83年 HONDA XLX250R
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会社の友人2人(1人は同年代、後ろのは20歳ほど年下。バイクに乗っていたおかげで、こういうつきあいがある。) | 当時のXRを再現したXLX250R。外装とスーパートラップ以外、どノーマルである。 |
95年、XL500Sを手にいれたまでは良かったんだけど、フロント回りがXLR250R用に換えてあったため、F回りを使おうとXL25ORを探していました。(500Sはまず手に入らない)
雑誌の売買欄に投稿したら、3000KMしか走ってないXR仕様の250Rがあるという連絡があり、10万円で買うという話がつきました。
で、持ってくるというので待っていると、到着したバイクがなんか変。
確かにXRの外装なんだけどXLRのエンジンが載っている。
書類を見るとXLX250R。本人はバイクに興味がない人(つまりお金のためだけにバイクを持ってきたらしい)で、XL250Rを知らなかった。
実をいうと、数カ月前DR250Sに乗っていた友人が、「DRはこわれない、速すぎる、乗りやすすぎる」などというわがままから、近所のバイク屋から、かなりやばめのXLXを8万円で買ったばかり。
スペアパーツは1台分あるわけ。どっちがスペアかでもめましたが。
車種が希望と違うことを理由に、2万円値切って8万円で買い取りました。
走行3000KM。外装は正真正銘XR。しかもちゃんとブラケット類も作ってタンクをきれいにのっけてある。
(XRのタンクは取り付け方法が全く違うためすんなりつかないのです。)
エンジンは1発でかかり、アイドリングも絶好調。
こうして、程度最高のXLXがうちにきたのです。
さてこのバイク、RFVCエンジン(後述)を積んだ最初のバイクなんですが、かなり試作車っぽいバイクでして、なんと、クランクケースカバーがマグネシウム。
そして、キャブが2個。
XLシリーズは、現行のXRをのぞき(CB250RSも)、キャブレター本体は全部同じ(ケイヒンのPD)です。(口径は違うけど。)
ところがこいつは、低速用と、高速用2個になってます。
マグネシウムを使った理由は簡単。
重いんです。XL250Rよりも10KG程。(128kg・・ちなみに250Sは118kg、250Rはパリダカでさえ122kg)
パワーアップした駆動系にあわせて、安全マージンをたっぷりとってあるのでしょう。
さて、私のXLXは、走行距離が少ない為か、何のトラブルもありません。
そこで、友人のXLXにおこった一大事をおおくりしましょう。
ある日、XL250Sで、林道を一緒に走っていると、XLXのエンジンがモーという牛の鳴き声みたいな音を発し出しました。
うちに帰ってすぐエンジンをあけ、(今はこんな事しない。あのころは、勇気があった。)がっちり固定されているはずのカムシャフトを抜こうとすると、動く。カムが上下に。
よくみると、カムシャフトがヘッド上面に対して、斜めになっているのです。
テンショナーをゆるめ(このバイクのテンショナーは変わっている。普通のスリッパタイプではなく、渦巻状のスプリングが回転しながらチェーンを押さえる構造です。このあとのRFVCエンジンは通常のスリッパタイプに変わってます)カムギアをはずし、チェーンをはずし、カムをベアリングと一緒にはずすと、チェーン側のベアリングがいくつかの部品に分裂。
よくエンジンが回っていたものです。あらためてXL系の頑丈さに驚きました。
さっそく、部品を発注。
ついでにシリンダーとピストンを新品にする事にしました。ついでに、もう1個マグネシウム製のエンジンカバーも手にいれとこうと発注。
このXLXと次のXLR250R−RF(エンジンが赤い奴)は、カム回りがすぐいかれます。
どうやら、オイルラインがよくないみたい。注意しましょう。
これはオイル管理をしっかりしていても起こります。予備部品を用意するしかないかも。
さて、部品はすんなり揃った訳じゃありません。
ピストンがない。
この、RFVCエンジンは外観はずっと変わってないんですが、XLX,XLR250−RF(CBX250Sも同じ)、XLR250Rと、全部ボアストロークが違います。つまりピストンも専用となるわけ。
ご存知のように、ホンダの部品供給は、宗一郎氏の死去とともに、極端に悪化しました。
それでも1カ月後、すべて揃ったとの連絡。ホンダ偉い。
新品のマグネシウムカバーとご対面。
だったはずだけど、なんだこりゃ。
箱の中身はアルミ製。
実はマグネシウム製なのは、車両についている分だけなのです。
今、XLXを持っている人は、大事にしてくださいね。
あなたの持っているXLXが、私の部品の供給源ということを、心しておくように。
エンジンをおろし、腰上を分解し、徹夜で部品を喚装し、見事復活したXLXは最高速度130KMの林道スプリンターとなったのでした。
用語解説
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RFVC(radial four valve combustion chamber) ラジアルなんとかの略で、in,out、4個のバルブがすべてシリンダーの中心一点に向かって突き出す、不思議なバルブ構造を持っている。 なぜこんな事をするかというと、燃焼室を半球形にするため。 4バルブの場合、通常、屋根型の燃焼室にならざるをえない。 DOHCなら、プラグを真ん中に置けるため、屋根型の燃焼室で均等に火がつくのだが、XLXのようにOHCだと、プラグはカムがじゃまをして横から差してあるため、燃焼に時間差が起こってしまうのだ。 普通ならDOHCにしてしまうとこだが、そこはホンダ。 OHCで半球形の燃焼室を実現してしまった。 分解すると感動すら覚える。 どうしたら、1個のカムで4個の放射状に配置されたバルブを駆動できるか考えてみてください。 左の写真がRFVCの初期型。文字の左下の丸いのがチェーンテンショナーピボット。プラグはフロントど真ん中に刺さっている。はずしにくいったらありゃしない。 |
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マグネシウム 同体積の紙粘土ぐらいの重量しかない、最近カメラなどに使われている金属。 ただ、私の年代の人なら知っていると思うが、カメラのフラッシュに使われていたことからわかるようにすごく燃えやすい。 つまり酸化しやすい=さびやすいのである。 最近は合金にしたり、塗装をきちんと行う事によって、十分実用になっているようだが。 XLX発売当時、レーサー以外には使われなかった。 私のような金属フェチには、マグネシウムが使ってあるというだけで、いいバイクなのである。 私が知っているマグ使用車は、SL250S、DT250,MT250,XLX250R、DR250S、XT250T、NSRのマグテックぐらいか。 |
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ツインキャブ(デュアルキャブ) ボアストローク |
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これがカムがばらばらになった友人のXLX。 ほぼノーマルの外観をたもっている。 スーパートラップとテールバッグ以外、ほぼノーマルである。 |
83年式 XLX250R
26馬力 /8500回転 2.2kgm/7500回転・・・ちなみにXL250Rは22馬力/7500回転 2.1kgm/7000回転
F3.00−21 R4.60−17
今のXLR、XRのご先祖様にあたる、足の短い(シートの低い)車体と、ハイパワーエンジンを組み合わせた最後のトレール。
林道を走るには重すぎる。
ただ基本的に乗り易いバイクなのでツーリングにむいていると思うが、先に書いたように壊れ易いのであまりおすすめできない。
前後輪ともドラムブレーキだがこれが絶品。サスペンションも文句はない。ヘッドライトも明るい。
最大の欠点は始動性の悪さ。もともと、XL系のPDキャブは始動性が悪いが、このバイクはそれが2個ついている。
以上のことから、自分で整備できる人で、体力のある人、さらに、マグネシウムが好きな人以外にはすすめません。
とにかく、単気筒のくせに8本ものロッカーアームがガチャガチャ動いているため、静かなエンジンを求めるなら82年式のXL250Rのパリダカール(XL250S系のエンジン搭載車)をおすすめします。
でも、もし買ったらオイル管理は神経質なぐらい気を使う事。1000KMごとに交換、やや粘度の高いオイルを使いましょう。
冗談じゃなく油幕が切れ易いのです。カストロールのRSがおすすめ。
このバイクは現在でも、メインのオフロード車として活躍しております。
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