赤十字・赤新月社の標章

 このエンブレムは,赤十字・赤新月活動を安全に行うために定められています。

 赤十字標章は,アンリ・デュナンの母国であるスイス国旗に敬意を表して
「赤地に白い十字」を反転させたものです。
五人委員会が呼びかけ,ジュネーブで開催された最初の国際会議における決議中に含まれたのが始まりです。

 加盟国が増えるに従って,このマークも多様化します。

 赤新月の標章は,十字がキリスト教を連想させるという理由で,イスラム教国で用いられています。ジュネーブ諸条約でも認められていて,赤十字と全く同じ条件と効力を持っています。

最初にこの申請をしたのがトルコです。1929年,ジュネーブ条約改定の際に外交会議によって認められました。三日月はトルコなどの国旗に使用されていますが,これは「オスマントルコ帝国の皇帝が戦線を訪れたとき,三日月と星が輝いた」という故事に由来します。この組み合わせは「善と幸福」を表すものといわれています。

これらのマークは赤十字・赤新月活動を表す「しるし」であり,とても重要な役割を果たします。
それは「保護」の意味であり,ジュネーブ諸条約で攻撃が禁止されている,命を守るマークです。
このマークが正しく使われないと,大事なときに効果的な活動を実施できなくなります。
当然日本でも,ジュネーブ諸条約と日本の法律によって使用が制限されています。
平時に人々によく理解してもらい,戦時に効果的に役立てるためにも,覚えておいてください。

 赤獅子太陽(あかじしたいよう)は,革命前のイランで使用されていました。
「イラン赤獅子太陽社」と呼ばれ,1929年に赤新月と同様に認められました。1949年のジュネーブ4条約にも記された正式な標章ですが,革命後の1980年に「イラン赤新月社」となってからは,現在はどこの国でも使われていません。


現在未承認のマーク

 ジュネーブ条約は,その精神を世界中の人々に理解されていますが,独自に標章を定めて
活動を行っている国もあります。

 イスラエルで使用されている,「イスラエル赤楯ダビデ社」はICRCから承認を受けていません。
 ※ニュースを見る限りでは赤十字のマークの付いた救急車などがよく出ますが,このマークを付けたものを見たことがありません。腕章は見たことがあるのですが・・・だれか知っていたら教えてください。
赤十字と赤新月の併記をした「カザフスタン赤新月・赤十字社」の標章もICRCから承認を受けていません。過去には「ソビエト赤十字・赤新月社同盟」として特別に認められていた時もありました。


標章の問題点

 これまでにも標章の宗教性が指摘されて,将来にわたる解決策の検討が重ねられました。
現場で活動するスタッフが攻撃を受けるなど,標章が尊重されないことがあるからです。

 1997年の連盟代表者会議では,右のような,新たな標章案が出されました。
 しかし,ジュネーブ諸条約の改正を含むため,簡単なことではありません。
国際赤十字だけでなく,各国政府も参加した外交会議を招集し,決める必要があるからです。
 これについては,今後も検討していくそうです。



標章についてのQ&A

三日月の向きはどちらが正しいか?

正解は,「その国が赤新月社を設立するときにその社の定めた方向」が正しいのです。
ですから,どちらでも構わないことになります。
「標章使用規則」では,その第5条に「赤新月標章の形,方向について,いずれも制限がない」
とされているためです。

赤十字の標章は正方形5つでできている?

正解は,「厳格には定められていない」です。
わずかに異なる標章を使用して,本物との間に混乱を招いては,大切な命を守る役割を果たせません。
また,わずかに異なるだけで攻撃の対象になっても困ります。
ですから「白地に赤い十字」とだけ定められています。

赤獅子太陽のマークはまだ使えるの?

 ジュネーブ諸条約の上では有効な標章ですが,「国際赤十字・赤新月運動規約」からは
「赤獅子太陽」の文字は削除されています。
 もし仮に,どこかの国が使用を希望した場合は解釈の上では使用可能ですが,
ICRCがどのように判断するか,ということになります。

イスラム教の国は必ず三日月を使うの?

 インドネシアはイスラム教の国ですが,「インドネシア赤十字社」です。
前にも述べていますが,社を設立するときに決めた名称と標章が使用されます。

参考資料 「国際人道法普及入門」 日本赤十字社発行

※ ここで掲載された赤十字社の史料および資料は,日本赤十字社香川県支部に依頼して許可をもらったものです。
赤十字のマークは,その精神と共にありますから,自分勝手に使えないことも覚えてください。
ですから,ここで掲載されたマークや内容は無断転載したり,加工したりして使うことは禁止されています。
※(総合的な学習に取り組む担当の先生にお願い)
学校の中で赤十字の学習をしているグループが発表に使うことは可能ですが,

かならず「マークの重要性」をご指導ください。