素顔のまま
〜オリヴィエ〜
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正直に言うとね、
自分に化粧を施すことは、私にとってひとつの儀式なようなものなんだ。
ファンデーションを塗って、ハイライトとシャドウを入れて、眉や目のラインをとって。
仕上げはだいたい口元、かな。
この一連の所作をすることで、だんだん外側の私が作られていく。その感覚がとても好きなのは本当だけど。でもそれって言い換えてしまうと、鎧を纏うことに似てるんだね。
見透かされたくない内側を、覆い隠してくれる華やかな鎧。
目や口が、多くを語り過ぎないように律してくれる美しい鎧。
そんな、感じ。
だからさ、いま眠っているあんたが目を覚まして素顔の私を見られる時がくるのが、本当は少しだけ恐いかな。
宵闇の中の甘い夢に紛れて晒す素顔ならまだよかったんだけれど、こうして明るい朝の光の元ではどうしてもね、 そんなことを考えてしまうよ。

あんたの中にある、私の像っていったいどんな姿なんだろう?
奔放なようでいて実は気配屋さんだって、いつだったか言ってくれたっけ。
それと、とっても頼れるし、一緒にいると安心できるおにいさんっても言ってたかな。
でもねえ、こんなコトしちゃったから、少なくとも『安心』ではなくなっちゃったよね。
なーんてね。

…… あんたが言ってくれた姿も、きっと本当の私。
でも、それだけじゃない。
もっと我侭で、わからずやで、すこしだけ寂しがり屋の私も、本当はいるんだ。
まあ、あんたにはそんなこととっくにお見通し、なのかもしれないけどさ。
それとね、もうひとつ。
昨夜は壊さないようあんたを優しく抱きながら、あふれ出る熱情のままに掻き抱いて貪ってしまいたいっていう欲望もずっと持ってた。
そんな私もいるんだってコト。
知っておいて欲しいようで、知られるのが恐い。
複雑なもんだねぇ。
なんだか、情けなくなっちゃうよ。

ああ、そんなことを考えているうちに、あんたが目を覚ましてしまったね。
私がずっとあんたの寝顔を眺めていたことに気付いたのかな。そんな、背中を向けたりしなくたっていいのに。
でもそんな仕草もかわいいね。
だから、あんたのなめらかな白い肩に手をかけて。そっと耳元で囁いてみる。

「そんなに恥ずかしがらないで。これからずっと、あんたと一緒に朝を迎えるんだ。だから、ね?」

そう、こっちを向いて。
私だって、覚悟を決めた。

「昨日のあんたは最高にキレイだったよ」

何一つ飾りもつけずに、ありのままの姿の自分をさらけだしてくれたあんた。
いままでみたなかで、一番キレイで最高だったよ。
だから、私もそのままの私で。
素顔のままで。

「おはよう、

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オリヴィエ。好きであるが故に満足いくような彼を書くのは難しい。