地獄のお取調べ  「どうして、役人には決算日がないのか?」
       またの名 「財布の中は空っぽ(虚構の経済大国)」     
閻魔さま「おお、よく地獄まで来たな。遠路ご苦労じゃった」
もと役人「なぜ、私は地獄に来たのでしょうか?」
閻魔さま「そう言うからには、自分に自信があるのじゃろう。聞いてやるから言ってみろ」
もと役人「私は、予算獲得額が前任者以上でした」
閻魔さま「そうか。その他には?」
もと役人「特殊法人を含む外郭団体をいくつも作りました。そのお蔭で、天下り先を増やすことが出来ました。
     勿論、そのなかで一番条件のいいところへ、私が天下りしましたが…」
閻魔さま「それはすごい」
もと役人「ほめて頂いて恐縮です。我々にも、馬鹿な後輩がおります」
閻魔さま「誰だい?」
もと役人「ヤクルトに天下って、資金運用で損を出した上、○○証券からリベートを貰っていたのが見つかった
     のがいるでしょう。あの馬鹿ですよ」
閻魔さま「あいつも役人だったな。このあいだ地獄に来たぞ。で、その他には?」
もと役人「郵貯や簡保、年金積立などで集めた金を、つぶれそうな特殊法人などに融資して延命させました」
閻魔さま「国会では何も言わんのか?」
もと役人「融資した先から、利息がきちんと入っています。資金運用では黒字です。とやかく言われる筋合いは
     ありません」
閻魔さま「つぶれそうな所が、よく利息を払うな?」
もと役人「(閻魔さまも馬鹿だな。こんなことも知らんのか)その分、融資に上乗せしてあります」
閻魔さま「お前の方が、わしより頭が良さそうじゃ。どうも分からん。尋ねるが、簡保とか年金積立というのは
     いつかは積立てた者に返すもんじゃろう。違うか?」
もと役人「(こいつ、ほんとに馬鹿だぜ。教育の必要がある)同じ日に満期は来ません。みんな長生きしますよ」
閻魔さま「ほんとにそうじゃった。いっぺんに死なれたら、地獄も受け入れかねる」
もと役人「…(血のめぐりの悪いじいさんだぜ、まったく)」
閻魔さま「なんか言ったか?」
もと役人「いえ、なにも申しておりません。暑いところですね地獄は」
閻魔さま「お前が来てから一層暑い。火が燃えさかっとる。よほど、お前を焼きたいものとみえる。それで、融
     資した金が回収できんとしたら、年金会計の財布の中身は空っぽということじゃな。簡保や郵貯も同
     じか?」
もと役人「空っぽと言えば空っぽです。それを空っぽに見せないために、財投があるのです。その仕組みの分か
     らん馬鹿が、このごろいろいろ言い始めまして、まったく馬鹿につける薬はありませんね」
閻魔さま「銀行や保険会社もいっぱい不良債権を抱えとるそうじゃが、日本も金持ちのように見えて、中身は空
     っぽということか」
もと役人「後輩によく言ってあります。自転車を止めるなと…」
閻魔さま「むかし、わしも習ったが、バランスシートというのがあるのじゃないか?」
もと役人「それを作ったら日本は破滅です。民間には決算日がありますが、役所にはありません。役所はB/S
     を作ってはいけません。決算など下々のやることで、役所は集めた金を使うところです」
閻魔さま「集めた以上に使っとるじゃろう」
もと役人「(たまには皮肉も言うぜ、このじいさん)それも、勤めのうちで…」
閻魔さま「聞けば聞くほど、役人道に違わぬ見事な実績だ。ところで、むかし親鸞というわけのわからん坊主が
     おってな」
もと役人「ああ、悪人正機を称えた偉い方ですね」
閻魔さま「さすがに知っとるな。善人でさえ浄土に行ける、悪人が浄土に行けないわけがないと言うた御仁じゃ。
     あの説のお蔭で、地獄の人口が減る一方じゃった。だが、これで一安心というもの。お前の善人ぶり
     はずば抜けとる。これほどの善人を浄土に送るわけにいかん。これで、地獄は善人ばかりになる」
もと役人「なにも悪いことをしていない私が、浄土に行けないなんて!!それで、地獄での私の役目は?」
閻魔さま「これから先、お前は地獄の入口で赤い尻をさらしておる。来訪者は、入場手形の代わりに、お前の尻
     の皮を一枚めくり取る」
もと役人「痛いでしょうか?」
閻魔さま「痛いさ。だがな、お前の尻の皮は尽きることがない。天下り人が尽きぬ限りな」

郵貯や簡保の金251兆円、年金積立金134兆円、その他51兆円を大蔵省理財局に集めて、各官庁・特殊法人に融資。
2000年からは、郵政省・厚生省の自主運用といっていますが、大蔵省はすでに抜け道探しに取りかかっています。
まったく、役人につける薬はないものですね。                    1999.12.1記
もとにもどります。