教えたい
〜クラヴィス〜
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◇◆◇◆◇

夜明けの光を。
このように心地よいなどと最後に考えたのはいったいいつのことだったろうかと、クラヴィスは考えた。
しばらくは思い起こす努力などしてみたが、それは既にあまりに遠いことだと彼はあっさりと諦める。

―― どうでもいいことだ。

今、かたわらで健やかな寝息をたてる大切な存在があれば。
その他の些細なことなど、すでに何の意味ももたない。
肘を尽き身を少しだけ起こすと、彼は眠っている娘をみやる。
昨夜。
腕の下で僅かに震えながら、それでも恐くはないと、そう言った娘。
優しく扱ったつもりでも、受け入れる苦しみはあったろうに。
なのに、彼女は苦痛の表情と共に、微笑さえむけた。
彼女の囁きを彼は思い起こす。

―― クラヴィス様だから。恐くなんかない。恐くはないけど、今、こうして触れている肌に、どれだけドキドキしているか、教えたい。

愛おしさがこみ上げて、思わず我を忘れそうになった。
だが急くことはすまい、と、ある程度己を抑えたのだ。
そう、時間なら沢山ある。
だから今はまだ、花開く前の蕾を壊さぬよう大切に扱うのと同じ。
いずれ、甘やかな東雲色の光がはっきりと青みを帯びた白の太陽光となるのを待って、花もおのずと咲き誇る。
それとも、すでに。
それはほころび始めているのか。
這わせた指に、躊躇いがちに、けれど敏感に反応していた様子を彼は思い起こし、ふと思いついて、いまだ眠ったままの彼女にくちづけた。
眠りの中故に抵抗のないくちびるにそっと舌を割りいれて、驚かさぬ程度に味わう。
微かな、うめきを零して、彼女がまどろみから少しづつ覚醒し始めた。
くちづけのあいま、気だるげに呟く。

「…… 朝?」
「気にするな …… 眠っていろ」
「…… ?」

眠っていろ、と言ったクラヴィスに、素直に頷いて、そのままふたたび眠りに落ちようとする彼女。
そして言葉とは反対に、眠らせる気などないのか、彼はくちづけをやめずにそれどころか肢体に指を這わせた。
愛撫するうちに、おそらくは当人の意識など関係ないところで愛らしく反応した乳房を、今度は口に含みその先を舌で転がし始める。
流石に、眠りからは引き上げられたものの、いまだ朦朧としたままの様子で、が僅かに溜息を零した。

「クラヴィス、さま ……?」
怪訝な様子な彼女にくつくつと笑いを零し彼は言う。
「何も、考えずともいい。
言いながらも、その体を弄ぶ。
脚に脚を絡め、付け根を腿のあたりで軽く刺激すれば、甘く零れる声。
意識がはっきりと覚醒していないだけに恥じらいを含まず艶かしい。
満足そうに口の端をあげて笑むと、クラヴィスは最も敏感な部分へと指を滑らす。
しばらくなぞれば豊かに潤い始め奥へと誘うかのようだ。
次第にはっきりと聞こえるようなった喘ぎ声に彼は問う。

「…… そろそろ、めざめた、か」

なかば潤んだ瞳でクラヴィスをねめつけて、彼女は小さく、いじわる、と返す。
彼はなおも笑んで、更に奥へと愛撫する。
そして、くちづけのあいまに囁く。

「意地悪な、ものか。おまえと同じだ。ただ、こうして触れている肌に、どれほど愛しいと思っているか」

教えたい。
ただ、それだけだ。
……。

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ぜんぜんサワヤカな朝じゃないクラヴィス編。
05.06.12 再録 08.02.05