう。
いやー、25000KM走っているっていうから期待してなかったけど、ぴかぴかじゃん。
エンジンをかけてもらったら一発点火。思ったより大音量である。
音質はVFRそのもの(カムギアトレインのヒューンという音はないが)。縦置き、横置きの違いはあるがどちらもDOHCのV4だもんな。
ABS、TRC(トラクションコントロール)標準装備である。パニアケースもついている。
なめるように点検するわたしを、いやそうな顔をしてみていた店長が、「10時に来なかったから、もう一軒引き合いがあったほうへ売るつもりだったんですよ」とのたまった。どこの店でもそういうね。なぜだろう。つまり、ここで今すぐ決めろってことなのか。
「いつからあるんですか」弟がいたいところをついたらしい。「・・・・・・半年前・・・だね」
それ、半年も売れなかったバイクが急に何軒も引き合いがくるものなのか?
「買い・・・・・だね。」弟がわたしに聞いた。
「買い・・・・・だ。」しつこいぐらいの点検の後、わたしは返事した。どこにも不満がない。よほど大事にしてきたようだ。
こうして84年式の走行25000KMのホンダST1100がうちに来ることになった。
2002年5月11日早朝。
弟を最寄の駅に送っていった。
新幹線で、バイクウェア一式を持った男が東京を目指す。
昼ごろには店につけるだろう。夜、「長野県の茅野のビジネスホテルに泊まっている」という電話があった。
2002年5月12日昼。
ガレージに本棚を作っていたら聞きなれない排気音。
東京から信州を経由して1泊ツーリングを楽しんできた、ST1100の到着である。
早速試乗をさせてもらう。
このツーリングでの燃費は18KM。
GTS1000が15KMぐらいだから、重量を考えると、かなりいいといえる。
ちなみに100KG軽いGSX−R1100ですら18から20KMである。
乗る前に弟の感想を聞いておいた。
2人ともお互いのバイクはすべて乗ってきたわけだが、ことごとく感じ方が違うのだ。
以下弟の感想である。
*走り出すまでくそ重たい。発進するのが怖かった。 |
*燃料が28リッターも入るのは財布によくない。 |
*スピード感がまるでない。 |
*とまらない。 |
*タンクが熱い。 |
*やたらよく寝る。ステップすりまくり。 |
*燃費がいい。 |
*パニアケース最高。 |
*まったく癖がないので慣れがいらない。 |
以下、弟の感想を踏まえたうえでの、わたしの遠慮無しの短距離徹底試乗記である。
(ちなみにわたしは、人のバイクであろうとすぐ全開をかますので嫌がられる。どんなバイクでも10分ぐらいで慣れてしまうのだ)
パニアケースははずれないので荷物だけ降ろしてもらった。
まずエンジンをかける。ドルルルという、GL400そっくりの音。
ABS,TRCの警告等がついたまま消えない。走り出すと消える仕組みになっていた。
ローにいれ発進。試乗コースは、昼間は観光道路化するが夕方からは独占状態の国道301号線。
低速がないので拍子抜けした。トルクが細い。2500回転あたりに谷がある。
まず、トップスローの確認。わたしがビッグマルチのバイクに望むものはこれが1番だ。
5速にいれ回転を落としていくと、50KM以下ではギクシャクして走れない。GTS(ヤマハGTS1000)が30KMでも走るのとは対照的だ。
そしてそこから5速のままフルスロットル。
3000回転を超えるまで加速が鈍い。ドルルルという排気音は高回転でも連続音にならない。
おなじ4気筒でもこうも特性が違うものか。
シフトダウンして3000回転からレッドゾーンの8000回転(いまどき単気筒でももっとまわるのに・・・)までまわす。
BMWによく似た感じでパワフルに加速はするが、GTSのようにシャープに加速するわけでもなくつかみ所がない。
コーナーが近づいてきたので、まずリアブレーキをかける。
フロントがぐっと沈む。すげー、リアだけでも止まれるぞ、これ。
そしてフロントを追加。
おおおおおーーーーー。あやうく背負い投げを食いそうになった。
強烈な減速感!
しかししかし、とまらないのよこれが。なぜなら120KMでてたから。
自分じゃ80KMぐらいしか出てないと思っていたのに。本当にスピード感がない。
冷や汗を背中にかきながら、寝かしこんでいく。ここでさらに驚くことが。
これだけのスピードで突っ込んでいるのに、ぜんぜん抵抗感がないのだ。まるでレールの上を走っているよう。
そして寝かしたままアクセルオン。
通常はたちが強くなっていく・・・はずなのになんとバンク角を保ったまま、するすると加速していく。
乗っている人間が起こそうと思わない限り、おきないのである。
しかもそこで寝かしたままブレーキをかけても同じ事が続くだけ。
バンク角そのままで強烈に減速していく。
他のバイクでこんなことやったら、転ぶか対向車線へ吹っ飛んでいくだろう。
この特性のおかげでオーバースピードで突っ込んでも寝かせば曲がるし、そのまま減速もできる。
低重心というのはこんなにも効くものなのか。
ヘルメットの中でにやけまくる顔。すげーすげーの連発。
相変わらずどろどろ回りながら実は強大なトルクを発生しているエンジンにも助けられ、シフトダウン無しにワインディングを100から120KMでクリアしていく。
しばらく高速走行を堪能した後、正反対の低速走行を試す。
まずはUターン。
300KG弱の車重にもかかわらず、Uターンはあっけないぐらい簡単。
田舎道の幅でも楽勝だった。
GTSの場合は低速で切れ込む癖があるため、足を突き、半クラッチの多用と切り返しがいる。
STにはそういう癖がまったくない。自転車でUターンしているみたいだ。寝かしこみも異様に軽い。
そういえば先週久しぶりにGTSに乗ったら1週間筋肉痛に苦しめられた。
ねじ伏せるような乗り方が必要だったからである。
ST1100で約400KMを走ってきた弟は疲れたそぶりすらない。
次に一番多用する50KM走行。
トップギアだと1300回転!ほとんどアイドリングである。(アイドリングは1000回転。走ることはできない。GTSならアイドリングでも走れないことはない)
かろうじてギクシャクしないが、エンジン音との絡みか、気分はよくない。ついついシフトダウンしそうになる。
渋滞路を想定して1速で半クラッチ走行をしてみたがすぐにギブアップ。クラッチが死ぬほど重い。
で、一番気持ちいい速度をメーターを見ないで出してみた。つまり巡航速度である。
大きな声ではいえないが100KMは巡航速度ではなかった。ちなみに100KM時のエンジンは3000回転で回っている。
気持ちよく走ってメーターを確認すると・・・・・140KM!回転計は4300回転ぐらい。この辺が巡航速度だ。
そして最後の確認。
その速度域から思い切りリヤブレーキをふんづける。GTSなら後輪ロックである。
きゅっと言う音とともに、リアブレーキのペダルが1センチほど下がり、踏み込む力との感覚が合わなくなる。
思ったほど速度が落ちないのでフロントも追加する。
もちろんフロントも一緒にかける限り、ABSが働くことはなさそうだ。
いえね、一度試してみたかっただけ。GTSはサイドカバーにABSって書いてあるけどないのよどこにも。ABSユニットが。
最後に車庫入れ。
さすがに300KG。一人では動かない。
二人がかりでやっとこ定位置へ。
しばらく感想を言い合ったが、このバイクについては二人とも意見が一致した。
いや、いいバイクだこれ。楽しいわー。
GTSもいいバイクだけど、そこにあるのはリスクを背負った楽しさだ。レーサーレプリカに近いものがある。
ST1100にはリスクがない。安全に(もちろん経験と腕があってこそだが)GTSと同じ領域が楽しめる。
そしてそして、二人とも感じたこと。
重量車を操っているという満足感。
これにつきるねー。
1994年式 ホンダ ST1100 ワインレッド
DOHC V型4気筒 100馬力 シャフトドライブ 乾燥重量290KG
タンク28リッター 実燃費15から18KM/Lから換算して400KM以上無給油で走行可
購入時走行距離 25000KM 58万円で購入