1988年式 SUZUKI GSX−R1100  

30過ぎて大型自動2輪の免許を取る原因となった’87GSX−R1100-2型。
これはそれの次の型で、3型となる。
走行2900KM!。(購入時1900KM!)
さすがに14年前のバイクなので、外装はそれなりにやれてはいるが、エンジンはまだ慣らし中である。
購入時、リアのグラブバーのみ欠品していた。
どうしてはずすの?かっこいいのに。
ちなみに、この写真についているグラブバーは冬眠中の弟の’87から借りたもの。
GSX−R1100の解説は、’87GSX−R1100のページで紹介しているし、ほとんど変わっていない(ホイールが変わりタイヤが太くなっているぐらい)ため
ここではキャブの整備をメインに紹介する。
購入動機 新車が出たときから欲しかったから。それ以外の理由はない。
お値段 レッドバロン豊田店にて32万円。保険を入れて支払い総額49万円。
購入時の程度 走行1950KM。外装に立ちごけの跡。グラブバー欠品。タイヤの硬化。たちごけが原因のアッパーカウルステーの変形。
外装は全部あり。(もったいないのではずしてある。なにせ高いのである) あちこちのさび。
トラブル1 キャブが不調で、最初はエンジンがかからなかった。バイク屋でオーバーホール。でも直らなかった。
ある日エンジンをかけたらエアクリーナーボックスからガソリンがドバーッ!
バイク屋さんがオーバーホール時にフロートのステーを曲げてしまったことが原因。
つまりフロートが下がりっぱなしでガソリンが垂れ流しだったのだ。
壊してどうするの。プロが。
トラブル2 2年後1回目の車検を取ってバイク屋から走ってきたが、うちに着いたらタイヤ全周に亀裂が。
9.5部山のタイヤに未練を残しながら2002年4月前後タイヤ交換。2900KMの命だった。
トラブル3 タイヤ交換後しばらくしたらエンジンがばらついてきた。
何度キャブをばらしても直らない。
ポートのつまりかと思ったが、原因はやっぱりオーバーフローだった。
しかし前と違ってガソリンはこぼれてこないので原因を突き止めるまで往生した。
トラブル4 やっとキャブが直って試走したら途中で止まってしまった。
もうすぐ日が暮れる。気温はもうすぐ5度をきる。
「またキャブ?」頭を抱えてキャブを覗いたら・・・・。
原因は本文最後で。

修理のお話・・・・うちに来たときから絶不調。原因を探る。同じ症状で悩む人のためできるだけわかりやすくしたので挑戦してみてほしい。。

2002年4月28日 3回目のキャブのオーバーホールを実施
毎度毎度思うのだが、本当はどうやってはずすんだ?
左の写真で黒い部分がエアクリーナーボックスなのだが、キャブの取り付け部から、上の海坊主まで完全に一体成型なのだ。
しかもキャブの取り付け部はフレームより幅が広い。
下に下げてエンジン側へ抜くしかない。
つまり、エンジンを下ろさない限りこの部分は外れないのである。
そしてこのボックスが邪魔でキャブは前後に動かない。
この状態でエアクリーナーボックスはいっぱい後ろに引いてある。
作業スペースはこれだけだ。
この範囲でキャブを無理やり引っこ抜くのである。
ちなみにキャブはこの隙間より大きい。
無理やりキャブを横に引っこ抜いたため、かけてしまったインテークマニフォールド。
もちろん新車だったら十分やわらかいため、このようにかけたりはしないのだろうが・・・・。
何度オーバーホールを実施しても3000回転まで3気筒でまわり、3000回転を超えると4気筒になる原因は、分解するまでもなくわかるところにあった。(と思った)
早く気づけばオーバーホールの必要はなかったのに。
左の写真をよく見て欲しい。
この状態ではアクセルワイヤーがつながっていないから、当然スロットルは全閉である。
しかし、このキャブ、完全に閉じているのは右の1個のみ。あとのは少し開いたまま。
さて、負圧式のキャブの場合、スロットルバルブはエンジン回転があがるにつれ、負圧によって回転に同調して開いてゆく。
左の状態では、アイドル時は1個だけ閉じているため燃料が送られてこない。
だから3気筒だったのだ。(とこのときは思ったのだが)
アクセルを開けていくと、右の1個だけが負圧につりあうまで上がってゆく。
そして、3000回転あたりでほかの3個もつりあって開いてゆくため、4気筒のバランスが取れるわけ。
わかってみればあほらしい原因だった。(実はこれが原因ではなかったのだが)
ではなぜ、全閉しないのか。
右がちゃんと閉じていたキャブ。左が開いたままのキャブの頭の部分。負圧を受け、スロットルバルブを引っ張りあげる部分である。
よく見て欲しい。
右のはゴム製のダイヤフラムの外周部分がちゃんと溝にはまっていた。
左のは溝からはみ出したまま組みつけられていたのである。
ここは自分であけるのは初めてだったため、バイク屋さんのミスだろう。
で喜び勇んでエンジンに組み付けエンジンをかけたが・・・・。
やっぱり3気筒のままだった。
なぜじゃー。
これは自作のバキュームゲージ。材料費は5000円ぐらい。
下に見える調整バルブは金魚鉢用のエアバルブ。300円ぐらいの代物だが精度抜群。
で、原因だが、3気筒で当然。
不良状態で4気筒の同調が取れていたのだから、修理した今、1気筒の同調は外れているのである。
で、本日のお買い物で紹介したアングルドライバーを使い、バキュームゲージとにらめっこしながら苦労して(4気筒の同調調整ははじめて)同調させたらほぼ完全にアイドリングするようになった。
勝利の美酒はうまかったぜい!
・・・・で、試走したのだが・・・・・。
まだ直ってなかった。
右から2個目のキャブのエアスクリューをいくらまわしてもエンジン回転に変化が無い。(他の気筒はスクリューを絞るとちゃんとエンストする)
このキャブのスロー系がまだ詰まっているらしい。
一難さって(一難過ぎないとほかの原因は顔を出さない)また一難である。
今回は原因がひとつじゃなかったのが敗因だった・・・。
またばらすのか・・・・。とほほほ。
(くどいようだが実は原因はもっと別のところにあったのだ)
2002年11月10日と17日 さらに2週にわたって4回目、5回目のキャブオーバーホール実施
2002年11月10日
分解につぐ分解で上の2番目のキャブがよくなったと思ったら、今度は一番左側がおかしくなった。
今度はこちらのエアスクリューを調整しても回転が変動しないのだ。
しかも排気が青い。ガソリンくさいし。マフラー後端に手をかざすとガソリンが噴出している。
左側キャブのフロートをはずすとガソリンがあふれてきた。オーバーフローである。
でも、オーバーフローパイプからガソリンはこぼれてこない。なぜ?
ためしにフロートをはずし、フロートバルブボディ(矢印部分)に下の写真右にあるフロートバルブを差し込み指で押さえてコックを開けると、ガソリンがぽたぽた落ちてくる。とまるはずなのに。
ごみでも引っかかっているのかと掃除をしたが解決しない。
じっと見ていたらとんでもないことに気づいた。ガソリンがバルブボディの外周からもれているのだ。
矢印のバルブボディをねじを緩めて引っこ抜くと下の写真のような状態になっていた。
このOリングがすべての元凶。
Oリングが劣化しつぶれて、バルブの外周とキャブとの間からガソリンがちびちび落ちていた。
漏れる量が少ないため、走り出すと必要量のほうが多いからエンジンのふけに影響なかったのだ。
しかしアイドリングだと漏れる量のほうが消費量より多いため、かぶっていたのである。
引き出しをひっくり返し、こういうときのために買っておいたホームセンター製のOリング(ぴったりのがなかったため無理やり押し込んだ)を使って元通りに組むと、オーバーフローは見事にとまった。
エンジンをかけると、ばらついていたアイドリングがだんだんと落ち着いてくる。
ためしにこのキャブのエアスクリューを閉めこむと、ちゃんとエンストする。
改めて4気筒の同調を取り直し試乗。
まだばらついた感じは残っているが(今までの不調が累積しているからなあ)5速30km/hでなんなく走ってゆく。
今度暇を見つけて、オーバーホールキットを買ってきて、4気筒すべて交換しよう。
今回、走行距離に関係なく、劣化って進むんだなあと思い知らされた。
弟の87年式GSX−R1100も同じ症状で悩んでいたが、この年式までのミクニキャブはよくないねー。
90年式のキャブ(オークションで購入したが、エアクリーナー側が楕円になっていて88年式にはつかない)がぜんぜん別物に変わっているのはこの辺に原因があるんだろうな。


キャブ取り外し、整備手順を写真で解説

火災防止にバッテリーからマイナス側をはずしておく。
左右2本のタンク固定ボルトをはずす。
よく忘れるが、燃料コックのレバーをプラスドライバーではずす。これを忘れて思い切りタンクを持ち上げると、コックのシャフトが折れてえらいことになる。 はずした燃料コックレバー。
これをとらないと燃料タンクは持ち上がらない。
タンクを持ち上げて燃料コックからA:負圧ホース、B:燃料ホースを抜く。これでタンクが外れる。
タンクにはこぼれた燃料を下へ落とす長いホースが1本付いてくるので注意。
大き目のプラスドライバーで、エアクリーナーボックス固定ボルト3本をはずす。 クラッチホースとメインハーネスを、エアクリーナーボックスとフレームの隙間から引っこ抜き、左右に開いておく。
キャブレターバンド締め付けボルト4本を十分緩める。 エアクリーナー側4個も緩める。
これでエアクリーナーボックスがフリーになる。
クリーナーボックスを後ろへいっぱい引いておく。
これでキャブ後ろ側がフリーになる。
キャブ本体を後ろへ引っ張り、エンジンから切り離す。
後ろ側がクリーナーケースに当たって、これ以上抜けないのは設計ミスとしか言いようがない。
キャブから出ている2本のブリーザーホースをエアクリーナーとフレームの隙間から引っ張り出しておく。
(キャブを取り付けるとき忘れずにもとに戻すこと)
左側へ慎重かつ大胆にキャブを引っ張り出す。
シリコンスプレー等吹きつけ、すべりをよくしておかないととってもつらい作業となる。
Aがアクセルワイヤー、Bが燃料ホース、Cが負圧コック開閉ホース、D、Eがフロート室内を正圧に保つブリーザーホース。(今回アクセルワイヤーははずさない。はずすとつけるのが面倒だから)
キャブにはこれだけ付いてくる。
プラスドライバーでドレンボルトを緩めると、フロート内に残っているガソリンが矢印の穴から抜ける。 フロートカバーの4本のプラスねじをはずすと、こうなっている。Aがメインジェット、Bがスロージェット(奥にありマイナスドライバーではずす)、Cがスロー時の混合比を決めるパイロットスクリュー。その手前の真鍮パイプがブリーザー。 今回の不調原因であるフロートバルブをはずすには、フロートがじゃまなので、A側から細いドライバー等でピンをつつき、B側へプライヤーでピンを抜いてフロートをはずす。
フロートをはずしたらAのねじをはずし、Bのバルブボディをプライヤーなどで抜く。 フロートバルブの構成部品。
フロート、Oリング、バルブボディ、バルブ、ピン。
今回のオーバーフローは1個25円で買えるゴム部品の劣化が原因だった
バルブボディ。
Oリングはこうはまる。先端は丸い金網になっている。金網側からガソリンが入り左の写真の一番右の針が右側から入ってガソリンを止めている。
今回使った、ホームセンターで入手した耐油性Oリング。4個で98円。何種類も購入。
内径6.8mm、外形10.8mm、太さ1.9mm。
外径はこれでぴったりだったのだが。
下が、はまっていた純正。
丸いはずの断面が四角く変形していた。
実は純正は太さが1.5mmで、購入品は1.9mmだったため、バルブボディがキャブに収まらなかった。
そこで、ひとまわり小さい内径5.8mmのものを無理やり押し込んで細く伸ばして使用した。
左が純正。これで外径がぴったり同じになる。
耐久性が落ちるだろうがまた換えりゃいいさ。
なにせ25円だもの。
あとは逆に組みつけて行くのみ。
燃料の量を決める要素であるフロートの高さを、爪を曲げることによって4気筒とも同じにセットする。
とりあえず10mmでそろえた。
以上終了したので早速試乗に行った。
すでに夕方で気温は一桁である。
ジャージのまんま行こうかとも思ったが、GSXR250Rで痛い思いをしているのを思い出し、皮パンツとブーツに着替えた。
エンジンをかけ道路へ出たらエンストした。
いやな感じが付きまとうが思い切って出発。
アクセルを開けていくと高回転で吹き返す。
ガス欠かと思いJAでハイオクをおごる。
しばらく行くとまたばらつく。
「だめかあー・・・とほほ」
さらに5kmほど走ったらクラッチを切ったとたんエンストしてしまった。
「またばらすの?・・・・」
バイクの横に座り込み頭を抱えていてふとキャブの上を見ると・・・・・。
バキュームホースが折れている。
今回整備性を上げるため燃料ホースとバキュームホースをタンクを持ち上げやすい長さまで伸ばしていたのだが、それが裏目に出た。
長すぎて行き場のなくなったホースが折れてしまいバキュームが負圧コックに届いていなかったのだ。
これじゃ燃料がこない。
ホースが大きなアールを描くように取り回しを変え、
エンジンをかけると今までの不調がうそのよう。
フロントがぽんぽん浮き上がる。
底なしに沸いてくるパワーに酔いしれ試乗終了。
長い戦いに終止符を打ったのである。
タンク後部を浮かせて、キャブの同調を調整する。
浮かせないと真ん中2気筒の同調ねじが回せないのである。
ただし通常は同調を取る必要はない。
今回は不調な状態でいじってしまったため正常に戻す必要があるのだ。
矢印が同調用のめくらぶた。各キャブにあり、右2気筒は右、左2気筒は左にある。つまり右2個のキャブと、左2個のキャブは違うのだ。
ここをはずし、バキュームゲージをつなぐ。
同調方法は今回は省略。
同調完了後タンクを固定。
このとき燃料コックのレバーをつけ忘れるとえらい目にあうので注意。(何度も経験済み)
リザーブ(予備)タンクが使えないのである。

2002年11月17日。とりあえず終わり。

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