今月の一言

軍指令センターを地下に?

 防衛庁は、与那国、那覇(いずれも沖縄県)、健軍(熊本県)、舞鶴(京都府)にある自衛隊の軍司令センターを、2028年までに地下に移設させる計画だとか、思わず本気なの? と思ってしまいました。戦前派としては、地下壕などおぞましい思い出しかありません。
 ロシア、北朝鮮、中国を仮想敵としての発想ですが、もし本格的な戦争になったら、無防備な原発(川内、玄海、高浜、美浜)にミサイルを撃ち込まれて、日本はオシマイじゃないでしょうか。軍司令部だけ地下で生き残ったなんて、笑えないジョークです。
 そんなことより、藻谷浩介さんの「提論」(12月19日、西日本新聞掲載)の通り、平和的な将来ビジョンを示し、外交に力を入れるのが本筋でしょう。

2023.01.03.記

イスラエルの占領行為
国連が国際司法裁判所の意見を求める

 1月2日の報道によると、イスラエルのパレスチナ占領行為について、国際司法裁判所に意見を求めるべきとする討議がなされ、国連総会で決議が採られたところ、賛成87,反対24,棄権53という結果となりました。国連総会も国際司法裁判所も強制力はありませんが、世界の世論がどうかを知ることはできます。
 イスラエルは、1967年の第三次中東戦争で占領した地域に、不法な入植地を拡大しています。この問題を端的に言えば、2000年の居住権と、3000年の宗教に根拠を置く権利との争いです。どちらの権利が正当かは、国連の決議が答えを示しています。
 問題は、相変わらずアメリカが反対票を投じていることです。オバマ大統領時代、イスラエル非難決議に棄権票を投じたことがありますが、アメリカ国内で猛烈な反対に直面しました。
 イスラエルがパレスチナの人々に行なっている行為は、ロシアがウクライナでやっていること以上に非情で不法なものです。
 アメリカがイスラエルの後ろ盾になり、その一方でウクライナを支援する行為は、明らかにダブル・スタンダードです。全体主義国の中国の方が、この問題に関する限り、むしろ正常と言えるでしょう。
 アメリカが目先の利害にとらわれず、歴史的に正否の判断の出来る国であって欲しいと切望します。

2023.01.02.記

中国に縋るプーチンさん

 上手く行かないウクライナ侵攻で、プーチンさんが頼りにするのは中国の習さん。今春のモスクワ訪問を要請していますが、、習さんは慎重でなかなか言質を与えません。哀願気味のプーチンさんの言葉を英字新聞から拾うと、
We are waiting for you, dear Mr Chairman, dear friend, and we are waiting for you on a state visit to Moscow next spring.
 この下手に出たものの言い方は、ロシアが中国の属国になったも同じ。この「今月の一言」の3月7日付け「プーチンさんを説得できるのは習さんしかいない」で、プーチンさんはその屈辱に耐えられないだろうと予測しましたが、いまの彼にはそんな余裕などないみたい。
 グルジアやチェチェンで成功したプーチンさんは、ウクライナを甘く見すぎました。クリミア半島併合が意外と簡単に済んだのも、プーチンさんの自信過剰を増長させました。ここまで来るとロシアの勝ちはありません。核を使わないという理性が彼に残っていることを願うばかり。
 戦争を始めるのは簡単だが止めるの難しい、という鉄則の通り。最近右傾化するどこかの首相にも気付いて欲しいもの。

2023.01.02.記

面子とは厄介なもの…中国のCOVID規制緩和

 習近平さんがゼローコロナ(ZEROーCOVID)を強力に推進したのは、病源が中国発と言われるのに我慢できなかったから。「オレの国の感染率、死亡率を見てみろ、世界で一番低いじゃないか。それでも中国発と言うのか!」と言いたかっただけのこと。習さんの面子の問題。
 ところが、おりしもサッカー、ワールドカップが始まり、TV放送が中継されると、観衆の殆んどがマスクもしていない。コロナ・ウイルスとの共存が世界の風潮だということを、報道規制の厳しい中国でも多くの人々が知ることになりました。民衆が騒ぎ始めると、さすがの習さんも方針を変えざるを得ない。それでもオレが間違っていたとは、口が曲がっても言えない。
 なんの説明もなく規制が緩和されましたが、途端に感染者が増加…それもベキ指数的に増加しています。公権力によるロックダウンを止めたら、あまりの欠勤者の多さに工場が自主的にロックダウンせざるを得なくなりました。
 増加理由は、予防ワクチン接種率の低さと、中国製ワクチンそのもののの有効性の低さにあるようです。
 共産党一党支配の中国では、常に共産党の指導は間違いないと言い続けなければなりません。これは共産党の面子の問題。
 現在の中国の経済発展は、ケ小平さんが共産党計画経済の縛りを緩めたからで、共産党の指導が正しかったからではありません。元々ある中国人の、商売上手、模倣力を含めたクラフトマンシップが、規制緩和でプラスに働いただけです。
 それを共産党の指導によるものとし、オレたちのすることに間違いはないと言い続けた結果が現状の混乱の原因。そもそも人間のすることに無謬なことなどあり得ません。無謬性を強調してきた中世のキリスト教会と同じ過ちを繰り返しています。
 はてさて面子とは厄介なもの。
 打つ手がなくなると、外部に敵を求めて民衆の関心をそらさざるをえません。天安門事件の後、江沢民さんが反日運動を起こしたのと同じ手を使うことになります。さしずめ台湾、尖閣列島、南シナ海がその対象となりましょう。ただプーチンさんと違って用心深い習さんは、より慎重にことを運ぶでしょうが…。アア、桑原桑原。

2022.12.24.記

藻谷さんの提論

 12月19日付西日本新聞に掲載された藻谷浩介さんの「提論」には感心しました。
 いま話題のサッカー、ワールドカップをマクラに、読者の関心を引き付け、見事な提論を展開しています。彼の書いていることをそのまま引用します。
…「ゆくゆくはこうなるぞ!」というビジョンを手段は抜きに先に掲げ、その後に先に至る長期的なステップを考えて行く。この手法を「バックキャスティング」という。(中略)
…今の日本の政治や大企業にそうした自分たちの既得権とは無縁のビジョンはあるのか。「防衛増強のための増税」という議論を例に取ろう。感じるのは「今を何とかしのぎたい」という重いばかりで「日本と東アジアの未来の子どもたちにこういう社会を遺す」というビジョンは見えない。「増税でなく国債発行でいい」という論はなおさらだ。このままでは「何かやっている感」を出すためだけに膨大な資金を、使えない装備と武器利権に群がる者のために費やす結果になりかねない。
 中国や北朝鮮、ロシアの各政府とて、「とにかく独裁体制を続けたい」という維新時の幕府レベルのビジョンしか持っていない。だからこそ彼らへの感情的な反応は無用だ。実効性のあることに絞って準備し、後は腹をくくって静観しよう。遠い将来か近い将来か、今の体制の壊れた先に、どういう東アジアにするのかというビジョンを描き、その幸せな未来に向けて、今できることをしよう…。
 心底この「提論」に賛同します。幸せな未来へのビジョンを描き、武力は防衛だけに徹する態度を内外に示せば、相手も無駄に軍事に金を注がずに済むというもの。矛盾という言葉を思い浮かべればいいのです。矛を磨けば盾を強くする、盾が頑丈になれば矛をさらに鋭くする。際限はありません。その逆を行くしか道はありません。

2022.12.19.記

防衛と増税と国債と…

 安倍国葬以来人気落ち目の岸田さん、誰もが反対しにくい「防衛」という魔法の言葉で国民の支持を回復しようと懸命。ありていに言えば、防衛予算をNATO並みのGDP2%とアドバルーンを打ち上げれば、アメリカが間違いなく支持してくれると計算を立てただけ。
 右は西日本新聞(12/18)に掲載された佐藤正明氏の風刺画。もともとハト派を標榜していた岸田さん、突然タカ派に転じたと思ったら、もともとのタカ派顔負けのタカになってしまいました。人間、恥を棄てると人格まで変わってしまうのですかネ。
 情けないことに、準備不足を露呈して、財源は増税と国債発行だとか。さすがに党内でも発想の貧困を批判する声がボツボツ出はじめました。
 同盟を組む平和志向の公明党は、統一教会と紙一重の過去の活動を暴露されるのではないかと戦々恐々。いたって元気がなく、とても自民党の歯止めにはなりません。
 予算が足りないなら、まず自分の身を切ることから始めなさい。
 国債発行高の50%超を日銀が保有していると報道されました。日銀の国債購入元手は、紙幣印刷から生じる利益。政官全員が紙幣印刷・国債発行を、現代の錬金術と思っているらしい。
 中国古典「礼記」に「入るを量りて出ずるを制す」とありますが、現状を見ると、入るも出るも計算できない政官全員を禁治産者に指定しないといけないみたい。
 第二次世界大戦中、国民は大量の国債を購入しました(させられました)。敗戦で値打ちが完全にゼロになりました。当時の国民には、国債に対する強い抵抗がありました。戦後、国債発行が再開されたのは1965年(昭和40年)のことで、翌年にはゼロにするほど几帳面に管理されていました。それがいまでは止めどがありません。
 財布がゆるみっぱなしの政府に怒りがこみ上げ、ただでさえ思考力の乏しい頭脳がまともに働かず論旨がだらだらとなり、最も大切なことが最後になってしまいました。 
 「防衛」はあくまでも防衛に留まるべきで、敵基地反撃能力保持は完全に憲法違反です。これほど重大なことを閣議決定のような大した権威のない…法的にも疑義がある…機構で決めるなど、軽率極まりありません。心底怒りを覚えます。 

2022.12.18.記

ウクライナ映画「アトランティス」、「リフレクション」

 2019年に作られた「アトランティス」は、2025年のウクライナを描いています。近未来を描くフィクションです。ロシアとの戦争が2024年に終わり、勝敗は分かりませんが、少なくとも独立は維持できているという設定です。
 ロシアによるクリミア半島併合が2014年、ウクライナ侵攻が2022年、映画の製作が2019年ということは、この映画のスタッフたちが、ロシアのウクライナ侵攻を必至と考えていたことを示唆しています。
 映画の中では、拷問・虐殺された死体の回収が始まっています。破壊された工場から流出した有害物質で土壌が汚染されています。地雷の撤去・爆破も進行中。今まさに現実に起きていることと不気味なまでに符合します。単にSFとは言えない現実性があります。
 スタッフたちは、ロシアが侵攻して来たらどのようなことが起きるかよく知っていた…空恐ろしいほどの預言的(予言ではない)映画です。いま見ておかなければならない映画です。
 姉妹作「リフレクション」の製作は2021年。監督は「アトランティス」と同じヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ。2014年のクリミア半島併合戦争と、それに巻き込まれた医師の苦悩を描いています。「アトランティス」とは違って、現実的な物語です。
 しかし、「リフレクション」の方が象徴的で、SF的「アトランティス」の方がリアリスティックに思えるのはなぜでしょうか。おそらく、現実との符合がそのような印象をもたらすのでしょう。それだけ現実が厳しいと言うべきなのでしょう。

2022.12.11.記

スウェーデンの苦悩

 ロシアのウクライナ侵攻以降、これまで中立を守って来たスウェーデンとフィンランドが、NATO加入へと舵を切りました。ロシアの脅威を目の当たりにすると、気が焦ることでしょう。NATOは、加入国全員が賛成しないと新加入を認めないという鉄則があります。スウェーデン、フィンランド両国は、人道主義を貫く点では、他国の追随を許しません。障害はトルコです。
 トルコのエルドアン大統領は、一度クーデターで危うく命を落とすところでした。その報復もあって、反対派を徹底的に弾圧しました。国外に難民として逃亡した人も多くいます。トルコでは、本人不在でも裁判を行い、有罪判決を下しました。
 その内数人が、スウェーデンとフィンランド両国に、難民として保護されています。エルドアン大統領は、全員引き渡すまで両国のNATO加入を認めないと表明しています。
 12月6日の報道によると、スウェーデンはその要求を一部受け入れ、トルコ国籍のクルド人をトルコに引き渡したそうです。トルコの横車に膝を屈したのです。さぞ、口惜しかったことでしょう。
 NATO中枢部としては、スウェーデン、フィンランド両国の加入は、かねてから望んでいたことです。本心を言えば、トルコに出て行ってもらって、かわりにスウェーデンとフィンランド両国に加入してもらいたいところです。
 トルコは東西の十字路に位置し、ボスポラス海峡を自国領土内に持っています。NATOとしては切り捨てるわけにはいかない事情があります。
 エルドアンは2003年から2014年まで首相を勤め、2017年から現在に至るまで大統領の座を確保しています。権力を維持する手腕だけは並外れた能力があります。長らく権力の座を占めた結果、単なるポピュリストが化け物と化してしまいました。
 膝を屈したスウェーデンですが、トルコは全員引き渡せとさらに要求しています。人道主義国として、これ以上の譲歩が出来るのか、スウェーデンの悩みは尽きません。

2022.12.06.記

バンクシー、ウクライナに登場

 ロシアの砲撃で破壊されたウクライナの建物の壁にバンクシーの絵が!!?本当に彼かどうかは別にしても、弱い者に味方、判官贔屓に共感します。新聞に紹介された絵を転写します。

2022.11.15.記

フィンランドの原発汚染廃棄物対策

 フィンランドでは、原子力発電所から発生する汚染廃棄物を、10万年の単位で地下深く埋めるとのこと。スカンジナビア半島というかたい地盤の上の国だから出来る長期作戦です(右の写真がその地下トンネルです)。
 地震大国日本にはそのような条件の土地はありません。処理しきれなくなった汚染水を海に放出するしか方法のない国です。
 それにも拘わらず、耐用年数40年と定められた既存原発を、さらに20年延長して使えるよう規制を緩和しました。化石燃料逼迫と気候変動対策が耐用年数延長の言い訳です。
 何のことはない、事故さえなければ何もしないで済むという一番楽な方法です。無責任もここに極まれりと言わざるを得ません。
 フィンランドは、放射能汚染物質を、人知では処理できないと自覚し、10万年という超ロングな時間単位で放射能の消滅を待とうとしています。この真摯な試みに比べ、日本の態度がいかにいい加減なものであるか、不真面目で無責任なものであるか、日本人として恥ずかしくなります。

2022.10.26.記

トルコ製電気バスが日本へ

 日本国内の電気バス市場は、中国のBYDに席巻され、そこにトルコのKARSANが売り込みに来るそうです。JAPAN-NEWSの報道には驚きましたね。自動車輸出で外貨を稼いできた国の現状がこんな有様だったとは、仮にもリチュームイオン電池でノーベル賞をもらった吉野彰さんの国ですよ。
 円安に悲鳴を上げる前に、政治家諸氏、なにかしなければならないことがあるのでは? 政治献金を出す業界を手厚く保護し、将来の日本のあり方については盲目の指導者たちに、ただただ絶望するばかりです。
 そしてこのような重大な記事が、日本国内の新聞では報道されていないということにも驚きました。

2022.10.24.記

中国国家主席習近平三期目へ

 毛沢東以後、不文律とされてきた二期で退任という慣習を破って、習近平が国家主席の地位を三期連続して確定させました。正式には、中国共産党中央委員会総書記、党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席、国家主席ということになり、全権を掌握したと言って差し支えないでしょう。
 総会では胡錦涛が、オレが貰っていた書類とは違うぞというそぶりを見せましたが、習は歯牙にもかけず、警備員に命じて退場させました。
 つい藤原道長の望月の歌を思い出しました。こんな和歌です。
 この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば
 ただ李克強を追い出し、周囲を腹心だけで固めた現代のスターリンにとっての三期目は、彼の栄華の終りの始まりではないでしょうか。COVIDーZERO政策に見られるように、彼にとって経済より面子が優先し、己の権威を犯しそうであれば、経済鈍化も厭わず、ジャック・マーをはじめとする新興リーダーたちを締めあげています。
 COVIDーZERO政策にしても、病源が中国発と言われるのに我慢できず、しゃにむに抑え込もうとしているだけです。面子優先ですが、新変種が続出してきたコロナ・ウイルスを、彼の思惑通り根絶できるでしょうか。大いに疑問です。
 ただ彼が没落しても、中国が弱体化するわけではありません。現在の経済発展は、ケ小平が党の計画経済管理を緩めたことから始まりました。何もしないことの方が、元からある中国民族の活力を発揮させることに繋がります。決して共産党の指導が正しいから発展してきたのではありません。
 冷戦時代、ソ連は軍事的脅威でしたが、経済的には脅威でもなんでもありませんでした。ロシア人と中国人は民族性が異なります。模倣力も含めたうえで、中国人のクラフトマンシップは抜群のものがあります。
 中国のジョークにあるように、「上に政策あれば、下に対策あり」で、どんな○○が指導者になろうと、力強く発展し続けることでしょう。

2022.10.24.記

プーチン大統領の予備役動員

 ウクライナに侵攻したプーチン大統領、予想外の苦戦に兵員不足が生じたため、予備役動員という禁じ手に手を出しました。お金に余裕のある人たちは、早速隣国へ逃げ出しました。若者が留まるウクライナ、逃げ出すロシアと、まったく対照的な現象が起きています。
 プーチンさんは、チェチェンやグルジアでの成功例に自ら酔いしれ、ウクライナでも同様と軽く考えたのでしょう。2014年のクリミア半島併合が意外に簡単に終わったため、酔い心地も酔いどれ状態とりました。
 国家存亡の危機に直面したウクライナには、ロシア帝国時代、スターリン時代から現在に至るまでの迫害された怨念があります。西側の武器援助を得て懸命に抵抗しています。
 ロシアが戦争を続けて行けるエネルギーはただ一つ、プーチンさんの意志に依存しています。彼の取り巻きには意志も根性もありません。反対派は牢屋に投獄しました。完全にハダカの王様です。
 そして怖いのは、自分がハダカの王様であることを、彼自らが知っているということです。分かっているからこそ、バカをやる可能性があります。核のボタンを押すかもしれません。
 そうなる前に、彼が理性を取り戻してくれることを、ひたすら願うばかりです。

2022.09.29.記

国際貿易収支悪化

 貿易収支が、記録的赤字と報道されました。円安が拍車をかけているとの解説。
 かつて円安は輸出拡大に直結しました。輸出関連企業の株価が上昇しました。輸入資源の価格が上昇しても、輸出がカバーして、貿易収支は常に黒字を維持してきました。
 敗戦後、外貨不足で苦しんでいた時代、舶来上等と海外製品に憧れを抱きながら、懸命に品質の劣る日本製品を購入し、何か輸出できるものはないかと懸命になっていた時代、そんな時代を知る人が少なくなった現在、上から下まで、緊張感が緩んでしまっているような気がします。
 円安対策で外貨を購入しようにも、あれほどジャブジャブあった外貨保有高も底が見えて満足に使えない。
 日本の将来がまことに心配ですが、これも老人の繰り言かなア。

2022.09.16.記

終わりが見えない円安

 24年も前の円安水準だというのに、日銀の黒田さんには打つ手がない。原油価格が7ヶ月以来の最低価格だというのに、この円安では何のメリットも生まない。
 安倍さんと一緒になって金利を下げ、金融をゆるめた結果がいまの救い難い現状。黒田さんが相談しようにも、岸田首相は国葬問題で頭が回らない。官僚の書いた答弁を書を読むだけの大臣では話が通じない。
 アメリカがなぜ金利を上げ続けようとするのか、そこを理解していない。表面的にはインフレを抑えるためだとされていますが、基本的には、唯一神的思案が根底にあることを理解しなければならない、…のじゃないかしら。
 経済を金利でコントール使用と思えば、上下させる幅が必要となる。リーマンショック以来の低金利では操作のしようがない。唯一神的発想では、神が世界を作ったことになっている。神が世界をコントロールしていることになっている。経済もその伝で、コントロ0−ルしなければならない、コントロールできると考えている。パウエルさんは、不景気が足元に迫るまで金利を上げ続けると覚悟しなければならない。
 日本にとって手痛い手術になるかもしれないけれど、経済はかくあるべきという、清浄な状態に戻すべきでしょう。
 国債頼りの国家予算、派遣だらけの就職状況…かつてワーカーホリックと世界から揶揄されたけれど、資源のない日本には、それしか生きる道はないのじゃないかしら。
 金融をじゃぶじゃぶにするのは誰にでもできる一番楽な方法。地道に給料を上げ、庶民の所得を増やし、老後の不安を除くことが消費を増やし経済を発展させるのじゃないかしら。
 官僚は、数多くの問題に直面したとき、簡単に片付くものから処理し、手に負えない問題は、それがそもそも無かったことにするそうです。円安問題を、一生懸命、見えない振りをしている黒田さん、財務省の面々、情けないけど彼らもやっぱり日本人なんですね。

2022.09.08.記

ゴルバチョフさんが亡くなった!

 ゴルバチョフさんが亡くなりました。
 日本のメディアでは、冷戦を終わらせた男ーという表現でしたが、その線で行くとプーチンは新・冷戦を始めた男ということになるのかな。
 ゴルバチョフさんがレーガンさんと核軍縮の討議を始めたとき、ほんの一瞬のことですが世界が平和になると希望を抱かせました。一個人としての人間性では、ガンディーさんやマンデラさんの方が上かも知れませんが、ゴルバチョフさんは世界を変えました。
 プーチンのロシアでは国葬など望むべくもありませんが、せめて国連で、世界葬をやってもらえませんかね。

2022.09.01.記

核拡散防止条約合意不成立

 もともと偽善の上に成り立っている条約ですから…核兵器を持たない国には持たせまい、持っている国は放棄しない…ロシアの反対で合意が成立しなかったとしても別に不思議はありませんが、原爆被害国としての日本の発言力の無さには泣きたくなりますね。
 核禁止条約には署名せず、口先だけ核保有国と非保有国との橋渡しをする…と言っても、ただ言い逃れをしているだけと各国から見透かされています。
 アメリカの核の傘に守られているのは事実ですが、核被害国として核禁止条約には署名しますと、まずアメリカを説得しなければならないのじゃないかしら。それが出来たら、ロシアに何か主張するにしても、重みが全然違うと思うのだけれど…。

2022.08.28.記

福島原発汚染冷却水、太平洋へ放出

 岸田政府は既定方針通り、汚染水を太平洋へ放出するそうです。多額の金を投じた導水トンネルも完成間近だとか。充分に海水で薄めて放出するので、健康被害は出ないそうです。そうであれば、汚染水をデブリ冷却に再利用すればいい。循環パイプを設置するで毛で、トンネルよりもずっと安い費用で済みます。
 かつて、水俣病に真摯に向き合った熊大原田医師は、汚染水放水を巨大な人体実験と批判しましたが、今回の原発汚染水放出も同様と言わざるを得ません。ちなみに原田さんは、国立である熊大の教授にはなれませんでした。何という心の狭い政治家、官僚どもかと溜息が出ます。
 ですが、いくら政府と東電の無責任を嘆いても、選挙で勝っているのだから、結局は国民の責任。

2022.07.25.記

安倍元首相国葬の愚

 いくら暗殺の衝撃が大きかったとしても、当本人に国葬に値するだけの功績もないのに、税金を使って国葬するなんて国民をバカにしています。岸田首相は、安倍派の支持が欲しかったのでしょうが、閣議決定で国葬を決めるなど、軽率、未熟ぶりを露呈してしまいました。
 過去を翻ってみても、国葬は吉田さんのみで、佐藤さんも中曽根さんも国葬ではありません。モリ・カケ・サクラで嘘を着き続けた安倍さんが、このお二人より実績が上だとは到底思えません。
 ネット上にはいろんな意見が発表されていますが、なかで心に残ったものを列挙してみます。
 銃声に モリカケ桜 もう忘れ  川柳投稿者・明日ひかるさん(直方市)
 西原孝至さんのツイート  …サッチャー元首相が亡くなった際のケン・ローチ映画監督のコメント「彼女の葬儀を民営化しよう。競争させて、一番安い値段の入札を受け入れよう。彼女が最も望んできた事です」
 異国で「国葬」されたスゴイ日本人列伝 …オランダで安達峰一郎さん(1869-1934)、旧ユーゴスラヴィアで近藤恒子さん(1893-1963)、ブータンで西岡京治さん(1933-1992)、トルコで宮崎淳さん(1969-2011)、以上四名の方々。
 岸田さん以下、国葬に賛同した政治家たちに、この方々の爪の垢でも煎じて飲ませたいものです。

2022.07.16.記

燃料不足へのドイツなりの対策

 ウクライナ侵攻に対する経済制裁への報復で、ロシアからのオイル、ガス輸入がままならぬドイツ。今年の冬に備えてタンク(大きな魔法瓶)を建設中だとか。45m高のタンクに56百万リットルの熱湯を蓄え、各家庭の暖房に用いるそうです。熱源は太陽光と風力による発電、補助として蓄電池を備えるとのこと。ベルリンのみならず他の大都市への展開も計画中とか。
 日本の福島原発メルトダウン後、いち早く脱原発を宣言したドイツならではの決断に拍手。
 もちろん、これだけの対策で厳しい冬が乗り切れるはずもありませんが、企画に実行の伴うところがいかにもドイツらしい。
 原発事故おひざ元の日本は、気候変動対策と電力逼迫を原発再稼働の理由づけにしようと世論を誘導中。ロシアのウクライナ侵攻を、防衛費増額の根拠にしようとするのと同じ発想で、底が見え見えの政治の貧困。
 とは言っても、今度の参院選でやっぱり与党が勝つのでしょうね。ああ、なにか空しいなあ。

2022.07.04.記

アメリカ最高裁の後進性

 トランプ大統領登場以来、アメリカはすっかりおかしくなりました。大統領がバイデンさんに変わっても、トランプさんの遺した遺産に苦しめられています。特に終身職の最高裁判事3名が、トランプ大統領時代に保守派に変わりました。9名の内6名が保守派です。
 最近、この最高裁が二つの後進的な判決を下しました。一つは避妊の正当性の破棄です。もう一つは、ニューヨーク市が下した銃規制を憲法違反としたことです。この後進性をどう言えばよいのか、まるで未開発国並みの幼児性としか言いようがありません。
 そもそも、法律は何のために生まれたのか、の認識に欠けています。刑法は個人的な報復を社会が代わって、理性的に代行するところから始まりました。民法や商法は、秩序維持を目的とします。究極のところ、人命を守るために法律が生まれたと言っていいでしょう。今回の最高裁の判決は、法律亡者が法律に縛られて、人命の尊厳を無視してしまいました。
 ただ一つ、結果的に、民主党にプラスに働くだろうという点だけは、メリットと言えましょう。いまのところ人気落ち目の民主党は、秋の選挙で、上・下院共に少数派に落ち込みそうです。妊娠中絶賛成派、銃規制賛成派は、多くが民主党支持者です。彼らが目覚めれば、アメリカがトランプの悪夢から逃れられるきっかけになるかもしれません。

2022.06.29.記

ロシア対日戦勝記念日の変更

 6月25日のJapan Newsの報道によると、ロシア国会はプーチン大統領の意向を汲んで、第二次世界大戦戦勝記念日を9月3日とするそうです。これまでがどううだったかを考えると、思わず笑ってしまいます。
 これまでは9月2日でした。戦艦ミズーリの艦上で、1945年9月2日、重光外相が降伏文書に調印した日に由来します。この日のソ連は連合国の一員でした。ウクライナ侵攻による西側の経済制裁に反発するロシアは、単独の戦勝記念日を決めたいのでしょう。バカバカしい限りですが、独裁者に尻尾を振る議員たちのやりそうなことです。
 そもそも日本がポツダム宣言を受諾し無条件降伏を表明した日、1945年8月15日が戦勝記念日であるべきなのですが、それでは千島列島や樺太の再征服が戦後の出来事となってしまうので都合が悪いのです。千島列島は侵略は、8月18日に始まり8月25日に終わりました。8月15日以降、戦争を続けたのはソ連だけです。降伏した日本兵はシベリアに送られました。
 日本が主張する北方領土4島は、1855年(安政元年)12月21日に結ばれた日露通好条約に基づいています。そこには、国境はエトロフ島とウルップ島の間と明記されています。日露戦争で得た領土を、敗戦で失ったのは当然のこととして受け入れなければなりませんが、日露通好条約は戦争状態以前の平和な時期に結ばれた条約です。国際法的に見ても、日本に理があります。
 ロシアはしたたかな国です。恥を知るなどという言葉は、この国には存在しません。経済的に追い込まれない限り、交渉に応じることはないでしょう。
 北方領土4島は、旧島民の感情を別にすれば、漁業権以外さほど重要な意味を持ちません。しかし、大国の横暴を許したのでは、ウクライナの二の舞となりましょう。正しいことは正しいと言い続けることが肝要です。いつ返還されるかなど問題にするべきではありません。礼儀正しく、品位をもって、正しいことは正しいと主張し続けましょう。

2022.06.25.記

ウクライナ木造教会焼滅

 ウクライナのゼレンスキー大統領によると、6月4日、スバトヒルシクの歴史的木造教会が爆撃によって破壊されたとのことです。ロシアは、バーミアンの仏教遺跡を破壊したタリバン並みの、野蛮政権であることを示してしまいました。残念なことです。
 シリアでも数多くの歴史遺産が破壊されましたが、イスラム国だけに殆んど報道されていません。報道の偏向にも注意を払うべきでしょう。

2022.06.05.記

国連改革の必要性

 国連総会で、ようやく拒否権問題を討議することになりました。結論が出ても強制力はありませんが、拒否権保持国には一定の圧力がかかることでしょう。まず手始めに、拒否権を行使した国は、その理由を述べなければならなくなりました。
 提唱者の筆頭が世界最小国のリヒテンシュタイン公国というのがいいですね。
 拒否権は、いまのところ絶対的な力を持っています。とりあえず説明責任は明確になりましたが、次の段階はその絶対権にメスを入れるべきです。例えば、安保理で五大国が拒否権を行使したとしても、総会で三分の二以上の反対意見があれば拒否権を覆せるとか、何らかの制限が必要でしょう。本来日本が提唱してしかるべきなのですが、安倍さんから岸田さんに変わろうと、相変わらずアメリカの顔色を伺うばかりで、気骨のかけらもありません。情けないですね。

2022.04.28.記

先制攻撃の道を開くな

 4月18日、西日本新聞に掲載された藻谷浩介(日本総合研究所、調査部主席研究員)氏の「提論」は、一読して思わず襟を正したくなるような優れた内容でした。少し長くなりますがその要旨は…
*ウクライナで続く悲劇は戦争と呼べるのか。大規模テロ以外の何物でもない。アメリカのイラクやアフガニスタンへの侵攻や、ロシアによるクリミア半島の占領を大目に見てしまったことが、大国の横暴を招くことになったのではないか。
*今の時代に正当化できる戦争があるとすれば、ウクライナが行っているような正当防衛としての戦いだけである。
*「憲法9条改正で国を守ろう」と唱える人がいる。日本にも先制攻撃に対する正当防衛の権利があり、自衛のための武装もある。「武力行使は辞さないぞ」と明記することになんの意味があるのか。ウクライナの憲法に何を書かれていようとロシアに影響は与えなかっただろう。
*憲法は自国の政府権力を縛るもので、外国の行動を抑止はしない。9条の意味は、日本からの先制攻撃を止めることなのだ。改憲などせず、粛々と自衛の備えをすればいいのだ。
*「自衛のために先制攻撃を認めよう」という議論も出ている。だがそれを禁じたのは、全ての侵略は「自衛」の名目で行われるからだ。ヒトラーも大日本帝国も、イラクで死んだ米兵も、ウクライナで死ぬロシア兵も、9条を持たないゆえに出た犠牲者である。
*核武装を声高に唱える向きもある。プーチンのせいで、核抑止論の前提は崩れた。彼のように自国民の犠牲を何とも思わない者は、「国は自殺行為には出ない」という期待に応えない可能性がある。
*世界の安全性を少しでも取り戻すには、「攻撃されれば死を賭して反撃するが先制攻撃はしない」ことしかない。
*何のことはない、「戦争を国際紛争解決の手段としては使わない(正当防衛は除く)」という、日本の平和憲法を世界に広める努力こそ、本当の自衛行動だ。改憲で安全になると夢想する人たちは、いつこの現実に気付くのだろうか。

 まことに卓見というべきです。右翼主義者、似非右翼、ネトウヨの諸氏よ。目覚めよ!!

2022.04.18.記

変わりつつある戦争の形態

 ウクライナ軍は、ミサイル攻撃でロシアの巡洋艦を撃沈したと発表しました。明らかに戦争の形態が変わったことを実感させます。
 第一次世界大戦は塹壕と白兵戦、第二次は制空権の争いでした。いまはミサイルの勝負。次にもし世界大戦が起きたら、ロボットの優劣を競うことになるのでしょう。
 いずれにしても、騎士道精神など望むべくもない、卑怯者たちの争いになります。卑怯者が声高に主張する戦争の正当性など、訊きたくもありません。

2022.04.15.記

戦争反対の二つの名画

 ロシアのウクライナ侵攻に思いを巡らしながら、二つの映画をDVDで再見しました。ヴィットリオ・デ・シーカ「ひまわり」は、イタリアとウクライナが舞台です。戦争で行方不明になった夫を探す妻。その夫は瀕死の状態でウクライナの女性に助けられていた…。その背景には、戦争に根こそぎ男を狩りだされたウクライナ農村の国内事情があります。戦争はダメだというメッセージが痛切に心を打ちます。
 「夜明けの祈り」は、1945年、ポーランドの女子修道院で起きた出来事を描いています。ナチを放逐したロシア軍は解放者だったはずですが、モラルに欠ける末端の兵士たちは、修道女たちをレイプし妊娠させました。
 日本にも、公然とは語られない悲劇があります。第二次世界大戦敗戦後、満州から引き揚げた相当数の女性が、ロシア兵にレイプされ妊娠していました。博多港に上陸後、彼女たちは二日市の仮設病院(名ばかりのテント)に運ばれ、秘密裏に堕胎手術が行われました。女性たちも、医師たちも一切口外しませんでした。どれだけの数の嬰児が処分されたか、記録は一切ありません。
 今回のウクライナ侵略でも、ロシア兵の残虐ぶりが報道されています。戦争状態の一方の報道ですから、どこまで信じて良いのか疑問がありますが、満州時代のロシア兵のモラルの低さを知る者にとっては、起こり得るなと思わざるをえません。
 そして、大戦中、中国や東南アジアで、一部の日本兵が行ったことでもあります。
 戦争は、人を狂気に陥れます。モラルを失います。戦争はダメです。単純に、ダメなものはダメです。

2022.04.11.記

勇気ある女性に乾杯

 ロシアの国営テレビのニュース番組放送中、自国のウクライナ侵略に抗議する女性が突然登場し、番組を妨害しました。手書きのボードには、「戦争はしない、戦争を止めろ、プロパガンダを信じないで、彼らはここであなたにうそをついている」と書かれているそうです。
 テレビ放送は中断され、この勇気ある女性(オヴシャンニコワさん)は処罰されることになりましょう。
 妄想に取りつかれたプーチンさんには、何の痛みも感じない出来事でしょうが、この女性に共感する人々が、ロシア国内に増えることを期待したいものです。

2022.03.16.記

プーチンさんを説得できるのは習さんしかいない

 3月5日の旭日新聞デジタルによると、ゴルバチョフさんがプーチン大統領に対し、「即時の戦闘停止と和平交渉を」呼びかけたそうです。尊敬すべきゴルバチョフさんですが、プーチンさんを説得できるとは思えません。理性が狂気に勝つことはまずないからです。
 もし、トランプさんがロシアへ行ったら、二人でウクライナを攻めましょうと言うかもしれません。彼はウクライナに怨みを抱いています。なぜなら、バイデン大統領の息子のスキャンダル調査に協力しなかったからです。
 そうなると、彼を説得できるのは、習近平さんだけということになります。彼がもし「二人で組んで、武力と経済力で西側を圧倒しましょう」と言えば、プーチンさんも矛を収めるかもしれません。昔から「毒を以て毒を制す」と言いますから…。
 そのあと、プーチンさんが習さんに嵌められたと気づき、仲違いするかもしれません。「嵌められた」ことの内情は、中国の国際的地位だけが向上し、ロシアはその傘下に落ちこんでしまうことを意味します。
 仲違いしてくれることが、情けないことですが西側にとってベストのシナリオです。

2022.03.07.記

非核三原則の見直しなど必要ない

 ストレスで二度も政権を投げ出した◎◎な政治家が、ロシアのウクライナ侵攻を口実に、非核三原則の見直しが必要だと発言しました。バカも休み休みにしてくれと言いたくなります。
 戦争を知らない政治家たちが、ウクライナ問題を「いまそこにある危機」であるかのように、憲法改正の必要性を声高に主張し始めています。かつて田中角栄が、戦争の悲惨さを知っている我々が生きている限り日本が再び過ちを犯すことはない、と言いました。あの右翼のように見えた田中角栄がそう言ったのです。
 憲法9条を変えてはなりません。自衛隊が違憲であるかどうかを、常に考えるベきです。違憲である可能性は十二分にあります。しかし、なぜそのままにしているのか、常に自ら問いかけるべきです。
 ストレスで二度も政権を投げ出した無責任な政治家が云々することではありません。

2022.03.04.記

ロシアのウクライナ侵攻

 ロシアのプーチン大統領は、2月24日ウクライナ攻撃に踏み切りました。愛国心に訴えることで、下降気味の国内での人気が回復し、政治寿命が延びるかもしれませんが、その実、国民生活は経済制裁で困窮の度を増すばかりでしょう。
 プーチンさんを小利口な政治家だと思っていましたが、ここまで◎◎とはネ。1979年にアフガニスタンに侵攻したブレジネフ以上の◎◎です。
 彼はNATOの東進を約束違反だと息まいていますが、バルト三国やハンガリー、ポーランド、ルーマニアなど、窮鳥がNATOの懐に逃げ込んだとみるべきでしょう。ロシアと組んでいた方が得だと思えば逃げ出すはずがありません。植民地支配の終焉期、イギリスがコモン・ウエルスを組織できたのは、旧植民地諸国が、しばらくはイギリスと手を組んでおきたいと考えたからです。
 ロシア国民にとっては、プーチンさんが、EUに加盟し、NATOの一員となれば、政治的にも安定し、経済的にも豊かさを享受できることでしょう。ですが、それではプーチンさんのホコリが許せない、ということになりましょう。ホコリとは全く厄介なものです。
 皇帝支配時代、ロシアは安い農産物を他国に売ることで経済が成り立っていました。そのため自国民を奴隷(農奴)にしてしまいました。いまは、地下資源を売ることで経済が成り立っています。体質は変わりません。もともと、ものづくりの下手な国民です。
 第二次世界大戦終末期、ドイツ国内に攻め入ったロシアは、ナチに協力した科学者たちをロシアへ連れ去りました。人工衛星や、ミサイル開発は、彼らの指導のもとに進められました。どの国にもある愛国心が、その発展を助けました。ものづくりの下手な国が、武器だけは上手に作れるのは、そのような裏事情があるからです。
 石油やガスを売るか、武器を売るしか能のない国民性を、プーチンさんがどこまで理解しているのははなはだ疑問に思えてなりません。中国にしか地下資源を売る先がなくなれば、経済的には、自動的に中国の属国になってしまいます。
 西側にも責任があります。イスラエルの占領地入植を黙認し、イラクへ侵攻し、拒否権の不合理性をそのままにしてきました。目に余るダブル・スタンダードがプーチンさんの増長を招いたとも言えます。
 唯一プラス方向に動くのは、石油燃料の値上がりに困惑したバイデン政権が、イランと核協定合意に積極的になることぐらいでしょう。イランへの経済制裁を解除すれば、OPECの意向に逆らってでも石油を増産することでしょう。価格を抑えるには、それしか方法はありません。
 現在69才プーチンさん、いくら政治生命が伸びたとしても先は見えています。そのために血を流すなど、空しい限りです。

2022.02.24.記

必読の書「PERIL 危機」

 ウオーターゲート事件を明るみに出した記者ボブ・ウッドワードが若手記者ロバート・コスタと組んで出版したアメリカ政治ルポ「PERIL 危機」を興味深く読了しました。
 2021年1月6日、トランプ大統領支持者たちによるアメリカ議会堂襲撃は、これが民主主義国かと世界を驚愕させました。核のボタンを握るトランプ大統領を独走させないよう、いかにスタッフたちが動いたかも記載されています。
 前大統領に関する記事は、通常であれば気持ち穏やかに読めますが、この書ばかりはそうもいきません。バイデン大統領の支持率が下降気味です。アフガン戦争の終結はトランプ大統領時代に決まっていたことですが、肝心のアフガン政府責任者が逃げ出してしまい、結果的にバイデン大統領の不手際と映じてしまいました。経済が一番の関心事であるアメリカ国民にとって、インフレの進行は現政権にとってマイナスです。
 トランプさんの大統領復活も、あり得ない話ではありません。「危機」はまだ去っていないのです。

2022.02.21.記

福島原発汚染水海上放出と食品安全性キャンペーン

 政府と福島県が、ニューヨークで福島の食品が安全だと試食会を催した由、2月20日の時事通信が報道しました。最初、このニュースを見たとき、悪い冗談かと思いました。一方で原発汚染水の海上放出を決めておきながら、厚かましくもこんなイベントが出来たものだと呆れかえっています。
 汚染水は、原発デブリ冷却の再利用すればいいだけのこと。循環パイプを設置すれば、海上放出の必要ありません。発想の転換の出来ない◎◎サンたちよ。汚染水で顔でも洗って出直して来たら如何。

2022.02.20.記

日米地位協定に云々できないの内弁慶

 新型オミクロン・コロナ・ウイルス対抗策として、岸田内閣は外国人の入国一時停止を決めましたが、アメリカ軍の感染兵士の入国は無制限という矛盾をさらけ出してしまいました。
 米軍駐留に関する地位協定の、改定の申し入れさえできない弱腰が情けない限りです。
 沖縄国際大学教授、前泊博盛氏によると、「解決できない問題」「難解な問題」はどうするかと官僚に尋ねたところ、「まず先送りして、それでも駄目なら無かったことにする。それがこの国の掟だ」と答えが返って来たそうです。官僚が駄目なら、政治家はなおさら駄目。官僚以上に能力がないのですから。
 思い入れ予算の増額も、日本に自衛能力が不足する以上仕方がありません。ですが、増額交渉するときに、地位協定の改定申し入れをすべきでしょう。内弁慶の政治家なんか必要ありません。どうぞ消えてください。

2022.01.12.記

赤木未亡人の無念

 赤木俊夫さんは、文書改竄強制に耐えられず自殺しましたが、その未亡人が起こした訴訟に対し、12月15日、政府は訴状にある1億円を支払うことで裁判の決着を図りました。訴因を失った原告側は、泣き寝入りするしかないのでしょうか。
 そもそも訴訟の目的は、公務員が文書を改竄して良いのかという基本的な問題、改竄を忖度させるに至った政府トップの責任の追及にありました。賠償金を求めて起こした訴訟ではありません。赤木未亡人は、「二度殺すのか」と悲痛な言葉を発しました。
 訴訟を起こすには、利害関係者でなければなりません。求める賠償の金額を明確にしなければなりません。政府は、それを逆手に取りました。賠償金を支払うということは、罪を認めたことになりますが、そのことには政府は知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいます。追求すれば、政府にも言い分があるが未亡人の今後のことを考え、人道的に妥協したと言い逃れることでしょう。
 12月25日、西日本新聞夕刊に、秀逸な川柳が掲載されていました。
 金でけり 国よおぬしも ワルじゃのう(福岡・松崎真治)。

2021.12.25.記

映画「カウラは忘れない」

 カウラは、第二次世界大戦中、オーストラリアにあった戦争捕虜収容所です。このドキュメンタリー映画は、1944年8月5日、収容されていた日本人捕虜1104人が集団脱走し、234人が死亡した事件を、生存者の証言をもとに描いています。
 待遇に不満があったからではありません。証言によると、肉ばかりの食事に飽きた捕虜たちが、日本人だから魚を食べたいと要求したところ、オーストラリアでは肉の方が安いのだと説明されたと言います。それでも、ひと月ほどあとに缶詰の魚が提供され、さらにニュージーランドから冷凍の魚が輸入されたそうです。当時の日本国内よりも贅沢な食事が提供されていたのです。
 収容所ですから鉄条網の外には出て行けませんが、収容所内での自由はかなり許されていました。
 なぜ彼らは脱走したのか? それは東条英機が陸相時代に、兵士たちに必携させた戦場訓に原因があります。「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪過の汚名を残すこと勿れ」の一節が捕虜たちの心を支配していたからです。捕虜になった者たちの多くは、家族に知られることを恐れ、偽名を使っていました。
 アメリカ映画映画「大脱走」に描かれているように、戦争捕虜たちは何としてでも生き延びて、再び戦場に戻って戦うのが本来の姿なのではないでしょうか。
 日本では、捕虜になることを恥とし、その前に死ねと命じました。そして捕虜の待遇を定めた国際協定ジュネーブ協定の存在を一般に公開しませんでした。
 カウラ捕虜収容所を脱走した1104人には、脱走後の計画などありません。警備兵の銃弾に撃たれて死ぬのが目的だったのです。しかし、生存者の一人は冷静にこう振り返ります。…走り出した最初の興奮から覚めると、銃弾を避けて生き延びようとした、と。これが1104名の脱走者と、234名の死者との差となって現れています。
 戦場訓は、兵士のみでなく、テニアン島バンザイ・クリフや沖縄における住民の集団自決と言う悲劇を生みました。
 戦陣訓を兵士たちに必携させた当の東条英機は、自殺に失敗し、A級戦犯として巣鴨に収容され、絞首刑に処せられました。恥を後世に残したのです。
 このドキュメンタリ映画を作ったのは、瀬戸内海放送という地方テレビ局です。その志の高さに敬服し、乾杯!!

2021.11.29.記

アメリカの銃規制のバカバカしさ

 アメリカでは17才(現在18才)の、自警団気取りの若者が、銃を手に、二人を死に至らしめ、一人を不具にしましたが、自己防衛の主張が認められ無罪になりました。右の風刺画はアメリカの新聞からの転載ですが、飲酒も、富くじもダメ、選挙権も無い者に、銃使用が認められる不思議さを揶揄しています。
 一部の共和党議員は、彼をヒーローに祭り上げようとしています。アメリカは不思議な国です。ときどき、あの国は、発展途上国ではないかと思ってしまいます。

2021.11.24.記

中国のセクハラ・スキャンダル

 中国で起きたセックス・スキャンダル、報道が自由な国だったらただのスキャンダルですんだものが、不自由な国だったことから大問題になってしまいました。共産党の無誤謬性を強調してきただけに、さぞ対処に困っていることでしょう。
 事の発端は、テニスのトッププレイヤー彭帥(ペン・シューアイ)さんが、現在は引退している前副首相張高麗(ジャン・ガオリー)にセックスを強要されたと、SNSに投稿したことに発します。よくある、ばかばかしいスキャンダルで、その点、トランプさんも人後に落ちません。
 かつて、キリスト教社会でも、教会の無誤謬性を強調してきました。人間の作った組織に、無誤謬性など存在するはずがありません。無誤謬性に固執するために陥った思わぬ落とし穴でした。
 このスキャンダルは、強固に見える中国の、意外な弱点を世界に示したのではないでしょうか。

2021.11.22.記

人権団体をテロリスト呼ばわりするイスラエル

 10月23日のABCニュースによると、イスラエル政府は、パレスチナの人権団体をテロリストと指定しました。世界に冠たるテロリスト国家が、人権グループをテロリスト呼ばわりすることのおぞましさ。この国に比べれば、アフガニスタンのタリバンも、中国の新彊ウイグル地区、チベットや香港での弾圧ぶりも、遥かに穏和なものに見えます。
 11月11日、南アフリカのデ・クラークさんが亡くなりました。85歳でした。彼の政治歴の大半はアパルトヘイト施行者でしたが、最後の最後に正しい決断を下しました。独立運動の闘士マンデラの開放、アパルトヘイト政策の廃止、全国民による大統領選挙を実施、がその正しい決断です。彼が遺したラスト・メッセージは、謝罪とともに、アパルトヘイト政策は完全な間違いだった…というものでした。
 現在のイスラエルのリーダーたちは、まったく聴く耳を持っていないことに戦慄します。

2021.11.13.記

映画「MINAMATA」が描き出すもの

 日本産業が生み出した公害「水俣病」を、アメリカの報道写真家ユージン・スミスの生きざまを描くことで、その罪深さを抉り出しています。映画は、人気俳優ジョニー・デップがユージン・スミスに惚れ込んで完成したとも言えます。日本の政官財は、このスキャンダルを既に終わったことにしたいのですが、ハリウッドが取り上げたことで、多少いらだたしく思ったことでしょう。ジュリア・ロバーツの「エリン・ブロコビッチ」にも、そのような力がありました。
 ハリウッドの映画ですから、公害の責任追及には甘さがあります。それでも、チッソの言語道断な不誠実さを、観客に訴えるだけの力は持っています。
 さんざん言われてきたことですが、チッソが取って来た対応のおぞましさ、完全に企業側に立つ政官財の癒着ぶり、権力に尾を振る司法、御用学者たち…、なんとも腹立たしい限りです。熊本大学・原田正純「水俣病」(岩波新書)が指摘するように、有害な公害物質は、いかに許容量を低く設定しようと、長期間にわたる人体実験であることに違いはありません。ちなみに、水俣病を追求し続けた原田正純さんは、先任教授が度々推薦したにも拘わらず、国立の熊本大学では教授になれませんでした。
 福島原発の汚染水海洋放出も同様です。ここでも、御用学者が、その安全性を声高に主張しています。東電も政府も、その恥ずべき無責任さを、偽科学的根拠で覆い隠そうとしています。
 映画「MINAMATA」を重い気持ちで鑑賞しましたが、残ったものは、現存する公害問題に対する憤りでした。

2021.10.17.記

ヒトラー、スターリンの轍を踏むのか習近平

 次第に独裁者化してきた習近平さん、最近は言うことに異常さが見られるようになりました。
 香港の民主化運動を愛国主義で抑え込みましたが、これは、香港が金融市場の地位を失ってもかまわない、中国本土の経済力は、香港がその地位を失っても影響はないという彼の自信を示すものでした。新彊ウイグル自治区問題も、コロナ・ウイルス発生地否定も、その自信の路線上にありました。全体主義国家へ、まっしぐらに進んいるように見えました。
 このようなことができたのは、彼が政敵を抹殺し、自らの地位を不動のものとしたからです。その手法はスターリンそっくりでした。ただ、スターリンは本当に抹殺し、習近平は牢屋に入れたという違いだけです。
 ところが、最近の言動は少し狂ってきました。青少年のゲーム時間を制限するとか、柔弱なセレブ崇拝をTVから追放するとか、やることがヒトラーに似てきました。14億の国民の感情を、習好みに変えようとしているように見えます。
 中国の経済発展は、もともと中国民が持っていた生活力が発揮されたからに過ぎません。ケ小平が、共産主義の箍(たが)を外したことで甦っただけのことです。共産主義政権の指導が良かったからではありません。よく言われる「上に政策あれば、下に対策あり」の活力が生んだものです。習さん、誤解が過ぎるんじゃないの? 

2021.09.04.記

愚挙が尾を引くトランプ前大統領

 トランプ大統領が始めたアフガニスタンにおけるタリバンとの和平交渉は、無残な結果を生みました。バイデン大統領は、8月31日の撤退完了後、半年ぐらいはアフガン現政権が持つだろうと想定していました。ところが肝心のアシュラフ・ガニー大統領が逃げ出して、北部を除く殆んどがタリバンの支配下となりました。アメリカはアフガン軍に提供した武器は、凡てタリバンの手に渡りました。バイデン大統領には、想定を甘く見積もった責任がありますが、大半は、トランプ大統領が始めた和平交渉に端を発しています。そもそも和平交渉を始めるに当たって、同盟国には一切相談していません。撤退期日についても同様です。和平交渉の内容自体、足元を見られたトランプ大統領の譲歩ばかりが目につくものでした。アメリカ軍が無傷に引き上げられれば、あとはどうなろうとかまわない、選挙に勝ちさえすればいいという裏がミエミエでした。
 ブッシュ大統領が始めた戦争は、ブッシュとトランプという二人の愚かな指導者によって演じられた喜劇となって終わりました。後がどうなろうとかまわないということから行けば、トランプ大統領の愚挙としてはまだ罪が軽い方です。
 愚挙の最初は、イランとの核合意からの離脱です。アメリカが独自に加えた制裁は効を奏せず、イランは、協定上限を越えるウランを濃縮指せるに至りました。国連でアメリカは、協定違反したイランを非難しましたが、離脱した国が何を言うのかと失笑を浴びただけでした。
 オバマ大統領が始めたTPPを、トランプ大統領はアメリカの労働事情を害すると言って離脱しました。環太平洋の貿易協定で中国を包囲しようというオバマ大統領の深謀遠慮を、彼は全く理解していません。この愚挙が生んだ結果が、中国と台湾の、TPP参加要請です。現TPPの実質リーダーの日本としては、扱いに窮する問題となりました。アメリカが離脱していなければ、中国が参加するなどとは言い出さなかったはずです。
 彼は口に出してこそ言いませんが、根本的に白人至上主義者です。黒人のオバマより、オレの方が優れていると実績を示したかっただけです、それがイラン核合意やTPP離脱だったのですが、それがどのような結果を生んだか、一目瞭然と言わざるを得ません。そして、最も重大な問題は、そのような彼を支持する国民が、30%以上いるというアメリカの国情ではないでしょうか。 

2021.09.01.記

責任者が逃げ出したアフガニスタン日本大使館

 アメリカとタリバン合意に従い、アメリカ軍の退去が決まりましたが、突然アフガニスタンの大統領が国外に逃げ出して、この国はあっけなくタリバンの支配下に入りました。逃げ出した大統領は、卑怯極まりありませんが、なんとなく江戸城開城を思い出させます。少なくとも、最悪の市民戦争は避けられたわけです。
 アメリカが軍の撤退を発表したときから、連合軍側で働いていたアフガンの人々へのタリバンの報復が懸念されました。アメリカをはじめとする各国は、かなりの人数のアフガン人を国外に退出させました。ところが、日本は完全に出遅れました。たった一名を運んだだけです。肝心かなめの大使館員が、誰一人残っていません。
 7月8日、アメリカが軍を、8月31日までに撤退させると発表しましたが、そのとき日本大使館は、大使館やJICAで働いていた人たちに、国外退出か残留か、希望を聞くべきでした。アメリカ軍が撤退を始める前から、希望者の国外転出を始めることもできたはずです。そんなことは何もしていません。そして自らは国外に退出してしまいました。彼らは、上からの命令に従っただけだと言い訳することでしょう。満州でも、関東軍主力は本土決戦に備えるという名目で撤退し、侵攻するソ連軍の前に日本国民を置き去りにしました。規模は違うにしても、同じ無責任さの繰り返しです。
 もし杉原千畝がアフガニスタン大使館にいたらと、つい思ってしまいます。彼は、国の命令に逆らって、ユダヤの人々にヴィザを書き続けました。
 船が難破したとき、船長は最後まで残って乗客の救出に努めます。真っ先に逃げ出したりはしません。日本国民として、まことに恥ずかしい思いにさせられた一件でした。

2021.09.01.記

原発汚染冷却水排出トンネルという愚案

 廃止するしかない福島原発も、デブリを取り出すまで原子炉を冷却し続けなければなりません。東電と政府は、安易な海上放出に逃げ道を見出そうとしています。漁民に多額の賠償金を払うことで、事をおさめようとするいつもの手です。
 とんでもない案が出てきました。漁民の心配をかわそうと、約1キロのトンネルを掘って、沖合に汚染水を放出しようというのです。1キロと言っても、海底にトンネルを掘る作業がいかに困難なものか、費用がどれほど掛かるのか、提案者は分かっているのでしょうか。
 そう言えば、地下水をせき止めるのに、凍土壁を作るという案もありました。実行したのか、途中で止めたのか、一切発表がないので分かりません。凍土壁を冷やし続けるのにどれだけ電力が必要なのか、提案者は考えたのでしょうか。
 中途半端に頭のいい人たちの考えることは、どうすれば責任を取らずに済むか、非難をかわせるかだけです。賠償金も、トンネル掘削の費用も、結局は国民の税金を使うことになります。こんな無駄遣いはありません。
 原発事故は完全に人災です。そもそも、大津波の警告がなされたとき、東電は何も対策をとっていません。防波堤を作る費用がないのであれば、非常用電源装置を高所に移すべきです。地下室に設置したままで、安全神話に由りかかったままでした。浸水の危険性を予測したものは誰一人もいません。
 交通渋滞を切り抜けて、非常用電源車が到着しても、電流の違いで接続できませんでした。少なくとも年に一回は防災演習をやっていたはずです。電源が途絶したとき、非常用電源に切り替える演習をしていたはずです。結局は、安全神話に自ら騙されて、おざなりに演習していたのでしょう。
 東電の幹部たち(現場の責任者も含めて)は、人知を超える災害だと言っ責任逃れを口にしていますが、以ての外です。
 汚染冷却水は、原子炉再冷却水として使用すべきです。循環装置を作るだけで済みます。ばかばかしいトンネルを掘るなど、愚の骨頂です。

2021.08.25.記

河井事件と検察

 7月7日、呆れかえったことに検察は、広島選挙区における河井元法相の大規模買収事件に関し、買収された側の百人全員の不起訴を決定しました。かつて、数千円の買収にも刑事責任が問われた実例があるにも拘わらず、なんという馬鹿げた決定でしょう。
 検察官と言えどもサラリーマン、上司の顔を見ながら、出世をしたい。忖度などいくらでもする、そんなヤカラばかりになってしまったのでしょうか。少しは骨のある公務員は残っていないのでしょうか。
 貰った側にも、罪の意識が薄いようです。これでは江戸時代に逆戻りです。水戸黄門サマに登場してもらわねばなりません。
 三権分立など絵にかいた餅に過ぎないのでしょう。
 庶民よ、怒れ。選挙に行こう!! 怒りを結果に示そう。それしかありません。

2021.07.08.記

G7リーダーたちのダブル・スタンダード

 G7のリーダーたちが、一斉に新疆ウイグル自治区における中国の行為を、ジェノサイドと非難しました。新疆ウイグル自治区のみならず、チベットや香港での中国の行為は目に余ります。虐殺行為と非難されても当然でしょう。しかし、中国に言わせれば、イスラエルのパレスチナ抑圧に比べればなんてことはないとということではないでしょうか。
 いま、世界で最大のアパルトヘイト実施国はイスラエルです。かつて、南アフリカがアパルトヘイト政策を実施したとき、全世界が同国を非難しました。南アフリカはイギリスの旧植民地でした。アメリカは、余裕をもって南アフリカを非難できました。
 いま、イスラエルを表だって非難する国はありません。ユダヤ資本に支配されるアメリカは、非難の非の一言も発しません。ドイツやフランスには負い目があります。自由に発言できるのは日本だけだというのに、菅さんにはその見識も能力もない。頭の中はオリンピックと秋の選挙のことだけ。
 イスラエルを非難できないG7は、中国からダブル・スタンダードと言われても仕方がありません。発言に迫力が欠けるのも当然ということになりましょう。

2021.06.15.記

ベラルーシの国家的ハイジャック犯罪

 ベラルーシの独裁者ルカシェンコ大統領は、自身の当選が不正だったとする国内的なデモに直面していますが、ロシアの支援と軍隊の力で混乱をともかくも抑え込んでいます。
 ルカシェンコ大統領は、おそらくプーチン大統領に対し、いま私を支援しなければ、明日あなたは私と同じ目に会いますよ、と言ったに違いありません。
 そのベラルーシがとんでもない国家的犯罪を犯しました。5月23日、自国の上空を飛ぶアイルランドの旅客機(ギリシャのアテネからリトアニアへ向かっていました)に対し、爆弾が積まれているという偽の警告で、ミンスク港に強制着陸させ、乗っていた自国に批判的なジャーナリスト、ラマン・プロタセビッチ氏を逮捕しました。
 アメリカやヨーロッパ諸国はこぞって批判していますが、経済制裁を課すのが精一杯の対応です。プーチン大統領は、国家の安全を守るための必然的行為だとルカシェンコ大統領を擁護しています。ミャンマーの軍事政権の背後には中国の習近平、イスラエルのネタニヤフ首相にはアメリカのユダヤ資本、世界は個人的エゴに振り回されています。
 加えての警告として記録しておきます。もし仮に、ベラルーシ国民がルカシェンコ大統領を引きずりおろせたとしても、ウクライナ同様、ロシアが直ちに乗り出してくることを予測しておかねばなりません。
 なんとまあ情けないことに、世界は悪化して行くばかりなのでしょうか。

2021.05.25.記

映画監督クロエ・ジャオさんの快挙と中国の反応

 今年のアカデミー賞受賞作「ノマドランド」は、人間の持つ寂寥感を描いて、見るものに強い印象を残しました。監督のクロエ・ジャオさんは、中国出身の女性という二重三重のハンディキャップを超越しての快挙でした。
 ところが、中国政府はそのニュースを冷たく取り扱っただけではなく、ニュースを知った人たちの個人投稿も、片っ端から削除しているそうです。
 なんという不自由な国なのでしょう。いくら経済的に発展しても、とても住みたい気にはなりませんね。

2021.04.28.記

習近平とスターリン

 ライバルを着実に消してきた習近平国家主席ですが、コロナ・ウイルス発症もみ消し失敗とか、対外強硬政策に対する反発などを受けて、一部の報道では失脚が噂されています。ただし、そのような噂はまだ現実性に乏しいでしょう。習近平も、スターリン同様数多くのミスを犯していますが、自分の存在を脅かす勢力に対し、スターリン同様非常にシャープな感性を持っています。注意深く、その勢力の羽根をもぎ取っていくに違いありません。ゴルバチョフはこの二人とは次元の違う優れた政治家でしたが、危険なライバルに対しまことにナイーブでした。
 習近平の顕著な例が、最近のジャック・マに対する締め付けです。ジャック・マは、アリババ・グループやアント・グループの創業者ですが、彼の言動が中国の若者たちに強い影響力を持つようになってきました。習近平は、彼の独裁に悪影響を及ぼすと考えたのでしょう。
 現在中国は世界第二位の経済大国ですが、これは中国共産党の政策が優れていたからではありません。ケ小平が、統制を緩め、私有財産制を認めたことで、国民が本来持っている活力が蘇生したからにすぎません。ほっておけば、よくも悪くも、その経済力は世界を席巻することでしょう。金銭に対する貪欲さ、モノづくりの巧みさにおいて、中国民族に対抗できるのは、ユダヤ民族だけです。しかし、そのユダヤ民族も、中国に対抗するには人口の差が歴然としています。
 皮肉なことですが、スターリンの存在がソ連の発展を阻害したように、習近平のライバル排除が、中国の進展を阻害しかねないことです。二人の存在が、それぞれの国民にとって、決して幸せなものでは無いことが残念ですね。

2021.03.17.記

イスラエルに学ぶべきしたたかさ

 イスラエル(正確には Dan David Foundation)は、トランプ前大統領の下で、医療科学の権威を守るべく奮闘していたファウチ氏へ、イスラエル賞1万ドルを贈ると発表しました。ファウチ氏は現在バイデン新大統領の医療トップ・アドバイザーでもあります。
 ネタニヤフ首相が熱烈なトランプ支持者だったことは、誰一人知らぬものはありません。昨年の大統領選挙では、アメリカのユダヤ人社会に、公然とトランプ支持を訴えてきました。トランプ大統領黙認の下、西岸地区の入植地を拡大してきました。ネタニヤフ首相としては、ここで態度を急変させるもみっともないと思っているはずです。そこを汲んだのがイスラエル賞決定機関です。トランプ大統領に懸命に抵抗してきたファウチ氏へ賞を贈り、「バイデン大統領こんにちわ、トランプさんさようなら」という明確なメッセージを送りました。決して褒めているわけではありませんが、この融通無碍な切り替えの早さに驚嘆、見事と言うほかはありません。
 あれほどトランプ前大統領の庇護を受けておきながら、ネタニヤフ首相は、ことコロナ・ウイルス対策では、トランプ前大統領を反面教師とし、ファイザー社に多額の金を払ってワクチンを確保しました。同じトランプ派でも、ブラジルのボルソナーロ大統領とは大違いです。
 このしたたかさ、賢さが、ユダヤ民族の現在を象徴しているのでしょう。日本も国際社会で生きて行くに当たり、このしたたかさと賢さを学ぶべきではないでしょうか。

2021.02.17.記

アメリカどん尻byトランプ

 2021年1月6日は、アメリカ政治の歴史上、最悪の記録を残す日となりました。証拠もなしに、不正選挙を主張するトランプ大統領は、ホワイトハウスの前に集まった支持者たちに向かって、議会に向かって抗議行進しようと扇動しました。議会では、ペンス副大統領の下、バイデン氏の当選を承認する運びとなっていました。
 調子に乗った群衆は、議会のなかを荒らしまわり、警察官1名を含む5名が死亡しました。
 かねてから、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」は、政治的に「アメリカ・セカンド」に導くと書いてきましたが、6日の暴動は、アメリカを民主主義国の「アメリカ・どん尻」へと貶めてしまいました。せめてもの救いは、彼の時代がともかくも終わるという事でしょうか。これが民主主義のいいところです。
 かつて、この国は日本に民主主義を教えた国でした。それだけに、何とも悲しいニュースです。

2021.01.07.記

残っていたアメリカの良識

 アメリカの最高裁は、12月11日、テキサス州の司法長官が起こした訴訟を、申請資格なしとして却下しました。トランプ支持のテキサス州司法長官は、4州、ジョージア、ミシガン、ペンシルバニア、ウイスコンシン、の選挙を無効と最高裁に訴えました。根拠となる証拠は噂程度の貧弱なものですが、最高裁まで行けば何とかなるという期待込みの訴訟です。なにせ最高裁判事9名のうち、保守派が6名、その内3名がトランプ大統領が推薦した人々です。もしかしたらという懸念がありました。
 最高裁はテキサス州の訴えを退けました。彼等は、保守派とかリベラルとか言う前に、法律家であることを示しました。却下理由は簡単です。アメリカ人がよく言う、It's not your business. につきます。
 アメリカに、まだ良識が残っていたことに、少し安堵しました。

2020.12.13.記

検察、前安倍首相秘書取り調べ

 日本の政治は、安っぽくって分かりやすい。窮地に陥った安倍首相が、持病?を再発して退任し、一番彼に近かった無派閥の菅さんが、自民党総裁に選ばれました。安倍さんは、あとは頼むと菅さんを推薦し、甘利さんは、無派閥の彼ならコントロールしやすいと考え、麻生さんは自身が落ち目なので恩を売れそうな相手を選び、その結果ダントツで菅さんが自民党医総裁、自動的に首相となりました。
 菅さんの考えること、総裁・首相となったからには、安倍さんの影響力を削ぎたいのが本音。だが来年の総裁選挙を考えると細田派(安倍派)の協力は不可欠。高検も腕を振るいたいだろうからと、手綱をちょっと緩める。そこで検察はホテルに「桜を見る会前夜祭」の領収書を提出させる。安倍さんが健在ならば出て来ないはずの領収書が出てくる。秘書は、不足分を払ったと告白する…というのがこれまでの経緯。
 これからの筋書き…検察は秘書を立件し、安倍さんにまで手を伸ばそうとする。安倍さんは菅さんに泣きつく。菅さんにとっては恩を売るチャンス到来。検察のトップを呼びつけ、「分かっているだろうな」と脅しつける。検察トップは、秘書までで止めておけ、ということだなと忖度し、安倍さんの立件は見送る。
 全く陳腐な田舎芝居ですね。今日の西日本新聞夕刊に秀逸な川柳が載っていました。
 総長が マージャンしなきゃ 良かったに (牧野栄治、長崎)

2020.12.05.記

トランプ大統領の負けっぷりの悪さ
…中国の無策…

 トランプ大統領は、明らかに選挙に敗北したにも関わらず、いまだに投票が盗またと証拠なしに主張し、激戦州で訴訟を起こしています。それほど自国の選挙制度が信頼できないのであれば、発展途上国例えばアフガニスタンから、選挙監視団を送ってもらえばいいでしょう。「先進国のような顔をしていますが、アメリカはこのように選挙後進国なのです」と言って監視団の派遣を要請すればいいのです。
 選挙を盗もうとしているのが誰か、自分自身ではないか…とはいっても、そんなことに気づくような人ではありませんね。
 訴訟騒ぎよりも、コロナ・ウイルス対策に熱を上げてもらいたいものです。もし、感染者や死者の数を中国以下に抑えていたら、バイデンさんに負けることなどなかったはずです。まったく〇〇につける薬はありませんね。
 それにしても、中国のリーダーたちの無策ぶりにも呆れかえります。トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」政策は、味方まで敵に回す拙劣なものでした。世界的に不人気なアメリカの政策を、中国は全く利用しませんでした。世界のリーダーとなる絶好の機会だったのですが、近視眼的リーダー習近平主席は、みすみすチャンスを逃がしてしまいました。南シナ海での無用な拡張政策、インドやブータンとの国境紛争など、力を誇示するだけでは世界から警戒されるだけです。香港や新彊などの反政府運動を、力任せに押さえつけるのでは、人権に敏感な西欧諸国の反発を招くだけです。もし中国が各国との融和政策をとっていたら、たとえコロナ・ウイルスの最初の発疹国であっても、アメリカを尻目に、経済面でも環境対策でもリーダーとして世界が認めたことでしょう。
 バイデンさんはアメリカを、常識的な国へと舵を切りかえします。世界は再びアメリカを自由主義国のリーダーとして認めることになります。習近平さんはミスりましたね。

2020.11.20..記

核禁止条約成立へ

 日本人として、10月26日はまことに恥ずかしい日となりました。核禁止条約の批准国が50ヶ国に達し、来年1月に発効する運びとなったのです。アメリカの核の傘に守られている日本は、アメリカに気兼ねして、この条約に賛同していません。世界唯一の被爆国として、イの一番に参加すべき国が、なんというみっともない姿をさらけ出していることでしょう。
 アメリカの核の傘の下に守られていることは否定しません。アメリカのバックアップがなければ、尖閣諸島は中国が実効支配することになっているかもしれません。核禁止条約に賛同すれば、アメリカのご機嫌を損ねるでしょう。それでもなお、この条約には参加しなければなりません。被爆国としての義務です。安倍さんも菅さんも、アメリカを説得する気などさらさらありません。言い訳として、核保有国と非保有国との橋渡しをするのだとか言っていますが、どんな活動をしたのか、これからするつもりなのか、具体的なことは一切明らかにしていません。事実、何もしていません。
 この条約だけは被爆国として参加すると、意を定めて説得すれば、アメリカも、対中、対北朝鮮との力関係を考慮し、了解を得られないまでも黙認することになりましょう。要するに、日本のやる気のなさが、最大の問題なのです。
 今日は、日本人であることを恥ずかしく思う日となりました。

2020.10.26.記

福島原発汚染水は冷却水として再利用せよ

 10月17日のロイターは、日本政府と東京電力が、崩壊した原発デブリの冷却水を海上に放出すると報道しました。魚介類には影響を及ぼすほどの汚染ではなく、人体への影響もないので、まず肯定的な世論作りをしたいとのこと。内情は、漁協に金を配って反対意見を抑え込もうという算段なのでしょう。
 それほど安全なら、なぜ、デブリの冷却水として再利用しないのでしょうか。冷却水として使用した後、再びタンクに戻す循環設備を作れば、海上放出などしないで済みます。もし、それができないほど危険な汚染水だとすれば、海に放出して言い筈がありません。

2020.10.17.記

菅政権、学術会議6名否認問題

 推薦された日本学術会議のメンバーのうち、6名が登録から外されました。いずれも、安倍政権時代、政府の政策を批判した方々です。安倍さんのあと、政権を握ることになった菅さん、やることがみみっちい。反対意見を聞く耳を持たないでリーダーが務まるのかどうか。安倍さんは、都合が悪くなると、見え透いた嘘を言う幼児的な所がありましたが、菅さんはもっと陰性で、しらっと俺の知ったことかと、白を切ります。
 携帯料金を下げるとか、学術会議を含めた行政改革をやりますとか、人気取りだけは忘れていない。その一方で、モリ・カケ・サクラには蓋をしたまま。
 若者たちよ、携帯料金などでごまかされるな、老人たちよ、行政改革の言葉に騙されるな。行革は優先順位から言って、学術会議より、国会議員の削減し、不要な公務員のリストラが先の筈。新政権は、やることが陰湿で策謀に満ち満ちています。低選挙率が自民党をのさばらせます。国民の皆さん、心して選挙に行きましょう。

2020.10.10.記

トランプ大統領コロナ・ウイルス感染

 このニュースには、思わず笑ってしまいました。強い振りをしてマスクをしないのですから、感染しても当然です。メラニア夫人も、息子も感染した由。バイデン氏優位が伝えられる最中、本人は再選活動を再開したくてウズウズしていることでしょう。トランプさんは自分が被害者だと思っているようです。本人が被害者だと思っている間は、自分が加害者であることに気づかないものですね。
 ところで、プーチン大統領も習近平主席も、バイデン氏よりトランプ大統領の方が組みしやすいと考えているのではないでしょうか。彼が「アメリカ・ファースト」政策を繰り広げた結果、アメリカは確実に力を失いました。貿易や環境問題では、中国にリダーシップを握られてしまっています。国内は分裂状態です。貧困層対富裕層、有色人種対白人、とくに白人至上主義者の行動は目に余ります。もしトランプさんが負けたら、内戦が起こりかねない状況です。なにせ銃社会ですから、簡単に武装勢力が生まれます。
 ロシアや中国にとって、アメリカを弱くするきわめて都合の良い大統領と言えるでしょう。表面的には、トランプさんを持て余しているように見えますが、内心、彼の政権が続くことを願っているのではないでしょうか。

2020.10.10.記

イスラエルと国交開始するUAEとバーレーン

 8月15日、アラブ首長国連邦UAEがイスラエルと国交を開始するニュースには驚かされましたが、9月13日には、バーレーンが同様に国交を開くことになりました。
 両国とも、イランの脅威に脅えてのことですが、同時に、アラブの大義がその意味を失いつつあることを意味していましょう。両国とも、ヨルダン西岸地区の入植地凍結を、国交開始の条件としていますが、トランプ大統領もネタニヤフ首相も、全く意に介していません。
 再選しか頭にないトランプ大統領にとって、キリスト教保守派の支持固めさえできれば(ついでにユダヤ・シオニストのお金)いいのだし、ネタニヤフ首相にしてみれば、自己のスキャンダル隠しには願ってもない成果でしょう。イスラエルのなかには、パレスチナの人々に対して、後ろめたい思いをしている人もいないわけではありません。それでも、自国の発展を願わない国民などどこにもいない以上、ネタニヤフのような政治家は、汚いことをやってくれる便利な存在なのです。
 この一連の動きは、トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナーの底智恵によるものです。彼はビジネスで政治を操ろうとしています。トランプ大統領やネタニヤフ首相同様、彼にはパレスチナ人への思いやりなどかけらもありません。パレスチナ問題は、票にも金にもならないのです。
 かつて、南アフリカがアパルトヘイトで非難されました。イスラエルのアパルトヘイトは、南アフリカのそれとは比較にならないほど苛烈なものです。アラブの大義、世界の良心の希薄化を悲しむばかりです。

2020.09.13.記

安倍首相退陣

 最近とみに覇気がないと思っていましたが、突然退陣を表明しました。モリ・カケ・サクラその他もろもろのスキャンダルに加え、コロナ・ウイルス対策での無力ぶりが露見しては、早晩退陣せざるを得なかったことでしょう。彼の手で憲法改正がなされなかったことを祝福しましょう。退陣後、彼を訴追するほどの、勇気ある法曹界なら言うことなしですが、まずそのようなことは起こらないでしょう。この点だけはお隣の韓国がうらやましいですね。

2020.08.28.記

李登輝さんの死

 台湾国家主席を勤めた李登輝さんが亡くなりました。中国内戦の結果、蒋介石が台湾に逃げ込みましたが、それ以降、外省人が台湾の政治権力を握り、内省人を抑圧してきました。蒋介石の子、蒋経国政権の副総統として、李登輝さんは外省人と内省人の融和と、民主化を図ってきました。1988年、蒋経国死亡後、彼は初めて選挙で選ばれた総統となります。蒋介石が政権を握って以来、内省人が初めて台湾のリーダーとなったのです。
 蒋介石、蒋経国は、建前上「反攻大陸」の旗印を引っ込めるわけにはいきませんでしたが、初の民選総統となった李登輝さんは、国共内戦の終了を一方的に宣言し、大陸とは別の、中華民国があると主張しました。その一方で、経済復興を推進し、世界でも有数の外貨保有国に育て上げました。
 97歳の、波乱万丈の人生でしたが、終生理想を失わなかった立派な政治家でした。ご冥福を祈ります。

2020.08.01.記

トルコ、アヤソフィア寺院のモスク化

 近代トルコ建国の父、アタチュルクの意思を踏みにじって、エルドアン大統領は、博物館として維持されてきたアヤソフィア寺院をモスク化しました。イスラム教の宗教行事の際には、キリスト教のモザイクをカーテンで隠すとのこと。軍事クーデターを切り抜けてからのエルドアン大統領は、すっかり権力志向の化け物になりました。宗教を政治利用する点では、トランプ、プーチン以上のえげつなさです。
 トルコがEU加盟を切望していたころ、彼の行動には自制がありましたが、いまはやりたい放題です。EUサイドから見れば、加盟させなくてよかったと思うべきか、加盟させておいて少しでもブレーキを掛けさせるべきだったのか、判断つけがたいところです。
 いずれにせよ、東西融和の象徴だったアヤソフィア寺院が、単にイスラム化するのは悲しいことです。

2020.07.12.記

中国・国家安全法にみるアメリカの無力

 2020年6月30日、中国共産党政府は国家安全法を成立させ、香港の「一国二制度」の息を止めました。イギリスとの返還協定を遵守していても、「一国二制度」の約束は、50年後の2047年には期限が来ます。それからであれば、自分の思い通りにしても、誰からも文句をつけられることはありません。あと27年など、歴史のスパンから見れば、瞬時といっても差し支えないほどの短さです。習近平は、それを待てませんでした。
 昨年、起訴した香港人を中国本土で裁くことが出来るという法律を通そうとしましたが、激しいデモにあって法律そのものを引っ込めました。このとき、共産党政府は軍や公安を香港のすぐそばまで進駐させましたが、世界世論を慮って自重しました。香港に軍隊を入れてもいいという法律がなかったからです。
 今回の国家安全法によって、徹底的にデモを取り締まることが出来ます。「一国二制度」は死んだと言っていいでしょう。1997年までの宗主国イギリスには、中国の動きを止める大義名分がありますが、実力的に制止などできようはずがありません。頼むはアメリカのみですが、大統領がトランプさんになってからは世界的に孤立し、中国からすっかりなめられてしまいました。中国の今回の法律成立は、アメリカに何もできないと判断した上での行動です。
 再選しか念頭にないトランプさんは、「アメリカ第一主義」を振りかざし、味方も敵に回してしまいました。まさに「〇〇にはつける薬がない」という諺どおりです。アメリカ第一主義も、さじ加減次第では経済発展につながるはずですが、理想を持たないトランプさんでは、他国から足元を見透かされてしまうだけの結果しか生まれていません。以前、この欄に書いたとおり、自国を第二位の地位におとしめることになりそうです。
 結局、金持ちの香港人は欧米か台湾に亡命し、貧乏な人たちだけが諦めて共産政権下の不自由な暮らしに耐えることになるのでしょう。
 今回の一連の動きは、アメリカの実力がいかに衰えたかを世界に露呈してしまいました。

2020.07.01.記

こんな〇〇が次の選挙でも通るのだろうな

 西日本新聞掲載の佐藤正明氏の風刺画が秀逸でしたのでここに掲載します。モリカケサクラは言うに及ばず、新型コロナ・ウイルス対応ミスはまだしも、定年延長までして検察トップを意のままにしようとしたら賭け麻雀で失敗、1億5千万円という大金をつぎ込んで当選させた河井夫妻の逮捕など…失敗続きの安倍首相。法務大臣ともあろう者が、選挙で買収行為をやっていたなんて前代未聞。指名責任を問われても、佐藤さんの風刺画の通りで、開いた口がふさがりません。それでも首相の座は安泰という日本政治のヤミの深さに絶望してしまいそうです。
 しているふりが上手な首相も、いざコロナ・ウイルスという大事な局面になると、なにも出来ない無能力者だと実体がバレてしまいました。東電福島原発事故のとき、菅首相を無能力と言って引きずり降ろしましたが、もしこれが安倍さんだったら、もっと悲惨な結末になっていたのではないかと、背筋の寒くなる思いです。
 菅さんがあのとき「原発廃止」と言ったとたん、政官財のアイアン・トライアングルが、口をそろえて彼を非難しました。
 安倍さんは、政官財にとってまことに都合のいい存在、こんな〇〇が次の選挙でも通ってくるのかと思うと、日本の前途も暗澹たるものと言わざるを得ません。

2020.06.20.記

黒川東京高検検事長シロ説

 安倍首相が、無理やり定年延長の決定までして次期検事総長にしようとしていた黒川東京高検検事長が、賭け麻雀をジャーナリストたちとしていたことを週刊誌に報じられて辞職しました。とんだお笑い種ですが、以下、彼がシロであり得るという説を述べてみます。
1.彼は定年を半年延長してもらい、総長に就任した後、首相の意向を裏切り、モリカケサクラの再審査を始めるつもりだった。
2.首相が自らの行動の辻褄を合わせるため、定年延長法案を提出、これが大不評。
3.このままで行くと、もし自分が総長になっても佐川の二の舞となる。検察庁の誰も、総長の命令を聞かないようになる…と、彼は考えた。
4.首相は、法案は法務省からの提案だと、逃げ道を作り始めた。彼は、省と自分自身の潔白を証明したいが、いい方法がない。
5.そこで、記者たちの誘いにわざと乗り、賭け麻雀をして、それを自ら週刊文春にリークした。
6.身を賭して法案不成立を図った。辞職して野に下るが、法案が再提出されないよう頑張る。これからの活躍を見守ってほしい…と、彼は内々抱負を述べた。
てなことは、ありませんかね。性善説を信じる甘チャンとしては、こうあってほしいと思っているのですが…。

2020.05.21.記

トランプ大統領のミス・ステップ

 いまやコロナ・ウイルス被害最大の国となったアメリカ、もとはと言えば、トランプさんが中国の警告を軽く扱ったことによります。かてて加えて、一度は習近平首席はよくやっているとツィートしています。
 これまでトランプさんは、何かミスを犯して非難されると、他の何かを口汚く非難して、焦点ぼかしに成功してきました。今回の第一の犠牲者はWHOです。コロナ・ウイルスの取り扱いが中国寄りだとして、拠出金の支払いをストップしました。たしかに、WHOにも問題はありましょう。しかし、まず第一にやるべきことは、このパンデミックを終息させることです。問題が終息した後、機構改革に取り組むというのなら大人の対応と評価しますが、非難の矛先をかわすための、11月の再選目的のためだけのアクションだということはミエミエです。
 さらに性懲りもなく、コロナ・ウイルス中国陰謀説を、臆面もなく発言し始めました。武漢市の研究施設から、意図的に流出した人口ウイルスだと言う陰謀説です。例によって、裏付け証拠は一切ナシです。
 おりしも、ノーベル賞受賞者本庶教授の名前で、「新型ウイルスは中国で人工的に作られた」という偽情報が海外で拡散しました。京大も本庶教授も、これが偽情報であると表明し、各国の専門組織も「偽情報」という判定を下しています。
 もちろん、このコロナ・ウイルスの発生源は中国であり、責任が一番重いことは事実です。世界中が対策に追われている隙を見て、南シナ海の資源捜査に乗り出すなど、中国の行動は目に余ります。しかし、陰謀説は99%あり得ないでしょう。
 トランプさんが、再選したいばっかりに、中国陰謀説に固執したら、重大な判断ミスとなるのではないでしょうか。こういう言い方もできるかもしれません。どこかの国に、少し気ちがいじみた人物がいて、その人をリーダーとして当選させるようなことが起きれば、その国の人々の「頭脳健康度」が試されているのだと。
 日本もそう言われないようにしたいものですネ。

2020.05.05.記

不要不急の法改正

 西日本新聞5月2日の社説は、『検察庁法改正案 これこそが「不要不急」だ』というものです。国会の最優先課題は、新型コロナウイルス感染拡大の封じ込めであるべきなのに、衆議院で審議入りした検察庁法改正案問題を取り上げています。現行規定は総長のみ65歳定年で、ほか検察官は63歳定年とあるのを、段階的に65歳まで引き上げるという法案です。
 政府は、1月31日、黒川東京高検検事長の停年を半年間延長するという閣議決定をしていますが、これが現行法違反であることは明々白々です。安倍首相寄りの黒川氏を総長にしたいばっかりに強行した閣議決定ですが、今回の審議入りは、その誤魔化しをウヤムヤにしてしまおうという薄汚い作であることはミエミエです。社説どおり、不要不急です。
 コロナウイルス対策で、この際とばかり、緊急事態に対処するため、憲法改正が必要だという陰謀も出てきています。2014年、集団自衛権についても、勝手に憲法解釈を変更していますが、安倍首相も違憲だと自身理解しているのでしょう。この違憲状態を早く消滅させたいのが本心です。この機に乗じてというのが、まことに汚いやり口です。
 まさに不要不急なことをやらせてはなりません。マスコミの皆さん、政権の脅しに怯むようでは困ります。この西日本新聞社説には力づけられます。国民の心情をぜひ報道してください。

2020.05.02.記

マスク二枚の珍

 コロナ・ウイルス騒ぎで品不足となったマスクを、政府が配るそうです。まことに思いやりのある政府です。台湾や韓国の迅速な対応に比べ、なんというお粗末な政策であることか、開いた口がふさがりません。
 オリンピックを中止にさせないため、そして、習近平国家主席来日問題の円満解決のため、感染者や死者数の発表を操作し、伝染病を拡大させたのは誰か、まったく責任感のない政治家どもです。
 責任逃れに躍起な阿部さんの一方で、トランプ大統領の反応も褒められたものではありません。彼は、1月末、アメリカにはインフルエンザはあるがコロナ・ウイルスなど問題外だと言っておきながら、いまとなって中国が警告を怠ったと非難し始めました。手法は違え、やってることは似たようなものです。

2020.04.03.記

赤木夫人の告発に対する安倍、麻生両氏の反応

 森友学園の土地売却に関する公文書偽造問題で、2018年3月7日、赤木財務局職員が自殺しましたが、この度三回忌を済ませたのを契機に、夫人が上司の佐川氏と国を相手に訴訟を起こしました。
 これに対し、安倍首相の反応は、「大変痛ましい出来事で胸が痛む。改竄は二度とあってはならない」というまるで人ごとのような、冷たいものでした。麻生副総理は、捜査は終結しているので再度行うことは無いとケンモホロロです。
 これほど明々白々な事件でありながら、当の関係者たちは、ぬけぬけとシラを切り通してきました。文書改竄が違法なことはわかっていながら、公務員の誰一人裁かれない日本に、三権分立など存在しません。権力者の思惑を忖度し、その上手さ加減で出世するという…、なんという情けない国になったことでしょう。
 魚は頭から腐ると言いますが、日本の政治はまさにそのことわざ通りですね。

2020.03。18.記

コロナ・ウイルス中国で発生

 昨年末、武漢市で新たな感染病が発生しました。机以外の四つ足は食べるという中国人の食習慣が、新種の病原菌を、動物から人間へと拡散させたようです。最初に警告を発した医師を処罰するなど、当初の取り組みのミスもあって予想以上に拡散しそうです。
 西日本新聞(2020.2.1.)、佐藤正明さんの風刺画が面白いのでここに掲載します。
 さて、安倍さんはどうすることでしょう。病気が拡散してオリンピックが中止になっても困るし、中国からの旅行者をストップさせたくとも、習近平国家主席の来日予定を控えて、こちらからは要請しにくいし、得意の言葉遊びで逃げを打つには問題が大きすぎます。
 感染者数を少なく見せるため、ロクロク検査をしていないという、まことしやかの噂も飛び交っていますが、あながち否定できなような気もします。
  私事ですが、2月5日からイスラエルとヨルダンへ行ってきます。旅行社によると、イスラエルは、一年以内に中国へ旅行した人の入国を禁止すると言ってきたとのこと。この反応が世界の常識だと思いますが、果たして安倍さんの判断や如何に?
 国民第一に考えれば、即刻入国禁止しかないと思いますがね。

2020.02.01.記

イランのウクライナ旅客機誤射

 2020年も、暗いニュースから始まりました。
 1月9日、イラン軍がウクライナの旅客機を、アメリカが発射したミサイルと誤認して射ち落しました。乗客、乗務員176名、全員死亡という大惨事となりました。トランプ大統領は、この失策を、自己の再選の追い風として利用する構えです。
 しかし、イランがミスを認めたことで、事件は解決の方向に向かうのではないでしょうか。イランに必要なことは、まず誠意をもって謝罪すること、それ以外にありません。その上で、賠償金を遺族支払うことになりましょう。東ウクライナによるインドネシア旅客機誤射の責任は誰もとっていません。ミサイルを供給したプーチン大統領は、ウクライナ国軍の誤射の可能性ありと強弁しています。原因は異なりますが、ボーイングのプログラム・ミスによる2機の旅客機事故も、まだ解決していません。
 類似性から言えば、1988年、アメリカ軍によるイラン旅客機撃墜事故を思い出させます。この事件は、アメリカ海軍の巡洋艦がイランの小型砲艦を追跡中に起きました。このときアメリカは遺族に賠償金を支払っています。
 今回の事件は、2020年1月3日アメリカがドローンによる攻撃でイランのスレイマニ司令官を殺したところから始まります。そのとき、イラクの将軍も死んでいます。イランは報復として、1月8日早朝イラクのアメリカ軍基地を攻撃しました。注意深く、アメリカ軍兵士に損害が出ないように…。その5時間後、テヘランの空港をウクライナ旅客機が飛び立ちました。イランの空港は、アメリカの報復を予測して厳戒中でした。事件は、起こるべくして起きたようにさえ思えます。
 そもそもこの緊張関係は、2015年に結ばれた核合意を、2018年、トランプ大統領が離脱してからということを忘れてはなりません。イギリス、フランス、ドイツの各首脳が懸命に説得したにも拘わらず、トランプ大統領は暴挙に踏み切りました。そして、2020年1月3日のスレイマニ司令官の殺害です。
 イランのミスは、許されるものではありませんが、一連の事件の引き金を、誰が先に引いたかは明確にしておく必要がありましょう。
 アメリカは、他国を、ろくろく証拠を示さずにテロ国家と指定し、経済制裁他いわゆるサンクションを課しています。同調しない自由主義国にも、貿易不利益の恐れが生じます。しかし、今回のスレイマニ将軍の暗殺は、アメリカ自らがテロ国家であることを露呈しました。

2020.01.13.記

孤立するアメリカとイスラエル

 トランプ政権は、11月18日、ヨルダン川西岸地区へのイスラエル入植活動を、今後、国際法違反とはしないと宣言しました。2020年大統領再選しか頭にないトランプ大統領は、ユダヤの金と支持を得るためなら、何でもやってのけると言ったも同然です。トランプ・エゴイズムです。
 イスラエルは、11月12日、ガザ地区を空爆し、パレスチナの軍事指導者バハ・アブアタを殺害しました。パレスチナは、報復としてロケット弾(およそ200発)をイスラエル側へ発射しました。イスラエルに言わせると、アブアタの殺害行為はテロではないそうです。一応両者は、エジプトの仲介で停戦していますが、緊張は鎮まる気配を見せません。
 不正行為訴追におびえるネタニヤフ首相は、緊張感を高めることで、危機に対処できるのは自分だけだと示したいのです。マッチ・ポンプ的政治手法です。
 トランプ大統領の、入植活動容認発言は、ネタニヤフ首相支援を目的としていますが、脛に傷持つ両者のもたれあいのようなものです。
 11月20日の国連安保理は、アメリカを除く全員が、トランプ政権の宣言を非難しました。アメリカとイスラエルは孤立しています。孤立する二者を支えているのは、アメリカの経済力だけです。加えて、共産党独裁の中国では、世界のリーダーたり得ません。ロシアは目先の利を追いかけているだけで、世界の正義など、まったく関心がありません。このいびつな両国が、アメリカの無法を許しているとも言えます。
 それにしても、このような○○な大統領に、少なくとも30%以上の強烈な支持者がいるアメリカという国に、いささか絶望しかけています。

2019.11.22.記

クルド民族を裏切ったトランプ大統領

 10月16日、アメリカ大統領トランプは、トルコのエルドアン大統領との電話会談後、シリア北部のアメリカ軍の撤退を発表しました。世界最大の国家なき民族と言われるクルド人たちは、国家樹立を切願しています。彼らの拠点は、シリア北部、イラク、トルコですが、特にシリア北部では、IS掃討作戦でアメリカ軍に協力し、独立の足がかりを得ようと多大の努力と犠牲を払ってきました。掃討作戦と言っても、実際の地上戦はクルド民族が担ってきました。IS勢力がほぼ掃討された段階に来て、トランプ大統領の無思慮な発言が、クルド民族の希望を打ち砕きました。
 国内の不満分子を剛腕で抑え込むエルドアン大統領としては、国内外のクルド民族を抑え込む絶好のチャンスがタナボタ的に飛び込んできました。シリア北部に広大なノーマンズランドを設定し、クルド民族迫害に拍車を掛け始めました。トランプ大統領の宣言はトルコの軍事活動に青信号を出したのと同じことです。
 追い詰められたクルド民族は、やむを得ずシリアのアサド大統領に助けを求めました。トランプ大統領の決断は、ロシアのプーチン大統領と、アサド大統領に漁夫の利を得させることとなりました。現在、ノーマンズランドの監視活動は、トルコとロシアが合同で行っています。
 トランプ大統領の頭の中は、2020年の再選しかありません。中東からのアメリカ軍の引き上げは、彼の公約の一つですが、再選のためであれば、己の行動がどのような結果を招こうと知ったことかと言う態度です。
 中東各国は、クルド民族を裏切ったアメリカを信頼できるかどうかとロシアと中国へ色目を使い始めました。
 中国の支持を確認した北朝鮮は、トランプ大統領の足元を見透かし、ミサイル・テストを繰り返しています。トランプ大統領は、原爆のテストが再開されないことを、自分の功績のように喧伝していますが、金正恩は中国の顔色を見ているに過ぎません。中国は、農産物の輸入問題でトランプ大統領を揺さぶり、最終的には貿易戦争に勝利を収めることになりましょう。
 トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」は、「アメリカ・アローン」という結果を招き、世界的な地位を「アメリカ・セカンド」へと導くことになりましょう。アメリカの同盟国は、日本も含めて、トランプ大統領からいつ裏切られるか用心するに越したことはありません。

2019.11.01.記

ジョンソン首相就任に感じる不吉な予感

 メイ首相に代わって、ポピュリストのボリス・ジョンソンがイギリスの首相となりました。組閣人事は、EU離脱派の議員たちで占められました。9月26日の、彼の最初の議会演説は、もしEUサイドが再交渉に応じなければ、10月31日の協定なしの離脱もあり得るという強硬なものでした。加えて、離脱に際しての390億ポンド(490億ドル)支払いの保留をも示唆しています。
 次なる離脱を避けたいEUとしては、離脱条件を厳しくせざるを得ません。さらに、北アイルランドの問題があります。EU加盟国アイルランドと、EUから離脱する北アイルランドとの間には、目に見える国境が必要となります。北アイルランドにおける血を血で洗うような抗争は、最近になってようやく落ち着いたばかりです。ここで国境を築けば、抗争の再発は必至となりましょう。メイ首相が最も苦労したのがこの問題でした。それを避けるための一方策としては、北アイルランドの独立ということもあり得ます。もともと北アイルランドは残留派が多数を占めていたのですから。しかしそれを許せば、次にスコットランド独立を避けることができなくなります。イギリスは四つの国の連邦ですから、最終的にイギリスを名乗るのはイングランドとウェールズということになりかねません。
 ジョンソンの登場は、太平洋戦争直前の日本によく似ています。東条英機が首相に就任したのが、1941年10月18日、キングメーカーの西園寺公の意向は、毒を持って毒を制するというものでした。主戦派の東条に世界の現状の厳しさを味あわさせれば、他の主戦派を抑えてくれるかもしれないという、淡い希望を抱いていたのです。しかし、独善的な東条と軍部は、同年12月8日、真珠湾攻撃に踏み切りました。あとの結果は、歴史が示す通りです。
 ジョンソンは、人気取りのため、EU離脱を煽りに煽りました。そしていま、首相に就任し、協定なしの離脱も辞さないと宣言しました。もしそうなれば、イギリスは海図なき航路に乗り出すことになります。イギリスに進出している外国企業が、拠点をEUサイドへ移すことは目に見えています。金融市場の中心としてのロンドンは、その価値を失うことになりましょう。産業革命以降、世界に冠たる大英帝国が、無残にも二流国となってしまうことになりましょう。
 不吉な予感が、杞憂であればいいのですが…。

2019.07.27.記

二つの不要な行動
…イギリスとカナダの無思慮…

 9月27日のロイター報道によると、イギリスは自国のタンカーを守るべく海軍をホルムズ海峡に派遣するとのことです。これは、9月25日、イランがイギリスのタンカーを拘束したことへの対抗措置です。しかし、このイランの行動は、その2週間前の、ジブラルタル海峡における、イギリスによるイラン国籍のタンカー拿捕に端を発しています。拿捕理由は、タンカーの行く先がシリアではないか、シリアに対する経済制裁に違反しているのではないか、というものです。シリアに対する支援が、国連の決議に違反するのであれば、まず最初に対象とされるべきはロシアでしょう。イギリスのいらざる行動が、ホルムズ海峡の緊張を一段と高めてしまいました。
 カナダの要らざる行動は、2018年12月5日、華為技術(ファウェイ)副社長を逮捕したことです。中国は、対抗措置として、二人のカナダ人を拘束し、別に麻薬容疑で逮捕していた容疑者には死刑を宣告しました。一部の商品には輸入禁止措置を課しました。中国の行動も褒められたものではありませんが、そもそも常識に欠ける国だということは、カナダもわかっていたはずです。
 もしカナダが副社長をアメリカへ引き渡したら、さらなる報復措置が取られることでしょう。カナダの逮捕理由は、華為がアメリカのイランに課している制裁に違反したからというものです。カナダの法律に違反したわけではありません。まして、アメリカの設定したイランへの制裁は、国連で決議されたものではありません。カナダは、いらざる問題に顔を突っ込みました。そして引っ込みがつかなくなっています。
 そして、このイギリスとカナダの抱える難題は、すべてアメリカが原因しています。
 トランプ大統領は、再選に向けてユダヤの資金を必要としています。その支持を取り付けるためには、イスラエルの行動を一から十まで容認しなければなりません。オバマ大統領の下、2015年に結ばれたイランとの核開発抑制の協定には、イスラエルが猛反発しました。イランの脅威を口高に言い募り、自国の核が他国に与える脅威には口を閉ざして…。トランプ大統領は、自らは白人至上主義者ではないと言っていますが、心の奥では、黒人の彼より白人の俺の方が仕事ができると思っています。ユダヤの資金と、彼の根拠のない自己過信が、イラン核協定からの単独離脱へとつながり、いらざる緊張を生み出しました。
イギリスとカナダは、そのとばっちりを受けたようなものですが、二国とも、もう少し慎重であるべきでした。

2019.07.27.記

今頃になって!!
…ドゥテルテ大統領慌てる…

 フィリッピン、ドゥテルテ大統領が、今頃になってアメリカに対し、南シナ海への第7艦隊の派遣を要請しました。彼は2016年6月に、アキノ氏の跡を継いでフィリッピンの大統領となりましたが、当初から中国寄りの姿勢を見せていました。アキノ大統領は、南シナ海における中国の進出を懸念し、2013年、国連海洋法条約に基づきハーグの仲裁裁判所へ、違法な中国の主張を退けるよう提訴しました。2016年12月、仲裁裁判所は、中国の言う歴史的な背景の主張には根拠がないと判断を下しました。このとき、フィリッピンの大統領はアキノ氏からドゥテルテ氏に代わっていました。ドゥテルテ大統領は、愚かにもこの判決を全く利用しようとしませんでした。中国は最大の貿易顧客であり、彼としては中国寄りの姿勢を示すことで、自国を中国がよろしく取り扱ってくれると期待したのでしょう。
 彼は就任当初から、アメリカ、オバマ大統領への反感を示し、共同軍事演習の中止とか、武器を買うなら中国やロシアが売ってくれると広言しました。アメリカ嫌いのきっかけは、麻薬撲滅に関する人権問題に、オバマ大統領が懸念を示したことから起きました。彼の単純な頭には、強国の力のバランスを利用するという考えが浮かばなかったのでしょう。
 アメリカの同盟国であるはずの彼の中途半端な態度は、中国の厚顔ぶりに拍車をかける結果を招きました。いまや、中国は南シナ海を実効支配しています。フィリッピンの思惑など歯牙にもかけません。
 今頃になって、まさに今頃になって、ドゥテルテ大統領はアメリカに対し、第7艦隊の派遣を懇願する羽目となりました。おそらくアメリカは、フィリッピンの要請如何にかかわらず、貿易戦争を有利に運ぶ点も考慮し、航海の自由を守る立場を主張し、従来通りの航行を続けることでしょう。
 なぜ、ハーグの仲裁裁判所の裁定を活用しなかったのか、単細胞の指導者の限界が明らかとなりました。アメリカも似たようなものです。両者に共通しているのは、権力者の取り巻きにイエス・マンしかいないことでしょう。日本も他山の石として心しなければなりません。

2019.07.15.記

平伏外交か抱きつき外交か
…安倍とネタニヤフ両首相…

 トランプ大統領が、日米安保条約が不公平だと公然と口にしました。アメリカは日本を守るのに、日本にアメリカを守る義務がないのはおかしいというのです。さらに彼はこの問題を、安倍首相に半年にわたって主張し続けてきたとも言っています。条約に基づき日本が基地を提供し、維持費の多くを負担していることを、彼が知らないはずはありません(もしかしたら知らないのかも)。そもそも、日本に軍隊を持たせまいとしたのがアメリカだということを知らないのでしょう。朝鮮戦争が起きて、アメリカはあわてて日本に再軍備を要請しました。ときの首相吉田は、アメリカに本気かと質問しています。そして生まれたのが警察予備隊であり、それが発展したのが現在の自衛隊です。
 菅官房長官は、アメリカの本心ではないし半年前からの話でもないと、懸命に鎮静化を図っていますが、当の安倍首相は都合が悪いと見えてダンマリを決め込んでいます。言われるがままに大量の武器を買い入れ、それにも拘らず侮辱的な発言をされても一切反論せず、ただひたすらにご主人様のご機嫌取りに徹しています。平伏外交と言われても仕方ありません。
 その一方で、イスラエルのネタニヤフ首相は、ゴラン高原の入植地を「トランプ高原(Trump Heights)」と命名しました。トランプ大統領の、ゴラン高原イスラエル統治承認に感謝したものです。これに対し大統領は、名誉なことだと発言しました。国連も、世界の大多数の国も、イスラエルのゴラン高原イスラエル統治を認めていません。こんなことでは、中東和平の仲介などアメリカに出来るはずもありません。彼の頭の中は、2020年の大統領再選しか念頭にありません。ユダヤの資金とバイブル・ベルト(南部州)のプア・ホワイトの支持を得られさえすれば、世界の平和など関係ないというのが彼の本心です。日本をいくら叩いても自分の票には影響しないと、彼はタカをくくっています。安倍首相の平伏外交が、彼にタカをくくらせたとも言えます。
 ネタニヤフ首相のトランプ大統領へのおべんちゃら、ご追従ぶりをどう表現したらいいのでしょうか。人間、恥を忘れると何でもできるということなのでしょう。この抱きつき外交が、いまのところ両国間では効を奏しています。人間の持つ醜さ、業、をあからさまに示すようで何とも我慢なりません。

2019.07.02.記

米中貿易戦争
…戦略なき米大統領…

 アメリカはついに中国からの全輸入品に25%の関税をかけると宣言しました。当然報復関税を中国も実施することでしょう。ほとんどの対象品は、船便で運ばれますから、影響が現れるまでにはしばらくの余裕がありますが、世界1位と2位との貿易戦争はとどまるところを知りません。中国の報復関税は、農業分野に多大の損害を与えることになります。トランプ大統領は、共和党の票田であるその分野に16億ドルの援助を行うと声明を出しました。まったく行き当たりばったりの、戦略なき施策と言わざるを得ません。
 これまでアメリカは、中国の輸出援助策…多大の補助金援助…を非難してきました。トランプ大統領の援助策は、中国のそれと変わるところがありません。アメリカは、中国を非難する大きな理由を、一つ失いました。
 ゴラン高原のイスラエル統治容認と同じことです。この愚策によって、アメリカはロシアを非難できなくなりました。馬鹿さ加減もここまでくれば笑うしかありませんが、世界の平和という観点から見れば、笑って済ませるわけにはいきません。
 かつてソクラテスは、自分がもし他の人より賢いとすれば、それは、私が自分は知らないということを知っているからだ、と言いました。トランプ大統領は、まさにその正反対の人物です。それにしても、わが国のリーダーは、この人物にべったりです。ほかの国リーダーたちは、トランプ大統領が安倍首相を幼児扱いしていることを憂いています。本人は、バカにされていることに気づかないふりをしています。情けないことですネ。

2019.05.15.記

WTO、日本産食品禁輸、韓国上訴承認

 2019年4月11日、WTOは、日本産食品輸入を禁止するという韓国の上訴を承認しました。最初のWTOの判断は、日本側の主張を認めたものでしたが、それに不満の韓国は、WTOの規定に基づき上訴していたのです。WTOは二審制ですから、これが最終決定となります。対象は福島県だけではありません。宮城、岩手、青森、茨城、栃木、群馬、千葉の各県の食品が対象です。河野外務大臣は個別交渉すると釈明し、菅官房長官は食品の安全性が否定されたわけではないと強がっていますが、こと原発事故に関する限り、日本政府の基準は、世界基準に比し、相当に甘ちゃんです。さらに、東電は汚染水の処理に困って放水したいと申し出ています。ひそかに放水しているという噂さえ流れています。東京オリンピック、パラリンピックで、外国の選手たちが食品の安全性を主張しないとも限りません。
 経団連は、原発再開を主張していますが、裏で、安倍内閣から強要されているとささやかれています。上記のような状態で、原発の再開などありえません。すべて廃炉に向かわねばなりません。

2019.04.13.記

新年号、令和に決定

 平成天皇の退位が決まって、新年号に「安」の字が使われるのではないかと噂が乱れ飛んでいましたが、令和に決まりました。菅官房長官が発表するところまでは、前回の「平成」の発表のときと同じでしたが、そのあと安倍首相がしゃしゃり出てきたのには呆れましたネ。国書に拘ったのはオレだと、自己宣伝、政治利用が露骨にミエミエで、寒気がしました。
 平成天皇は、懸命に平和を説き、戦死した兵士たちを悼み、できる限り戦争で迷惑をかけた国々との融和を図ってこられました。その姿勢を、まったく忖度できない安倍首相に絶望しています。わざと気づかないふりをしているのでしょうがネ。
 新年号の「和」には問題ありません。「令」は、万葉集の原典の「令月」が示すように、美しい、めでたいといった意味がありますが、同時に、きまりとか法則とか上から目線の意味もあります。中国からは「令」が「ゼロ」に通ずると冷笑されたようです。英語のCOOLに、冷たいと格好いいという別々の意味があるように、「令」にも複数の意味があるのです。「安」が使われなかっただけでもヨシとしましょう。

2019.04.02.記

トランプ大統領の横暴を許すアメリカ

 佐藤正明氏の風刺画(西日本新聞2019.3.26.)の通り、特別調査委員会の報告の抜粋が「証拠不十分」発表されました。トランプ大統領は、オレはシロだと言い、民主党非難のトーンをさらに高めました。司法長官はトランプべったりですから、民主党は全文発表を要求しています。ただはた目から見れば、ロシアが介入したことは証明できても、トランプ陣営がロシアと共謀したと証明するのは難しいでしょう。
 しかし、この件以上にゴラン高原の方が大きな問題でしょう。3月25日、トランプ大統領は、ゴラン高原についてイスラエルの主権を正式に認める文書に署名しました。かてて加えて、選挙で苦戦するネタニヤフ首相を応援しようと、二人で文章掲げた写真を発表しました。明らかに国連決議に対する違反行為です。シリアのアサド政権を支持する気にはなれませんが、かといって、戦争行為で他国の国土を奪っていいことにはなりません。
 アメリカの一番の問題点は、自分たちの常識が、世界の常識だと思っていることです。ジャーナリストを殺したサウジアラビアを支持し、今度はイスラエルの横暴を容認しました。これが「アメリカ・ファースト」なら、モラルを失ったとしか言えません。
 トランプさん、二年間、何か世界平和に貢献したのかな。

2019.03.26.記

トランプ大統領をノーベル平和賞の候補者に?

 トランプ大統領曰く、、安倍首相が自分をノーベル平和賞候補に推薦してくれたと自慢げに発表しました。安倍首相は無言を貫きました。実情は、ホワイトハウス側から、推薦してくれと依頼があったようです。トランプ大統領のポチと揶揄されている安倍首相にしてみれば、ご主人様の命令にノーとは言えませんでした。ヨーロッパ諸国のリーダーたちからさらに軽蔑されることでしょうね。
 推薦するのであれば、ペシャワール会の中村哲さんにすべきです。

2019.02.16.記

大阪なおみさん世界ランク1位

 日本人テニス・プレイヤーが世界一位になる日が来るなんて、夢にも思いませんでした。おめでとうございます。
 ところで、日本人は二重国籍について都合よく解釈しすぎていませんかね。彼女以外の二重国籍者には、日本人として入国するのであれば、外国籍を破棄するよう指導し、それに服しなければ、外国人として入国するよう強制します。大阪さんの場合は、不問に処しているそうですが、あまりにもご都合主義のような気がします。いかがなものでしょう。

2019.01.27.記

沖縄、辺野古埋め立てについて

 「クイーン」のギターリストで天体物理学者のブライアン・メイ氏が、辺野古埋め立てについて、反対の意思を表明しています。安倍首相も、県民の反対を押し切って実施するからには、沖縄の基地の一つでも、自分の選挙区(山口県)へ移設してからにすべきでしょう。

2019.01.08.記

北方領土問題は原則を忘れるな

 北方領土問題は、原理原則に立ち返るべきではないでしょうか。
 1855年、日露通好条約で、「日本国と露西亜国との境は、エトロプ(択捉)島とウルップ(得撫)島との間に在るへし」と定められています。お互いに紛争のなかった時代です。その協定を尊重するのが重要だと思います。
 1945年8月15日、日本が降伏した後、ソ連が武力で侵攻(正確には8月17日以降)してきた結果が、現状の姿です。
 第二次世界大戦後、戦争行為で領土を拡大してはならないという不文律(カイロ宣言)を破っている国は、ロシアとイスラエルだけです。ロシアに対して日本は、日露通好条約に基づいて、四島返還を主張し続けると申し入れておけばいいのではないでしょうか。拙速はプーチンさんに足元を見透かされるだけでしょう。
 ロシアは、日本が戦争結果を認めないとか、主権はロシアにあるとか、無理を承知で厚顔な主張を続けています。佐藤正明氏の風刺画(西日本新聞2018.11.27.)の通りです。交渉がしばらく不成立になっても結構です。交渉の障害となるからと遠慮してはいけません。その都度、きっちりと反論すべきです。

2018.11.27.記

トランプ大統領が侵す歴史的ミステーク

 11月16日の国連総会で、ゴラン高原を占拠するイスラエルに対し、例年行われる非難決議に際し、アメリカがはじめて反対票を投じました。ゴラン高原は、1967年イスラエルの先制攻撃でシリアから奪い取った地域です。これまでも、ヨルダン西岸地区同様、国際的に占拠を認められていません。アメリカはこれまで棄権してきましたが、トランプ政権になってはじめて超イスラエル寄りの態度を鮮明にしました。投票結果は、151対2、棄権14と、アメリカとイスラエルの孤立が歴然としています。
 第二次大戦の教訓として、戦争行為でテリトリを拡大することは、国際的に認められていません。これは各国が尊重してきた不文律です。大戦後、戦闘行為で領土を広げた国は、イスラエルとロシアだけです。2014年、ロシアがクリミヤ半島を占拠したとき、各国は経済制裁に踏み切りました。アメリカは、国連のイスラエル非難決議に反対したことで、不文律を明らかに侵しました。アメリカは、クリミヤ問題で、ロシアを非難する立場を失いました。
 10月2日、イスタンブールのサウジアラビア領事館で、同国のジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が殺害されました。遺体は解体されたとみられ、いまだに発見されていません。秘密の暗殺団らしきグループがトルコに入り、事件後立ち去ったことが明らかになっており、背後にサウジアラビア王室の関与が強く疑われています。CIAは、ムハンマド皇太子が殺害命令に関与したと発表しました。
 ところが、トランプ大統領は、王室もムハンマド皇太子も強く否定しているとして、経済制裁はおろか、武器販売を続けると声明しました。彼の言のよると、これが「アメリカ・ファースト」だそうです。もし、アメリカが武器を売らなければ、ロシアか中国が売り込むからだというのですから、その考えの浅さに呆れかえります。反アメリカを表明すろイランに対して、サウジの協力が欠かせないという面も確かにありましょう。しかし皮肉なことに、IAEAの発表によると、イランは取り決めを守って核開発を停止しているが、北朝鮮は秘密裏に開発を続けているそうです。トランプ大統領のトップ外交は、何一つ実を結んでいません。
 短期的には、サウジへの武器販売はアメリカに利益をもたらすことでしょう。しかし歴史という長い目で見たとき、トランプさんは、金銭に屈した理想もモラルもない大統領として、アメリカの恥と呼ばれることになりましょう。サウジ王室が安定的に続くものかどうか、ムハンマド皇太子が権力を握っているとは言っても、王室内に反対勢力がいないわけではありません。すべてが暴露されたとき、トランプ大統領は何と弁明するのでしょうか。
 彼は共和党員です。リンカーンもそうでした。彼が奴隷制廃止を打ち出したとき、南部諸州はこぞって反対しました。つまり「南部ファースト」を唱え、奴隷制が誤りであることには目をつぶったわけです。トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」は、この「サウス・ファースト」にそっくりです。さぞリンカーンも、同じ共和党員であることを恥ずかしく思っていることでしょう。

2018.11.25.記

ドイツ・水素燃料電池機関車実用化

 水素燃料電池を採用した機関車が、ドイツで実用化されました。世界ではじめてのことです。本来、燃料資源に乏しい日本が世界に先駆けて開発すべき分野のはずです。
 総裁三選にしか頭にない安倍首相には無理でしょうが、日本には優秀な技術者が、たくさんいるはずです。自動車分野では、各社がしのぎを削っていますが、機関車のような大量輸送分野には、まだ誰も手をつけていません。ある程度の政治主導が望まれる分野です。
 政治家も電力会社も、原発再稼働にばかり目が行って、将来のことはおざなりです。廃棄物処理さえままならぬ現状で、再稼働すること自体馬鹿げています。電力会社の会計法では、廃炉処理の経費は、事前積み立ての必要はありません。いざとなれば、税金で処理しようという腹です。表面的に多額の利益を計上させ、アガリを政治献金に回させようという仕組みが、政財官のトライアングルの中で確立しています。
 忖度するしか能のない政治家たちには、このようなニュースは、目にも入らないのでしょうね。

2018.09.19.記

トランプ大統領曰く「真珠湾を忘れない」

 ワシントン・ポストによると、6月に行われた安倍首相との10回目の会議で、大統領が I remember Pearl Harbor と言ったそうです。そのとき安倍首相は、exasperated とありますからムッとしたのでしょう。もっとも彼のことですから、反論は一切しなかったのでしょう。
 彼はこう言うべきでした、「日本は、終戦直後の食糧難の時代に、アメリカが助けてくれたことを絶対に忘れません。その感謝の気持ちを表したく、大統領を広島と長崎にご招待申し上げたいと存じます」と。ごくごく慇懃無礼に。
 そもそも、トランプさんが大統領になったときから、彼が貿易不均衡の問題を取り上げるのは分かりきっていました。彼の交渉テクニックは、最初に脅しをかけるポーカー・ゲームのような感覚の、見え透いたものです。「真珠湾を忘れない」という発言も、最初のジャブ攻撃のようなものです。安倍さんにしてみれば、ここまで尽くしているのに、と裏切られたような思いでしょうが、なぜその前に、アメリカからの輸入を増やして、不均衡が目立たないようにしなかったのでしょうか。それも、高価な最新鋭の武器などではなく、日本が真に必要とするエネルギー資源を購入することによって。
 シングル・ブレインの大統領です。総額で輸出入が均衡しておれば、「真珠湾を思い出さない」のではないでしょうか。

2018.08.30.記

障害者雇用のまやかし

 障害者雇用促進法で決められている雇用率を、国の機関の8割がごまかしていました。合計で表向き6900名、達成率2.49%としていた雇用者の実態が、3460名も水増しされており、達成率がなんと1.19%というのですから開いた口が塞がりません。
 不正算入が最も多かったのは国税庁、国土交通省ですが、なんと法務省が第三位です。法律は守らなくて良いと、自ら範を示したようなものです。言い訳は、厚生労働省の指導が明確でなかったからだそうです。もし民間企業が未達だと罰金を払ってきているのですよ。利益を出さなければならない民間企業が、なんとか目標を達成しようとしているのに、税金で賄われている公共機関が、国民をだまし続けてきたのです。むしろ、民間より採用枠を増やせやすいはずの公共機関の実態に、ほとんど絶望してしまいそうです。
 肝心の検討会議に、安倍首相は出席していません。首相レベルの問題ではないそうです。自民党総裁三選の方が、彼にとって重要らしいというから呆れかえります。上が腐れば下も腐る。日本国中腐ってしまうのでしょうか?

2018.8.29.記

医科大学の女子入試差別

 日本でなぜ女医さんが少ないのか、永年の疑問でしたが、今回の東京医科大学のスキャンダルで合点が行きましたネ。このスキャンダルが、文部省高級官僚の息子の、違法入学で明るみに出たのが、まことにもって笑止千万と言うべきでしょう。
 左表は、OECDメンバーの女医の比率ですが、なんと日本は平均の半分以下という惨憺たる現状です。しかし、このような状況が東京医科大学一校で起きるはずがありません。右表は、各医科大学の2017年と2018年における男女の合格比率を示しています。差別は殆どの大学で行われていました。
 東京医科大学の弁解では、女子は変則勤務に向いていないからというものです。聞く方が恥ずかしくなるような言い訳ですが、安倍内閣の女性活用のスローガンが、いかに人気取りの表面的なものであるかを示してもいるのです。保育所の待機児童がゼロにならないのも、根幹は同じ問題に根ざしています。予算がないなら、高価なオスプレイを買わなければいい。議員を減らせばいい。
 要は、権力を握る者が、現状を変えたくないだけのことです。権力は、それを行使する者にとって、まことに心地よいものです。だから、昔から言われてきたように、権力は腐るのです。
 上が腐れば、その下も腐ります。最下部のわれわれ庶民は、ただ嘆くしか無いのでしょうか。

2018.8.14.記

メイド・イン・トランプの貿易戦争

 トランプ政権は、中間選挙を目前にして、彼の公約である貿易収支の改善、国内就業数増大を目標に、長期的視野もなく輸入品課税に闇雲に取り掛かり、全世界を混乱に落とし入れています。輸入品に対する高額な関税は、消費物価の高騰につながり、近い将来アメリカ国民が悲鳴を上げることになりましょうが、トランプ政権は、中間選挙が終わるまでは大丈夫と高をくくっているようです。
 そもそもアメリカが貿易収支の黒字を謳歌していたころは、自由貿易の旗手だったはずです。なぜいま赤字国になったかを追求せずに、保護主義に走るのはまるで順序を間違えています。アメリカも落ちる所まで落ちたと言わざるを得ません。
 TRADEの本来の意味を忘れてはなりません。お互いに必要なものをもとめあって「市」が立ちました。古人はウイン・ウインな関係樹立を、トランプ大統領よりよく知っていたのです。人間の心理は、アダム・スミスが「国富論」で論証したころと、大した違いはありません。
 ところで、トランプ政権は、日本にも貿易戦争を仕掛けてきました。8月9日、10日と二日にわたって大臣級の会議がワシントンで開かれましたが、アメリカは輸入自動車に関税をかけると脅しをかけてきています。確かに、日本車のアメリカ国内での販売に比べ、日本国内におけるアメリカ車の販売は不振を極めています。しかし、なぜ売れないかの調査無しに、売れ行きを改善できる訳がありません。
 交渉の主導権を日本は、一方的にアメリカに握られています。防戦一方と言った塩梅です。
 日本の交渉団には、是非ともTRADEの本来の意味を思い出し、相手にも思い出させて貰いたいものです。日本が欲しいものは何か、それは石油や天然ガスといったエネルギーです。中東やロシアからの輸入を、相当数切り替えるだけで、アメリカとの貿易収支は改善されます。収支がトントンであれば、ウイン・ウインな関係が成立します。必要以上に高額な武器を買う必要はありません。
 とは言え、自己陶酔型のトラプ大統領と、彼には盾突けない安倍政権では、こんなことは全く実現しそうにもありません。望み薄なのがまことに残念です。

2018.08.12.記

戦後最悪の内閣






























 佐藤正明氏は優れた風刺漫画家ですが、発表の場が、中日新聞、東京新聞、西日本新聞と限られているのが少々残念です。ここに最近の二作を掲載しておきます。「パス回し」は7月18日、「賭場」は7月21日です。
 豪雨対策はそっちのけで飲み会はする、カジノ法案は強行採決すると、道義もへったくれもない内閣の内面をよく描出しています。
 もう一つは、7月22日の西日本新聞のコラム『「してるふり」にご注意を』です。これもまた、あまりにも秀逸なので、そのまま掲載します
 戦後最悪の内閣は、その一方で、こっそり水道事業の民営化法案を通し、福島原発の汚染水の海洋放出を現実化しようとしています。
 モリ・カケで尻尾を出すような総理ではありませんが、勿論、自慢できる話ではありません。ただ、そんな人間をトップに頂いて恥ずかしくない自・公党員の羞恥心の無さに、こちらのほうが恐れ入ってしまいます。

2018.07.23.記

腐り始めた日本政治

 森友学園、加計獣医科大学スキャンダルでシラを切り続ける安倍首相、その意向を忖度して文書を改竄した財務省、その長でありながら責任逃れを決めこむ麻生大臣と、トップが腐り始めた日本政治は、次第にその汚染度を拡散し続けています。
 その極端な例の一つが、東電福島原発放射能汚染土壌を利用して農地造成しようという動きです。環境省は公園造成に活用したいと、尻馬に乗るつもりのようです。
 政府は、福島県で甲状腺ガン患者が増え続けていることには目を瞑り、原発再稼働を加速させています。汚染土壌問題を矮小化させようというのが、この再利用案です。よくもまあ、このような恥知らずなプランを思いつくと呆れかえります。
 別の例が、参議院定数6名増加案です。人口比の不均等が憲法に違反しそうなのを避けるためです。その一方で、国の財政健全化は一向に進みません。当然、定数減で憲法違反に対処すべきです。身を切る改革をしないで、消費税増税など実行できましょうか? 頭が腐り始めると、尻尾まで腐り果てるのでしょうか。
 このような議員たちに、現行の平和憲法をいじくられたくありません。

2018.06.10.記

トランプ大統領に勝算はあるのか?

 5月8日、トランプ大統領は、イラン核合意から離脱すると表明しました。イランが反発するのは当然のことですが、フランスやドイツ、イギリスのメンツも踏みにじってしまいました。
 かてて加えて、エルサレムをイスラエルの首都と認め、5月15日、アメリカ大使館移転セレモニーを大々的に実行しました。アメリカがいかに軍事的、経済的に強力であるとしても、イスラエルと組んだ二国だけで、これまで通りの影響力を発揮できるでしょうか。
 そもそもイスラエルの核兵器保持を容認しながら、イランの核保有を認めないのは、ダブル・スタンダードです。イランの核保有が、イスラエルの脅威であると言うのであれば、イスラエルの核保有がイランの脅威であることに何の違いがありましょうか。
 ダブル・スタンダードであると分かった上で、イランの核保有を阻止しようと、オバマ前大統領が、西欧同盟国と、ロシア、中国を引き込んで、やっとのことでイランを説得して成立させた合意です。
 今年秋に行われる議会中間選挙で、劣勢が予想されるトランプ大統領には、そのような背景を理解する能力がありません。ただただ国内支持者への公約実行しか頭にありません。TPPや環境問題のパリ合意からの離脱しかり、鉄やアルミの課税しかり、エルサレムのイスラエル首都認定、大使館移設も同様です。
 予想される北朝鮮金正恩との会談も、徹底した経済制裁が効を奏したと思っているようですが、中国習近平の掌の上で踊らされているに過ぎません。北朝鮮が音を上げたのは、中国が経済制裁に踏み切ったからです。中国にしてみれば、北朝鮮は対アメリカの将棋の駒に過ぎません。ところがその駒が、核実験をしたりミサイル開発に熱を上げたため少々扱いかねていたところでした。アメリカの脅しにおびえた金正恩が泣きついてきたのを幸い、中国は金正恩を手駒に朝鮮半島の非核化を打ち出し、韓国からTHAAD除去はおろか、アメリカ軍の撤退まで実現しようという腹です。
 イラン核合意からの離脱で、アメリカは単独で経済制裁に踏み切ることになります。イランと取引する西欧同盟国の企業にも制裁を加えようとするでしょう。しかし、これは国連決議ではありません。アメリカ単独の経済制裁です。西欧には、同調しなければならない義務はありません。
 冷戦時代は、ソ連だけが相手でした。衛星国の経済力は微々たるものでした。今回は、中国、ロシアがイランを支援します。西欧はアメリカに同調しません。西欧のユーロ、中国の元、は世界通貨として通用します。アメリカを埒外においても、世界経済は成立するのです。
 孤立するアメリカに勝算はあるのでしょうか。トランプ大統領が、北朝鮮の非核化やミサイル廃棄に成功したとしても、先に述べた通り中国の思惑通りの結果となりましょう。また、仮に中間選挙に勝利したとしても、孤立したアメリカは、「アメリカ・ファースト」ではなく、「アメリカ・セカンド」になってしまうことでしょう。
 近視眼のトランプは、遠視力のある習近平に、いいように操られることでしょう。

2018.05.17.記

非常識な麻生副総理兼財務大臣

 彼の失言癖はいまに始まったことではありませんが、今回は、重大な外交的ミスを犯しました。北朝鮮の航空機が無事シンガポールまで着けばよいが、と言ってしまいまったのです。聞いた相手は、最大の侮辱と受け止めることでしょう。拉致被害者の家族たちも、さぞかし憂慮しているに違いありません。庶民の間で囁かれていることであっても、政府の重要ポストにある者が発言すべきことではありません。
 「文書改竄はどの組織でもやっている」とか、「セクハラという罪はない」とか、言っていることがお粗末に過ぎます。
 そもそも、不祥事が発生したら、そこの長は責任を取るべきです。文書改竄やセクハラで、乱れに乱れた財務省の長が、いまだにその席に居座っています。
 実情を言えば、安倍首相が、自らの責任を財務省に肩代わりさせており、財務大臣の首を切れないところに問題があります。それをいいことに、麻生副総理は、年齢的に次期総理の目はないし、選挙区でも競争相手はいないということで、言いたい放題、やりたい放題です。ですが、それでは、自らの品格を貶めるだけでしょう。○○以下と言われても仕方ありませんネ。

2018.05.16.記

憲法は報道の自由を保証する

 アメリカ放送大手シンクレアが、100局以上の傘下地方局ニュース・キャスターたちに、「偽ニュース批判のメッセージ」と称する同一の文書を読み上げさせました。この行動を、トランプ大統領が称賛したと、CNNが報道しています。もちろん、フェイク・ニュースは許されるものではありません。メディア各局は、報道前に二重三重の裏を取ってから報道しています。それでも、ミスは起こり得ます。その場合は、恥を忍んで謝罪し、修正報道を流してきました。
 アメリカ憲法修正第一項は報道の自由を謳いあげています。
 このシンクレアの行動に、報道の自由を束縛しようとする、肌寒いものを感じます。シンクレアのボスが、オレの意向に反する報道は許さないぞ、と言っているのと同じだからです。
 そして、日本はどうでしょうか。東電の原発事故の、メルトダウン報道は規制されました。現政権は、NHKに圧力をかけ続けています。民放まで含めて、リベラルな発言をするキャスターが、その職を解かれました。戦前の悪夢を再現してはなりません。われわれは、注意深くなければなりません。

2018.04.06.記

最大の民族浄化国はイスラエル

 4月1日のロイターは、イスラエル軍が、パレスチナのデモ活動に対し実弾を発砲、16人の死者が出たと報道しました。世界各国は、ミャンマーのロヒンギャ族迫害を、民族浄化と非難しています。確かに、ミャンマーの行為は非難されても仕方はありません。
 ただ事情を考察すれば、ロヒンギャ族は、イギリス植民地統治時代、労働力としてベンガル地方から移動させられた人々です。ミャンマーとしては、彼らになぜ市民権を与えなければならないのかという思いがありましょう。部外者にそれが否定できましょうか。
 イスラエルは、建国以来、2000年もその地に住んできたパレスチナ人を追い出して自分のものとしてきました。最大の民族浄化国はミャンマーではありません。イスラエルです。

2018.04.01.記

再び見捨てられるクルド族

 3月29日、トランプ大統領は、突然、アメリカ軍を近いうちにシリアから引揚げると発言しました。"very soon"という言葉ですから、いつと明言したわけではありませんが、きちんと後始末した後ならともかく、なんとまあ、無責任な発言でしょう。
 イラクとシリアの国境にまたがって、広大な領域を支配したイスラム国(ISIL=ISIS)に対し、アメリカ軍の手先となって戦ったのはクルド族です。彼らは、ISILを排除すれば、自らの国を樹立できると、必死になって戦いました。しかしISILが消滅した後、今度はトルコから、国内のテロ・グループに通じていると攻撃されています。アメリカは、このトルコの行動を非難していません。さらに加えて、今回のトランプ発言です。
 クルド族は、都合の良い時だけアメリカに利用されて見捨てられるのでしょうか。ブッシュ(父)大統領時代の湾岸戦争でも、彼らは見捨てられました。悲劇が繰り返されそうです。

2018.03.31.記

トランプ大統領と金正恩委員長との会見が実現?

 金正恩氏が3月25日から28日にかけて中国を訪問し、習近平国家主席と面談しました。来たるべきトランプ大統領との会談を控えて、中国の後ろ盾を得たことになります。
 仮に、北朝鮮が半島の非核化を飲むとすれば、現体制維持の保証は勿論、半島からの米軍撤退を要求するでしょう。そのとき、アメリカ・ファーストのトランプ大統領がどう対応するのでしょうか。
 ともあれ、アメリカとすれば非核化が実現しない限り、枕を高くして眠れないでしょうから…。
 ですが、もし上手く行ったら、トランプさん、威張ることでしょうね。それはそれで鼻持ちならないものですが、世界が平和になるのであれば我慢しましょう。こういった事態には、「毒を以って毒を制す」という諺がぴったりですね。

2018.03.29.記

佐川前理財局長の国会証人喚問
野党議員の質問の拙さに絶望

 せっかく証人喚問まで漕ぎつけたというのに、佐川前理財局長の「捜査の対象であり刑事訴追の恐れがあるので答弁を差し控えたい」という逃げ口上の牙城に、まったく歯が立たない野党議員諸氏、その質問の拙劣さに呆れかえっています。
 彼は自民党議員の誘導的質問に対し、森友文書の改竄や削除に「官邸」や「政治家」、「昭恵夫人」の関与が全く無かったと明快に答弁しました。彼はミスを犯したのです。刑事訴追の恐れがあるのであれば、彼は、関与があったともなかったとも言えません、と答弁すべきだったのです。そのミスを突けないだらしなさに切歯扼腕の思いです。
 野党議員は、「刑事訴追の恐れがあるにもかかわらず、あなたは関与が無かったと明確に答弁しました。あなたは重大なミスを犯しました。自分に有利だから答弁したのだとすれば、答弁を回避した場合、自分に不利だから、または犯罪的な行為を犯したからだと告白していることになります。事実だから事実を答えたのだとすれば、他の事実に対し答弁を回避できなくなってしまいました。もし答弁を回避したいのであれば、先ほどの答弁を誤りだったと認めた上で、回避して下さい。あなたは、明快な答弁をするという重大なミスを犯しました。私が述べたのは、小学生でも分かる三段論法です。東大出のあなたは、とんでもないミスを犯しましたね」と一発脅しをかませるべきでした。
 その上で、「いまからする私の質問に対し、答弁を回避した場合は、あなたがその事実を認めたと、国民に告白したことになります。そうでなければ明確に否定してください」と念を押した後、「あなたとあなたの部下は、森友文書を改竄しましたね」「…」(ここでの「…」は「捜査の対象であり刑事訴追の恐れがあるので答弁を差し控えたい」と考えてください。文書改竄は事実ですから否定しようがないはずです。)、「政治家の関与があったから文書からその名前を削除したのですね」「…」、「昭恵夫人の存在が、8億円値引きに影響したので、その名前を文書から削除したのですね」「…」、と事実を再確認するような形で質問すればよかったのです。締めくくりは、「安倍首相の意向を忖度して、文書を改竄しましたね」という質問でいいでしょう。
 野党議員の皆さん、シェークスピアの「ベニスの商人」や「ジュリアス・シーザー」を再読して勉強してください。なんですか、まだ読んだことがない、こりゃまた失礼しました。

2018.03.27.記

ニュージーランド首相の平和志向

 ロイター報道によると、ニュージーランドのシャシンダ・アーダーン首相は、軍縮のための大臣ポストを新設したとのことです。先制攻撃を示唆する大統領や、盲目的にその大統領に媚を売る首相などが幅を利かせる時代に、彼女は見事に平和に向かう姿勢を示しました。憲法改正を目指すどこかの国の首相には、かけらもない平和志向です。
 この理想の高低差を、なんと表現したらいいのでしょうか。いっそ、世界のリーダーを全部女性にしてしまった方がいいのかも知れません。

2018.02.28.記

トランプ大統領が軍事パレード?

 CNNの報道によると、トランプ大統領はペンタゴンに軍事パレードを実施するよう命じたそうです。力の誇示など、北朝鮮でもあるまいし、と思ってしまいます。ブリキの玩具の兵隊で遊んでいるような幼児性です。
 アメリカ人は、トランプさんをビジネスマンだと言っていますが、彼の事業は父祖の遺産を元手の不動産業です。何か新しい事業を始めたわけでもなく、まして大きな組織を動かしたわけでもありません。それは、部下の使い方の下手さ加減から十分に察知されます。
 彼の交渉テクニックは、最初にブラフをかませて、徐々に譲歩し、有利な条件で折り合おうという、まるでポーカーゲームをやっているような感覚です。戦略を練るようなタイプではありません。直感で発言し、あとで修正しなければならなくなっても、反省などした気配は全くありません。人にはフェイク・ニュースと非難しながら、自らが発した誤報を認めようとはしません。
 我儘に育った金持ちのボンボンが大人になり、大統領になってしまいました。軍事パレードを発想するなど、彼の幼児性を、あからさまに露呈してしまいました。

2018.02.08.記

ICAN事務局長と会う時間がない?
…こちらが恥ずかしくなる安倍首相…

 日本を訪問中のICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)事務局長は、かねてから安倍首相との会談を申し入れていましたが、政府から”調整困難”と婉曲に断られてしまいました。本来先頭に立って核廃絶に向かって行動すべき日本が、アメリカの核の傘の下にあるため、ICANの活動から距離を置いています。唯一の核被爆国でありながら、なんという情けない、自主性のなさ加減と言わねばなりません。安倍首相は、その矛盾を突かれるのが怖くて会談を避けたのです。日本人として、恥ずかしい限りです。

2018.01.15.記

こちらが恥ずかしくなる隣国

 佐藤正明氏の風刺画は、いつもよく工夫されている上、描写力が抜群で面白いのですが、今日の西日本新聞掲載分も上出来な部類に入ります。従軍慰安婦の問題は、日本がたびたび謝罪しても、政権が代わるたびに、あたかも一度も謝罪したことがないかのように蒸し返されます。
 2015年12月28日、日韓双方で合意に達し、日本側は10億円を2016年8月に拠出しています。条文には不可逆( irreversible )と明記されています。にもかかわらず、この風刺画のように勝手にゴールの位置を変える国とどうつきあえばいいのでしょうか。
 隣国の行為ですが、こちらが恥ずかしくなります。こちらとしては無視するより仕方がありません。どんどん慰安婦像を作って、どこにでも設置しなさい、そして、その首にこの風刺画を掛けましょう。すぐ取り外されるでしょうから、また繰り返し掛けましょう。慰安所の多くは、韓国人が経営していました。ついでに、その人たちの名前も書きだして、像の首に掛けましょう。多分、そのような事実はひた隠しに隠されているでしょうから、この際明らかにしましょう。お互い歴史を学び直しましょう。
 82才の誕生日のコメントにしては、はなはだ情けないものになりました。

2018.01.13.記

エルサレム問題に関する国連総会決議
…恥を知る国、知らぬ国

 12月22日の国連総会は、エルサレムをイスラエルの首都に認定したアメリカの決定に対し、その撤回を求める提案が提出され投票が行われました。賛成128、反対9、棄権35という結果です。その前の安保理では、15ヶ国中アメリカのみが反対、14対1という結果ですが、アメリカが拒否権を行使して提案はボツとなりました。国連総会の決議は、安保理とは異なり強制力はありませんが、世界の世論がどのようなものかという指標にはなります。この投票の前に、トランプ大統領は「反アメリカ票を入れさせよう、大きな節約になる」と支援金カットを示唆しました。あからさまな脅しです。言葉も下品で、行動はそれ以上に下品です。恥というものを知らない国は、どんな破廉恥な行為をしても、赤面することはありません。投票結果の棄権の多さは、その脅しが効いたことを示しています。棄権の中には、無関心が理由の国もあることでしょう。しかし大半の国々は、恥を忍んで棄権したに違いありません。
 第二次世界大戦中、アメリカは日本を理解しようとして、さまざまな研究がなされました。その中で、出色の書が、ルース・ベネディクトの「菊と刀」です。この書の中で、彼女は日本人を恥を恐れる民族だと評しています。恥を知る国の国民であることに誇りを持つと同時に、恥知らずの国を憐れに思います。幸い、今回日本は賛成票を投じました。
 しかし、日本も安心できません。憲法解釈を勝手に変更したり、森友・加計忖度問題など、次第に恥知らずな国になりつつあります。恥知らぬ国になってはいけない、というのが2017年「結びの言葉」となりました。

2017.12.22.記

エルサレムはイスラエルの首都…トランプ大統領宣言
トランプ大統領の最悪の決断

 12月7日、トランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認め、アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムへ移すと宣言しました。
 就任以来一年にも満たないトランプ大統領は、これまでも数々の愚劣な決断を下してきました。TPPからの離脱は、彼がオバマ大統領の深謀遠慮をまったく分かっていないことを証明しています。太平洋沿岸諸国の自由貿易を促進することで、中国の拡大政策を抑制しようという裏に秘めた意図など、彼の頭では理解できないのでしょう。環境問題パリ協定からの離脱は、汚染大国中国に、主導権を渡してしまいました。国内ではナショナル・モニュメント(日本で言えば国立公園指定地域)を縮小して、石炭採掘を拡大しようとしています。指定地域には多くの先住民(ネイティブ・アメリカン)の居住区があります。彼らへの迫害は、止まるところがありません。彼の目には、自分の支持者だけしか見えていません。それが、今回の宣言のバカバカしい背景です。この愚挙を何といえばいいのでしょう。
 エルサレムは、6日戦争と言われた1967年の第三次中東戦争で、イスラエルがヨルダンから奪い取った都市です。国連は、ヨルダン川西岸地域を含めてイスラエルの占拠を認めていません。第二次世界大戦以降、戦争行為で領土を拡大してはならないという不文律が守られてきました。その都市を、アメリカはイスラエルの首都と認め、大使館をテルアビブからここへ移すと宣言したのです。
 ロシアのクリミア併合を国連は非難し、経済制裁を課しました。アメリカは、今回の決断でイスラエルの不法占拠を認めたことになります。アメリカは、ロシアを非難する資格を失いました。
 ミャンマーは、ロヒンギャ民族迫害で非難されています。パレスチナの人びとを迫害するイスラエルを支持するアメリカに、ミャンマーを非難する資格はありません。
 エルサレムは、イスラム教の聖地でもあります。パレスチナの人びとは、将来国家として認められれば、東エルサレムを首都にしたいと希望しています。サウジアラビアとイランはライバルで、宗教的にもスンニ派、シーア派と異なりますが、この問題だけは協調することになりましょう。しかし、中東諸国が仮に一致団結したとしても、戦力的にアメリカに太刀打ちはできません。とすれば、彼らはロシアや中国を対抗馬として駆り立てることでしょう。両国としては、もっけの幸いと乗り出してくるに違いありません。
 ヨーロッパ諸国は、今回のアメリカの決定に批判的です。イスラエルとアメリカは、世界を敵に回そうというのでしょうか。
 トランプ大統領のアメリカ・ファーストの政策は、トランプ・ファーストであって、アメリカを強力化することにつながりません。彼の政策はアメリカ・セカンドへ導いて行くことになりましょう。
 トランプ大統領のお友達と自認する安倍首相は、このことに一言も発言しませんね。トランプさんをたしなめる勇気など持ち合わせていないのでしょう。バンカーでひっくり返っても、トランプさんの尻を追いかけたくらいですから。
 それに比べると、ドーピング問題におけるプーチン大統領の冷静さは大したものです。オリンピックへの個人参加を阻止しないと発表する傍ら、大統領選挙に出馬すると宣言しました。大嫌いな政治家ですが、こと政治的なセンス、頭の良さはトランプ大統領とは比較になりません。戦略のないトランプさんは、プーチンさんや習近平さんに、いいように鼻づらを引きまわされることでしょう。

2017.12.08.記

アメリカとイスラエルのユネスコ脱退宣言

 10月14日、アメリカ、トランプ大統領はユネスコが反イスラエルだといって脱退を宣言しました。イスラエルのネタニヤフ首相もそれに追随しています。この宣言は、トランプ大統領のアラブ嫌いを明確にしてしまいました。彼が大統領になって以来、国内では人種間の構想が激化し、国際的には、キリスト教とユダヤ教社会・対・イスラム社会という、明確にする必要もない断層をさらけ出しました。彼が大統領の椅子に座って以来、世界はより不安全になりました。
 イスラエルの国家としての生存権を認めない者ではありません。ですが、それ以前に、パレスチナ人の2000年にわたる居住権が優先されるべきです。

2017.10.15.記

虚偽に充ちた衆議院解散

 9月28日、安倍首相は国難突破解散と、北朝鮮をダシに使って衆議院を解散しました。そう言いながら、北朝鮮非難決議を提出すらしていません。野党から、不信任決議案を出されては困るからです。野党の準備できていない今が、総選挙のチャンスと考えたのでしょう。過半数を確保すれば、加計や森友問題は、選挙で洗礼を受けたと言い逃れするつもりです。
 国民の信を問うなら、集団的自衛権法案や共謀罪法案を強行採決する以前に解散すべきです。
 あわせて、消費税を10%にしたときの増額分のうち、20%を教育無償化に回すと宣言しました。無責任もここまでくると、開いた口がふさがりません。GNPに対する国家負担の教育費は、先進国の内日本が最低です。これは消費税以前の問題です。票にならないから出し惜しみしているだけのことです。女性を活躍させるのであれば、待機児童ゼロを実現しなければなりません。即実行できないことではありません。
 安倍政権になって雇用が増えたと言っていますが、少子高齢化が原因で、いまの政権のせいではありません。
 加計や森友問題で追及されるのが怖くて解散に踏み切っただけのことです。
 ですが、結局、選挙が終わってみれば自民党が勝利するのでしょうね。もう政治には絶望しそうです。

2017.09.28.記

必読の書「グローバリゼーション・パラドクス」

 最近読んだ中で最も印象深かった本です。著者ダニ・ロドリックは、民主主義と国家主権、グローバリゼーションを同時に追求することは不可能だと主張します。
 もしグローバリゼーションをさらに推し進めたいのであれば、国民国家か民主主義のどちらかをあきらめなければならない。もし、民主主義を維持しさらに進化させたいのであれば、国民国家か国際的な経済統合のどちらかを選ばなければならない。そして、もし国民国家と国家主権を維持したいのであれば、民主主義とグローバリゼーションのどちらかを深化させるか選択しなければならない(本書より)。
 言われてみるまで気づかなかったパラドクスです。
 この主張だけでは非常に悲観的になってしまいますが、ダニ・ロドリックは前向きです。トリレンマとも言うべき条件の中でもポジティブな解決策があるはずだと、この書物の中でさまざまな解決策を提言しています。
 大変興味深い本でした。

2017.06.19.記

スキャンダル隠しの共謀罪参院強行採決

 安倍内閣は、とうとう禁じ手とも言うべき強行採決で共謀罪を成立させました。国会を期日内に閉じたいという、たったそれだけの理由で、この異論の多い法律を通してしまいました。これは民主主義ではありません。独裁政治です。
 世論に押されて、文部省内の、加計関連文書の存否を調査し始めましたが、存在を認めたところで国会を閉じてしまう算段です。存在しないと言い張っていた官房長官や文部大臣の責任問題には、頬被りして逃げの一手です。安倍首相が直接命令したなどという証拠が出てくるはずもありません。それが忖度というものです。しかし、示唆がなければ忖度は生まれません。
 逃げたい人の一番手は安倍首相でしょう。やましいからこそ、強行採決したのです。
 一応表向き、日本は主権在民の民主主義国です。安倍首相には、国民の希望を忖度する義務がありましょう。6月17日、西日本新聞に掲載された佐藤正明氏の風刺画では、主人公が傘を手に来たる災難に備える姿が描かれています。国民は、強行採決までして共謀罪を成立して欲しいなどとは思っていません。それよりむしろ、加計や森友問題を明らかにして貰いたいと思っています。
 やりたい放題の国会の動きを阻止する世論だけです。マスコミも含めてわれわれがシャンとしなければなりません。

2017.06.17.記

トランプ大統領が決断したシリア攻撃

 シリア内戦で、アサド大統領が化学兵器を使ったのではないかと再三言われてきました。国連の安保理での討議は、ロシアと中国の拒否権発動で、何ら効果的な対策を打ち出せませんでした。トランプ大統領は、オバマ前大統領と異なり、親ロシア路線をほのめかし、ISIL撲滅のためならアサド大統領の退陣を問題としないと発言してきました。その甘さが、4月4日の科学兵器使用を誘発したとみるべきでしょう。ただ、直接的な調査がなされていない現状では、アサド大統領の仕業と断定するわけには行きません。
 トランプ大統領は、非難されると相手を攻撃することで、窮地を逃れてきました。今回の、50発以上とされるシリア空軍基地へのミサイル攻撃は、そのようなトランプ大統領の性格を考えると不思議でも何でもありません。非難される前に殴りかかったとみるべきでしょう。とはいうものの、これまでは口撃だけでしたが、今回は実弾による攻撃です。シリアを支援するロシアとイランがどう出るか予想がつきません。下手すると、冷戦時代の代理戦争、ヴェトナム戦争の再現となりましょう。ISILが絡む分、更なる混迷が予想されます。
 しかし手順が省略され過ぎています。国連安保理でロシアが拒否権を使用しようと、中東各国も参加した調査団を結成し、確証を得てから攻撃に踏み切るべきでした。
 アメリカ国民が大統領にトランプを選んだとき、アメリカ政治がフィリッピン並みに落ちたと悲しくなりました。今回の攻撃は、何をするかわからないという意味で、トランプが金正恩と同類だと証明したようなものです。近視眼的に日本のことだけを考えれば、何をするかわからないアメリカは、北朝鮮や中国への抑止力になると期待できます。尖閣列島や南シナ海での傍若無人ぶりにも一定の歯止めがかかることでしょう。しかし、このような大統領が核のボタンを握っている怖さを、世界は認識しなおす必要があります。
 もう一つ憂鬱なのは、この事件が、森友問題や復興庁大臣失言など、窮地に陥っている安倍政権への助け舟となったことです。安倍首相は、焦点ボカシになったとホクホクしていることでしょう。それにしてもなんとまあ、日本の実情に目を転じると、情けないコメントになってしまうのは何故でしょう。

2017.4.07.記

哀れな東芝、森友
…政治にもてあそばれた愚者たち…

 東芝が二度にわたって決算発表を延期しました。二部市場へのダウングレードで済むかどうか、上場廃止に追い込まれるかもしれません。発端は、数年にわたる期末会計操作(期末売上計上、翌期初差し引き)でしたが、これだけならば売り上げ不振に悩む企業が時折やっていることです。東芝の場合、常時そうせざるを得なかった原因が、アメリカの子会社ウエスティングハウスの経営不振によるものでした。原子力発電設備を主営業とするウエスティングハウス社の買収は、東芝が政府の依頼で引き受けたものです。その見返りはありました。東芝会長だった西室泰三は東京証券取引所から日本郵政の代表取締役と渡り歩きました。東芝の要人たちは政府の後押しで政府系企業や業界団体の要職を占めてきたのです。松下や日立との違いが歴然としています。現在の東芝の苦境は、政府の原子力政策の犠牲者と言えましょう。
 政府並びに官僚の汚さは、森友学園でも明らかとなりました。籠池代表そのものが胡散臭い存在ですから、なんら同情に値しませんが、本来解明されるべき事柄は、学園が9億円以上の土地をなぜ1億円強で買えたのか、汚染物質除去に要する8億円はどのように算出されたのか、であるべきです。安倍首相や官僚たちは、学園から売値で買い戻して一件落着とする算段です。
 籠池代表は、彼が所属する日本会議や安倍首相から裏切られました。落ちるところまで落ちたのですから、一切合切、内幕をしゃべったらどうでしょう。悪役がヒ−ローに逆転出来るチャンスです。皆が見直してくれますよ。

2017.3.14.記

日韓慰安婦問題合意について

 2015年12月28日、日韓双方で合意に達し、日本側は10億円を2016年8月に拠出しました。しかし、ソウル市日本大使館前の慰安婦像は撤去されませんし、釜山市日本領事館前にも新たな像が設置されました。もちろんアメリカ、カルフォルニア州グレンデール市にある慰安婦像はそのままです。
 もうこれっきりと言いながら、いつも約束を守らない韓国のことですから、いまさら驚くほどのことではありません。韓国も中国も、政治家たちは人気が落ち目になると日本カードを持ち出します。
 ですが、日本は決めたことは守る国です。10億円を返せなどみみっちいことは言いません。その代わり、写真のような「君の名は」の少女像を山ほど作り、韓国中に配りましょう。日本大使館前の慰安婦像の横にも並べて置きましょう。小さくキャプションをつけて…「約束を守らない君の名は?」。
 必ずやこの可愛い少女像は、慰安婦像より人気が出ることでしょう。

2017.02.20.記

取り返しのつかないトランプ大統領の施策

 大統領就任後、その権力を誇示するかのように、今日までに12本の大統領令を発令しました。オバマ前大統領に比べて一般的な人気のないことを意識しているのでしょう。苦心して作り上げられた前大統領の施策を、根こそぎ覆そうとしています。
 オバマ前大統領が阻止していた石油パイプライン建設許可は、ネイティブ・アメリカンの聖域を通過します。勝手に保護区を作って先住民を押し込めておきながら、そこにパイプラインを通すから立ち退けというわけです。西部劇でもお馴染みの筋立てですが、それが21世紀に繰り返されることに呆れてしまいます。
 国境に建てる壁の費用捻出は、メキシコからの輸入品に20%課税して賄うと発表しました。メキシコにとって痛手であることは間違いありませんが、それ以上に消費者物価の上昇が、アメリカ国民を苦しめることになりましょう。それは、高額所得者より庶民に負担を強いることになります。
 イスラエル寄りの姿勢は、ネタニヤフ首相に入植地拡大のフリーハンドを与えました。西岸地区のみならず、東エルサレムへも入植地を拡大しつつあります。さらにアメリカ大使館をエルサレムへ移転させれば、中東全域を敵に回すことになります。愚かなW・ブッシュ大統領でさえ考えなかった暴挙です。
 TPPからの撤退、環境問題に対する消極的姿勢は、中国の思うつぼです。トランプ大統領がアメリカ第一を唱えている間に、中国が自由貿易の旗手に躍り出ます。環境問題でも、自国の汚染問題から目をそらさせるため、さも熱心に取り組んでいるように演じて見せることでしょう。
 アメリカ第一主義は、アメリカを第二位の位置に導いていきます。
 トランプ大統領は、アメリカにとって取り返しのつかない愚かな施策を発信し続けています。それは、20年も30年も、アメリカを後退させることになります。アメリカ国民よ、目覚めるならいまのうちです。こんなはずじゃなかった、と嘆いても取り返しがつきませんよ。

2017.01.27.記

トランプ新大統領のエゴイスティックな就任演説

 トランプ大統領については、アメリカ国内のプア・ホワイト層、白人至上主義者、プーチンとネタニヤフ、諸外国のポピュリスト的政治家といった人々以外、すなわち良識ある人びとが皆懸念を表明しています。いまさらここにつけ加えることもないのですが…。
 それにしても、就任演説のレベルの低さには恐れ入るほかはありません。フィリッピンのデゥテルテ大統領が、彼はオレに似ていると言ったそうですが、エゴ丸出しの就任演説はアメリカの政治レベルがフィリッピン並だと証明しているようなものです。
 メキシコ国境に壁を建ててその費用をメキシコに要求するなど、他国への無法な干渉でしょう。中国を為替操作国と非難しながら、自らはツイッターでドルが高すぎるとドル安誘導しています。その自己矛盾に気づかぬふりです。分かっていてそれを押し通す厚顔さがいつまで通用するでしょうか。確かに中国は為替操作国ですが、いまは元安を食い止めようと躍起になっています。それを認識していないとすれば、経済音痴も極まれりと言うべきでしょう。彼はビジネスマンだと言われていますが、不動産業以外の経験はありません。製造業も、販売業も、金融業も経験していません。
 その彼が主張する保護貿易は、アメリカ国民に、高い品物を買わせることになります。国内生産重視は企業の競争力を奪い、貿易収支の赤字克服には結びつきません。敗戦後の日本は、貿易収支の赤字に苦しみました。当時子供だった我々でさえ、日本の品物を買おう、欲しくても外国製品は買うまいと努めました。個人主義の強いアメリカ人が、果たして大統領の言うバイ・アメリカンに従うでしょうか?
 2年後、4年後にどういう結果が出るのか、今現在の考えを記録しておいて、照合してみたいと思います。

2017.01.22.記

近視眼的安倍内閣外交

 最近の安倍外交の拙さには、まったく絶望(脱帽ではないのが残念)してしまいます。国連で核兵器禁止条約に反対したばかりでなく、最近では、南スーダンへの武器禁輸に反対しました。理由が聞いて呆れます。自衛隊を派遣しているから、現地政府の反感を買いたくないんだそうです。そもそも派遣すること自体が間違っています。ヨーロッパ各国が、シリアへ無差別的に爆弾を落とし続けるロシアを非難しようと日本へ呼びかけたところ、領土交渉している最中で相手の感情を傷つけたくないから、と言って仲間入りを避けました。是々非々を貫いてこそ、交渉相手も一目置くものです。こんなことだから、なめられてしまうのです。

2016.12.31.記

イスラエル入植地非難決議はオバマ大統領の最後っ屁

 12月23日、国連安保理は14対0で、ヨルダン西岸地区並びに東エルサレムへのイスラエル入植地が違法だと非難する決議案を採択しました。いつもなら拒否権を発動するアメリカは棄権しました。イスラエルのネタニヤフ首相のみならず、トランプ次期大統領もカンカンになっていますが、オバマさん、見事な最後っ屁です。少なくとも、イスラエルの味方はアメリカのシオニストしかいないことを世界中に知らしめました。トランプさんは、まったく逆の政策をとることでしょうが、決議をひっくり返すことは、中東全体を敵に回すことになります。そこに若干でもためらいが生じれば、最後っ屁は役に立ったのです。
 最後っ屁に乾杯!!

2016.12.24.記

福島除染に国費300億円

 政府は、原発自己に伴う除染費用を、東電負担原則を変更し、国費を投入すると閣議決定しました。資金を東電に貸し付けるというのならともかく、国費負担などを簡単に閣議で決めてもらっては困ります。よほど多額の政治献金を貰っていたのでしょうね。裏側がミエミエです。
 原発はコストが安いなどと、いまでも政財官のトライアングルは主張していますが、福島原発を見ればいかにコスト高かということが分かります。国費負担は、そのコストを国民に追わせようとするものです。そして東電の原価計算をアイマイなものにしてしまいます。
 野党の皆さん、もう少ししっかりしてください。

2016.12.21.記

新大統領トランプのもたらすもの

 おおかたの予想を裏切って、ドナルド・トランプがヒラリー・クリントンを破って、次の大統領になることが決定しました。彼が大統領になって一番喜ぶのは、イスラエルのネタニヤフ首相で、次はプーチン大統領ということになりましょう。小さな存在としては、シリアのアサド大統領も喜んでいることでしょう。
 もともと共和党は、イスラエル右派支持者の多い党です。ユダヤ人の入植地は増え続け、パレスチナ人の人権は無視されることでしょう。中東紛争の根源であるイスラエルが、ますます幅を利かせることになれば、イランはもちろん、サウジアラビアなどの親米派も態度を硬化させることでしょう。
 プーチン大統領は、まず経済制裁が解かれることを期待することになります。それだけではありません。ウクライナやグルジアへの圧力を強め、親ロ派の傀儡政権作りに乗り出すことでしょう。それにトランプ大統領がどう反応するか、感触を確かめながら、バルト三国、フィンランド侵略を企図するかもしれません。フィンランドはNATO加盟国ではありませんし、トランプ大統領はNATOに非協力的な発言を繰り返してきました。
 シリアはロシアの思うがままとなり、アサド大統領はほっとしています。
 国内的には、彼はパンドラの箱を開けてしまったと言えるでしょう。オバマ大統領の登場は、我々に民族差別の解消を夢見させるものでした。トランプの選挙期間中の主張は、民族間の憎しみと、宗教間の軋轢を増大させるものでした。かつてのアメリカには、道徳と節度でなんとかそれを克服しようとするムードがありましたが、トランプはその努力を打ち壊してしまいました。アメリカは影響力の強い国です。このムーブメントが世界的に広がることのないよう願うばかりです。
 ゼウスが人間世界に送り込んだパンドラは絶世の美女だったのですが、トランプはどうでしょうか。パンドラが蓋を閉めたとき、「希望」だけが残っていたと神話は語ります。はたして我々は、「希望」を見つけることができるでしょうか。
 ギリシア神話は、常に哲学的疑問を我々に投げかけます。プロメテウスは人間に火を与えたことでゼウスの怒りを買い、岩に鎖でつながれ、大鷲に肝臓を食べられるという刑罰を受けました。ゼウスは火をもらった方の人間にも懲罰を与えました。それがパンドラです。トランプは神が人間に与えた懲罰なのかどうか、それはこれからアメリカの人びとが答えを出すことになるのでしょう。
 おおかたの予想を裏切ったのですが、アメリカは、禁酒法を実施した国です。一時の感情に流されやすいことを考えればありえないことではなかったのです。しまったと思っているアメリカ人も多いことでしょうが、民主主義の国です。4年は我慢しなければなりません。
 世界中、自分のことだけしか考えないポピュリストがリーダーになりつつあります。ロシア、中国、そしてアメリカ、次はフランスかもしれません。ドイツのメルケル首相も支持を失いつつあります。世界は、いつ、どの段階で理性を取り戻すのでしょうか。

2016.11.09.記

TPP衆議院特別委員会可決とパリ協定批准遅延

 アメリカ大統領候補クリントン、トランプ両氏がTPP反対を表明している最中、自民党は衆議院特別委員会でTPP批准を強行採決しました。一方で、環境問題をテーマとしたパリ協定COP21を多くの国々が批准し、既に協定が有効に発効したにも拘わらず、日本はモタモタしていつ批准するのかわかりません。先の核兵器禁止条約同様、恥をさらし続けています。
 安倍首相政治の、なんというわかりやすさかと唖然としています。TPP批准で、企業からの献金が増えることでしょう。パリ協定批准は一銭にもなりません。こんな、哲学も何もないわかりやすさ、安っぽさが安倍政治の本質なのです。
 こんな人に、憲法改正を委ねるのですかね? 日本の将来がますます不安になります。

2016.11.05.記

核兵器禁止条約決議案に日本が反対
日本政府よ恥ずかしくないのか!!

 核兵器を法的に禁止しようという決議案が、オーストリアやメキシコなどの共同提案で国連総会に提出されました。123ヵ国が賛成票を投じましたが、アメリカやイギリス、ロシアなどの核保有国は反対票(38ヵ国)を投じました。中国は棄権(他に15ヵ国)しています。
 何たることか、日本は反対に回りました。アメリカの核の傘に守られていること、北朝鮮のたび重なる核実験等々が反対票を投じた理由だそうです。実のところは、アメリカから、棄権では不十分だと警告されたせいだと言われています。
 確かに、アメリカの核の傘で日本が守られているのは事実です。しかしそのアメリカから核攻撃された唯一の被爆国として、賛成票を投じるのが独立した国としての義務ではないでしょうか。日本人として恥ずかしい限りです。諸外国から、独自判断のできない国と見られています。こんなことだから、他国から嘗められるのです。

2016.10.29.記

三笠宮さまのご逝去を悼む

 10月27日、三笠宮さまが亡くなられました。100歳におなりでしたから年齢には不足は言えません。お子さまに先立たれるというつらい経験を幾度もなされたことについても同情の念を禁じ得ません。
 殿下のこれまでのご活動については各メディアが報道することでしょうからここでは触れません。従軍経験を持つ皇族として…統帥権を振りかざす軍部は、皇室をプロパガンダに利用してきました…発言してこられたうち、記憶に残るものを拾い上げてみます。
・偽りを述べる者が愛国者とたたえられ、真実を語る者が売国奴とののしられた世の中を私は経験してきた。
・満州事変は現地軍の独断。
・軍人に欠如しているものは「内省」と「謙譲」。
・馬にあべこべにまたがって尻ならぬ肩の方をひっぱたいて走ろうとした…開戦時の陸軍の作戦を評して。
・これは数の問題ではなくて、1人であっても虐殺は虐殺なんです…南京虐殺について。
・陸軍は満州事変以来大御心(天皇の意図)に沿わない行動ばかりしてきた…ポツダム宣言受諾を決意した昭和天皇に翻意を促すよう訴える阿南陸相を叱って。
・学問の自由を脅かし、やがては戦争につながる…建国記念日を旧紀元節に合わせたことに対して。
・女性天皇については、法の下の平等という観点から認めなければいけない。
・天皇に「死」以外に譲位の道を開かないことは新憲法の精神に反しはしないか。天皇に残された最後の手段は譲位か自殺である。
 三笠宮の発言が政府内で生かされることはありませんでした。それでも、さぞかし煙たい存在だったことでしょう。ご逝去によって、右翼がますます幅を利かせることになるのでしょうね。考えるだけでも憂鬱です。

2016.10.28.記

シモン・ペレス追悼

 イスラエルのシモン・ペレス前大統領が、9月28日死去しました。中東和平で、ノーベル平和賞を受賞したラビン首相、アラファト議長、彼、三人とも亡くなりました。イスラエルは強硬派が支配し、和平は遠のくばかりです。アメリカも、共和党の大統領候補トランプ氏が、エルサレムのイスラエル支配を認めると発言しています。彼の歴史不勉強は見苦しいといわざるを得ません。国境線を1967年戦争以前と定めた国連決議を、なんと心得ているのでしょうか?
 今年、アウシュビッツ強制収容所を訪問しました。ユダヤ民族の嘗めた耐えがたい苦しみに心から同情を禁じ得ません。しかし、だからといってパレスチナ人が2000年にわたって居住した土地を奪い、分離壁を造る権利はありません。
 シモン・ペレス氏は、晩年「夢見る人」と揶揄されました。半ば馬鹿にされたように見捨てられたのです。大統領職に祀り上げて、イスラエルがあたかも平和を希求しているように見せかけるための、看板として利用されただけです。
 このように右傾化する政治情勢を、世界中に存在するシオニストたちは歓迎しているようで、それがまたパレスチナ人を苦しめることになるのでしょう。

2016.09.29.記

ポピュリズムの危うさ

 フィリピンのドゥルテ大統領の、最近の言動は、自国を危険にさらすものです。南シナ海における領有権問題で、せっかくの国際裁判所の判決を利用せず、中国に接近を図っています。中国がロシアとともに、南シナ海で軍事演習したことには、一言もコメントしていません。オバマ大統領を侮辱して、会見予定をキャンセルされたことを、むしろ勲章のように演出しています。中国とロシアへの接近を、「ルビコン川を渡る」と、自らをシーザーに例え、英雄ぶっています。
 政治的に未熟な彼は、中国とロシアの真の怖さを知りません。大国を利用する方法を知りません。いまアメリカを利用しても、フィリピンにとってマイナスになることはありません。アメリカが、この地区で領土を拡張することなどありえないからです。しかし、中国は違います。クリミア領有で孤立するロシアは、友達が一人でも欲しい状態です。このような現状にあって、わざわざ強力な両大国にコビを売る必要はありません。アメリカを利用して、中国と交渉する方がフィリピンにとっていかに得かを理解すべきです。もし、彼がフィリピン単独で、中国と交渉できるなどと過信しているとしたら、それは彼自身だけにではなく、国民全体に不幸をもたらすことになるでしょう。
 ポピュリズムに乗って、強いふりで大統領になった彼は、英雄気取りで行動しなければ支持を失うと思い込んでいるのでしょう。
 イギリスのEU離脱の国民投票も、ポピュリズムの悪い面の現れです。ドイツのメルケル首相が人気を落としたのも、フランスのマリー・ル・ペンのような強硬派が人気を得たのも、みなポピュリズムの悪影響と言わざるを得ません。
 日本も、似たようなものです。憲法改正が可能な議席数を与党に与えてしまいました。戦前、戦中、国家がいかに国民を戦争に煽り立てたかを忘れてはなりません。目的達成のためなら、国は国民をだます可能性があることを忘れてはなりません。ポピュリズムの危うさを忘れてはなりません。

2016.09.28.記

 アメリカ議会は、2001年9月11日の同時多発テロの犠牲者家族が、サウジアラビアを相手取って訴訟を起こすことができるという法案(JASTA)に関し、大統領の拒否権を覆しました。大統領選挙前の人気取り政策のためです。任期切れ間近のオバマさんのことなどかまっちゃおれないというのが、下院348-77、上院97-1という票差となって現れました。根底に、黒人大統領にいい顔されてたまるかという白人至上主義者たちの底意地の悪さが見て取れます。
 確かに、同時多発テロ実行犯19人のうち15人がサウジアラビア人でしたが、サウジアラビアが国家としてテロを実行したという証拠はありません。損害賠償訴訟など成立するでしょうか。できるとしたら、理屈と膏薬は何にでもくっつく、といった類のものでしょう。まして、ブッシュ前大統領時代の事件であり、法案(JASTA)を提出するなら彼の任期中にすべきです。ポピュリストたちが、オバマさんを貶めるだけに動いたとしか思えません。
 2年ぐらいたったら、われわれは必ずやオバマ大統領を、偉大とは言えないかもしれないが良い大統領だったと思い起こすことになるでしょう。

2016.09.30.記

必見の映画「太陽の蓋」

 この映画は、2011年3月11日に起きた原発事故を、ドキュメンタリー風に描いています。もちろん劇映画ではありますが、当時の菅首相や枝野官房長官を俳優たちが演じています。ドキュメンタリー風と言ったのは、事実の推移を、忠実に再現しようとしている製作側の良心が見て取れるからです。
 事実をフェアに描けば、反原発と取られても仕方のない映画になります。東京電力の無能さが明らかになります。その隠匿体質が露見します。安倍首相の言うところの"under the control"が事実でないと証明されます。
 菅元首相が原発廃止と発言した途端、彼は政官財から総スカンを食い、結局は辞任せざるを得なくなりました。彼はスケープゴートにされたにすぎません。誰も、政官財の鉄のトライアングルに敵う者はいないのでしょう。そして、そのトライアングルは、原発事故を風化させ、再稼働へ再稼働へと民意を誘導しつつあります。
 もし東京電力が、この映画に描かれたことは事実ではないと主張したいのであれば、逆の立場の映画を作って発表すればいいのです。そのときは、メルトダウンを認めたのが、事故から5年も経った今年6月になってからだったことを、忘れないようにお願いします。
 それにしても、これだけの不祥事を起こしながら、誰一人罰せられないとは、日本七不思議の一つに加えたいものですね。
 忘れてならないのは、マスコミの責任感の薄さ加減です。当時、メルトダウンと言っただけで、その記者はマスコミの世界から干されました。広告収入に依存する体質は、電力会社の圧力に耐えきれません。庶民の味方のような顔をして、鉄のトライアングルの前に平伏している現状を自覚して欲しいものです。

2016.08.09.記

 舛添さんもセコけりゃ安倍さんもセコい

 都知事になった途端、お金の使い方で公私を忘れた舛添さんのセコさには、開いた口がふさがりませんが、参院選が終わった途端、沖縄・高江のヘリパッド建設とか、年金資金の運用赤字とか、政府にとってのマイナス要素が続々と発表される安倍内閣のセコさも、同様に開いた口がふさがりません。そのセコさのせいで、憲法改正までやられたんじゃたまったもんじゃありませんね。

2016.07.19.記

イギリス、EU離脱…ポピュリズムの怖さ

 理性的に考えれば、EU離脱がイギリスにとって、少しもプラスにならないことはわかりきっています。ところが、機を見るに敏なポピュリストたちは、移民問題や、EUによる主権侵害を言い立てて、イギリスを離脱に導きました。
 かつて世界一の国家だったという誇りが、この結果を招きました。その世界一の地位が、植民地から収奪した富に支えられていたこと、イギリスを目指す移民たちが、かつて植民地だった国々の人々であること、などには目をつぶりました。
 スコットランド独立投票では理性的に判断した国民が、今回は感情に押し流されました。ユーロ不加入維持、シェンゲン協定不加盟継続も、感情論の前では、力を発揮できなかったようです。
 そのスコットランドでは、EU残留派が多数を占めました。次のステップを予想してみると、なにか笑えないジョークのように思えます。スコットランドは、再び独立を試みるでしょう。独立したスコットランドは、EU加入を申請します。そのとき、北アイルランドやウエールズが、どういう行動をとるか予想がつきません。しかし、ポピュリストに踊らされた国民が直面するのは、イギリス分裂の危機です。
 EU輸出を目的にイギリスに工場を作った外国企業は、今後、ポーランドや中欧の国々へ移転して行くことでしょう。プライドではメシが食えないと悟ったとき、ポピュリストたちがどういう顔をするのか、しばらくは高見の見物をすることにいたしましょう。

2016.06.24.記

必読の書、「プラハの墓地」と「シオン賢者の議定書」

 「プラハの墓地」は、今年2月に亡くなったウンベルト・エーコの最後の小説です。前作「薔薇の名前」も「フーコーの振り子」も、偽書を取り扱っていましたが、この最後の作品は、「シオン賢者の議定書」を取り上げています。前作以上に手が込んでいて、主人公以外は、すべて実在した人物という凝りようです。
 世界最悪の偽書と言われる「シオン賢者の議定書」については、ノーマン・コーンの同名の書が参考になります。書名だけから想像すると、ユダヤ陰謀説のキワモノのようですが、しっかりした研究書です。
 この程度の偽書を、ヒトラーが信じ、ユダヤ民族虐殺の裏付けに使ったとは…、暗黒の歴史の底の浅さに、思わずため息をついてしまいます。

2016.06.17.記

必見の映画「サウルの息子」

 第二次世界大戦中の、ナチスによるユダヤ人大量虐殺に関する映画は、これまでも数多く作られてきました。その中には、強制収容所でナチに協力したユダヤ人看守を描いたものもあります。
 ハンガリー映画「サウルの息子」は、看守よりももっと下のクラス、ゾンダーコマンドが主人公です。ゾンダーコマンドは、ナチスが直接やりたくない仕事、ガス室への送り込みから、死体処理(運び出しから、焼却、灰の処理まで)を担当します。機密に属する仕事を命じられた彼らは、一般囚人に比べ、数か月長生きできるにすぎません。機密を維持するため抹殺されるのです。この「数か月」が意味する重さに圧倒されます。
 ゾンダーコマンドの一人サウルが、ガス室で死んだ自分の息子とおぼしき少年を、焼却処理ではなく、ユダヤ式の埋葬をしようと苦闘する過程が、一人称形式に近い手法で映像化されています。そのため、物語の展開を追うのに少々苦労しますが、あたかも収容所内にいるかのような臨場感があります。
 ユダヤ民族が嘗めた苦難は、ほかに比べようもないほどに悲惨なものです。しかし、いまのイスラエルの人々は、その苦難を脅迫の材料に使っています。
 イスラエルの建国は、現在の不安定な中東情勢の最大要因となっていますが、イスラエルの人々の傲慢不遜さが、火に油を注いでいる事実も否定できません。
 いい映画でした。はじめ恐れていた偽善性…ナチ協力者も人間だった的な…もほとんど感じさせませんでした。

2016.04.05.記

対エジプト、太陽光発電システム輸出?

 2月17日のYOMIURI ONLINEによると、日本とエジプトの間で、20メガワットの能力を持つメガソーラーと、容量30メガワット時の大型蓄電池設備の建設で合意に達したそうです。総工費約9200万ドル(約105億円)は、日本の円借款(長期かつ低金利)で賄われるとのこと。
 日本に、他国に輸出するだけの技術と余力があるのであれば、どうしていまさら原子力発電にこだわるのでしょうか。常々、安倍政権の政策を支持し続ける読売新聞が、このニュースを、何のコメントもなく報道するところに、政府とマス・メディアの癒着を見るようで、背筋が寒くなります。
 国内では、電力会社が太陽光発電の購入を制限しつつあり、政府もその動向を容認しています。原子力発電の継続は、原子力利用能力を向上させる…将来日本が核武装する際、その知識技術が必要不可欠だという噂を信じざるを得ないのでしょうか?
 近頃、最も腹に据えかねる報道でした。

2016.02.23.記

中国と北朝鮮
…人のタクラミの空しさ…

 中国の説得にもかかわらず、北朝鮮は原爆(水爆?)実験を実施し、長距離ミサイル(人工衛星?)を発射しました。中国は、対米交渉の駒として北朝鮮を利用してきましたが、その駒が命令に服従しなくなりました。
 中国にしてみれば、北朝鮮の崩壊は、韓国による併合と同義で、対米との緩衝地帯(バッファー)を失うことになります。多数の避難民が中国に流入するなどと、ゴタクを並べていますが、国境が崩壊すれば、避難民は南へ向かいます。
 2月10日の韓国の聯合ニュースは、金正恩総書記が軍の領袖 Ri Yong Gil を粛清したと報道しました。一部の報道では、投獄されただけだと伝えていますが、いずれにしても公の場から姿を消したことは間違いありません。粛清はシリーズ化しており、金正恩はいまも内部の反乱におびえています。もはや末期症状と言っても差し支えありません。中国は、どのようにケリをつけるか苦慮していることでしょう。
 中国が北朝鮮を将棋の駒として使うタクラミは、駒が独り歩きをはじめたため、アメリカと韓国にミサイル防衛システム構築の口実を与えてしまいました。中国の思惑からすれば、状況は一層悪化しました。
 南シナ海では、岩礁埋め立てが、アメリカの介入を招くに至りました。かつて、ヤンキー・ゴー・ホームを叫んだフィリッピンの群衆が、アメリカの軍事駐留を望んでいます。ヴェトナムも、かつての敵であるアメリカに秋波を送っています。
 中国の近視眼的政策が、多くの敵を作り、一党独裁の基盤を揺るがそうとしています。人のタクラミなど、長期的視野に立てば、なにほどのことがあるのでしょうか。14億の人口は、巨大な市場価値を持っています。ほっておいても、諸外国は投資します。それが停滞しているのは、一党独裁政権の過剰支配をきらう先進諸国が、どこまでのめりこめるかと判断しかねているからです。さらなる経済発展を阻んでいるのは、己自身です。
 漢や唐、元や清などが繁栄した時代、中国は政治や宗教、民族問題などに寛容でした。皇帝自ら、少数民族の妃を迎えて範を垂れました。中国は、他人に言う前に、歴史に学ばなければなりません。

2016.02.12.記

低級なアメリカ大統領選挙

 いまは候補者選びの段階ですから、お互いに強いふりをする宣伝合戦だとわかっているつもりですが、それにしても反省などしたことのない人々ばかりでうんざりです。
 そもそも、アル・カイダの創始者オサマ・ビンラディンを生み出したのはアメリカです。アフガニスタンに侵攻したソ連に対抗すべく養成したゲリラの中の一人がビンラディンでした。そしていま話題のISIL(イスラム国)は、もっと直接的にアメリカのせいです。イラクに侵攻し、独裁者サダム・フセインを倒しましたが、そのあとに生まれたのはシーア派中心の政権です。彼らは、イラクでは少数派であるスンニ派フセインの暴政に苦しんでいました。マリキ新政権は、スンニ派の官僚・軍人を追放しました。もちろん、アメリカの後押しがあってのことです。複雑なイラク国内事情を知らないアメリカの致命的なミスです。
 政権を追い出されたスンニ派の官僚や軍人たちが作り出したISIL(イスラム国)は、アル・カイダとは比べ物にならないほど、組織力・宣伝力・戦闘力に長けています。
 いま、アメリカの大統領候補者たちは、すべてをオバマ大統領のせいにして、ブッシュ時代に犯したミスを反省していません。たしかに、プーチン大統領に振り回されているオバマ大統領は、いささか頼りなく思えます。結局、彼は人種の壁を破った大統領として、記憶に残るだけかもしれません。
 しかし、ブッシュ政権の末期に比べて、あらゆる面での統計的な数字は改善されています。候補者たちは、そのことに一切触れません。世界的なアメリカの影響力の低下に我慢できないだけのことです。
 もちろん、いまは宣伝合戦の時期で、実際に政権を担当するようになれば、現実的な政策を採ることでしょう。しかし、世界観の欠如した彼らにどれだけ期待できるのでしょうか。

2016.02.07.記

独裁者・習近平

 習近平主席は、前任の江沢民や胡錦濤に比べ、圧倒的な権力を手に入れました。しかし、政治的にも経済的にも、困難な問題に直面しています。腐敗根絶をよりどころに競争相手を葬ってきましたが、直言するスタッフまで失う結果となりました。南シナ海での強硬な領土主張は、かつては嫌米だった国々を親米に向かわせてしまいました。
 経済的には、不動産バブルが崩壊し、新年早々株価は下落し続けています。市場操作の試みは失敗しました。共産党政府は、コントロール出来ない分野まで、その支配を及ぼそうと懸命ですが、力の限界を思い知らされるだけのことです。むしろ、通貨・元の自由化を促進することとなりましょう。世界は、中国経済のハード・ランディングを懸念しています。
 台湾の大統領選挙は、民進党の蔡党首の圧勝に終わりました。これも、習近平の強硬姿勢への反発とみていいでしょう。一度自由を味わった人々は、一党独裁の中国本土を嫌悪します。この自明のことが、共産党指導部には理解できません。台湾の結果は、当然香港へ波及します。
 最近の欧米の新聞では、習近平を清5代皇帝雍正帝に比較する論調が目立ちます。独裁色を強めれば強めるほど、友を失います。世界は、習近平を指導者と認めているわけではありません。13億の人口の市場価値を失いたくないだけのことです。
 習近平は、これからもいろいろと策を弄することでしょう。しかし、人のたくらみなど、あとから考えれば、こんなことも見落としていたのかと、後悔のほぞを噛むことになります。独裁者は、次第に視野が狭くなりがちです。習近平も、その先例に習いつつあるようです。

2016.01.18.記

映画「独裁者と小さな孫」

 この映画を作ったイランのモフセン・アフマルバフは、自作品の上映が禁止されたことに抗議して、2005年にヨーロッパへ亡命しています。この作品も、ジョージア=フランス=イギリス=ドイツ各国支援の下に制作されたという複雑な背景をもっています。
 物語は、ある架空の国の独裁者が、突然のクーデターで、小さな孫とともに国内を逃げ回るという、象徴主義的な寓話です。この種の作品は、えてして理屈っぽくなったり、教訓調が鼻につくものですが、さすがにアフマルバフ監督は、みごとなエンターテインメントに仕上げています。観客は、カダフィやプーチンや、ひょっとしたら安倍さんをイメージしながら、ハラハラドキドキ、二人の逃亡を見守ることになります。
 究極のテーマは、憎しみの負の連鎖を断ち切れるか、ということになります。聖書に出てくる黄金律は「人からして欲しいと思うことのすべてを人々にせよ」(マタイ福音書第7章12節)ですが、イエスが説く500年も前に、孔子が「己不欲所、勿施於人」(己の欲せざるところは人に施すなかれ)と弟子に語っています。論理的には、孔子の方がイエスの教えより、むしろ能動的だと言えます。
 そして、孔子とほぼ同じ時期に釈迦は、「怨みに報いるに怨みを以ってしたならば、ついに怨みのやむことがない。怨みを捨ててこそやむ」と説いています。
 映画の中で、アフマルバフ監督の問いかけた答えが、2600年以上も前に、すでに示されていました。そのことに驚きつつ、深い絶望感に囚われそうになっています。

2016.01.13.記

パリにおける多発テロ
…アラブのことはアラブに…

 11月13日夜から14日早朝にかけて、パリがテロの嵐に襲われました。いわゆるソフト・ターゲットと言われるレストラン、コンサート会場、サッカー・スタジアムなどが標的になり、129名の死者を出しました。イスラム国によるテロだと考えて間違いありません。
 10月31日に起きたロシア航空機墜落(エジプトからロシアへの便)も、犯行声明通りイスラム国によるものと断定されました。この墜落による犠牲者は、224名に上ります。
 テロを許せないのはもちろんです。しかし、イスラム国は突然変異で発生したものではありません。問題は中東の人々に内在する被害者意識です。被害者意識は、自らが対等以上にあると自認するまで消えることはありません。
 1948年のイスラエル建国以来、西欧諸国はイスラエルを支持し続けて来ました。さかのぼれば、第一次大戦時のイギリスの二枚舌政策に起因します。このときイギリスは、アラブとユダヤ双方に建国を約束しました。そして、オスマン・トルコの軍を追い出したあと、フランスとの間でサイクス・ピコ協定を結び支配地域を分け合いました。さらにさかのぼれば、16世紀以降の西欧各国による植民地統治があり、十字軍によるエルサレム征服までたどりつきます。
 問題を複雑化しているのは、同じイスラム教でありながら、スンニ派、シーア派と互いに争いあっていることです。イスラム国はスンニ派で、シリアのアサド大統領はシーア派に属するアラウィー派です。宗派間の争いは、多神教の風土に慣らされた我々の理解を越えます。ロシアとトルコによるシリア参戦は、問題をさらに複雑化しています。
 くりかえします。テロは許せません。しかし、歴史的背景を考えると、単純に西欧側を正当化できません。フェースブックでは、フランス国旗を自らの写真にかぶせる行為が、ちょっとした流行になっていますが、私はどうしてもその気になれません。
 アラブのことはアラブに任せましょう。それ以外に解決方法はありません。

2015.11.17.記

スーチンさん、急いてはことを仕損じますよ

 11月8日に行われた総選挙で、アウン・サン・スーチーさん率いる国民民主連盟(NLD)が圧倒的な票差で完勝しました。いかに軍事政権が人心を失っていたかを示す結果です。元軍人のテイン・セイン大統領も敗北を認め、スムーズな政権移譲を約束しました。憲法で大統領への道を絶たれているスーチーさんは、大統領の上の存在となると宣言しました。西欧各国は選挙結果を歓迎しながらも、この独裁的な発言に少し疑問を抱いたことでしょう。
 スーチーさんの人気はいまが頂点です。ロヒンギャ族を含む少数民族対策、経済政策、外交…とくに中国との関係、そのいずれを誤っても、人気は急激な下降線を描くことでしょう。
 スーチーさんにとって、エジプトでの事例、モルシー大統領の失敗は、反面教師として学ぶところが多いはずです。「アラブの春」後の総選挙で、ムスリム同胞団が勝利し、ムハンマド・ムルシーが大統領になりましたが、彼は急ぎすぎました。宗教色の強い憲法改正を推進したため、支持層だった若者たちの反発を招き、結果的に軍事政権を再来させてしまいました。
 スーチーさんにいま必要なことは、自らに政治能力があることを地道に示すことです。憲法改正を急いではなりません。急いてはことを仕損じます。急がば回れです。

2015.11.14.記

貧して鈍したイギリス

 10月20日から4日間の日程でイギリスを国賓として訪れた習近平国家主席の、ご満悦な表情が示すように、イギリスは国家を挙げて彼を歓迎しました。皇室も駆り出され、エリザベス女王も馬車に同乗し、イギリスが如何に歓待しているかを身を以って示さざるを得ませんでした。チャールズ皇太子が出席しなかったのは、皇室のせめてもの抵抗だったのかもしれません。
 ジョンブル魂と自らを誇示した誇り高いイギリスは、まったく情けないほど貧して鈍しました。日本の江戸末期を描いた時代小説によく出てくる、悪徳商人に頭が上がらない貧乏城主みたいで、思わず笑ってしまいます。
 かつてキャメロン首相は、ダライラマ14世と面会したことで、中国から手ひどくしっぺ返しを受けました。今回の習主席訪英での、気の配りようといったら、こちらが気の毒になるくらいです。記者会見で人権問題について質問された習主席に代わり、彼は「経済関係を通じて親交を深めれば率直な意見交換ができる。そのうえで討議して行けばよい」と答えています。
 アヘン戦争という恥ずべき行為を謝罪したというのであれば、それは誇り高いジョンブル魂にとって、決して恥ではありません。なにせ、あの戦争は、貿易赤字を解消するためアヘンを売りつけ、それを焼却した清王朝を攻撃し、あまつさえ賠償金を取り上げた上、香港租借まで飲ませたのですから。日本も中国相手に、数々の欺瞞工作による戦争を仕掛けましたが、アヘン戦争ほどの恥ずべき行為はしていません。
 その傲慢さはほかの国々の顰蹙を買ったものでしたが、その国がここまで品位を貶めてへりくだるとはね…イソップ寓話のキリギリスよりもみっともない。
 エリザベス女王の心中や如何に、察するに余りありといったところでしょうか。かつてナチス・ドイツに徹底抗戦したチャーチルが、地下でさぞ嘆いていることでしょう。

2015.10.23.記

ロシアのシリア参戦に驚くアメリカ

 オバマ大統領の思考能力の欠如か、CIAの能力低下か、その両方でしょうが、ロシアの突然のシリア参戦にアメリカが驚き狼狽しています。クリミア半島領有から、ウクライナ東方の親ロシア(反政府)グループへの武器・兵力供与に至るまで、アメリカ政府は、プーチン大統領のしたたかな政策に振りまわされっぱなしです。ロシアは、シリアのアサド大統領に敵対する勢力はすべて、たとえアメリカが支援しているグループであろうと、かまわず攻撃しています。おそらく秘密裏に兵力も投入していることでしょう。
 ロシアと中国の拒否権行使が、アサド大統領を延命させ、ISILの台頭を招いてしまいました。アメリカは、いくつかあったチャンスを、すべて見逃してしまいました。化学兵器使用が武力介入のレッドラインだと言いながら、アサド大統領が化学兵器を使ったときに逡巡し、ロシアの、シリアの化学兵器除放棄という外交政策に、まんまとしてやられました。いまISILと真剣に戦っているのは、アサドに忠実なシリア国軍と、イラクとの国境に存在するクルド勢力に過ぎません。そのクルド勢力を支援しなければならないアメリカは、同盟国のトルコに裏切られています。エルドアン大統領は、ISIL攻撃を名目にイラク国境付近のクルド勢力を攻撃しています。その行為は、ロシアのアサド大統領支援と、目的は違っても、得られる結果は同じです。
 アメリカは、ロシアが拒否権を行使したとき、もっと戦略的説得しなければなりませんでした。ロシアの最大の関心事は、この国が地中海に持つ唯一の軍事基地の確保にあります。その維持を保証すれば、アサドの次に誰が来ようとロシアは心配しないで済みます。アメリカには、その戦略が欠けていました。
 クルド人の独立を、イラクの北西部に認めれば、ISILの台頭は防げました。アメリカには、その戦略が欠けていました。
 ここまできて、さあどうするアメリカということになります。大統領選挙を目前にして、すべてはオバマのせいにして、シリアなど彼方の国の問題と忘れてしまうのでしょうか。

2015.10.2.記

歴史に汚点を残した安倍首相
…強行採決された集団的自衛権法案…

 数を頼む自民党が、集団的自衛権法案を成立させました。公明党は何の役にもたちませんでした。前回の衆議院選挙で、民主党のあまりのだらしなさに失望した大衆は、愚かにもこぞって自民党に票を投じました。いまごろになって、選挙公約で、安倍さんは経済のことは言ったが集団的自衛権のことは一言も言わなかった、と言ってももう遅い。2/3以上の衆院議席を、与党グループに与えたのが間違い。
 もっとも、あまり頭の良くない安倍さんに、知恵をつけた悪い奴がいる。「憲法を変えるのは大変だから、解釈変更で行きましょう」と甘い声で囁いた奴がいる。その男は高村副総裁。もはや政治生命も終わりかけたロートルが、目立ちたいばかりに、砂川判決を拡大解釈する方法を、安倍首相に伝授しました。おかげで、自民党副総裁の地位は安泰。
 中国にリーダーの地位を脅かされつつあるアメリカにとって、自ら尻尾を振って媚びを売る日本の集団的自衛権法案成立は歓迎すべきものと映りましょうが、現場の軍責任者は、日本の協力など当てにしていません。むしろ足手まといくらいに思っています。その証拠に、最新の軍事機密や武器が、日本にもたらせることはありません。もっともその事実は、日本にとって不幸なことではありませんが…。
 憂うるのは、中村哲さんをはじめとする方々の安全。日本のイメージを最も高めてくれているボランティアの方々の命が脅かされる法案なんて、くそくらえと言いたいですね。
 閑話休題。中村哲さんほど、ノーベル平和賞にふさわしい方はいないと思うのですが、きっと実現しないでしょう。彼の歯に衣着せぬ政府批判は、これまでも外務省幹部をイラつかせてきました。ノーベル賞検討委員会への推薦はおろか、もし名前が出てきたら阻止に動くことでしょうから。

2015.9.19.記

プーチンの醜い野望
…拒否権が生み出す罪悪…

 ロイターの報道するところによると、7月29日(水)国連安全保障理事会において、ロシアが拒否権を行使しました。議題は、2014年7月に起きたマレーシア航空機撃墜事件を国際司法裁判にかけるかどうかというものです。提案国は、マレーシア、オーストラリア、オランダ、ベルギーの4ヵ国です。拒否権発動は、もし裁判が始まれば、ウクライナにおける親ロシア反乱グループがミサイルを発射したこと、そのミサイルはロシアから供給されたものであること等々、ロシアにとっての不都合が明らかになるからです。
 ロシアは、議題が政治的な意図で提出されたもので真相解決には資さないからと弁明していますが、理屈と膏薬はなんにでもくっつくの類で、まったく説得力に欠けます。15メンバー国のうち11ヵ国が賛成、中国、アンゴラ、ベネズエラが棄権しています。このような、横車的拒否権の行使は、もはや罪悪と言わざるを得ません。戦後70年、拒否権は世界的な正義にとって、障害物になりつつあります。同じ議題を総会にかけて、2/3の賛同があれば、拒否権は無効になる位の改善が、最低限必要な時期です。
 それにしても、プーチン大統領の権力への執着ぶりのおぞましさ、その取り巻きの不道徳さには、空いた口がふさがりません。ロシア国民は、愛国主義の高揚に目をくらまされているだけです。プーチンの野望が、果たして国民を幸せにしているでしょうか。クリミアやウクライナ東部のロシア編入が、どれだけロシア国民を豊かにするでしょうか。経済制裁で、むしろ貧しくしているだけではないでしょうか。
 政治家は、国民を幸せにしてナンボという存在です。その意味では、プーチンも、アサドも、金正恩もみな落第です。

2015.08.01.記

トルコの危険な賭け

 トルコがアメリカの要請に応じて、テロリスト・グループ、イスラム国を攻撃するための空軍基地使用を認めました。イスラム国は、世界の憎まれっ子ですから、この承認はごく常識的なものと受けとめられました。ところが、トルコは、この承認と同時に、国境付近のイスラム国グループとクルド族への直接攻撃を始めました。
 もともと、トルコは、隣国シリアのアサド大統領排除を強く主張していました。その力を弱めるため、ひそかにイスラム国への援助を行っていると疑われてきました。今回の突然の方針転換の、真の狙いはイスラム国ではなくて、クルド族自治的軍事グループを攻撃することにありました。
 シリアからイラク国境付近を大規模に制圧しているイスラム国と、いま真剣に戦っているのはクルド族自治的軍事グループだけです。シーア派のイラク軍は、武器を放棄して逃げ回っています。スンニ派の多いほかのアラブ諸国は、口では反イスラム国を主張していますが、それぞれの国内状況から、陸上軍の派遣など毛頭考えていません。アメリカもNATOも、イスラム国壊滅には、クルド族を頼りにせざるを得ません。国を持たない最大の民族といわれるクルド族は、トルコ、シリア、イラクの国境付近に自前の国を独立させたいと望んでいます。その意欲が、屈強なイスラム国軍事力に対抗する力に結びついています。
 国内でクルド族対策に悩むトルコは、イスラム国攻撃の大義名分の下、実際は国境付近のクルド族排除を意図しています。通常であれば、シリア及びイラクの国境を軍隊が越境するのは戦争行為です。どさくさに紛れて、トルコは、とんでもないことを始めたと言わざるを得ません。一応警察力と称していますが、軍隊であることに間違いありません。
 トルコのエルドアン大統領は、最近独裁色を強めてきました。経済発展の成功を背景に、選挙では連勝続きでした。おそらく権力という魔力に取りつかれたのでしょう。独裁色を強め、宗教による人心掌握を図りはじめました。建国の父、アタチュルクの意図した政教分離を無視し始めました。それがたたったのか、支持政党のAKPは6月7日の選挙に敗れ、過半数を割り込みました。
 ナチがユダヤ民族への反感を利用したように、エルドアンはクルド族を政争の材料にしようとしています。危険な賭けと言わざるを得ません。むしろトルコは、イラクの反対を押し切ってでも、クルド族独立に手を貸した方が、国益にかなうと思われます。それはおそらく、トルコのみならず、地域の平和に寄与することでしょう。
 それにしても、アラブ諸国の、蜂の巣をつついたような混迷ぶりをどう表現したらいいのでしょう。それもこれも、ブッシュ大統領とネオコン・グループが始めたことですがね…。

2015.07.27.記

東シナ海中国ガス田開発ニュースのバカバカしさ

 政府は、国民をどこまでバカにするつもりでしょうか。7月22日、写真付きで、東シナ海における中国のガス田開発の状況を発表しました。いかにも危機がそこに迫っていて、いますぐ、集団的自衛権の法律成立が必要だと言わんばかりです。
 発表された中身を注意深く見ると、中国の油井とおぼしきものは、すべて日中中間線の中国側に作られています。それも、2013年に3基、2014年に5基、今年に入って4基といった具合です。危機を感じているのであれば、なぜ2013年に発表しなかったのでしょうか。外交的配慮で伏せていたのであれば、いまごろ、なぜ発表するのでしょうか。
 菅官房長官の記者会見では、2008年の合意に反すると言っていますが、すべて日中中間線の中国側に作られている以上、違反と言いたてる根拠は薄弱と言わざるを得ません。軍事的なヘリポートを作るのではないかとか、レーダーを設置するのではないかと言っていますが、どこの国の洋上油井にもヘリポートがあります。識者の弁では、海底ガス田は国境をまたがっており、中国が開発に成功したらサイフォン効果で吸い上げられると言っていますが、これは日本が成功した場合でも同じことでしょう。2008年の共同開発合意は、お互いのそのことを了解しあって成立したものです。中国側は、日本にイニシアティブを握られたくないだけです。
 日中中間線を尊重している点、南シナ海のサンゴ礁埋め立てとは、状況が違います。日本も、日中中間線を尊重して、日本側の場所で開発に取り組めばいいだけの話です。集団的自衛権とは関係ありません。
 政府は、ミエミエの世論操作をすべきではありません。政治家というものは、どこまで下品になれるのでしょうか。みっともないことおびただしい、恥を知れと苦言を呈します。 

2015.07.24.記

三学者の勇気に乾杯

 6月4日の衆議院憲法審査委員会で、憲法学者三名が、集団的自衛権の行使容認を柱とする新たな安全保障法案について、憲法に違反すると明確に発言しました。与党が推薦する有識者が憲法違反だと言ったのですから痛快です。記録に値するので名前を記しておきます。自民、公明、次世代各党推薦の長谷部恭男(早稲田大学教授)、民主党推薦の小林節[慶応大学名誉教授)、維新の党推薦の笹田栄司(早稲田大学教授)の三氏です。
 日本は中国とは違ってデモクラシーの国ですから、集団的自衛権に賛成の人がいても当然ですし、アメリカ一辺倒の人がいても別に異論はありません。ですが、集団的自衛権の行使容認を憲法解釈でやろうとする与党は、明らかに間違っています。どうしても強行したいなら、憲法を改正すべきです。
 私の意見は、「日本は法治国家?集団的自衛権閣議決定」(2014.7.2.記)、「憲法第9条を生かす手立てはないか」(2014.5.12.記)にも書いたとおり、この法案には反対です。それでも、国会議員の3分の2が憲法改正に賛成した場合は、それに従います。
 これまでも政府は、何かと言えば有識者の第三者委員会を作って、自分の主張を代弁させ、責任逃れをしてきました。今回は、そうは上手くことが運びませんでした。なぜなら、与党推薦の学者すら賛成できないほど、憲法解釈ですまそうとする無責任さが目に余ったからです。

2015.06.05.記

天皇皇后両陛下パラオ訪問
…鈍感な保守政治家たち…

 4月8日、天皇皇后両陛下がパラオを訪問されました。憲法上政治的発言が許されないことを、両陛下は充分にわきまえておられます。国政を担う政治家たちは、今回のパラオ訪問に込められた両陛下のご趣意を感得しなければなりません。
 嘆かわしいことに、保守的政治家たちの感度の鈍いこと鈍いこと。これは自民党だけではありません。次世代の党はいうに及ばず、民主党にも鈍感な政治家がゾロゾロいます。
 第二次世界大戦で戦死した兵士たちの慰霊を慰めること、迷惑をかけたアジア諸国に謝罪すること、両陛下はご自身の行為で、安倍首相以下にご意向を示しておられるのです。
 1978年A級戦犯が合祀されて以降、昭和天皇は靖国神社への参拝を中止されました。平成天皇もその立場を継続しておられます。なぜそうなさっておられるのか、鈍感な政治家たちはまったく察知しようとしません。一部の保守層の票欲しさに徒党を組んで参拝し、戦没者へ哀悼の意を表するのにどこが悪いのかとうそぶいています。
 教義から言えば、天皇陛下は神道の最高の地位におられます。その方が参拝できない神社があるなど考えられません。天皇は、憲法を尊重し、一切直接的な発言はされません。政治家は天皇のご意向を拝察し、A級戦犯を合祀から外さなければなりません。
 安倍首相以下自民党の面々が、集団的自衛権とか、憲法改正とか、ますます右傾化して行っています。この傾向を、果たして天皇はどう見ておられるでしょうか。おそらく、深く憂えておられるのではないでしょうか。それが今回のパラオ訪問ではないでしょうか。
 鈍感な保守政治家たちよ、寝ぼけるな、目覚めよ、もっと感度を磨け!! 

2015.04.08.記

アジアインフラ投資銀行(AIIB)参加問題
独自外交能力の欠如

 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するかどうかで迷いぬいた日本、中国が設定した締切日3月31日をむかえて、参加見送りを決定しました。アメリカのご機嫌を損なうまいと、いじましいまでの忠臣ぶりです。この問題は、イギリスが参加を表明した時点で流れが決定しました。このターニング・ポイントで、日本は態度を決めなければならなかったのです。
 独自外交を維持するドイツは、友好国アメリカの意向を充分に承知したうえで参加を表明しました。ドイツにとってロシアは、日本と中国の関係によく似ています。そのドイツに比べ、日本の外交のひ弱さが目立ちます。
 参加を表明した各国は、腹の底では中国を快くは思ってはいません。しかし、14億という人口の持つ消費需要は無視できません。むしろ積極的に中国を世界市場へ引っぱり出す機会と捉えています。通貨・元の価値を、一党独裁の共産党が管理する不自然さを正すチャンスでもあります。
 いまとなっては参加を表明するなど、みっともないことは出来ません。アジアインフラ銀行が、融資条件として、該当プロジェクトへの入札資格を参加国に制限する可能性は十分に考えられます。日本企業は、その不利を克服しなければなりません。世界銀行、アジア開発銀行のさらなる活性化を図る必要があります。そしてなによりも重要なことは、日本の技術、製品の優秀さを一層推進させることにつきましょう。政治は三流でも、経済は一流なのですから。

2015.04.01.記

沖縄米軍基地問題はもっとていねいな対応を

 普天間基地の移転問題で、辺野古沖埋め立て作業停止を求めた翁長知事に対し、防衛大臣の要請を受けた農林水産大臣が知事勧告の無効を宣言しました。翁長知事を追い詰めれば、彼のとれる最後手段は、裁判案件として争う方法以外になくなってしまいます。そこまで追い込んではなりません。
 尖閣問題を抱える日本にとって、沖縄の軍事基地は動かしたくても動かせない絶妙の位置にあります。日本にーー政府にーー選択の余地はありません。何としてでも沖縄県民に納得してもらわなければならないのです。
 翁長知事の得票は、全選挙区で前知事を上回りました。その県民の意志をしっかり受けとめなければなりません。それにしては、政府の拙速ぶりが際立っています。拙劣の極みと言わざるを得ません。
 沖縄を経済特区にし、資産課税や法人課税の軽減化を図り、日本のどこよりも豊かな県にしなければなりません。失業ゼロの県、県民所得全国ダントツの県を実現して、はじめてモノが言えると、政府は認識を改めなければなりません。
 (それにしても、この混乱の原因は、民主党の鳩山元総理にあります。その脳天気男が、ロシアのクリミア併合は合法だと発言しました。彼を禁治産者にする方法は無いものでしょうか。)

2015.04.01.記

東電の厚顔・無恥を許してよいのか

 国が肩代わりして東電に請求している除染費用が、598億円に上ること、かつ未払であることを新聞が報道しました。東電に言わせると、法的に負担の義務があるかどうか検討中だとのこと。疑問の余地などあるはずもありません。なぜこれほど無責任でいられるのか、東電の体質そのものにメスを入れる必要がありましょう。
 国が実施した除染費用は2013年度末で7200億円に達しており、自治体肩代わりの費用も4400億円に上ると報告されています。東電は、大震災の被害者として、知らぬ顔の半兵衛を決め込むつもりのようです。
 東電がこれほどあつかましくのさばっていられるのは、事故検証を政治的に利用した政治家たちの責任でもあります。自民党の面々は、東電の責任を明確にしないまま、民主党の不手際を追及しました。原発廃止を打ち出した菅元首相は、完膚なきまでに潰されました。東電は、もっけの幸いと、津波による全電源喪失を、すべて自然大災害のせいと責任転嫁を図りました。
 自民党は、これまで多額の献金をしてきた電力業界を不利に扱う訳にはいかなかった…これが東電の厚顔・無恥を招いた最大の理由です。
 国が東電に請求して未払が続けば、その利息は税金から支払われるとのこと、これまた納得いかない話です。もっとも、こんなことを許す政治家を選んだ国民が悪いと言われればグウの音も出ませんがね…。

2015.03.31..記

映画「無知の知」
…それでも原発を稼働させるのか?…

 ドキュメンタリー映画監督石田朝也は、外柔内剛、一見お人よしに見えて、相当にしぶとい人のようです。
 映画の題名は、ソクラテスの言葉(弁明)「自分は何も知らない」ことを自覚しており、ほかの無自覚な人より、その点だけが優れているようだ…から来ています。英語では、I know nothing except the fact of my ignorance. と表記されています。聞く相手が腹立たしくなるような、謙遜の言葉です。石田朝也は、「私自身は原発について何も知らない。だからこそ福島に行って、見て、聞いてみなければならない」と言うことを知っている、とパンフレットに記しています。
 石田監督は、全身から善意のオーラを発散して、関係者にインタビューして廻ります。退去を余儀なくされた被害者の方々をはじめ、菅元首相、斑目前原子力委員会委員長などが、聞き手の一見素朴な質問態度に応じて(だまされて)、本音で喋っています。それをそのまま、加工せずに、観客の前に提供しています。あるいは、そのように見せかけていると言っていいでしょう。
 鑑賞後は、多分、ほとんどの方々が原発に反対したくなるだろうと思います。私は、もともと反対派ですから、この石田監督のしぶとさに拍手を送りたくなりました。
 当然のことながら、東電の清水前社長、勝俣前会長はインタビューに応じていません。もちろん安倍首相も。
 最近のベストセラー「原発ホワイトアウト」(若杉冽著)にも記述されていますが、総合原価方式で生み出す献金の仕組みが、政・官・財の黄金のトライアングルによって固く守られています。原発安全神話は崩壊しましたが、献金の仕組みは絶対不可侵のままです。彼らから見れば、この映画も、反対派のデモも、どこかに蚊がさした位にしか感じていないのでしょう。
 そのおかげで、原発事故の後始末に要する金は、全部納税者の負担になるというわけです。当然、廃炉費用も、納税者が負担しなければなりません。見えない献金は維持されていると言うのに…。
 泣き言は止めて、それを知っただけでも、この映画は一見の価値があります。

2015.01.30.記

寛容は死語か?
…フランスのイスラム過激派テロ事件…

 1月7日から9日にかけて、パリ近郊でおきたイスラム過激派によるテロ事件は、全世界を震撼させました。被害者は17名、射殺されたテロリストは3名ですが、これで収まるとは思えません。これによる西欧各国の右傾化傾向も懸念されます。日本も、その流れなしとはしません。
 解決策としては、民族間、宗教間の融和しかありませんが、政治的に利用しようとする輩の声ばかりが響き渡っています。庶民としては、それぞれが寛容であろうとつとめるだけです。
 表現の自由は絶対に守られなければなりません。しかし、そこには節度があってしかるべきです。キリスト教徒にとって、イエスをカリカチュア化されればきっと不愉快であるに違いありません。そうであれば、ムハンマドを戯画化することには重々留意すべきでしょう。
 一方で、イスラム教宗教指導者たちは、もっと積極的に寛容を説かねばなりません。ヨーロッパの中世は、キリスト教がもっとも不寛容だった時代です。その当時、イスラム教は、他宗教に寛容なことで有名でした。左の絵は15世紀ペルシャの細密画(ミニアチュール)です。天使ガブリエル(中央)が、アリー(左)の武勲を預言者ムハンマド(左)に告げている図です。イスラム教では、絵画そのものが否定されていますが、かつては許容されていたことを、この絵は示しています。ファトワを連発する宗教指導者たちは、宗教を政治として利用しているに過ぎません。
 寛容が死語になってはならないのです。

2015.01.15.記

今年の初夢

1.ロシアがEUに加盟し、NATOの一員となる。通貨下落、ウクライナ、チェチェン、グルジアなどの諸問題が一気に解決する。
2.中国が複数政党制を採用する。香港、マカオ、チベット、新彊は勿論、台湾併合も問題なく前進する。尖閣の棚上げも可能となる。
3.イスラエルが自国の核兵器を廃絶し、中東を非核ゾーンとするよう提案、宣言する。
4.イランが核兵器開発を断念する。
5.パレスチナを国家として国連が承認する。
6.日本が原発再稼働を断念し、全原発廃炉を宣言する。
7.靖国神社がA級戦犯合祀を止め、天皇が参拝できるよう条件を整える。
以上、夢は夢で、実現することなど望めないのでしょうね。それにしても、問題解決の答えの簡単明瞭なことに驚かされます。

2015.01.01.記

「モサド・ファイル」
今年読んだ最も胸糞悪い本

 イスラエルの諜報機関モサドの違法な活動ぶりは、これまでもさんざんメディアを賑あわせてきました。この本は、イスラエル建国後、国の安全を脅かす存在を、いかに数多く殺し続けて来たかを叙述しています。マイケル・バー=ゾウハーとニシム・ミシャルの共著となっていますが、ゾウハーの比重がかなり重いのではないでしょうか。
 マイケル・バー=ゾウハーは、これまでも、「パンドラ抹殺文書」や「ベルリン・コンスピラシー」などの、優れたスパイ小説を発表してきました。アイタン・ハーバーとの共著ではありますが、ミュンヘン・オリンピック(1972年)におけるイスラエル選手殺害事件を描く「ミュンヘン」の作者でもあります。
 しかし、優れた作家ではあっても、彼はイスラエル人である限界を超越できていません。国際人にまでは成長していません。この本は、隠された事実を暴露する本ではなく、モサドの数多くの勝利を記録したものです。
 胸糞の悪さは、すべてそこに起因します。
 彼は、本書の最後にユダヤの古いことわざを引用しています。「だれかが殺しにくるのならーー立ち上がって、その男を先に殺せ」。だとすれば、同じ言葉をアラブ人が発し、実行することを容認しなければならなくなります。そんなことがイスラエル人に出来るでしょうか。
 イスラエルが核兵器を保有していることは、公然の秘密となっています。それでいながら、他国には認めないというのは、身勝手と言うものでしょう。これまでイラクやシリアの原子炉施設を空爆で破壊してきましたし、いまもイランの科学者たちを暗殺しつづけています。その行為を正当化するには、まず自国の核兵器を廃絶するしかありません。中東を非核ゾーンにしようと提案し、みずから実行するしかありません。
 この本には、他国からの攻撃を非難する言葉はあっても、自国の行為を反省する文言は一字もありません。ハマスがテロ集団で、その幹部を殺しても容認されると主張するのであれば、イスラエルはテロ国家と言わねばなりません。いみじくも、著者は最後になって、「イスラエルは、またもや孤立していると感じている。」と書いています。孤立はみずからの行為が招いたものです。
 イスラム国(ISIS)の出現は、すべてイスラエルの責任だとは言いませんが、要因の一つであることは否定できません。
 そんなわけで、ペーター・コーヘン(元アムステルダム大学教授、ホロコーストを生きのびたユダヤ系オランダ人)の、「イスラエルの国家の廃止」という意見に賛同したくなります。「モサド」は今年読んだ本の中で、一番胸糞の悪くなる本でした。

2014.12.17.記

原発再開へ、なりふり構わぬ政官財の面々

 原発再開へ向けて、ゴールデン・トライアングル・政官財は、結束を固めてその活動を強化推進しています。円安の影響もあって、輸入原油価格が高止まりし、火力発電をコスト高にしている事実は認めます。しかし原発を再開した場合、どのような計算で、赤字に苦しむ電力各社が黒字化するのでしょうか、理解に苦しみます。東電・福島原発廃炉化に、今後どれだけの費用を要するのか見当がついたとでも言うのでしょうか。発電コストを計算する際、そのリスクを計算に入れると、水力や火力など、他の発電方式より割高につくのは幼児でも計算できます。絶対の安全が保証され、リスクをコストに入れなければ、最も安価に発電ができて、大気汚染も最小にとどまることでしょう。しかし、絶対の安全など、どこにもないことは、福島で体験ずみです。コストだけ計算すれば、石炭による火力発電が最も安価だと言う調査報告もあります。日本の技術をもってすれば、脱硫装置の改善などお茶の子さいさいでしょう。なぜそうしないのでしょうか。
 九電が10月に、太陽光発電の買取中止を宣言して以来、他の電力会社も追随の動きを見せています。理由は電力の安定供給に支障をきたす恐れがあるということです。太陽光発電が、夜、発電できないことは、買い取り制度が始まる前から分りきったことです。そうであれば、政官財あげて蓄電方法の開発に取り組むべきでしょう。常温での超電導が実用化しない限り大量の蓄電が難しいと言うのは、怠慢を隠すための屁理屈に過ぎません。蓄電が難しいという弁解も耳にしますが、本格的に研究しているのでしょうか。揚水発電も一種の蓄電と言えます。購入した太陽光電力を揚水に使い、必要に応じて水力発電に使えば安定供給に資すること大と言えましょう。
 要するにお役人主体では、開発革新が進まないという典型的な例と言えます。分野は違いますが、トヨタは燃料電池車の開発に成功しました。換言すれば、安定電力供給を錦の御旗にして原発再開を狙っている、と言えるのではないでしょうか。
 われわれは、代替電力購入分として、余分の電力代を負担しているのというのに、政府は電力会社の意見しか聞く耳がないようです。
 代替電力は、太陽電池発電に限られている訳ではありません。風力、波力以上に有望なのが地熱発電です。世界でも有数の火山国でありながら、総発電量に占める地熱発電の割合は、フィリピンやメキシコ、アイスランドに遠く及びません。何が何でも原発再開に持ち込みたい政官財は、地熱のことなど口の端にも上そうとしません。
 原発再開しなければ、原子力に関する研究者や技術者がいなくなるという人もいます。いつでも原爆開発ができるよう、原発を維持すべきだという右翼もいます。まったく理屈と膏薬はなんにでもくっつくものなのですね。
 福島原発の廃炉に何年かかるか分りません。全国にある耐用年数を過ぎた原発の、廃炉に要する年数も考慮しなければなりません。廃炉を研究する技術と再開する技術とはまったく異なるものでしょうか。原子力研究の技術者は、これまで以上に必要なのです。
 原発から出る放射能汚染廃棄物を、いまだに、処理する方法が開発されていません。特殊金属に密封して地下深く埋めると言っても、地震国日本の、どこに安全な埋蔵場所があるのでしょうか。東電は否定していますが、現在でもなにがしかの汚染水が太平洋に流出しています。それだけでなく、地盤を凍結して地下水の流出を止めるなどと言う、噴飯もののアイディアを、大真面目に実験して、多額の資金を浪費しています。
 これだけ否定要件を前にしてもなお、政官財は原発再開を推進しようとしています。よほど、濡れ手に粟の、金づるが期待されるのでしょう。既得権益に拘泥する輩が、正論を踏み潰しています。

2014.11.30.記

アメリカ中間選挙で共和党大勝
…抜きがたい黒人蔑視…

 アメリカ人、特にWASP( White Anglo-Saxon Protestant )と呼ばれる人たちは、共和民主支持を問わず、いまだに黒人蔑視感情から抜け出せていないようです。少なくとも、国の代表である大統領にはしておきたくないようです。
 冷静に見て、ジョージ・W・ブッシュが大統領だった8年間と比べても、オバマの6年間は、景気も回復しましたし、戦争による死傷者も減っています。しかし中間選挙では、ブッシュを支持してきた共和党が勝ちました。共和党は、オバマ大統領の、シリアやイスラム国、エボラなどへの対応の遅れ、決断力のなさを攻撃しました。国民は、ブッシュの失敗を忘れてしまったのでしょうか? やすやすと共和党の宣伝に乗せられる現状を見ると、根底に黒人蔑視感情がいまだに強く残っていると感じざるを得ません。
 この6年間、オバマ大統領が暗殺されなかっただけでも、アメリカ社会は進歩したと評価すべきなのでしょうか。それにしては、あまりにも悲しすぎます。
 上下両院とも共和党が過半数を占めましたから、オバマ大統領のレーム・ダック状態は加速することになります。オバマ大統領よ、このままでは何も実績を残せなかった大統領になってしまいます。せっかくノーベル平和賞を貰ったのですから、それにふさわしい活動をして名を残しましょう。黒人やネイティブ・アメリカ人が、誇りを持てるような政策を、それも大義名分で共和党が反対できないようもっともらしさで、提案していきましょう。
 おりから、ノース・ダコタ州では、ネイティブ・アメリカ人の居住区から石油が出始めたということで、大企業が乗り出してきています。かつて荒れ地に移住させた人たちの子孫が、再び、歴史を繰り返そうとしています。大統領が力を発揮できるいい機会です。弱気にならず、まだまだやれると思い直してください。

2014.11.05.記

誰がパンドラの箱を開けたのか?
…蔓延するISIS問題…

 イスラム国(The Islamic State in Iraq and Syria)のプロパガンダに共鳴した若者たちが、イラク、シリヤ北部での戦闘に兵士としてリクルートされています。そればかりではなくアメリカやイギリス、オーストラリアなどで、テロ騒ぎを起こしています。日本でも、シリアへ渡航しようとした若者がいました。彼らに言いたいのは、コーランを一度でも読んだことがあるのか? イスラム国の主張する時代遅れのカリフ制や奴隷制度の復活などを容認するのか? 対西欧への戦いと称していながら、同じイスラム教のシーア派を攻撃している事実をどう説明するのか? もっと卑俗的に言えば、さまざまな娯楽(酒やタバコ、音楽や映画など)を禁じられてそれに堪え得るのか? …少なくとも、日本から参加しようとした若者は、ロクに現地事情を知らなかったと伝えられています。
 もっとも、ここで主張したいのは、イスラム国のような化け物をを作り出したのは誰かということです。その筆頭は、ジョージ・W・ブッシュです。ありもしない大量破壊兵器を理由に、イラクに侵攻し、混乱を引き起こしました。小泉首相がブッシュに肩入れしたことも忘れてはなりません。次にあげられるのは、多大の資金を援助してきたスンニ派の各国の王族たちです。彼らは、巨大な勢力を持つに至った飼い犬に、いまは恐れをなしていると言ったところでしょうか。
 そのほかの忌むべき存在は、ISISから不法なオイルを購入する中間業者であり、武器密輸の死の商人たちです。ただこれらの金に目のくらんだ小者たちは、いつの世にも存在する澱(おり)のようなもので、石川五右衛門が言ったように、浜の真砂のように消え去ることはありません。
 アメリカの中間選挙が近まって、オバマ大統領の不人気が取りざたされています。たしかに、シリア、ウクライナ、イスラム国、エボラ等々、彼の政策はいつも手遅れ気味でした。イスラム国への空爆は、シリアのアサド大統領を助け、国内にクルド問題を抱えるトルコの反発を招くという皮肉な状況に至っています。ウクライナ問題でのプーチンに比べれば、大人と子供の喧嘩を見るようで、あまりにもナイーブに過ぎました。かといって、共和党の現在の主張を聞く限り、誰がイラクに侵攻したのかを忘れてしまっているようです。
 そして中東にとって、もっとも腹に据えかねる存在がイスラエルです。西欧は、このトゲを小さく見せかけようとしています。1947年の国連におけるパレスチナ分割決議は、西欧諸国にまだ植民地支配の驕りが残っていた時代の産物です。
 戦闘で勝てないと考えた中東諸国は、ゲリラ組織に多額の資金を援助してきました。その流れが、イスラム国へとつながっています。とはいうものの、いまさらイスラエルの生存権を否定するわけには行きません。
 ISISの問題を解決できるのは、アラブの人たちだけです。仮に武力で制圧しても、新たな組織が生まれるだけのことです。植民地時代からの、中東の人々の西欧に対する恨みつらみの深さは、目先だけの懐柔策や武力による威嚇で解決できるものではありません。
 西欧に出来ることは、イスラエルというトゲを、いかに中東に我慢してもらえるようにするかしかないでしょう。紛争の根幹は、イスラエル国家の成立から始まっています。パレスチナを国家として成立させなければなりません。イスラエルが核を保有する限り、イランの核保有願望を止める術はありません。このことを理解しない限り西欧と中東の紛争は終わることがないでしょう。
 主題に戻ります。パンドラの箱を開けたのはオバマではありません。ジョージ・W・ブッシュと彼を操ったネオ・コンの連中です。アメリカの国民は、このことをすっかり忘れてしまっているようです。そのような国に、西欧と中東の紛争を終わらせることなどできるはずがありません。

2014.10.26.記

東電・吉田調書公表の裏事情

 朝日新聞の偏った報道のおかげで、政府は東電・吉田調書を公表しました。朝日の偏向報道は当然責められてしかるべきですが、これがあったおかげで、政府が隠そうとしていた調書が明るみに出たことは評価する必要があります。調書が明らかにした東電の混迷ぶりは、一東電のみならず、他の電力会社も同じレベルと考えられます。文字通り解読すれば、原発廃止へと舵を切らざるを得ません。
 ところがマスコミの論調は、政府の思惑通り、朝日叩き、菅叩きに終始し、吉田所長以下現場職員がいかに英雄的に活動したかを報道しています。慰安婦報道を訂正したばかりの朝日は、叩きがいのあるマスコミの巨人です。菅元首相は、水に落ちた犬同様で、いくら叩いてもしっぺ返しが来る心配はいりません。つまり、両者とも、叩く側から言えば、安全パイなのです。
 混乱の最大の元凶は東電本社です。ここが的確に状況を報告しておれば、菅元首相が現場に乗り込む必要もなかったことでしょう。亡くなった吉田所長は、海水注入を停止しなかったことで、英雄扱いです。その判断は見事だし、現場に踏みとどまる覚悟だったことも読み取れます。しかしーー
 海水注入を止めるように指示したのは東電幹部であり、菅元首相ではありません。東電は否定していますが、勝俣会長、清水社長が、撤退を検討し内々政府に打診していたことはほぼ間違いないでしょう。その間のいきさつを知らない吉田所長が、菅元首相の怒りを、理不尽な逆上と受け止めたのはやむを得ないことだと思います。更に言えばーー
 吉田所長だけの責任ではありませんが、総ての電源が失われたとき、電力会社や自衛隊には数多くの電源車があり、なぜそれらが活用できなかったのか? 交通渋滞で動けなかったのであれば、なぜ自衛隊のヘリコプターを使わなかったのか? 重いので自衛隊のヘリコプターでは運べなかったのなら、なぜ米軍に援助要請をしなかったのか? 折角届いた電源車が、差し込み口が合わない位のことで役に立たなかったのはなぜか? それでも電力のプロと言えるのか? などなどの核心にマスコミはふれていません。元凶は、東電本社であり、原発安全神話を国民に信じさせた政・官・財です。
 原発を再開させたい政府が、焦点ぼかしをやっていることに気づかなければなりません。いまのままでは、政・官・財のゴールデン・トライアングルは無敵です。
 政府の世論操作に惑わされるマスコミ各位、沖縄返還時のスクープ報道が不倫騒ぎに転換させられた過去を忘れたのですか?

2014.09.13.記

プーチンさんが来たいなら来させたら

 日本政府は、一度プーチンさんを招待しておきながら、ウクライナ情勢が緊迫化するにつれて、アメリカや西欧諸国の反ロシア政策に気兼ねして、来てほしくないと思っているようです。それに乗ずるようにロシアは、予定変更は考えていないと表明しました。したたかな外交上手と言えましょう。
 日本が、独自外交の自信のなさを示しているようで残念です。何も遠慮する必要はありません。来てくれるなら、来てもらえばいいのです。日本は、ロシアに対して経済制裁に踏み切っています。当然のことで、ロシアに対し何らやましいことをしたわけではありません。ただこのような状況下では、今回、領土問題の討議は封印せざるを得ないでしょう。
 外交ですから、当たらず障らずの話し合いをせざるを得ませんが、トップ会談の際、マレーシア航空機撃墜事件が解決していないこと、ウクライナ国内の親ロシア派への影響力行使については議題に出せます。
 経済力の弱いロシアは、地下資源輸出以外、外貨を稼ぐ手段がありません。あるのは武力だけです。国民に窮乏政策を強いた場合、プーチン大統領に対する不満が高まってきます。愛国心だけでは、我慢できなくなります。彼は、強いふりをしていますが、結構追いつめられているのです。
 日本の政府は、プーチンさんが来たら、アメリカがどう思うだろうと気を使っています。たしかに、アメリカの立場に立てば、領土問題を抱える日本が下手に譲歩するのではないかと不安を持つでしょう。こういうときほど、絶好のチャンスだと前向きに取り組むべきです。領土問題を棚上げにし、ロシアの態度をたしなめ、未解決のマレーシア航空機の解決に寄与できれば、一人前の外交が出来る国と世界が見直すでしょう。
 来ると言っているのですから、歓迎しましょう。、

2014.09.01.記

マレーシア航空機事故
BRICSの責任は?

 2014年7月17日、マレーシアの旅客機が地対空ミサイルらしきもので撃墜され、300名近くの乗客、乗務員全員が死亡しました。3月8日の行方不明事件以来、二度の事件にマレーシアのみならず世界中が衝撃を受けています。ウクライナ政府、親ロシア派反乱グループ、ロシア政府、三者とも互いに非難しあっていますが、ウクライナ政府軍にはミサイルを撃つ必要がなく、反乱グループが主張する「政府軍の戦闘機射撃した」かどうかは、落下した残骸から容易に判断出来ましょう。反乱グループが国際調査団の調査を妨害する理由もそのあたりにあります。プーチンの発言は、ウクライナ政府の親ロシア派への攻撃が事故を誘発したというもので、反乱グループのやり過ぎを否認できていません。
 プーチン大統領は、オバマ大統領の稚拙な外交力を見透かして、クリミアを併合し、親ロシア派反乱グループを扇動し(武器も提供し)、あわよくばウクライナ東部工業地帯をわがものしようと画策しました。欲の皮を突っ張りすぎたというべきでしょう。いま、プーチンがなすべきことは、親ロシア派反乱グループを抑え込み、事故調査をスムーズに運ばせるよう協力すること以外にありません。
 その一方で、責任が重いのはBRICS各国です。このうちRはロシアですから別として、ブラジル、インド、中国、南アフリカ共和国の4ヵ国は、クリミア併合の不当性を問う国連決議で棄権を選択しました。最近では、5ヵ国出資の開発銀行設立に合意しています。ことの正当性より、欲望の充足を優先しています。いまのところ、この4ヵ国は沈黙を守っていますが、この場合、「沈黙は金」ではなく、「沈黙は醜」です。いまのうちにロシアとの距離を取っておかなければ、事故究明後に恥をかくことになりましょう。

2014.07.21.記

最高裁よ、お前もか!

 1971年沖縄返還協定に関する日米間の密約について、7月14日、最高裁は西山氏他の上告を棄却しました。最高裁よ、お前もか! シーザーならずとも叫びたい気分です。
 安倍内閣が無理やり、秘密保護法案を国会通過させたときから、今回のことは十分に予想していましたが、それにしても三権分立の、法の番人の堕落ぶりには眼を覆いたくなります。破棄したものは証明できないという理屈よりも、アメリカに残る公文書から再現せよと命じることの方が、よほど合理的と言えましょう。
 所詮、最高裁の判事も公務員なのです。三権分立と言っても、三権の総てを官僚が牛耳っいる現状では、三権一体と言わねばならないでしょう。官僚は、鬼に金棒を得ました。如意棒を振りまわす孫悟空以上です。
 こうなった責任の一因はマスコミにあります。今回の事例においても、マスコミ各社は、なんら特集記事を組みませんでした。敗戦後、一億総懺悔と書いた記者たちは、政府や軍部の言いなりだった自らを恥じていた筈です。そのときといまと、どれほどの違いがありましょうか。鍋の中の蛙のように、お湯がだんだん熱くなっているのに気づかず、飛び出すチャンスを失ってしまうのでしょうか。

2014.07.15.記

日本は法治国家?集団的自衛権閣議決定

 2014年7月1日は、将来日本政治の汚点とされる記念日となることでしょう。集団的自衛権を論議すること自体、決して間違ったことだとは思いません。しかし、歴代内閣が継続してきた解釈を、安倍さんのように未熟な首相に率いられた政権が勝手に変えていいものでしょうか。厚顔無恥もここに極まれりというしかありません。
 日本のトップが、最高の法律の解釈を勝手に変えました。これからの法律家は、六法を自分に都合がよいように、いくらでも解釈できますね。面の皮の厚さが勝敗を左右します。昔から、理屈と膏薬は何処にでもくっつくと言いましたから。

2014.07.02.記

憲法第9条を生かす手立てはないか

 集団的自衛権を憲法解釈の変更で可能にしようと、安倍首相をはじめ自民党タカ派がやっきになって公明党を説得しています。解釈だけでやってのけようという根性がさもしいと言わねばなりません。どうしても主張をとおしたければ拳法を改正すべきです。
 憲法を、他国から押し付けられたものだから改正すべきだと主張する愚か者もいます。ことは是々非々で判断すべきものであり、もし、占領下で実施されたものを全て否定すべきということになれば、民主主義も、土地改革も戦前に戻さなければなりません。
 憲法第9条は、@項では武力の放棄を、A項では戦力の保持と交戦権を、明確に否定しています。かといって、国は防衛しなければなりません。自衛隊を否定するほど、ナイーブな主張をするつもりはありません。
 第9条を生かしながら自衛権を明確にする方法がないか、識者たちは知恵をしぼらなければなりません。一案として、アメリカ式に、修正条項を設けるという手段は無いものでしょうか。アメリカ憲法修正第2条項は、「人民の武装権」すなわち銃の所有を認めたもので問題なしとは言えませんが、第1条項は「信教、言論の自由」を謳いあげており、憲法の不備を補い、時代にあわせて行くには有効な方法です。もちろん、修正条項の決定には、当然のことながら、憲法第96条の制約(国会各議員の三分の二以上の賛成)を受けます。
 まず、憲法第9条は変更しません。修正条項として、自衛権を認め、自衛隊の存在を公式に認めます。海外派兵は、国連軍が組織されたとき、その一員としての参加を認めます。国連は、五大国が拒否権を持つ、必ずしも公平とは言えない組織ですが、唯一、国際紛争を公的に公開討議できる場です。国連軍という制約を課せば、イラク紛争への自衛隊派遣などあり得なかったはずです。
 ちなみに拒否権は、シリアやウクライナ紛争で明らかなように、国連の正当な活動を阻害する時代遅れな制度になっています。安保理での拒否権発動は容認するにしても、総会で三分の二以上の賛成があれば拒否権が無効になる程度の改善が必要です。保持国の抵抗もありましょうから、当初は四分の一でも仕方ありません。何らかの制約が必要な時期に来ています。
 集団的自衛権は、日米安保条約がある以上否定はできませんが、第9条の堅持と国連軍という制約によって、行使できる範囲がおのずと明確になってきます。
 いま現在、日本がかち得た国際的信用は、戦後70年間一度も戦争をしたことがなく、平和的貢献に真摯な努力を続けているからであることを忘れてはなりません。アメリカに言われてイラクに派兵したから得た信頼ではありません。自民党タカ派諸氏、そこのところをお間違えなく。

2014.05.12.記

イスラム教指導者たちの無為無策
…ナイジェリア女子学生拉致事件

 ナイジェリアのイスラム教原理主義グループ、ボコ・ハラムが二百名を超す女子学生を拉致したのが4月14日です。ほぼ1ケ月が過ぎようとしていますが、何ら解決に至る動きがみられません。ボコ・ハラムは、西欧的教育が諸悪の根源だとして、女子の教育を否定し、拉致した女子学生を兵士たちの妻にするか売り飛ばすと宣言しています。
 この暴挙に対し、世界中が憤激してしかるべきですが、いまのところ怒りの声は西欧側からばかりです。
 イスラム教指導者たちは何をしているのでしょう? スンニ派、シーア派と宗派が別れ、統一した指導体制の無いことが主な理由でしょうが、どの宗派も表立ってボコ・ハラムの行動を非難していまません。火中の栗を拾うものが誰一人いないとは宗教の名に恥じると言わねばなりません。
 宗教指導者たちは、イスラム教の創始者ムハンマドが、神の啓示を受ける前までは、商人として女主人の下で働いていた事実(のち、彼の妻になっています)を語るべきです。教育ある女主人の下で修業したことが、彼の人格形成にいかに貢献したかを周知させるべきです。女子教育の否定など愚の骨頂だと信者たちを説得しなければなりません。
 少なくとも、西欧社会にあって、宗教の自由を安全に満喫しているイスラム教指導者たちは、何らかの意見表示をすべき義務があります。信者の半分は女性であることをお忘れなく…。

2014.05.12.記

必見の映画「アクト・オブ・キリング」

 インドネシア独立後、初代大統領スカルノ政権の末期、1965年9月30日、左翼系によるクーデターが起きました。この鎮圧を主導したスハルト(当時少将)は、スカルノに代わって第2代の大統領に就任しました。スハルトとその配下たちは、共産党関係者が事件を操ったとして、100万人とも200万人とも言われる人々を虐殺しました。その大半は共産党員でもなく、ただ単にイスラム教徒ではなかったというだけで殺されています。華僑も被害者になりました。
 虐殺者たちは、共産主義が国を滅ぼすと愛国心をくすぐられ、神を信じない者を殺すのは、イスラムの聖戦であると吹き込まれました。
 この映画のユニークな点は、加害者サイドに焦点を当てているところにあります。監督のジョシュア・オッペンハイマー(米)は、当初被害者を対象に取材を始めたところ、軍当局の妨害にあったと語っています。生存者の一人から加害者たちを取材してはどうかと言われ、方向転換したのがこの映画の基になっています。
 おどろいたことに、加害者たちは得意げに虐殺の事実を語り、監督の、再現して演じてみないかという誘いに嬉々として応じます。おそらくそれは、彼らが今も勝利者側の立場にいるからなのでしょう。第二次世界大戦後、アメリカの戦争体験者たちが得々と自分の体験談を語り、逆に日本では口を閉ざしがちだった状況によく似ています。そのアメリカ兵たちも、ヴェトナム戦争では、口が重たくなりました。
 恐ろしいのは、この映画の持つ普遍性です。虐殺の当事者たちは、家庭にかえると、ごくごく普通の人たちです。獣性は誰の心にも潜んでいます。この映画の印象を語っている私自身、その場にいたら手を血に染めていたかも知れません。きっと、したでしょう。
 見終って、思い出したのは、パスカルの至言です。パンセ(瞑想録)895に、「人は宗教的信念によって悪事を為すときほど、完全にかつ愉快にそれを為すことはない」とあります。安っぽい愛国心も、宗教的信念とかわりはありません。

2014.05.01.記

クリミア戦争の敗戦を忘れたロシア

 ロシアがウクライナへ軍事介入しようとしています。ウクライナに住むロシア系住民の安全を守るためだそうです。植民地主義が闊歩した時代よく聞かされた言い訳です。日本もそういいながら中国を侵略しました。
 ロシアには、ソ連時代の権域を回復したいという願望があります。黒海に突き出たクリミア半島には、ロシアの軍事基地があり、ここを失うと黒海から地中海への出口が無くなるという強迫観念にもとらわれています。ですが、その有無がロシアの国益にどれほどの影響がありましょうか。
 ロシアに逃げ出したヤヌコビッチの大邸宅を世界中の人々が見て呆れ果てました。権力の集中がもたらす腐敗の、まさに恰好な見本です。権力者にのし上がって十年になるかならないかという短い期間に、よくもまあ、多額のお金を私的欲望に浪費したことでしょう。バカさ加減は、サルにも劣ります。
 シリアの内戦が長引いているのは、ロシアがアサド大統領を支援し、拒否権を駆使しているからです。ロシアは、シリアに持つ地中海に面した唯一の軍事基地を失いはしないかと恐れています。いまさら地中海に軍事基地があるからと言って、それがロシアの国益にどれほどの影響がありましょうか。10万人を超す犠牲者を出す内戦に、国連がなんの役割も果たせないのは、第二次世界大戦戦勝国五か国が持つ拒否権のせいです。戦後70年、拒否権が国連の活動を阻害しています。拒否権をふりまわすもう一つの国、中国は、自国内に民主的な運動が拡大したとき国連が参入するという前例を作りたくありません。一党独裁が、14億の国民にとって幸せかどうかなど考慮の対象にはなっていないのです。
 解決策は、簡単明快です。ロシアがEUに加盟し、NATOの一員になればすべてが解決です。プーチン大統領のメンツを考えなければ、その方がむしろ、ロシアの国益に資するところ大と言えましょう。シベリアの開発も進み、,経済的な発展が一層期待できます。
 クリミアでは、1853年から1856年にかけて、ロシア対オスマン・トルコ、英、仏連合軍が、激しく戦いあった因縁の地域です。ロシアの南方拡張政策がもたらした悲劇ですが、一方でナイチンゲールの看護活動が赤十字運動を誕生させたところでもあります。ロシアはこの戦いに敗れ、この地域における権益を失いました。ロシア革命の遠因となった戦争でした。
 権力欲に麻痺したプーチン大統領が、夢をあきらめるとは思えません。クリミア自治共和国の独立容認、ロシアの軍事基地維持といったところが政治的な落としどころになります。新しく独立するかも知れない共和国には、ロシアは、いままで以上に資金援助することになりましょう。ロシア国民にとって、自尊心をくすぐるものではあっても、決してプラスにはなりません。
 ロシアよ、クリミア戦争の敗戦から得た教訓を思い出しましょう。そして、解決できないように見える問題も、一部の権力者が、真の国益とは何かに目覚めれば、解決策は至極簡単だということに気づいて欲しいものです。そしてそれは、中国の一党独裁にも言えることです。

2014.03.03.記

集団的自衛権の読み違い

 何を血迷ってそんなに急ぐのか、安倍首相。
 たぶん、坊ちゃん育ちの彼は、靖国訪問のもたらした悪評に激怒し、理性を失っているのでしょう。計算間違いに気づいたけれども、体面上そうとは言えないのかも知れません。周囲をオトモダチで固めた彼には、面と向かってアドヴァイスしてくれるような真の友人がいないのでしょう。
 安倍首相としては、オバマ大統領の訪日・訪韓の前に、現行憲法の拡大解釈により集団自衛権を合法化し、アメリカへの協力ぶりをアピールしたいのです。気持ちはわかりますが、大きな読み違いをしています。
 まず第一に、アメリカは日本の軍事的協力などあてにしていません。むしろ足手まといだと考えています。
 第二に、経済力の落ちたアメリカは、中国とことを構えたくありません。日本内での集団自衛権論争が、中国を刺激することを恐れています。
 最後に、憲法拡大解釈で集団自衛権を認めさせるのには無理があります。まして、国会論議も経ずに閣議で決定しようなどというのは、民主主義国家のすることではありません。
 尖閣列島問題を抱える日本としては、アメリカのバックアップがぜひとも必要です。いまアメリカが何を欲しがっているか、日本が何をしないよう望んでいるか、そんなことが分らないような凡庸な首相を、われわれは選挙で選んでしまったのでしょうか。

2014.02.27.記

映画「ハンナ・アーレント」 は思考せよと要求する

 ドイツ親衛隊(SS)中佐アドルフ・アイヒマンは、敗戦後アルゼンチンへ逃亡していましたが、1960年、イスラエルの秘密警察モサドに拉致されました。秘密裡の拉致からイスラエルへの移送に関しては、アルゼンチンの法律に抵触しています。のちに、アルゼンチン政府はイスラエル政府に対し正式な抗議を申し入れています。
 第二次世界大戦中、駆り集められたユダヤ人たちは、貨物列車に押し込められ強制収容所へ送られました。アイヒマンはその輸送の責任者でした。イスラエルは彼を裁判にかけます。拉致から判決に至るまでの、イスラエル政府の正当さをアピールするためのショーです。判決は世界中の誰緒が予想した通り死刑でした。1962年5月、彼は絞首刑に処せられました。
 プリンストンやハーバードで教鞭を執っていた哲学者ハンナ・アーレント(1906〜1975)は、ニューヨーカー誌と契約しこの裁判を傍聴します。ドイツ系ユダヤ人だった彼女は、収容所から脱走し夫と共にアメリカに亡命したというつらい経験を持っています。
 彼女が裁判で目撃したアイヒマンは、「上からの命令に服しただけだ」と強弁する平凡な男でした。メフィストフェレスでもなく、血に飢えた怪物でもありません。「上からの命令に服しただけ」という言い訳は、日本でも飽きるほど聞かされました。哲学者アーレントは、「言い訳」の、さらにその根底にある思考停止の状態を、アイヒマンの中に見い出します。それを彼女は「悪の陳腐 The Banality of Evil 」と表現しました。
 彼女がニューヨーカー誌に発表した裁判報告は一大物議を醸し出しました。報告書の中で彼女は、ユダヤ人移送に協力したユダヤ人組織があったことに触れたため、ユダヤ人社会から総スカンを食うことになりました。彼女はアイヒマンを弁護したわけでもなく、ユダヤ人組織を非難してもいません。しかし、ユダヤ人社会はヒステリックに反応したのです。被害者を加害者の一味のようにみなすとはなにごとかというわけです。(報告書は「イェルサレムのアイヒマン…悪の陳腐さについての報告」として観光されています。)
 このヒステリックな反応は、かつてアメリカ内で映画「パラダイス・ナウ」(2005年)の上映反対運動を思い起こさせます。自爆テロに加担する青年の悩みを描いた優れた映画でしたが、反対運動家たちには豚に真珠だったのでしょう。
 哲学者アーレントが「悪の陳腐」と評した思考停止の状態は、恐ろしいほど深い意味を持っています。敷衍すれば、会社人間である従業員が、勤める会社の悪事を見逃せば、それも「悪の陳腐」と言えましょう。ごく最近の、JR北海道の事例をあげるまでもありません。彼女は、思考停止の状態におちいった人々を、人間以下の存在だと言っているのです。
 映画は、彼女が学生たちに向かって「悪の陳腐」について熱っぽく語るシーンで終わります。そこから先は、観客の皆さん、お考えくださいと要求しています。
 もう一つ、指摘しておきたいことがあります。このような映画が出来るまで50年を要したという事実です。反ユダヤと受け取られかねない危険性のある映画など(この映画は決して反ユダヤなどではありません)、おそらく10年前だったら、イスラエルや、アメリカのユダヤ人社会からの圧力で企画段階で潰されていたことでしょう。モサドの目に余るテロ活動や、パレスチナとの和平会議における傲慢さが、世界中、とりわけヨーロッパ各国の反感を買っている事実を見逃すわけにいきません。
 イスラエルは、自らが反ユダヤ感情を醸成していることに目覚めるべきです。

2014.01.22.記

もとに戻ります。

2013年以前の記述については、下記のとおり、本の形にまとめました。