1998年1月上旬


<1月1日・木>
◇ あけましておめでとうございます。とりあえず、暫定的に日記をアップします。いまは午前5時です。昨日眠りすぎたので早く目が覚めてしまいました。(以下、2日未明に記述)

○ 午後からちょっと書店に出かける。元日ということもあって目当ての書店は閉店だったが、それでも古本屋などをめぐり、収穫は「チープスリル 全3巻」(くらもちふさこ)など。夜は、「寅さん 第42作」を家族で鑑賞。寅さんの分析方法についていろいろ考える。

△ さて、「いま一番イケてるコミック誌です。」というキャッチも痛々しい、休刊の決まったコミック誌「ヤングベリー」の最終号を購入する。最終号なのに、次号予告が掲載されているあたりに、休刊が急に決まったのではないだろーか、と邪推を挟む余地があったりもするのだが、それはさておき。
 第1号と第3号を読んだ限りでは、「作家さんのラインナップが好きな人は買って損はしない」という水準。ちなみに、西村しのぶ、竹宮恵子&村田順子(合作)、桜沢エリカ(落としてるけど)、やまだないと、4コマのめで鯛なんてところを上げておけば雰囲気はつかめるのでは。価格は400円。
 で、ボクが失礼ながら自分勝手に敗因を分析すると、”今”感のある作家さんがいなかったということでしょうか。
 どうもヤングレディースの読者に訴求力のありそうな作家を並べながら、それよりもやや若い路線を狙っているムードがあるので、そこに矛盾があったのではないだろうか。ヤングレディースの読者は少女漫画時代からも持ち上がり組なわけだけれど、そういうマンガを読み慣れた人たちに「いいコをやめよう! 愛の冒険、恋の革命コミック誌」というコンセプトは合致していないだろう。これは、どうしてもマンガ・ビギナーに目配せしているコンセプトのように考えられる。その割には、今、ビギナーでも知っているような広範囲に訴求力のある作家さん(単にメジャーというのではなく今が”旬の”印象がある人)がラインナップに入れられなかったのが、ツラくなった理由なのでしょう。雑誌だからそういう部分がないとねえ。
 記事ページの朋ちゃん企画は、写真があまり良くなかった。どうせ借りたやつばかりだろうけれど。

 その中でも、新人・大久保ニューは注目株かも。以前、この日記でも紹介した「渋谷A子」の作者であるが、今回掲載されている作品は前より格段に上手くなっていた。ちょっと間違うとセンチメンタルになりすぎたり、キャラクターが意地悪に見えたりするのだが、独特の絵柄がそれをカバーしている。
 最近は「キューティーコミック」にも登場して「ハイスイお嬢さん」という作品を書いていて、それとテーマが似通っているのがちょっと気になるが、それでもこれから伸びるかもしれない。ウワサによると男性ということになので、実力をつけたらスピリッツ(”外人部隊”で強くなっているなあ、この雑誌)あたりにステップアップも可能なタイプ見えるのだが。はてさて。


<1月2日・金>
◇ 今日は在宅勤務。ということで前もって実家に宅配便で送っておいた資料類と格闘する。午前中でけりをつけるつもりが、なんだかんだと手間取って、結局1日仕事に。そのため、ホームページの更新もままならず。そして、仕事も予定の8割ぐらいの完成度どまりとなった。しかし、平凡社の百科事典にレイモンド・チャンドラーの項目がないとは思わなかったなあ。あれば、もうちょっとはかどったのに。

○ 藤枝東は初戦である2回戦を順調に突破。試合中継そのものは、うたた寝しているウチに終わってしまったので、見てませーん。でも、よかったよかった。

◇ 「エア・フォース・ワン」の我が家的邦題は「大統領 危機一髪!」と決まる。

☆ 昨年1月からスタートしたこのページもついに1周年を迎えた。その間にカウンターは20000を超えた。このページを覗いて下さったかた、特に日記猿人に投票して下さった方などには感謝するばかりである。ありがとうございます。非常にはげみになりました。
 思えば、この日記は当初の「生活行動を簡単に記録する」「その時の思いつきをメモしておく」といったもくろみと違い、結果的に激動(爆笑)の1年の総合的な私的記録となってしまった。「忙しい」と「酒飲んだ」「カラオケいった」「本買った」しか書かれていないという指摘もあるが、仕事の話題を省くとなかなかそれ以外の話題というのはなかったりする。でも、行間を読むといろいろ読みとれるはずなので(ウソ)、みなさん内容にあきれないで今後もちらちらと読んでいただければと思います。

 今年の課題は、他コーナーの充実である。日記でもまとまった考えを書く場合があるので、それを「雑文的独白」にも収録する。映画やコミックなどを見た直後のレビューも別だてにして目立つようにする。などの作戦を考えてはおりますが、はてさてどこまでできるものか。これからも細々とやっていきますので、よろしくお願いします。


<1月3日・土>
◇ 小学校以来の友人2人と会う。そもそも高校時代に、大晦日を誰かの家に集まって過ごすということを始めたのがきっかけで、年に1、2回は機会を見つけて会うことが恒例化した。もともと4人で始めた会合だが、最近は4人が揃うことはまずなく、たいがい誰かが”欠席”している状況。今回も今年5月に結婚が決まった男が、東京から帰省してこなかった。なんでも「独身最後の年末年始を東京で過ごしたい」からだそうだ。

 昼飯にカニを食べて、それからパソコン店をちらりと冷やかし、カラオケへ。まあ、お互いの性格はいやというほど分かっているので、別にわざわざ語り合うというほどのこともないのである。シダックスのカラオケでカワムラ・リウイチの「Love is…」を歌ったら94点をマーク。4位だった。(母数がどの範囲かは不明)ラッキー。

□ それに先だって、静岡市でいろいろ買い物。青弓社の「宮崎駿の着地点」は谷島屋本店でも在庫が無く取り寄せになっていた。ちょっと音楽の趣味を広げようと、テクノのCDを3枚購入。ケン・イシイとエイフェックス・ツインである。ケン・イシイのニューアルバムはCD−EXTRA仕様だった。
明日は朝から東京に戻って「タイタニック」の日である。


<1月4日・日>
◇ 朝、藤枝を出発して、東京に戻る。正午から新宿で眼鏡を新調し、それから三越で開かれている「北野武ギャラリー」を覗く。これは、今度の映画「HANA−BI」にも挿入された北野武自筆の絵の展覧会。老若男女が見に来ており、メイキング・ビデオを上映している部屋(広さは40席から60席といったところだろうか)は、立ち見までいた。もしかすると、「キッズ・リターン」を超えて北野映画最大のヒットになるやもしれぬ手応えを感じる。

□ 絵の魅力における、大きな要素の一つは、なんといってもその「サイズ」だろう。縮小された印刷物では、その絵の本当の魅力を味わったことにはならない。北野武の絵も実際に見てみると、想像以上に大きく描かれており、映画で見たり、雑誌で見たりするのとは全く別の迫力を持っていた。
 油彩のマーカーを使って描かれた作品は、全体の印象はプリミティブな色使い、形なのだが、デティールを見ていくと点描があったり、草花や龍の鱗が精密に描かれたりしている。その落差が絵の味になっていると思う。

△ その後、夕方からは「タイタニック」。1時間前に並べば座れる、という過酷な条件をクリアして(昨年春のエヴァよりはだいぶマシではあるが)座席を確保。というものの、昨日の睡眠不足もあってすでに疲れているので、座席に座ると即座に熟睡。休憩時間とCMの一部を睡眠時間に充てる。

○ 映画は、「大作」という名にふさわしい出来映え。パニック映画・特撮映画(それに”アイドル”映画か?)というレッテルを貼りやすいのだが、その内実は女性映画であり、20世紀の夜明けの瞬間を切り取った歴史映画(ヨーロッパ的価値観の死とアメリカ的バイタリティの勝利)でもあった。また、船はモラトリアム的状況の比喩として活用されているのだろう。(これは、瀬戸内ムーンライトセレナーデも同じ)。
 キャメロンはこれを撮ったことで、やっと(僕の中の評価は)巨匠の仲間入りといった感じである。(といっても、きっと「トゥルー・ライズ」みたいな映画もまた監督するんだろうけれど)
 あえて欠点を探せば、ディカプリオの役が「画家」というところが、少女漫画的というか、生活感に欠ける設定(役に生活感がないわけではない)である、という指摘は可能だろう。デラシネの画家というのはあんまりにも、ロマンチックに過ぎるでしょう。
 興奮醒めやらず、カレー&ビールを食べて巣鴨へ帰る。


<1月5日・月>
◇ 仕事始め。とはいうものの、しっかり休憩をとってから出社。それぐらいのことをしないと、気分的に割が合わないような感じがする。そして、さっさと帰宅して、さっさと寝る。いくらでも寝れるというのは、結局、年末の疲れを年始に持ち越してしまったということなのだろうか。胃の調子は良くはなってきているが。

○ 星新一、死去だそうである。僕は、熱心な読者ではなかったが、多くの中学生がそうであるように、「ボッコちゃん」と「ようこそ地球」を読んだクチである。中学生が、氏のショートショートに惹かれるのは、氏の小説に描かれている世界の前提条件が、中学生ごろに確立される知識や世界観とほぼ重なるからだろう。例えば、欲望と建前の落差を笑うのには、その二つを読者がはっきり把握していなければいけないが、それがいつごろ理解できるかといえば、やはり中学生ごろではないだろうか。そういうことである。(もっとも、最近の子どもはもっとスレてるのかもしれないが)
 これは別に星作品のレヴェルの話をしているのではない。むしろ、何故、みんな星作品を読むのかということを考えているのである。そして、おそらく氏の作品は、そういう世界観を題材に描いたが故に、エヴァー・グリーンの地位を得たのであろう。これは、サザエさんが愛され続けている理由とも類似しているように思う。

□ 年賀状を書かねばと思っているが、書くような時間が確保できない。さっそく9日に一つ仕事があることが一因に加え、10日には私用で名古屋へいかなくてはならない。出来合いのハガキを買っていって、やはり新幹線の中で書くしかないか?

△ 先日、知人に「昔の日記の方が面白かった」と言われた。それから「日記以外ももっと読みたい、と」とも。むむーん。


<1月6日・火>
◇ むちゃくちゃ疲れている。なんだかまたダルいのが復活したようだ。それとも、久しぶりに午前中から根を詰めたのが悪かったのか? ともかく午後5時半から午後7時まで会社の仮眠室でぐっすり寝てしまう。こうなると仕事は山積みでも、やる気はねえ……。

□ やっとのことで、「ポップカルチャー・クリティーク」(青弓社、各1200円)の0号(『エヴァ』の遺せしもの)、1号(宮崎駿の着地点を探る)を購入。さて、この種の定期刊行物が出るということは、一面(あくまで一面だが)こういった水準の批評について応えられるだけの作品がアニメなどにどれだけあるか、というのも試されることになるのであろう(ラインナップを見ると、アニメが看板になるのは当面この2冊のようだが)。0号の編集後記に描かれた批評についての内容には賛成する。広義での批評という行為が、その作品を読みとり、誉めたり批判したりすることで、そのジャンルが製作者・鑑賞者両面にとって豊かになることは間違いないのだから。
 まあ、中野翠や石川三千花の上手い映画エッセイを、批評の全てだと勘違いされても困ることは困るのだが。あれは、広義の批評ではあるが狭義の批評ではないという微妙なところにあるものだと僕は考えている。

△ でも、「ポップカルチャー・クリティーク」よりも先に読んだのは「スーパーロボット画報」(竹書房、2400円)。僕の見た限り、この種の本では網羅性も一番で、使える一冊である(どー使うというのだ)。評価が分かれるとすれば、解説文が基本的に「ホメ」モードであること。個人的には、サスライガーの再評価などうれしい感じもするのだが、あくまでどの作品も見るに値するようなムードで書かれている。まあ、そんなところを突っ込むのもヤボだとは思うんだ。で、最後にはHONDAのP2、P3まで掲載されている。しかし、そこの写真キャプションの「商品化が望まれるところだ」というのは??? 商品化はうれしくないとことはないが、誰なんのために買うのか? ああ、現代美術家が歩くフィギイアをつくるために買うのか。


<1月7日・水>
◇ オツカレモード続行中でーす。目が覚めたら、気が付いたらとんでもない時間だったりして、ぴょん太超どっきり、ってかんじー。いや、マジで。
 とりあえず今週が終われば一服できるはず、と自分に言い聞かせて会社へ。

□ そういえば先日、妹に頼んで置いたWOWOWのエヴァのビデオが届いていた、どうもありがとう。この借りはいずれ精神的な形でお返ししますゾ。メールも送っておかないと怒られるかも。

△安達哲の新作「幸福の(「の」はひっくり返ってる)ひこうき雲」(講談社、530円)を読む。うーん、ウエルメイド。荒削りな分物足りない人もいるが、必要なことは全て過不足無く描かれている、と思う。誰かズバーっと気持ちのいい批評を書いてくれないかのう。

○仕事でありゃりゃこりゃりゃなのだが、明日のことは明日考えよう。(マーガレット・みっちぇる風)


<1月8日・木>
◇ 雪である。私は雪なし県・静岡の出身であるので、雪が振っていると超燃えるって感じ〜(最近この言い回しが俺的旬なのだ)なのである。今日もわざわざ雪の降る中を夕食(ウエンディーズだけどね)を食べに出かけてしまった。コートに付着する雪片のいとおしさよ。(溶けるとただの水になって、愛情もなくなるんだけどね)。機会が有れば新雪の上にダイビングしたいほど、楽しいのだ。ほとんど「犬」である。ヒゲを生やし始めた(!)30男がみっともないとも思うのだが、いやー楽しい楽しい。
 山手線に乗っていても、パトレイバーのOVA5,6話とか、その遠い元ネタである2.26事件なんかを思い起こしたりして、もうアドレナリンでまくりです。いや、2.26ってあまり知らないんだけど(失笑)。「兵ニツグ」なんて超MMK(笑い)って感じ〜。確か「戦メリ」の坂本龍一が戦列に加われなくて後悔してたよなあ。三島の「憂国」もそんなところが発端だったはず。新婚だったから決起に参加できなかった(仲間が遠慮した)とかいう設定だ。

□ そんなこんなで過ごしていたら、大雪応援メールが2通ほど届く。楽しんでるんで、会社に泊まり込みの事態になってもオッケーっす。いや、結局タクシーで深夜に帰宅したんだけど。タクシーの運ちゃんも都内の道路事情について語る語る(笑い)。やはり、異常事態はハレなんだよなあ。アムロ元気か?ってそれは「ハロ」。「HELLO DAVE」ってそれは「HAL」。

○ 午後二時半ごろ東京駅八重洲口前を通過するが、タクシーを待つ人が二〇人ぐらいいた。辛いだろうなあ。こっちは車の中だったけど←嫌なヤツ 


<1月9日・金>
◇ 雪は残っているが、今日は仕事の一区切りがつく日。とはいうものの、結局10日午前9時過ぎまでかかってしまう。やれやれ。


<1月10日・土>
◇ というわけで、徹夜明けのまま巣鴨に戻ってPG、そして近くのソバ屋でカツ重とビール。で、そのまま新幹線に飛び乗って名古屋まで。巣鴨の書店でついついアニメ誌などを購入してしまったために、無意味に重い荷物を抱えていくことになってちょっと後悔。熟睡してるうちに名古屋到着直前に、やっと目を覚まし、地下鉄に乗り換えて栄の愛知芸術センターへ。そう、今日は大学の時にボクが所属していたサークル「混声合唱団名古屋大学コールグランツェ」の第20回記念定期演奏会なのである。

○ ボクは第13期なので、あれからもう7年か、との単純な感慨もある。しかも、今回の演奏会の第4ステージの客演指揮者は、13期が仕切った13回定演から初めておつきあいをするようになった方なので重う部分は、余計にそう思う部分はある。
 早めに会場に到着したので、舞台袖に覗きに行くと学生指揮者が発声練習をやっている最中。客演指揮者の方に挨拶。「前評判は上々ですが?」と調子を尋ねると「年末の休みを挟んでどっかいっちゃった部分があってね」と、ややナーバス?な返答。OVの集まる控え室に移動して、同級生・先輩・後輩らと雑談しながら時間を潰し、ステージの始まるのを待つ。
 さて、時間だ。

△団歌:緊張してるなあ。1st:及第点ではなかろうか。緊張しているのがプラスになったような演奏。2st:若さあふれる演奏とでもいうべきか。本当は理性をもって歌うべき曲だと思うのだが、後半はバカ(ホメ言葉)には勝てんという迫力がそういう理屈を超えている部分があった。学生指揮者が思い入れがあった曲だというが、よくそれが通じてきた。3st:地震があると建物は最も構造上弱いところから崩れてくる。こんかいの定演も一番難しい部分が、やはりクリアできなかった。それでも救いは、宗教曲としてではないのだが(前半はそういう努力が見えた)、みんなが(疲れて?)好き勝手に歌い始めたら、それなりのスタイルにはなったというところ。4st:OV合同ステージ。2ステ、3ステの調子から力つきることを心配したが杞憂に終わる。95人という大人数ということもあって、いくらでも派手(大げさに)にできる曲だと思うのだが、曲間を短くして盛り上がりはあるが、叙情に溺れないコンパクトなつくりになっていたのはさすがだと思う。もっと、と望むことは簡単だけれど、それは無粋なことだ。当初の目標を十分にクリアし、大きな成功だったといえる。関係し たみなさんに感謝とご苦労様を……。

前半に古風な日本語があり、外国曲を挟んで、平易な日本語の直球勝負の曲がくる、という構成は成功していたと思う。(個人的には手前味噌だが、13回定期演奏会との類似も感じた)。そして、来年以降もやはりコレに懲りずに外国曲を選曲していって欲しいと思う。

☆ 先輩、同期7人で食事にいった後、打ち上げ会場に潜入。酒を飲みながら、あちこちで雑談。18期なんて年の離れた後輩とそれから2stのピアニスト話す機会もあって、なかなか実りはあったか? なんといっても現役の連中の若さがちょっとばかり羨ましかったりする。そういえば、生まれたばかりの子どもの写真を持ってきている親ばか一号もいるしなあ。午前3時半ごろに宿に戻る。


もっと過去

偽名日記へ

RN/HP

もう少し未来