フェアなアメリカよ、どこへ行ってしまったのか?
ロード・マップのまやかし

 イラク政権を崩壊させた後、アメリカはアラブ諸国をなだめようと、いすらえる・パレスチナ紛争の仲介案をロード・マップとして提示してきました。ジャパン・タイムスに、仲介案におけるウエスト・バンクの実態が紹介されていましたが、詳細を知るにつけ胸が悪くなってきました。
 左図を見れば、ロード・マップがいかに虚偽に満ちているかご理解されるでしょう。
 仮にパレスチナが独立国としてスタート出来たとしても、このように入植者によって虫食いにされた国を統治できるでしょうか。1922年にアイルランドがイギリスから勝ち得た自治条件より、さらに見劣りするものです。その条件のもとでさえ、いまだに英蘭紛争は続いています。
 明らかに、アメリカは時間稼ぎに、新提案を出してきたのでしょう。
 エジプトやサウジ、ヨルダンをはじめとするアラブ諸国に調停者のポーズを見せ、パレスチナには新たなテロがあれば資金援助も仲介も止めだとおどし、同時に失敗の口実を事前に準備し、イスラエルには一切圧力をかけない(表面的には別として)…下手な田舎芝居を見るようです。
 第二次世界大戦後、日本に民主主義を導入しようとしたころの、誤りも少なくなかったにせよ、理想に燃えたアメリカはどこへ行ったのか?
 理想を失い、ネオ保守主義者に支配されたアメリカよ、私利私欲だけに目を血走らせたアメリカよ、どこへさまよい行くのか?

2003.5.16.記

悪乗りするイスラエル

 左の写真も、2005年7月13日のジャパン・タイムスから借用してきました。往年の名画「赤い風船」に触発されたかのような可愛いシルエット。この絵は、イスラエルが建設中の防護壁に描かれたものです。
 おそらく、この写真は「やらせ」に近いものでしょう。ですが、自由を束縛する壁に対する、パレスチナの人々の願いを表現して秀逸です。
 防護壁は、ヨルダン西岸のパレスチナ人居住区域に深く食い込んで建てられつつあります。
 シャロン首相の狙いは明らかです。第一に、三宗教の聖地エルサレムを完全に自国内に取り込むこと(ユダヤ教の聖地とする)。第二に、ヨルダン川を自国の国境とすること。エルサレムとヨルダン川は、何が何でも手に入れる腹です。
 アメリカが提案したロードマップですら極端にイスラエル寄りのものですが、シャロン首相の行動は、さらに悪乗りしたものといえましょう。わずかばかりの、見せかけの譲歩は、ガザ地区の完全撤退だけです。この地区は、イスラエルにとって、大した意味を持ちません。エジプトと国境を接していますから、武器がパレスチナ武装グループに陸路密輸される可能性…を警戒すればいい程度のものでしょう。
 ジャパン・タイムスの報道によると、イスラエルは220億ドル支援をアメリカに要請したそうです。ガザ地区入植者の引揚補償に使うのだそうです。「盗人猛々しい」という諺はこんなときに使うのでしょうかネ。
 ところが、イスラエル内の強硬派は、ガザ地区からの撤退に猛反対。シャロン首相の暗殺さえ噂されています。もしそんなことが起きたら、強硬派を更に強硬な狂信者が暗殺することになります。これ以上の歴史の皮肉はありません。

2005.7.18.記

もとに戻ります。