たまにはこんなかんじ

■既存の管理人のエロ創作と比較して多少濃めですので、ご留意を(笑)


◇◆◇◆◇

その日は見舞いをするために、私は補佐官としてではなく、恋人として彼の私邸を訪れた。寝室の扉を開けると、彼は横になったままこちらを見て、気まずそうに目をそらせしてしまう。

「やっほー。エルンスト、お見舞いに来たよ、調子はどう?」

言われて彼はあきらめたようなため息をつく。
「見ての通りです。基本は健康体なのに動けないというのは不便なものですね。仕事をしようにも、起き上がれないので効率が悪い」
彼が見ての通り、と言ったように。彼の右足はギプスで固定されている。
「いいじゃない。いつも趣味の如く仕事ばっかりしてるんだもん。たまにはこんなかんじの日があったって、さ?」
「精神衛生上よくありません」
「まあ、そう言わず。アナタが出仕できないもんだから、リュミエール様もわざわざ陛下のところに謝りに来てくださって。なんだか申し訳なかったよ」
「ああ、確かに。こちらにも見えましたが、あの方が悪かったわけではないのですから……」

エルンストの怪我の原因となった事故は、先日の昼、聖獣の宮殿で起きた。
セイランが使わなくなった石膏像を、それなら自分が使うのでもらえないだろうか、とリュミエール様が取りに来たのが発端だ。だが、いざはこぶとなるとかなりの重量。中庭でちょうど休憩していたユーイ、ティムカ、メルの聖獣年少トリオも手伝って四人で ―― セイランは見物していたらしい ―― えっちらおっちら運んでいたところに、エルンストは通りかかったのだそうだ。
「年少組みの三人は元気が有り余っているだろうからともかく、あの華奢(に見える)なリュミエール様が重い石膏像を運んでいるのを黙ってみていられなかっただけです」
と、エルンスト当人は言う。ともかく、エルンストは自分だって典型的な研究者体型で、相当な非力であろうに何を思ったかリュミエール様の変わりに手伝いましょう、と申し出たのだと言う。
リュミエール様は ―― 当然 ―― 最初は相当固辞したそうだ。
「わたくしは、見た目よりも相当力持ちなのですよ、ふふふ」
とか、仰ったと聞く。でもそれは遠慮ゆえの言葉だと思い、結局エルンストが変わりに石膏像を持つ。
が。
四人の中で実は一番力持ちだった彼が抜け、非力な奴が代わりに入ったため当然バランスは崩れる。結果、石膏は取り落とされ、エルンストの右足の甲に全治数ヶ月のヒビをこしらえたのだった。

「あの方が、本当に怪力 ―― いや、そんな力持ちだとは思わなかったので」
自分の失態だった、とエルンストは言う。
「まあ、仕方ないよね。一見そうは見えないもん。でも、あの方がいつも持ち歩いてるハープあるじゃない。あれって、すごい重いんだよ?何十キロもあるって聞いた。リュミエール様は、絶対、あれだ、逆三角形水泳体型!脱いだら凄いんです、のクチだね」
「脱いでも凄くなくてすみませんね」
変なところで、彼が拗ねるので、動けないのをいいことに彼のメガネをさっと奪って、鼻の頭にキスをする。
「凄くないところが、結構スキだよ?それに、凄いところはそれなりに凄いし」
「な、何を言ってるんですか、レイチェル!」
くすくすと笑いながら、わたしは彼の足元へと移動する。足にがっつりはめられたギブスが、痛々しいというよりも、ちょっと滑稽だ。普段生真面目で隙のない彼だからこそ、なんだか今の姿勢は微笑ましかった。
「うわ〜。お約束だね?ギプスにマジックで色々落書きされてる!」
「あまり読まないでやってください。同僚たちが次々とやってきて、くだらない落書きをしていきました」
読まないで、という忠告を無視して私は落書きを眺める。

「あはは、この下品な落書きはレオナードだね。上からティムカの字で『下品な落書きはやめてください、レオナード。エルンストさん、早く元気になってくださいね』って書いてある。『ティムカ、下品な獣の落書きなど無視しなさい。エルンスト、一日も早い回復をお祈りしていますよ』これはフランシスね。『よくなったら一緒に体を鍛えるか?』って、これはヴィクトールでしょ。『三十過ぎての怪我は治りにくいってじいちゃんが言ってたぞ!お大事にな』あはは、ユーイは相変わらず痛いとこついてくるね。『エルンストさん、ごめんなさい。僕もっと重いもの持てるよう鍛えるよ』ってのはメルだね。うーん、メル鍛えたら将来凄そうよね。『石膏像は傷ひとつなかったよ。結局リュミエール様が一人で運んでいった』って、これはセイランの字ね。『今度重いもの運ぶときは俺を呼べ。こんな騒ぎはもうごめんだ』これはアリオスでしょう。そっけないけどいい奴よね?チャーリーが『暇つぶしに何かご入用でしたらなんでもご用意しまっせ』っていつまで商人さんのつもりなんだか」

笑いながら読み上げると、彼も少しくすぐったそうに笑う。
「なんだかんだいって、全員お見舞いに来てくれたんだね」
「ええ、とてもありがたいです。あまり、上手に人付き合いしていたとは思っていなかったので」
たぶん、それは彼の本音だろう。けれども私は知っている。そもそも人付き合いは『上手』にするものではないのだ。彼はその勤勉さと誠実さで、この聖地でちゃんと評価され、頼りにされているのだ。このみんなの書き込みが何よりの証拠ではないか。なんだか自分のように嬉しくて、少しだけ調子に乗ってみる。
「そうだ、私も書いちゃおう」
「えっ、こら、レイチェル?」
彼が慌てている間に、私はギプスの空白の場所に、キスをする。
出掛けに塗った、ピンクのルージュが綺麗に唇の形にのこる。そして、その横にレイチェル、とサインした。
「これでよし」
ご満悦の私をみて、彼は呆れているが、ちょっとだけ嬉しそうでもある。
「さて、何か身の回りのことでしてほしいことはある?」
聞くと彼は特にない、と首を振る。このままおしゃべりだけして帰ってもべつにいいが、恋人としてはなんだかもっと世話を焼きたい気分でもあり、少し食い下がってみる。
「ほんと?食事は手が空いてるから平気だろうけど、お風呂とか、トイレとかは?もしかして○瓶初体験とか」 彼は慌てて言う。ちょっと顔に赤みが差している。
「トイレは、すぐ隣の部屋にあります。怪我をしてるのは片足だけですから、動けないわけではないのです。お風呂は入れませんが、タオルを用意してもらって自分で拭いています」
「自分で?誰かにやってもらったりしてないの?」
ちょっとだけ気になって聞く。他の人 ―― 特に女の人、だったら嫌だな、と思ってしまったのだ。
「自分でできるので、自分でやります」
「エルンストらしいね。う〜ん、でも、よし、決めた!今日は私が拭いてあげるよ」
何を言っているんですか、と慌てている彼をよそに、私は台所で暖かいタオルをいくつか用意すると、やる気まんまんで彼のパジャマを脱がせにかかった。
「ナニ今更照れてるのよ。いいじゃない。脱いだら凄いんです、ってわけじゃないけど、ワタシエルンストの体けっこうスキだよ?」
「何を真顔で言っているんですか」
とは言いながらも、彼は抵抗するのをあきらめたようだった。パジャマのボタンをはずすとき、なんだかちょっとエッチな気分になってドキドキする。
研究で内にこもってばかりかと思えば以外にも彼はテニスが好きで。そのせいかどうか、彼の体は均整が取れていてとても綺麗だと私は思う。
「レイチェル、タオルで拭くなら早くしてください。脱ぎっぱなしでは体が冷えてしまう」
脱がすだけ脱がして、彼の上半身に見入っていた私を、彼がせかした。放っておくと彼の胸にキスしそうな勢いだったところを、我に返る。
「はあい。じゃ、背中からね」
上半身を起こしてもらい、熱めのタオルで背中を拭く。思いのほか、広い背中。やっぱり我慢できなくなって、タオルでなく、指でつ、となぞってみる。くすぐったかったのか、ぴくりと方が動いた。
「レイチェル!」
「えへへ。じゃあ、次は前ね。ほら、寝た寝た!」
再びベッドに寝かせて、体を拭いていく。彼と目が合い、にこりと笑うと、目のやり場に困ったのか、そのまま瞑ってしまった。胸の突起の部分を少し転がすようにタオルを動かすと、やっぱり彼がぴくりと動いた。たまらず、胸元にキスを落とす。さっきギプスに付いたのとおなじ形に、桃色の花が咲く。彼は、呆れているようだ。
「…… まったく。人の体で遊んで楽しいですか」
「うん。楽しいよ?」
素直にいって、私は最後の砦にとりかかる。
「さて、足いくよ。パジャマの下、脱がすから覚悟してね」
「そっ、それは自分でやります!手は自由に動きますから」
珍しく慌てて、じたばたしている彼の上半身を起き上がれないように押さえつけて、私は手早くズボンを脱がせる。 足を拭こうと下半身に目をやると、私はそれに気付いてしまう。彼がいつも着ているぴったりとした下着の、そこが、ちょっとだけボリュームアップしている、ような。
「あれ、エルンスト、もしかしてちょっと反応しちゃった?」

非常に気まずそうに彼は目を逸らす。そしてそのわりには、冷静に言った。
「当たり前です。さっきからなんやかや、好きな女性に体をいじられて、何も感じなかったらそれはそれで問題でしょう、って、レイチェル!いじらないでくださいっ!」
あんまり冷静な受け答えだったので、ちょっとイジワルしてあげようと、手のひらでなぞってみると、流石に彼は慌てたようだ。手の中で、さらにそれはボリュームアップしつつある。
ここまできてしまったら、やりたいようにやってしまえ、というのがこのときの私の心情だった。
「いいからいいから」
「いいからじゃ、ありません」
上半身を起こしそうになった彼を押しとどめると、下着からくっきりと盛り上がった陰茎に、ゆっくりと手を這わせる。指でなぞり、反応を楽しんで。
「ね?いいでしょ?」
そう聞くと、あきらめたのか、快感がまさったのか、返事はなかった。
徐々に盛り上がり、ついには下着からこぼれそうになったので、この際とばかり下着も脱がしてしまう。ちょっと身をよじるような仕草をする彼が、妙にかわいらしい。
しばらく手で弄んだあとにくちびるを押し当てると、予想通りに口紅のあとが付いた。その口紅を舐めてとるように舌を這わす。それから口に含んで、そのなかで再び舌を這わせてみた。
「…… あ」
彼が、耐え切れなくなったように、あえぎ声をだす。男性の、そういう声はなんだか新鮮だ。普段エッチするときは、彼が結構攻めっぽいのだけれど。
―― たまには、こういうのもいいかもしれない。
舌で敏感と思われる場所を刺激しながら、上下に口を動かすと、自分の唾液でぬるぬると滑らかに動く。
彼のそれがどんどん硬くなっていくのがわかって、私の体も少しずつ、熱くなってくる。
ちょっとだけ調子に乗って、ぴちゃぴちゃと音をたて、気分を盛り上げるためにエッチな感じを演出してみたり。
すると。
「…… っ …… レイチェル」
吐息の合間に彼が名前を呼んだ。
「なに?」
と返事したつもりだけれども、口にモノを含みながらの返事は、くぐもっていたかもしれない。
「貴女だけ、服を着ているのはずるいですよ」
なるほど。そうかもしれない。
「うん、わかったよ。脱がしたい?それとも私が脱ぐのを見たい?」
「そうですね、今日は ―― 脱ぐのが、見たい、ですね」
うなずき、彼の体から一旦はなれ、服に手をかけると、勢いよく上着を脱ぎ捨てた。服の枷から逃れた乳房が、ふわりと揺れる。ショーツを身からはずしながら、見られていることに更に体が熱くなる。
「レイチェルは脱いだら凄いんです、のタイプですね」
「なに言ってるのよ。脱いで『も』スゴイの間違いじゃない?」
確かにそうですね、と彼は笑った。
裸になった体を彼の隣に横たえる。
カーテン閉めて明かりを消せばよかったかな、そういうと彼は、折角ここまで大胆なのだからこのままでいい、そう言った。確かに、もっともだ。
キスをして、抱き合って ―― といっても、彼は動けないので抱きついて、にちかいけれど。
足を絡めると彼の手が私の体をなぞる。熱い場所に指が触れて、奥をまさぐりはじめる。
「貴女も十分に反応していますよ」
そう彼が言うのでさっきの彼の言葉を真似して答える。
「当たり前だよ。さっきからなんやかや、好きなオトコの体をいじって、何も感じなかったらそれはそれで問題でしょ?って、……あっ」
言葉は途中で喘ぎにかわった。彼の長い指が、花びらをたどって奥へと差し込まれる。くちびるが首筋をすべり、胸元へ落ちた。
愛撫はしばらく続いた。私が十分に熱くなったころ指が引きぬかれ、彼がささやく。
「私はこの体勢から動けませんよ」
私は頷いた。はじめから、そのつもりだったのだから。身を起こし、仰向けになっている彼の上に乗る。そして、いまやしっかりそそり立っている硬いそれへ、自ら体をあてた。
ぬるりとした自分自身の体液の感触。おそるおそる、角度を変えながら、自らゆれるように動くと、思いのほかすんなりと、彼は私の中へと納まる。
文字通り、突き抜かれるような感覚が襲う。
「ああ …… ん」
思わずこぼした声。彼が促す。
「動いてみてもらえますか」
「うん。どういうふうにするのがいいのかな。よくわかんないんだけど」
「貴女が、好きなように」
「わかった」
頷いて、少しずつ動いてみる。自分が気持ち良いように、というのはなんだかとっても照れるものがあったけれど、至極新鮮で、いつしか躊躇いはなくなっていた。
動きが一定のリズムを刻むようになると、彼も私の腰に手を当てて、動きを支えてくれる。
繰り返し襲う快感。朦朧とした中で、ふと彼と目が会う。
さっき体を拭いていたときは彼は目を逸らしたのに、今は反対に私を見つめている。
「…… あんまり、見ない …… で、あっ」
恥ずかしさに言う声も、切れ切れで、かえって照れくさく、おまけに彼が下から突き上げるので、結局声は掻き消えてしまう。
「とても魅力的なのに、見ないでいるのは惜しい ……」
さらりと言うのが悔しくて、すこし動きを激しくすると、彼も、いずれ吐息をついた。
擦れ合うからだから溢れる液体が、軋む寝台とあわせて隠微な音を奏でて、もう、快感の声以外は語る言葉もない。身をかがめてくちびるを求めると、彼の動きも激しさを増す。
自分から深く、深く彼を求めて、熱く体をつなげて。
幾度も突き抜けるような感覚を味わって。
そして私たちは絶頂を迎えた。

◇◆◇◆◇

彼の隣によこたわり、腕を回す。落ち着いてくると、ずいぶん大胆なことをしたと思う。
でも。うん、刺激的なのもたまにはいい。
―― たまにはこんなかんじで。
これからも挑戦していいかもしれない。
「せっかく拭いたのにまた汗かいちゃったね?」
言うと、眼鏡をかけながら彼は微笑する。
「また拭いてもらっていいですか。今度はあまり刺激しない方向で」


―― オシマイ




◇◆◇◆◇


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2006年に発行した「アンジェリークオールキャラ本」のオマケとして差し上げた18禁コピー本に掲載したエロ創作です(笑)
なんといいますか、私のわりに濃い話が書けたのでは、と。当時は思っておりましたし、今みても、本棚の他作品と比べれば十分に濃いのですが、まだ、こう、修行が足りないな、という気はしています(笑)
入れてからの描写がどうしても短くなっちゃんですよね〜(コラ)
でも、別に書かれているキャラが早いとかそーいうことではないので、色々行間に省略されてるのだと御理解ください(コラコラ)

このカプは、というかレイチェルは、といった方がいいのかな。なんだかカラリとしたキャラなので、「イヤ」とか言わずにエッチを積極的にお茶目に楽しんじゃいそうなイメージがあるんですよね。だから濃い目の話にできたのは、彼女で書いたから、というのが大きいと思います。
いつかこのカプで、「たまにはこんなかんじ2」を書いてみたいものですが、ハテサテ?(笑)


2006/08/? 執筆 2007/08/16 掲載