靖国参拝論議

 小泉首相の靖国神社参拝に、賛否両論、なんとまあ喧しいこと。ここでも、いい年のお二人が、口角あわを飛
ばしながら議論の真最中。
神道派「8月15日に参拝しなかったのは公約違反。しかし、参拝はしたのだから良しとしよう。外国から指図され
    ることはない」
無信派「第2次世界大戦の最中、韓国・北朝鮮(以下朝鮮という)、中国に神社を作って、現地の人々を参拝さ
    せたツケがきたのさ。遅れた植民地主義の結果だから、外国の苦情は仕方が無い」
神道派「君まで慰霊をないがしろにするのか」
無信派「そう熱くなるな。他人の気持ちになってみりゃ分かる。殴られた者は痛みを忘れないものだ。被害国に
    してみりゃA級戦犯合祀も容認できまい」
神道派「戦犯など戦勝国が勝手に決めたことだ。歴史的にみて正しい裁判だったと言い切れるか。被害国と
    言っても、日本のおかげで独立するきっかけを得た国も多い」
無信派「それは結果論。いくら君でも、最初からその目的で始めた戦争だとは言い切れまい。戦犯といえば、
    軍の上層部全般さ。統帥権を振りかざして暴走した奴等さ。この問題をつきつめると昭和天皇まで行く
    ぞ。しかし、天皇が終戦の勅令を出したおかげで現在の日本がある。そうでなきゃ、軍のバカどもは本
    土決戦にのめりこんだろうし、国土は疲弊し、国の半分はロシア領になっていたことだろう」
神道派「いろんな歴史解釈はあっていい。しかし、国に命を捧げた慰霊には、素直に頭を垂れるべきだ」
無信派「鳥居が問題さ。靖国は誰が見たって神道の社だ。世界から見りゃ軍国主義の名残りさ。宗教に対す
    る曖昧さは日本独特のもので、それを理解しろと言うのにはチョット無理がある」
神道派「神道は、国が成立したときからの遺伝子みたいなものだ。参拝にイチャモンをつけるのは内政干渉だ
    と思う」
無信派「そういきり立つなよ。千鳥が淵の碑に、靖国の慰霊を分祀すればいい。ここで言う分祀とは、勧請す
    ると言うことだ。御霊は靖国神社にもあるし、千鳥が淵にもあるという考え方だ。そうすれば、公的には
    千鳥が淵にお参りすればいいことになる。外国の要人が来ても案内できる。靖国は、小泉さんが私人
    になったときに参ればいい。むしろ、靖国からA級戦犯を外せと言う方が無茶苦茶だ。相手は独立した
    宗教法人だぞ」
神道派「慰霊がどちらにもあると言うのは、いくら日本人が宗教に曖昧でも、少し行きすぎじゃないか」
無信派「菅原道真を祭った神社が幾つあるか知っているか。四国の八十八カ所巡礼地のコピーも、全国至る
    所にある。こだわることはない」
神道派「君は神道をバカにするのか」
無信派「そうじゃない。神道には教祖も教義もない、と司馬遼太郎さんも言っている。神道が仏教に圧倒され
    かかったとき、本地垂迹説を説く者がいて双方怪我なくすんだ。いきりたって議論するほどのことじゃ
    ないだろう。古人の智恵に学ぼうよ」
神道派「オレは何となくその気になってきたが、遺族会は頑固だし、遺族会を票田にしている議員方が黙っ
    ちゃいないような気がする。戦犯について、外国からあれこれ言われるのも気にいらん」
無信派「遺族会を票田と思っている奴等の志が低いのさ。そんなのを愛国者って言うのかい。戦犯について
    は、かって国会で救済決議をしているからいいじゃないか。話は違うが、元陸軍参謀だった瀬島を社
    長にしなかった伊藤忠商事は偉いと思うよ。それより、臆面もなく回想録を書いた瀬島の面の皮の厚
    さには参るね。戦後議員になった辻の生きざまといい、恥知らずが多すぎると思わないか」
神道派「オイ、君の方が熱くなっていないか。もっとクールになれよ」
…古い世代のお二人、議論はつきないようですが…
若い世代で風化しつつある問題を、大きな話題にしてくれた小泉さんに感謝すべきかも知れません。しかし、
総理大臣は、どこまでも公人。今後の靖国参拝は、私人になってからにして下さい。

2001.8.15記

もとにもどります。