PARISのスナップ(7) 〜アラール氏のイタズラ


これです、コレ。
アラール氏は、私たちのために現存する唯一の
TPV(2CV)プロトタイプをホテルまで持ってくると約束してくれたのです。
まず本人が
Xantiaでやって来て、続いてJUMPERに引かれたトレーラーでこれがやって来ました。 この頃、シトロエンでは自社の歴史を辿る博物館を作るため、各車種の収集と維持管理をしていましたが、その専任の方が、運転して来ました。
早速、トレーラーから降ろします。
思わず手を添えるのは、同行のSさんです。彼も
2CV乗りなので、私などとはまた違った思いでこれを見つめていたことと思います。
エンジンルームを開けたところです。
ご存知の方も多いかも知れませんが、このプロトタイプは水冷なので、この位置にラジエーターがあります。

写真の状態でお分かりでしょうが、上記のように維持管理されているため、このプロトはエンジンが掛かり、自走も可能です。

右の写真は、エンジンに付いたプレートです。
QB 00058」の刻印がありました。
ドアを外したところです。
将にハンモックとしか言いようの無いシートに体育マットのような座布団・・・。 1939年に作られた事や、生産モデルでは無いということを考えても、凄いショックです。

右の写真はハンドル周りです。
と言っても、メーターが1つあるだけですが・・・。

画期的なワイパーシステムを説明するアラール氏です。
ワイパー軸を中心とする動きに対して、ブレードは下方に中心を持つリンクに連動してスライドするため、ワイパーの掃く面積が変化するという機構です。
・・・が、これで何かを思い出しませんか? そう、
MB190とかに採用されていたものと同類ですが、これをシトロエンは60年も前に、しかもこのようなシンプルな機構で成立させていたのです。

この時、私たちのうちの1人が「MBと同じですね」と言うと、アラール氏はニコニコしながら「いやいやウチの方が先だよ」と語っていました。
・・・と言う事で、アラール氏と乗っています(笑)・・・。
博物館に収められたら、こんな事はもう出来ないでしょうね。
私たちへ披露するために、この時はエンジンを懸けて歩道まで上がってきましたが、この撮影の後、再び自力でトレーラーに上がって行きました。

朝の早い時間だったのですが、段々通行する人たちも気がついて、何人かが集まってきましたが、最後には警察官までやって来ました。


 ※) 昨年のレトロ・モビルには、新たに発見されたプロトタイプが出品されていましたが、それらは損傷もひどく、完璧な形で保存されている個体は、現在もこれが唯一となる筈です。