あいのちから(^^;)

Likely 

彼はつい先ほど見失った人を捜して一人広野を彷徨っていた。
シグルド軍の大遠征のさなかである。
遠くには行っていないはず、と目を凝らしてみる。
と、今まさに敵軍に包囲されようとする彼女が濛々たる砂煙の中で認められた。
―封じ込めていた想いの扉を開け放ち、彼は駆け出す―。

「姫ッ!お怪我はありませんか!!」
彼―清廉の蒼き槍騎士が喉も裂けよと声を張り上げ、愛馬に拍車を掛けると金色の女人に駆け寄った。
「だから姫って呼ばないでって言ってるでしょ!!!」
女人の白い華奢な手に握られた銀の大剣が唸りを上げて回転した刹那、それは凄まじい斬撃と化してアーマーナイトの頭上に叩き込まれる。外部からの物理攻撃に対し、完璧な強度を誇る甲冑の頭頂部が見事にひしゃげた。中の人物は衝撃に耐えられず、目を回して昏倒しているに違いない。
「何度言ったらわかるのよっ!」
矢継ぎ早に彼女の細腕が目にも留まらぬ早さで動いたと思うと、次の瞬間銀の大剣が右から来たアーマーナイトの頭上に寸分違わず炸裂する。
「私は貴方と一緒になるんだからっ、」
悶絶するアーマーの中身を尻目に左方から飛んできた手槍をそのまま楯で受け止める。
右腕は相変わらず高速回転しながら重量に無上の誇りを持つ敵を草木の如く薙ぎ払っていく。
「私の名前を呼んでちょうだいっ!!」
彼女によって大量生産される戦闘不能者の膨大な山。
「・・・はい、ラケシス様」
彼の出番はなさそうだった。
「なんて言ったの?!聞こえないわ、」
銀の大剣で湧くように現れるアーマーナイトを文字通り叩き潰しながら、麗しいひとは眉根を寄せる。
「ラケシス様・・・」
そのうちに、彼のひとに恐れをなしたのか、アーマーナイトたちはフィンの方へ怒濤の如く押し寄せてくる。
「分かっているでしょうね、私の側で戦うのだから・・・負けたら承知しないわよ」
彼は言葉の意味を覚って内心も青くなった。
カリスマ持ちの彼女の隣で恋人たる己が無様な姿を晒したら・・・もう相手にしてもらえないだろう。誰からも。
主君の失望、同僚からの嘲笑、そして何よりも―この方の信頼を失うのは何にも増して恐ろしい。
暗黒の未来図が不気味な音を立てて彼の頭をよぎる。
「仕留め損ないは許さないわ」
玲瓏たる声をバックに心の中で自身の無事を祈りながら無我夢中で勇者の槍を揮う彼。
時折槍の矛先が大きく円を描いて必殺の一撃を繰り出していることも彼の認識の外にある。
今、彼の心の中にあるのは、この場を無事に切り抜けることだけ。
―そして数刻の後―
彼が自分を取り戻したときには、倒れ伏すアーマーナイト軍団の中心に彼を含めて二騎だけが立っていた。

肩を大きく上下させて荒い呼吸をする彼に彼女は満面に微笑みを湛えて言う。
「さすがは私が見込んだ人だけのことはあるわね♪
あと一撃であわや昇天のところを紙一重でかわす様などまるで神業を見ているようでしたわ」
無邪気にはしゃいでリブローの杖をかざす彼女。
彼は思わず安堵して愛馬の首に突っ伏した。
「お疲れさま。本城で私の帰りを待っていてね」
片頬に柔らかい感触を感じた直後、光のオーラに包み込まれた彼は瞬時にして本城に戻っていた。

はっと我に返る。
あの方のお言葉―『本城で私の帰りを待っていてね』

ま・・・まさか、あの夢にまで見た「お帰りなさい」イベント!?
あのキュアン様とエスリン様のような会話がこの私にも用意されようとしているのか。

万年新婚夫婦に普段からあてられていたフィンは感動のあまり両こぶしを握りしめ、馬上で気合いを入れる。
「一世一代の見せどころ」である。

城を抜け庭に向かおうとする彼の背後に、指揮官の何らかの意図であろうか、緒戦から本城詰めを命じられていた金髪の独り者たち(約3名)が異様な目付きで迫っていることを彼はまだ知らない・・・。

〈END〉

後書き
うちのゲーム上のフィンは大抵彼女は作ってもらえないです。
それに引きかえ、ラケシスは早々とクラスチェンジ。
ヘズルの血の恩恵でいつも力はMAXの27。
トップクラスの戦力でいつも忙しくマップ上を駆け回っています。
こんな2人をくっつけると・・・こんなになってしまいました。
本当はうちのフィンラケはこんなではないはずなのですが・・・

SPECIAL THANKS! Likely様

管理人より
Likely様より素敵なお話をいただきました♪
強すぎるラケシスに翻弄されるフィン。フィンがラブラブアタックを発動させる理由ってこういうことなのかも(^^;)
恐怖のあまりに「祈り」もフル稼動。うちはくっつくのが遅くてラブラブアタックを拝むことはできませんでしたが…。
本当に楽しかったです。ありがとうございました。タイトルを付けさせてもらいましたが、相変わらずです(涙)。

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