フィンの夏休み ♪
Nanase
ぼんやりと海を見ているのはいいものだ。
岩陰から時々顔を出す、蟹にそう語りかけてフィンは目を細めた。
もう何年になるだろう?
働き続け、戦い続けて。
こうしていても、すぐに誰かに呼ばれそうで……。
「フィン……」
ああ、やっぱりだ。
フィンはあきらめたように微笑んで立ち上がり、振り返った。
けれど声の主は『ご主人様』ではなく、妻のラケシス。
フィンは自分の習性に苦笑しながら、ラケシスを抱き寄せた。
「お呼びだと思ったのね?」
「ああ、いつもの癖だ」
「あなたはとても忙しいお方だから」
「喜ばしいことでもあるのだがね」
ラケシスの輝く金色の髪に顔をうずめて。
潮風を身体いっぱいに受けて。
フィンはつかの間の休息を楽しんだ。
どこにいても、誰といても、『ご主人様』がスイッチを入れたら戦わなければならない。
聖戦だけでも忙しかったのに、トラ7がでたものだからフィンには休む暇もない。
「フィン〜〜〜」
「ああ、我音殿が呼んでいる。戦わなくては」
「あら、そう。もう休暇は終わりなのね」
「ああ。だが、我音殿はわたしを殺さないから救われるよ」
「うふふ。Nanaseはあなたを盾にしたりするものね」
「ああ。勇者の槍は取り上げられるしさんざんなんだ」
「ふふふ。でも、彼女最近、聖戦もトラ7もやらないでしょ?」
「ああ、そうだな。助かるよ。Nanaseはジャムカばかりエコヒイキして、レンスターはぞんざいに扱うから嫌いだ」
「うふふふ、フィンったら」
いいながら身支度を整えたフィンにラケシスはつぶやいた。
「私もご一緒に」
「ああ、今回、我音殿は聖戦だからな」
「ええ。ご一緒できるのは前半だけだけれど……」
そういって見つめあうと、二人は手を取り合って一瞬でその場から消えた。
そして、ゲームの世界へと……。
テレビの前には、キラキラと瞳を輝かせ、コントローラーを握る我音の姿が………。
「フィン〜〜〜〜〜」
(はい、ご主人様。今回も精一杯戦わせていただきます)
フィンがそういって、小さくウィンクを投げたのを我音は知らない♪
End
後書き
きゃ〜〜〜、ごめんなさ〜〜〜い。
真面目に書こうと思ったのに……(爆)
10000HT おめでとうございます♪ これからもよろしく(笑)
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