86年 DUCATI Mike Hailwood Replica  Mille  1000R



いろいろ買ったのに、フォルナレスのエアショックしか取りつかなかったうえ、あんな事件も・・・(本文参照)。
このホイールとクランクケースのデザインは最後まで好きになれませんでした。
由良拓也デザインのDICヘルメット。シールドが手に入らないよお。


BMWのローンがまだ1年も残っているというのにとうとう手を出してしまったイタリアン。
BMWで外車に対する抵抗感がなくなりつつあるときに出会ったのが運の尽き。108万円もの支払いをどうするのか、(BMWのローンすら終わってないというのに。)しかもBMWを下取りにも出さないで。
しかし今買わないと、この時点で生産中止後8年たったバイクだしもう手に入らないかもと考え(この考えは間違っていたと、買ってからやっと気づくあたり、ぼけが始まってたのかなあ。今だったら中古で100万円以上もするバイク買わないぞ。今だったら高くても80万円ぐらいで買えるし。タマもあるしねえ。)4年のローンプラス、BMWの残りのローン1年。どう考えたって正気の沙汰ではない。この頃から私は完全に人生を誤った方向に歩み始めたようだ。
さて、すんだ事はすんだ事として(実は忘れたいだけ)MHR1000(ミッレ)である。
ベベルギアDUCATIの最終型で、MHR900のフルモデルチェンジ版だ。車検証によると初年度登録1986年となっていたが、年式としては85年式になるらしい。
このフルモデルチェンジというのが後々のさまざまな苦労の原因となった。900CCとの互換性は全くと言っていいほど無いのだ。
実を言うとこのバイクを買ったときには、DUCATIに関しての知識がほとんどなかったのである。私が本当にほしかったのは1979年式の900SSをイモラ仕様にに改造した物だったらしい。(ほんの少し本で読んだだけの知識しかなかった。)
MHRは900SSの外装部品を、マイクヘイルウッドの乗っていたレーシングマシンのレプリカ版にしたものだ。中身はブラケット類の取り付け部分の変更をのぞき、まったく同じ物である。だからMHRの中でも一番年式の新しい1000(ミッレと読む。)なら壊れないと思い選んだのだ。
なのに、購入時にこの型までしか付かないコンチマフラーを注文し、雑誌の売買欄でFRPのイモラタンク、イモラカウルを手に入れ、どうしても手に入らなかった900SSのシングルシートをブルックランズの通信販売で手に入れ、さて、取り付けようというときにその悲劇は起こった。
まず、コンチマフラーである。
知らない人のために説明すると、81年式のベベルギアエンジンをつんだMHRまで純正品として設定されていた、どういいわけをしてもレーシングマフラーとしかいいようがないサイレンサーである。サイレンサーと書いたが、消音装置と呼べる物が、内側にあるとげとげ以外なにも付いてない。およそ40mmの内径を持つ直管である。
しかし純正品であるため、御上(けーさつ)が渋々見逃してくれるうえ、形やクロームメッキが絶品で、音がすばらしいのだ。たしかに音量はでかいが低音で歯切れのいい音になる。これはエンジンとの相性がよく、左右の排気脈動が反対側の排気音を押さえるからだと思う。実際SR400にシングルでつけてみたのだが、暴走族の直管マフラーの音そのものになってしまった。あのときMHRの生産中止とともになくなってしまうからということで無理して7万円出したのに、今じゃステンレス製さえある。しかも値段がかわらない。無理して買うんじゃなかった。
で、買って取り付けようとしたのだが、ブラケットの位置が50mmほど違う。ここではじめてMHRにも何種類もあることを知ったのだ。まず、1981年以前のキック式でコンチマフラーが標準装備の物。エアクリーナーもなくファンネルだ。サイドカバーもない。
次に1981から82年までのキック式でエアクリーナーの付いた物、マフラーはシレンチウム製でやたら静かになる。ここらあたりまではナロウフレームと呼ばれる、幅の狭いフレームを使っている。この後ボッシュのセルが付いたエンジンになるが、これは900ダーマ系のワイドフレームを使っているのかどうかよくわからない。エンジンだけをナロウフレームに積んでいるのかも。
このあとエンジンが新設計となりジウジアーロのデザインしたスクエアケース(8角形のクランクケースカバーを持つエンジン)を捨て、のっぺりとした円形ベースのデザインのクランクケースを持ち、ボールベアリングにかわってプレーンベアリングを使ったエンジンとなった。セルも日本電装の小型の物になったのでエンジン全体の見栄えがよくなったと思う。
車体関係では、この段階でフレームが幅の広いワイドフレームになって、カウリングが縦長でスリムな物になる。ウインカーも大きな不細工な物になった。私が買ったミッレは、この900最後のエンジンの、ボア、ストロークとも拡大し1000CCとして発売された物で、ホイールがF1系のオスカム製おむすび型のスポークになる。
ほかに、まがい物もあるので注意。
不人気車だったダーマ900(ボッシュのセル付きエンジン)にMHRの外装をかぶせた物もある。だがMHRの外装は50万円ぐらいするので、きれいな車だったら良しとしよう。
左ステップの近辺にリベット止めされたシリアルプレートに注意。
MHRはDM900R、ダーマはDM860かDM900になっている。ミッレはDM1000Rだったと思う。プレートがない物はステアリングヘッドの刻印を見よう。
で、話は戻るが、私が買った外装とマフラーはキック用、つまりナロウフレーム用だったのである。これから買う人は注意。ワイドにはどれも付かない。自分の車種をちゃんと伝えよう。とりあえずマフラーだけはブラケットを作成し付くようにした。ノーマルマフラーだとまともに走らないからだ。
中古でMHRを買うときアイドリングすらしない、あるいはまともに走れない場合、コンチマフラーとエアファンネルをつけた状態でセッティングして、売るときにノーマルマフラーとエアクリーナーに戻しただけという可能性がある。そのまま乗りたかったら、スロージェットとメインジェットを交換する必要あり。
実は、けちのつきはじめはこのことではなく、納車の日に起こっていた。このMHR、納車日に修理に出すはめになったのである。いきさつはこうだ。
岡崎のオートセンター(現レッドバロン本店)に引き取りに行って、約15KMを自走したのだが、あまりの乗りにくさに驚いてしまった私に、一緒に行った同僚がどうしても乗ってみたいと言ったのである。
ハンドルの切れ角が異様に小さいこと、エンジンに低速がないこと、リアサスが渋く、バランスがとりにくいことを伝え、渋々乗せたのだが、次の瞬間トラックに激突しそうになってバランスを崩し、こけてしまったのだ。カウリングが割れ、あちこちに傷ができ、同僚は真っ青になってしまった。私は呆然とするだけだ。修理見積もりは約60万円。当然保険も利かない。(このとき新品カウルが1セット45万円もすることを知ったのだ)。結局FRPのカウルは修理、再塗装するということで約20万円ですんだのだが、この同僚はそれ以来MHRの半径1メーター以内には決して近寄ってこなかった。
しかし本当の悲劇はその後に起こったのだった。しかも何度も。


ある日しっかりセッティングして気持ちよく走っていると、突然エンジンが空転し始めた。
エンジンが回っているのに前に進まないのだ。ふと、道路を見るとオイルの池ができつつある。
ははあん、あれだなとわかったかた、DUCATIとのつきあい、長いですね。
この型のエンジンは、フロントスプロケットのオイルシールをスプロケット自体が押さえるという構造になっていて、このときはスプロケットのロックねじがゆるんで、スプロケットがはずれ、オイルシールが抜けてしまったのだ。
国産車じゃとても考えられない故障である。
その日は、たまたま販売店から500Mぐらいのところでの故障だったので、事なきを得た。でもこれは序章にすぎなかった。
(チェーンを伝わりホイールに飛び散ったエ・ン・ジ・ン・オイル。チェーンオイルではない。そういや、こいつ、チェーンが右にあるのね。もともと、右チェンジのエンジンだからね。クラッチのシャフトがドライブスプロケの真ん中を貫通して、左側にあるクラッチユニットを押す構造である。)


 このバイクで、キャブレターが火を噴いたなんてのや,マフラーから1メーターぐらいの炎を吹くことなんて驚くに値しない。どちらも負圧式の燃料コックのダイアフラムがやぶけ、負圧をキャブから取り出す部分へガソリンが流れっぱなしになり、エンジン内部がガソリン浸しになったためである。爆発しないでよかった。
その他故障は数知れず。でも頭がイタリアンに毒されてくると、そういうことすら楽しみになってくる。
しかしである。とうとう、運命の日、最後の悲劇が起こった。
8月のある日、鈴鹿サーキットに8時間耐久の練習を見に行ったときのこと。帰りにオイルプレッシャーランプがついた。これは旧型には無い装備である。
  「なによこれ」
 この場はプレッシャースイッチの故障だろうと、そのまま80kmを走って帰ってきた。異音もしない。ちゃんと高速道路も走れた。で、帰ってから、プレッシャースイッチを新品に交換。・・・消えない。ランプが・・・。
 バイク屋で右側のクランクケースカバーをはずすと、何かがぽろりと落ちてきた。ギアである。整備士一同みんな固まってしまった。 オイルポンプを駆動するギアである。ちゅうことは、オイルなしで80km走ってきたという事に・・・。何という頑丈なエンジンなんだ。 みんなで感心し、ギアをつければ大丈夫と拾ってみると、無い。取り付けるべきオイルポンプのシャフトが・・・。シャフトはギアの方に焼き付いていた。根本からねじ切れていたのである。オイルポンプをばらしてみると、鉄の破片がポンプに食い込み、シャフトをロックしていた。瞬間的にシャフトがねじ切れたようだ。
 とりあえずポンプを換えれば良さそうなので、あの有名な名古屋のモトプランに注文したが、半年ぐらいかかるとのこと。900用は在庫があるのに、1000用は無いのだ。しかも7万円もした。しかしこれがないと、108万円もしたバイクがただの鉄くずである。
 待った。とにかく待った。
 待ちくたびれた頃入荷。
 11月に注文し、入荷したのが3月である。しかもポンプ本体とギアを頼んだのに入ってきたのはポンプだけ。発注忘れらしい。また半年かかるのか。(実はその後音沙汰なしである。前払いした残り1万円はどこに行ったんだ。部品が入ったという連絡もないし、金も返してもらってない。どうなってるんだろう。今更聞けないしねえ。一流の店だという評判なんだけど。)
 とりあえずギアは生きていたので、早速自分でクランクケースカバーをはずし、カム駆動用のベベルギアをはずし、オイルポンプを組んだ。ここまでの経験で、店に預けるより自分でやった方が安心だと言うことを学んだからである。
 しかし部品が足りないことにそのとき初めて気づいた。ギアとシャフトを勘合する部分にキーが必要なのだ。壊れたオイルポンプのギアに溶けて張り付いていたため、見逃してしまっていた。
 でもラッキーなことに、私の勤め先は自動車の試作屋。キーは削りだした。いっそのことオイルポンプも作りゃよかったのかも。たぶん半額ぐらいであがるぞ。(うちにある機械だけでほとんど作れたことにあとで気づいた。)
 こうして、ミッレは生き返った。生き返ったのだけど、故障の原因は分からずじまいである。オイルポンプに食い込んでいた鉄片はどこからきて、何のかけらなのか。80kmもオイルなしで走ったからにはどこかいかれているはず。もう怖くて乗れない。
 で乗り換えることにした。
 それもよりによって、また、M・H・R。わたしは、学習能力のない、おばかさんである。


DUCATI MHR 1000R ミッレ(イタリア語で1000をあらわす。そういやミッレ・ミリアなんてレースがあったね。1000マイルと言う意味だったと思う。)
90馬力(いろんな説があり、ほんとの馬力は不明。)燃費20kmぐらい行ったことがある。平均15km。トップギアで80km以下では走れない、強烈なハイギアードミッション。計算上は時速230kmくらいでるはずだが、時速80kmあたりでハンドルがぶれ、大暴れするため、こわくて120km以上出せなかった。Rサスを換えてからはよくなったが。900Rに比べると低回転大出力型。木漏れ日の中、コンチマフラーの重低音を響かせ、のんびり走るのが気持ちよかった。意外なことにBMWよりツーリングが楽しいエンジンである。紅のブタに出てくる、イタリア製マッキの戦闘機と言ったところかな。ガソリンスタンドで、おばさんに「うるさいバイクだねえ」と言われたのが唯一の欠点。若い店員は「きれいなバイクですねー」と言ってくれたのに。
購入2年後に50万円で下取りしてもらい5年も古いキック式の900Rに乗り換えた。でも、不思議なことに、あんなに苦労したのに、もう一度欲しいバイクである。多分今なら、何でも修理できるだろうし。DUCATIは3台目からとも言うし。(いわねえよ)


ここにDUCATI関係のパーツリスト、サービスデータを載せる予定です。しばらくお待ちを。


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