耳を澄ませて


なぜ、二人雨にうたれているのか。
あなたは疑問に思うでしょうね。


きっと普通の恋人なら、
あなたを雨宿りさせる為に躍起になるのかもしれません。


でも、今日の雨はとても暖かくて、
あなたが風邪をひく心配もあまりなさそうだから、
少しだけ、僕と雨の中にいてくれませんか?


◇◆◇◆◇


僕は、雨の中にいると、
感覚が研ぎ澄まされるのです。


僕の国にはスコールがあって、
スコールの中では
全ての音が雨にかき消されてしまうのです。

だから、僕は
その中で微かな音も聞き逃さないように、
いつもスコールが起きると
じっと耳を澄ましていました。
雨音以外の音を聞くために。


僕の国のスコールは、
雨以外の景色を全てぼやけさせてしまいます。
だから、僕は
その中でも大切なものを見落とさないように、
いつもスコールが起きると
じっと目を凝らしていました。
雨でぼやける景色の輪郭をなぞるように。

◇◆◇◆◇



今降る雨はスコールほどではないけれど、
あなたの言葉や鼓動を
あなたの表情や桃色の唇を
やはり霞めてしまうでしょう。


だから、僕は


あなたの早まる鼓動を聞くために
あなたが僕のことを、好きだと
呟く声を聞き逃さないために。

いつもより  もっともっと  耳を澄ませます。


あなたの恥らい顔を見ながら、
その桃色の唇に
自分の唇をちゃんと重ねられるように。

いつもより  もっともっと  目を凝らします。


◇◆◇◆◇


雨の中の僕は
いつもよりあなたを感じられるから。
時折、こうして雨にうたれて、
一緒に会ってくれませんか?


そして、もっともっと互いの距離を縮められたら、
素敵だと
僕は思うのです。




end.

◇ 「彩雲の本棚」へ ◇



44444を踏んづけて、「色づきティムカ様!」とリクエストした私に、AIRさんがこんな素敵な作品をくださいました。
私の大好きな『雨』をモチーフに!
言葉の一つ一つが心に染み入って、情景が目に浮かぶようです。
寄り添った時に濡れた服から伝わる体温と、耳元に囁かれる声と。
その声は、少年から大人へ移り変わる過程の独特な響き。
(AIRさん宛てへの感想メールにはもっと壊れた叫びを書いてしまいましたが、ここはお上品に…(笑))
しかも絵つきです。私の好きな黒髪がきとんとみえてるっ。
雨に濡れる美少年……。はぁぁ、うっとり。
そして彼のバングルの模様が、うふふふふふふふ。嬉しすぎて悶えちゃいます。
ほんとうに、ありがとうございました!
AIRさんの本棚は、当サイトに既にありますがあえてここは、彩雲の本棚の雨シリーズの1つとして飾ってみましたv