架空議事録
- 長銀架空議事録 債務保証の裏にはこんなことが?
1998年1月某日、長銀では、農林族有力代議士数名から示唆された案件について、緊急役員会議が開催された。
頭 取『当行子会社・日本リースに、農林中金からの借入金1,340億円があることは、皆さんご存知のとおり』
役員一同『……』
頭 取『農林族有力代議士各位から、この借入金について、当行の保証をつけて欲しいと言う申し入れがあった。その代わり、いま計画中の公的資金導入の支援をすると言う話だ』
役員 A『いままでも、そのような話は腐るほどあったが、何一つ実現しなかった。今回は違うと言えますか』
役員 B『そんな野暮なことは言うな。当てにする方が間違っている』
頭 取『保証はない。しかし、公的資金なしでは当行はつぶれる。系列のノンバンクや、飛ばしに使った子会社も全部つぶれる。そうなれば、保証しようとしまいと関係ない』
役員 A『仮につぶれたと想定したら、保証は有効ですか』
頭 取『法律担当役員、答えてくれ』
役員 C『有効です』
役員 A『では、当行がつぶれた後、保証が実行されたら、その分損失が膨らむわけだ』
役員 B『当り前じゃないか。これ以上、頭取を困らせるな』
役員 A『膨らんだ損失は、株主がかぶる。もし、それでも不足したらどうなる』
頭 取『……』
役員 A『どこかの銀行に身売りするとしても、損失切捨てでないと引き受ける筈がない。とすれば、切捨てる分は、国民の税金と言うことになる。俺たち、そんな議論が出来るほど偉いのか』
頭 取『お前は何様だ。任期は次の株主総会までと承知しておけ。青臭い議論は沢山だ。某代議士の話は屑に等しい。しかし、その屑のような藁にでもすがろうではないか』
…と言う次第で、保証は実行されました。
時は流れて、政治に弄ばれた長銀は、あえなく一時国有化となりました。農林族有力代議士数名が知らぬ顔の半兵衛をきめこんだ予想どおり…。
まさか、こんなことはないやねと思いながらつい勘ぐりたくなります。一時国有化とは言うものの、まだ国家が購入する株価すら決まっていません。農林中金に対する債務保証は長銀の損金です。株価にとってマイナスになることを平気でやる(やらせる)無責任さには、開いた口がふさがりません。どうせ株価はゼロでしょうがね。
1998.11..1.記
- 日債銀関係者(架空)打ち合わせメモ発見
1997年 5月、日債銀東郷頭取と大蔵省山口銀行局長が秘密会談を行った。
日債銀頭取東郷『大蔵省検査の第三分類債権額は1兆1,212億円ですが、これの50%を引当金に積めば債務超過になります。それでは、いくら大蔵省のお声がかりでも、銀行や保険会社が増資に応じてくれないでしょう。第三分類を、自己査定の7,000億円と発表しますから黙認してください』
大蔵省銀行局長山口『俺が局長のときに、あんたんとこがつぶれても困る。錦の御旗は、日本の金融制度の死守だ。大義名分はある。大蔵の検査結果は守秘義務を盾に発表しないでおく。あんたんとこが発表したことは否定しませんよ』
日債銀頭取東郷『ありがとうございます。(シメシメ、これで、もし何かあっても大蔵省に報告済みといえる)』
大蔵省銀行局長山口「銀行や保険会社に奉加帳を廻している最中だが、何社かが俺のところへ保証してくれと言ってきている」
日債銀頭取東郷『誰です、そんな恩知らずな奴は?』
大蔵省銀行局長山口『バカ、どこだっていいだろう。債権信用銀行だから再建は可能だとでも書いとくよ。バカの一人の、うちのエライさんにも、あんたんとこが債務超過じゃないと言っとこう』
1997年 7月、日債銀2,000億円超の増資完了。
1998年 1月、日本銀行松下総裁と大蔵省山口銀行局長が秘密裏に会談した。
日本銀行総裁松下『金融危機管理委員会で、日債銀に公的資金を出すかどうか決めなきゃならん。大蔵の検査結果はどうだったんだ』
大蔵省銀行局長山口『第三分類債権額が1兆1,212億円』
日本銀行総裁松下『ほんとか。それじゃ、公的資金を出せない。どうする。つぶしていいのか? 松永大蔵大臣も委員会のメンバーだぞ』
大蔵省銀行局長山口『日本の金融制度の信用を失わせるようなことは出来ません。表向き、日債銀が発表した7,000億円でやって下さい』
日本銀行総裁松下『大蔵省の検査結果は聞かなかったことにするのだな』
大蔵省銀行局長山口『そうです。さっきのは独り言です』
日本銀行総裁松下『松永さんには言ってあるのか』
大蔵省銀行局長山口『あなただったら、兆と億の単位を間違えかねない方に言いますか?』
日本銀行総裁松下『わかった。佐々波委員長には、第三分類7,000億円と言っておこう。おまえの悪智恵には感心するよ』
大蔵省銀行局長山口『ちまたでは、大蔵省を分割せよと言っていますね。おおせのとおりにしますよ。あっと驚くようなことになっても知りませんからね』
日本銀行総裁松下『なんだ、そのあっと驚くようなこととは』
大蔵省銀行局長山口『だって、いまの大蔵省のままでは日債銀をつぶすわけにはいかんでしょう。新しい期間なら出来ます。そこが査定して、再建不可能と判断すれば、日債銀はつぶれます。しかし、大蔵省には関係ありません。都合よくエクスキューズを準備してもらっているようなもんです』
1998年 3月、600億円の公的資金投入承認。
1998年11月、金融監督庁、日債銀の第三分類債権を1兆3,110億円と発表。
1998年12月、日債銀の一時国有化決定。
1999年 2月、衆議院参考人質疑における答弁。
日債銀頭取東郷氏 『大蔵省には報告済みです』
大蔵省銀行局長山口氏 『やむを得ない措置だった(責任はない)』
日本銀行総裁松下氏 『債務超過ではないと思っていた。委員の一人として責任を感じる』
…こんなことはないと信じています。なにせ最高学府をでて、出世の一本道を歩いてきたエリートの方々が、こんなバカげたことをする訳がないと思っていますから。
ところが、第三分類の日債銀受け皿会社20社が、1999年2月26日、自己破産しました。自己査定がいかにいい加減なものか、よく分かりますね。それにしても、バカな芝居の主役がいつも大蔵・日銀の現役・OBと言うところが不思議です。当時の大蔵大臣の三塚さん、松永さん、金融危機管理委員会の佐々波さん、あなたがたはだまされたのですよ。もっと怒って欲しいなあ。
佐々波さんの私見『情報開示は、充分な責任ある説明を伴ってこそ真の効果を生む』には、全く同意見です。
1999.03.02..記
もとにもどります。