リルケの詩

(ここには、好きなリルケの詩を収録しました。)

秋 (形象詩集ー富士川英郎訳)

木の葉が落ちる 落ちる 遠くからのように
大空の遠い園生が枯れたように
木の葉は否定の身ぶりで落ちる

そして夜々には 重たい地球が
あらゆる星の群から 寂寥のなかへ落ちる

われわれはみんな落ちる この手も落ちる
ほかをごらん 落下はすべてにあるのだ

けれども ただひとり この落下を
限りなくやさしく その両手に支えている者がある

(リルケがもし仏教徒だったら、この「者」は、お釈迦さまなんでしょうね。ここまでくると、釈迦の説教と、イエスの福音が、なんと似通っていることかと思ってしまいます。)


おお、衆人環視のうちに (時梼詩集ー尾崎喜八訳)

おお、衆人環視のうちに衣服を脱いで
司教の衣の前に裸のままで進み出たほど
それほど所有と時代を脱却して
その大いなる貧困にまで強まった彼は何処にいるのか
万人のうちの最も親しみ深く愛に満ちたもの
彼は若やかな年のように来て、そして生きた…

(聖フランシスをたたえた最も美しい詩。なにもかも捨てることができたら、究極の美に到達できるのでしょうか。やはり、凡人にはできぬことです。)


もとに戻ります。