Prayer for the Grace

Likely

恋心

誰もが一瞬で目を奪われた。
その影に隠れるようにレヴィン様のマントを掴んでいた彼女。
美少女という言葉が相応しい、白銀の巫女姫。
その翳りのある表情を明るくしたい。
伏せがちな目を開かせたい、と思った。

でも、彼女が最初に微笑んだ相手は、俺では、なかった。

「デルムッド様」
初対面の俺を彼女はこう呼んだ。
「デルムッドでいいよ。俺も君のことユリアって呼ばせてもらうから」
「皆さんに親切にしていただいて…私」
恥ずかしそうに目を伏せる。
真っ直ぐに伸びた白銀の髪がかすかに揺れた。
あまりの可憐さにこちらの方が恥じ入ってしまいそうだ。
「そんなこと考えなくていいんだ。皆、君のこと大事な家族の一員だって思っているんだから」
「…家族…」
必死に何かを思い出そうとする彼女。
「ユリア…?」
だが、苦労は実らないようだ。
「ごめんなさい」
彼女は再びその目を伏せた。
なんとかしてやりたい。
記憶が戻れば、この姫も明るく微笑んでくれるかも知れない。
そうしたら、この可憐な姫がどれだけ可愛く見えることだろうか。
微笑んで欲しい。
微笑んで…

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