短い爪
〜チャーリー〜



◇◆◇◆◇

目がさめたときにまず思ったのは。
この重たいものはなんだろう、ということだった。
けれども次の瞬間気付いている。私を後ろからかかえるように、しっかりとまわされた、それは彼の腕。

嬉しくって、恥ずかしくって。
ちょっともぞもぞと動いてから、私のおなかのあたりに来ている彼の手に触れてみる。
しっかりとした大人の男性の手。
あたたかなてのひら、長い指。
節くれだつほどではないけれど、決してデスクワークだけではこのしっかりとした感じにはならないのではないかと思う。
そして短く切りそろえられた爪は、きっと大切な商品を傷つけず扱うためだ。
その手が好きだと、いつか言ったら、彼は嬉しそうにおおきにな、と言ったっけ。

そんなことを考えながら、彼の手をなぜて。
そうしていると腕ごとなんだか抱きしめたくなって。
ちょっと引き寄せるように腕を持ち上げたそのとき。

「いや〜ん、離さへんでー」

てっきり眠っていると思っていた彼がそんなことを言って、私を後ろからいっそう強く抱きしめる。
思わずじたばたとしてしまってから、背を向けたまま、おはようゴザイマスと呟いた私に、彼はひどく残念そうに。

「あかん。後ろから抱きしめとったから、アンタの寝顔見逃してしもた」

言って、溜息をついた。
その溜息が私の耳にかかってちょっとぞくりとする。
そんな私にはお構いなしに、彼は私の肩に手をかけて。

「こっち向いてや。ここで見とるから、もいっぺん眠ってくれへん?」

あらためてそんなことを言われて、ましてやじっくり顔を見られるとわかっていて、そちらを向いて眠れるわけがない。
私はそんな、恥ずかしい、と呟いて彼が彼のほうへと向かせようとするのに抵抗した。

「こっち向いて」
「イヤ」
「そないこといわんといて、な?」
「いーや」

端からみたらひどくばかばかしい、そんなやり取りがしばらく続いたろうか。
ふと彼の動きが止まった。
諦めたのだろうか、と、天邪鬼な私はこんどは恐る恐る振り向いてみる。

「撤回。そのままで、ええ」

と、今度は振り向けないように彼が私を強く抱きしめる。
ぴったりと重なった互いの裸体。
そして。
私のお尻のあたりに、強く存在を主張する、彼の ――

「わかる?あんたが可愛くて、こんなんなってもた」

わかりすぎるくらいわかる。
そして、それに反応して私もなんだかすごくへんな気持ちになってくる。
そのことを知られるのがなんだか恥ずかしくて、彼の問いに頷いていいものやらなんなんやら、迷っていると、 彼は私の返答を待たずにいともあっさり私の体の一番感じる部分へと、後ろから手を差し入れて触れる。

「あんたも、おんなじやねんな。このまま、続けてええ?」

言いながら刺激されて思わずだした声を、彼は返事だと解釈したらしい。
くちびるで首筋を。残った手では乳房を揉みしだきながらいよいよ激しく愛撫してくる。

「あんな、以前この短い爪が、好きゆうてくれたやろ?でも、大切にあつかうんは商品だけやあらへんのやで」

唐突な彼の言葉に疑問をもちながらも、私が出した言葉は結局。
「 …… んっ」
その声に、ちょっと嬉しそうな気配を漂わせ、あなたは私に囁いた。

―― あんたのことも、傷つけんでこうしてたっぷり可愛がるためや。

と。


◇◆◇◆◇

◇ Web拍手をする ◇

◇ 「はじめての朝」目次へ ◇
◇ 「彩雲の本棚」へ ◇

チャーリーさんは、きっと後ろからがスキv←勝手な妄想
05.07.11 佳月