クラヴィス様の非凡な休日:中編


◇◆◇◆◇

まあ、そんなわけでやってきましたセレスティア。
隙あらば帰ってしまいそうなクラヴィスの腕をガッツリと掴んで、今日デートしているはずのネネとメルを探すエンジュ。
クラヴィスのドキドキインジゲータはマイナス値行きそうな勢いですが無視です、無視。

「あっ!あそこだ、あそこですよ、クラヴィス様、見つけました!」

嬉々として、初々しくデートをしているメルとネネを発見した旨を伝えるエンジュ。そしていきなり実況中継。
「ターゲット『贈り物の園』へ向っている模様。おおっ、手をつないでます。意外とやります、メル様十八歳。内気という情報は間違いなのか?しかし、らぶらぶです。らぶらぶ。…… いいなぁ」
最後、なんだか中継に私情が入っちゃってるみたいだけれど。
そんな様子のエンジュに、ジュリアスもかくや、というほどに眉間に皺を寄せクラヴィスが一言。
「くだらぬ」
そして、エンジュが掴んだ腕を振り切ろうとした瞬間。
「しまった、クラヴィス様、隠れてっ!」

言うや否や。
げしっ!
おいおい、今、クラヴィスにケリ入れなかったか?エンジュ。
ともかく、何かの拍子にふと振り向いたネネの視線から逃れるために、この明るいレジャーパークでは目立って仕方ないクラヴィスを植え込みの影に隠そうとした模様。突っ伏したクラヴィスの横に身をかがめながら。
「あー、あぶなかった。今見つかりそうでしたね。でもうまく隠れられてよかった!」
ふい〜、と息をついて、清々しく微笑み、額の汗を拭うエンジュ。
クラヴィス、呆然。

なんかさ。
SP2とかデュエットの夜のデートイベントにも似たようなことがあったよね。
でも似ているけれど、激しく違う。

さて、そうしているうちにも追跡ターゲットの二人は贈り物の園へと向っていきます。見逃してはならぬと、再びエンジュはクラヴィスを引きずって尾行開始。クラヴィス、完全に帰るタイミングを失っちゃいました。合掌。

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場面は贈り物の園へと移ります。
当初の心配など完全に無用だったの如く、楽しそうに買い物をしているターゲット二人。
なにやら、アクセサリーの材料になりそうなものをメゾン・プラネットで買い物しています。陳列棚の影に身を隠しながら様子をうかがうエンジュ。クラヴィスも一応それに倣って身を隠しているつもり(後ろからどつかれるのに懲りて、自ら身を隠している)らしいけど、図体がでかいのではみ出てます。
「クラヴィス様、クラヴィス様。陳列棚からはみでてます。もう少し身を引いてください。向うから見えちゃいますよ」
「…… そう、か」
既に抵抗することを諦めたらしい。クラヴィス、素直になるべく小さく身をちぢめて、ターゲットから見えないように隠れるよう努力中。
そして、しばらくの試行錯誤の後に、おお、これならうまく身を隠せるかも、な体勢を見つけ、ふっ、とひとり満足しかけたその時。
「あっ、ターゲット移動!行きますよ、クラヴィス様!」
またしてもむんずと腕を掴まれて。
クラヴィスの努力水の泡。合掌。

次の買い物の場所はリヴル・バランス。
メルとネネは仲良く花の写真集なんかを見て楽しんでいる模様。やはり本棚のに隠れつつふたりの動向を見張る妖しげな二人組み……。
しばらくそうしていたんだけれど、ターゲットの二人が店を出ようとしたので、クラヴィスは後をつけようとエンジュを振り向く。(クラヴィス様、既にすっかりその気なのか?)
すると、エンジュ、本棚の本をなにやら眺めて思案中。
「…… 行かぬの、か?」
言ったクラヴィスにエンジュは我に返り、しどろもどろ。

「えっ、えっと、すみません、先に行って尾行を続けててください、わたしちょっと用事が」

クラヴィスも少し不審に思ったことは思ったのだけれど。
デート中に女性が、もごもごと男に先に行ってて、とか言うのはたいていあれだ。お手洗いとか、化粧直しとか、そういうやつだ。
なので、深く追求せずに、彼は黙って頷く。
でもね、クラヴィス?デートじゃないんだけど、これ。まあ、いいか。

店の外で、メルとネネの行き先をうかがいつつ、エンジュを待つクラヴィス。
この隙に帰っちゃえばいいのに、既になんだか洗脳されている模様。
彼女を待つうちに、二人を見失わないかとちょっとハラハラしだした頃に、エンジュが店の中から駆け足で出てきました。
「お待たせしました〜。クラヴィス様。ターゲットはまだ見失ってませんか?」
「…… 憩いの園へ向っている」
どうやら、そろそろお昼の食事の時間の様子。
と、そのとき。
ぐぅ〜。
エンジュのお腹が盛大に鳴った。
恥ずかしがる気配もなく、彼女はにっこり笑うと。

「じゃあ、私たちも腹ごしらえと行きましょう。腹が減っては戦はできぬ、です!」

いや、べつに戦じゃないんだけどね?
でも、なんだかその開けっぴろげな様子にクラヴィス、思わず口の端から笑みが零れてます。
あれれ?もしかして、今ちょびっとだけ。
ドキドキインジゲータ上がっちゃいましたか?クラヴィス様。
あれですか。
ちょっとお転婆な元気モンの女の子に弱いという貴方の萌えツボはもしかして、今も健在ですか?!

◇◆◇◆◇

さて、食事は気軽に楽しめるカプリコルン広場。
店の中だと尾行も難しいから、丁度良かったとばかり、エンジュは屋台で両手いっぱいの食料を買い込み、ターゲットからは見えぬように頬張っています。
ヤキソバに、タコ焼きに、フィッシュ&チップス、etc.
「くらびすはま、たべないんでふか?」
手にしたたこ焼きをクラヴィスに勧めつつ、エンジュは訊ねる。
クラヴィスはふ、と笑んで、たこ焼きをつまみ、言った。
「よく、食べるな。そこまで豪快だと …… いっそ、清々しい」
エンジュはウーロン茶を飲んで一息つくと、にっこり笑う。

「体力勝負ですからね、エトワールは。だから、よく食べて、よく遊び、よく眠る!」

って、オイ。
『エトワールは』とか言ってるけど、そこに『働く』っていう単語が含まれてないぞ?
使命はどうした、使命は。
でも、その返答にクラヴィス、さらに心を動かされた様子。
「……そうか」
とか呟いて、やはり口の端を少し上げて笑んでます。ドキドキインジゲータまたも微妙にUPか?

「そうです。さあ、腹ごなしに遊びに行きましょう!」

食べ終わった後のゴミを近くのゴミ箱に捨てて、元気よく言うエンジュ。
デートの追跡はどうしたよ。追跡は。
と、その時、視界に入ってきたターゲット二人にエンジュ気付いて、本来の目的を思い出した模様。
しかし、身を隠すのをすっかり忘れて、堂々と二人、目立つところに立ってます。
ああ、このままでは、メルとネネに気付かれてしまう!
少し動転したエンジュ。何を思ったか。

「ク、クラヴィス様、何かの真似。真似。此処にあって不自然じゃないもの …… そうだ、ゴミ箱の振りしてください、ゴミ箱っ!」

…… 流石にそれは無理があるだろうよ、エンジュ。
そこにゴミ箱があっても確かに不自然じゃないけど、それを人間が真似るのが激しく不自然だって。
クラヴィス、何か言ってやってよ。
って。
言われるままにゴミ箱の振りしないでください、クラヴィス様っ!
しゃがんで、腕を頭上で輪っかに組んで、それで …… ゴミ箱のつもり …… なんですか?やっぱ?

「クラヴィス様、ナイスです!」
囁いて、その影に見を隔すエンジュ。
大丈夫かよ。あんたら。
そして。
ドキドキデートに目いっぱい気を取られてて。
あからさまに不自然なその物体の目の前を、二人楽しそうに話しながら歩いてゆくメルとネネ。

っていうか。
気付けよ!


そして、舞台は『遊びの園』パルク・ディマンシュへ ――。

…… また続くのかよ!

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…… ごめん。
終わんなかった。相変わらず頭悪いです。そして無駄に長い。
ああ、でも。
マコトさん、素晴らしいネタ提供ありがとうございました!
こんなんで、如何でしょう(笑)ちなみに、まだまだ引っ張る予定……。

2005.11.15