・・・葉月さま、高飛び編・・・



「さて、これでよし」と葉月は旅行用の大きな鞄に載って、無理矢理閉じると
立ち上がった。「学校の方には連絡して、受理されてはいると言っても、しば
らく家には戻らないから、みんなに心配掛けない様に、置き手紙位はして於こ
うかな・・・特にお父様には」そう言いながら、便箋とボールペンを取り出し
置き手紙を書き始めた。
「尊敬するお父様へ、私はまだまだ身を固める気持ちは御座いません。それま
でにやっておきたい事が沢山有りますので、暫く旅に出ます。捜さないで下さ
い。」
「睦月へ、ちょっと訳有って姉は、青年海外協力隊として、外国で働いて来ま
す。向こうの住所等は追って連絡します。お父様には内緒にして下さい。あと
立山姉妹とあずさ・井上の調教は、一任します。拘束具の鍵の在処は・・・」
一通り書き終わり、おのおの宛名を書いた封筒に入れ、屋敷の食堂のテーブル
の上に置いて、葉月は電話でタクシーを呼んだ。「屋敷の人の車に乗せて貰う
と、お父様に勘づかれるし・・・」いそいそと、身支度をして屋敷の裏口へ出
て路上でタクシーを待った。
その夜、葉月は日本を離れた。

次の日、霞が学校で次の授業の準備をして待っていても、なかなか小早川先生
は来なかった・・・授業開始のチャイムから暫く後に、別の科学の先生が来て
「小早川葉月先生は、急遽、海外に出張する事になりました。次回からは私が
授業を担当します。取り敢えず、今回はみんながどの程度理解しているかを確
認だけします・・・」
放課後、水泳部に行ったけど、やはり顧問の先生は居なかった・・・。副顧問
に「小早川先生は、どうして急に海外出張なんかしたんですか?」と聞いても
「さあ、一応何ヶ月か前から話は有ったんだけど、先日急遽日程を決めて、出
かけて仕舞って・・・」と、少々とまどい気味だった。

さて、その頃高等部では・・・
「ちょっと、深雪、時間有るかしら?」と、睦月が深雪を呼び止めた。
「今日、学校が終わった後、霞ちゃんと一緒にうち迄来て呉れないかしら?」
深雪は「あ・また、新しい責めを考えたんだなあ」と思いながら「ええ、大丈
夫だと思います。霞も特に予定は無かったと思いますし・・・」
「そう、じゃあ、そういうことで・・・」睦月と深雪は別れて次の授業へ向か
った。

その夜、小早川邸の睦月の部屋に、睦月、深雪、霞と井上美麗の、あずさを除
いた四人が集まった。あずさは部活が有るらしい。睦月は自分の椅子に座って
「実は、こんな物が置いて有ったのよ」と、葉月からの置き手紙を引き出しか
ら取り出し、3人の前でひらひらさせてから、深雪に渡した。「見ても良いで
すか?」「ええ・どうぞ、井上には既に内容は教えてあるし・・・」
「・・・・・・・・」深雪は暫く読み進んで、顔を上げた。
「え?葉月お姉さまは、急に外国に行っちゃったんですか?」
「そう・・・どうやら、露骨に政略結婚させられるのが嫌だったみたいね」
・・・そりゃそうだ、小早川くらいの家なら、見合いの口などゴマンと有るだ
ろうし、息子さんが居ない(と、思う)小早川氏も、そろそろ跡継ぎを育てて
おかないと・・・と、心配になるだろう・・・。
「で、お姉さまのお父様は何と・・・?」
「もう、困った顔して、部屋に閉じ籠もっちゃったわよ・・・」あきれた顔で
言う・・・。あ〜ららら・・・。
「まあ、少なくとも半年は帰国しないんじゃないかと思うわ・・」
「そうですか・・・ところで、この調教云々の件りですけど・・・」
「ああ・それねえ・・・その事で、ちょっと相談が有ってみんなに集まって貰
った訳よ」
「そうですか・・・か、霞はどうする・・・」何を言って良いか判らず、取り
敢えず深雪は霞に振ってみた・・・。
「え・・・え〜と、葉月せんせいが居ないなら、その間はちょっと休憩したい
かな・・・なんて思うんですけど・・・」苦しい責めにちょっと疲れたのか、
霞は弱々しくそう言った。
「で・深雪は?」
「ええと・・・そ、そうですね。暫くお休みって事で・・・」本当は、睦月と
濃密なプレイをしたい気もするけど、妹が嫌がる事を押し進めるのは忍びない。
井上美麗ちゃんは、さすが使用人という立場から、何も言わずに佇んでる。
確かに、プレイは暫く休業と言うのは、睦月がMになった時に誰が相手をする
のか?という事を考えても、安全(?)かも知れない・・・。奴隷ばかりで、
女王様が居なくては、収拾が付かないって言うか、プレイが成立しないんでは
ないか?と思われる。(こんど実験的にやっても良いかも・・・)

暫く考えていた睦月は、おもむろに口を開き「じゃあ、しばらくはプレイ中止
しましょう。その間は、道具の整備ね・・・プレイ再開の時に困らない様に」
睦月はすくっと立ち上がって、深雪と霞に尋ねた「ところで、多分大丈夫だと
思うけど、葉月お姉さまになにか装着させられてままとかになってない?今、
解除しましょう・・・」
「いえ、私は何も」深雪が言った。霞も「なにも付けてないよ・・・」
さすが、葉月お姉さま、いくら急の脱出でも、その点の処置にはぬかりなく段
取りを踏んでいる様だ。「あずさは大丈夫?」と睦月が深雪に訊いた。「ええ
何も言ってませんから、大丈夫でしょう」深雪が言うのだから、ほぼ間違いは
無い。「じゃあ、あとは井上の貞操帯だけね。じゃあ、みんないつもの地下室
へ行きましょう。」ぞろぞろぞろ・・・

まずは、地下室に入って、美麗ちゃんの貞操帯を解除する事になった。まずは
彼女のスカートを捲り上げて、南京錠をかちりと外す。(著者には拘束具の知
識が無いので、詳細は省略)で、すっかり裸になった美麗ちゃんの腰には、赤
いみみず腫れの様な筋が残ってるけど、特に異常は無さそうだ。
「じゃあ、井上!あなたは、このままシャワーでも浴びて大事な処を清潔にし
て、普通の下着を着用してなさい。では、下がってよし!」「はい。かしこま
りました。」それを見てて、深雪は「う〜む、睦月お姉さまはさすがにお屋敷
のお嬢様、命令しなれている・・・。」と、改めて感心したのだった。
睦月は、くるりと踵をかえして、深雪と霞の方を向いて、にっこりして言った
「では、これからメンテナンスをしましょう・・・」部屋中に有るいろんな責
め具や拘束具をぞろぞろと取り出して、ざっとチェックした・・・そして、
「あ・霞ちゃんは、こういうのの扱いは詳しく無いと思うから、その辺で見て
て良いわよ・・・深雪と私とでやるから・・・」と、霞に言ってから深雪に、
「じゃ、始めましょうか」と言って、二人して地下室の床にぺたんと座って、
床中に拡げられた道具を丹念に磨き始めた・・・。
(以下、二人で楽しく霞と雑談しながらメンテナンスタイム・・・)
まあ、小早川家のSM用具のストックは一両日で全部メンテできる程の量では
無いので、何日かかけてぼちぼちと総点検する事になるだろう。

翌日、学校で深雪はあずさに事の次第を話して「何か付けられてままになって
たら外すよ」と伝えた。
あずさは「え?そ〜なん?でも、今は何も嵌められて〜へんから、大丈夫や。」
「それにしても、あないなケッタイな鬼姉ちゃんが、見合いが怖いなんてなあ」
と言って笑った・・・深雪は「そんな、ケッタイな鬼だなんて・・・」と思った。
「・・・でも、居ないとちょっとさみしいかな・・・強烈な人やったから。」
・・・こらこら、過去の人にするなって・・・(笑)

そんなこんなで、総メンテ終了後一月半程経ったある日、深雪はまた睦月に呼
び出された。
「え?葉月お姉さまが、強制送還???」深雪は面食らった。
「そうなのよ・・・全く困ったもんだわ!」睦月はこめかみを押さえている。
事の次第はどうやら、現地で葉月は難民キャンプ付近の学校の教員をしていた
らしい。毎日が、健康的な大自然の中での暮らし・・・って程でも無いけど、
SM無しの健全な暮らしには、葉月はだんだんイライラを募らせていたらしい。
そこで、とうとう、生徒の女の子にちょっかいを出して、拐かして仕舞ったら
しい・・・。結局、現地の校長先生から、お役人の知る処となり、強制退去処
分を食らって、先週日本にこっそり帰って来たところだそうだ。
睦月は「でも、一応お父様がいろんなコネを駆使して、事が公になる前にもみ
消せたみたい・・・大変な出費だって嘆いてたわ。」「一応知ってるのは、本
人同士と、現地の学校の校長先生・向こうの国と日本の外務省の一部の職員位
だと思うわ・・・。向こうのご両親はうすうす勘づいてるかも知れないわね。」
深雪は、現地でも健在な葉月の生き様を思い浮かべて複雑な想いだった。

その日、深雪は睦月と一緒に小早川邸に行って、謹慎中の葉月に会った。
葉月は開口一番「あら、深雪元気だった?」と、あっけらかん、と言うか、い
けしゃあしゃあとしていて、とても謹慎中とは思えない。
「いやね、学校に可愛い娘が居て、毎日会うもんだから、我慢出来なくなって
ついねぇ・・・失敗失敗」全然反省の色が無い・・・まあ、この程度でへこた
れる様な人だとは思って無いけど・・・。日にも焼けてるし、思いの外元気な
のを良しとしましょうか?深雪は思った。
「まあ、帰国はしててもまだ、現地に居る事になってるんで、暫くは学校の授
業には戻れないと思うわ。当分自宅謹慎か、お忍びで外出する程度ね。」

「そこで、深雪に紹介したい娘が居るのよ、お父様のコネを使って、一応日本
に帰化させる事が出来ると思うわ。霞と同い年だから睦月の妹ね・・・」
深雪は「は?」とあっけに取られている。睦月は隣室に歩き出した。
睦月が連れて来たその少女は、見たところアフロな感じで、ちょっとおろおろ
していた。そして、そのうるうるしたひとみと怯えた様な表情は、Sの葉月お
ねえ様には辛抱堪らんものが有った事が容易に想像が付く・・・多分、現地で
ちょっかいを出した女の子を一緒に日本に連れて来たのだろう。まあ、見れば
見るほど日本人とはほど遠い体格で、深雪もわりかし自分の体型には自信が有
る方だが、彼女の前では自分が所詮は日本人体型だある事を思い知らされた。

「でねでね、この娘、運が良い事に例の性器切除を受けて無いのよ!大体、あ
の地域の女の子は切られちゃうんだけど、丁度内戦が激しくてそれ所じゃなか
ったみたい。あとは、難民として逃れて来た後は、先進国の教育方針で、本人
が希望しない限りやらない方向でいる訳なのよね。」と、一方的に話し始めて
来た。更に「こんなに可愛い女の子の一番敏感な部分を切り落としちゃうなん
て!なんて勿体ない風習が有るのかしら?愚行ね!」・・・勿体ないって言う
問題なんですか・・・?まあいいか。「現地のご両親も、お父さんがゲリラが
仕掛けた地雷で片足吹っ飛ばされて、お母さんが何人もの子供と夫を抱えて生
活が大変なので、この娘を日本に連れて行きたいって申し出ても、反対はしな
かったわ。むしろ、新天地で幸せを掴んで欲しいって・・・編入手続きはうち
の学校でもうじき済むと思うから、仲良くしてあげてね・・・」え?そんな急
に言われても・・・むしろそれは霞に言うべきでは?

「一応、拘束具とか拷問具を、現地の秘密警察とか反政府ゲリラとかから、情
報を得て、いろいろ自分なりに作ってみたんだけど・・・なんて言うか、あっ
ちだとモロ戦争してる訳で、拘束具や拷問具も、相手を殺しても良い・・・っ
て考えで、実用強度一点張りの設計なのよね〜。あんまし良いプレイには使え
なさそうだわ・・・」ちょっとがっかりした様子で、さらりと言ってるけど、
この人は、どうやってそんな処から情報を仕入れたんだろう?いや、考えるの
は辞めた方が良いのかも知れないなあ・・・。

一方的に話を聞いていた葉月にやっと深雪が質問した「あの〜、処でお見合い
の方はなさるんですか?」
「ああ・まあ、仕方無いわね。お父様に『お前は男でなくて、女などにうつつ
を抜かして、見合いもしない!小早川の家を潰す気か!』って怒られてね。」
「仕方ないから『じゃあ、睦月を男って事にして、嫁を取ればいいんじゃない
の?』って口答えしたら、お父様ったら、泣きそうな顔して部屋に篭もっちゃ
ったわ・・・まあ、お父様に借りを返す意味でも形式的には近々やらなきゃね
え・・・」

・・・見合い編に続くかも知れない・・・

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