葉月様ヒストリー2 葉月王女様

 
													
中学卒業後、私は叔母の家で高校生活を送る事になった。
私が進学した高校は、叔母が住む隣町にある、男女共学の由緒ある名門校だった。叔母の箏の恩師が理事を務める学校で、父とも太いパイプで繋がっていた。
無論、コネやら裏口入学なんかではない。キチンと試験を受けて合格した。その学校を勧めてくれたのは父と叔母だったが。
そして、叔母の家に下宿する事を勧めたのが母だった。自宅から通って通えない距離ではなかったが、電車通学にせよ、家の車での送り迎えにせよ、叔母の家
から通う利便性の方が良かったからだ。叔母の一人暮らしを母が気遣っての事もあったのだが、両親は叔母との関係は知るよしもない。
当然、叔母は大喜びだ。

中学卒業から高校入学までの長い春休みの間、私は下宿の準備の為、実家と叔母の家を何度か行き来した。幾ら家族同様の親戚とはいえ、実家から出てお世話
になるのだから、必要最低限の物だけ持ってくるつもりだった。ところが、叔母は引っ越し屋さんを手配して、私の部屋をそっくり移すかの様に家具から服、
お気に入りだが置いていくつもりの雑貨や本、CDまで、殆ど叔母の家に運んでしまった。
当然、これには母が怒り、叔母が叱られた。
私も呆れ、大きな物は家の運転手に軽トラで運んで貰い、小さく軽い物は私が自転車と電車で運んで実家に戻した。軽くても数が多かったので、何度も往復す
る羽目になった。
落ち着いた時には、私が借りた部屋は極めて殺風景になった。
でも、それで良かった。
実家から持ち込んだ物はいずれ戻さなくてはいけない。私はこれから過ごす三年間の、叔母との思い出をここに刻み、残したかった。だから家の物を持ち込み
たくなかったのだ。
中学時代のわだかまりを差し引いても、大好きな叔母。その叔母との時間を大切にしたかった。
ところが、そんな私の想いを踏みにじるかの様な、叔母からの贈り物があった。
押し入れを開け、持って来た僅かな衣類を片付けようとすると、そこには布団や枕等の寝具と一緒に押し入れ用の和箪笥と幾つかの葛籠が入れられていた。
これから増えていく衣類やその他の物の為に叔母が用意してくれたのだろう。そう思い箪笥を引いた。
そこには叔母が昨年着せてくれた着物が入っていた。あの藤色の紬から朱鷺色の長襦袢、帯に足袋、ほぼ一式揃っていた。私は叔母の心遣いが嬉しく、涙目に
なった。箪笥は殆ど和服類で一杯だった為、布団の隣のスペースに積まれていた葛籠を引っ張り出し、蓋を開けた。
中の物を見た瞬間、目を潤ませていた涙が引っ込み、眉間がひきつった。
私はその中身を握りしめ、廊下を踏み抜きそうな音を立てながら、叔母が食事の支度をしている台所に駆け込んで怒鳴った。
「叔母様っ!! 一体何なのっ!? これはっ!! 」
私は葛籠の中にあった黒と紫色のガーター付きのコルセットを突きだした。
叔母は悪びれる様子も見せずににこやかな笑みで、しゃあしゃあと答えた。
「気に入ってくれたかしら。卒業と入学のお祝い」
その態度に思わずコルセットを床に叩きつけた。
「卒業や入学祝いに、こんなもの贈る人がありますか!! 」
叔母はそれを拾い、私の胸にあてた。見るからに、かなりいやらしい下着だった。
「気に入らなかったかしら。似合うと思ったんだけど」
「そういう問題じゃなくて、そんな物、いつ着るのよ!! 」
叔母が微笑んで答えた。
「今夜、土蔵で」
顔を逸らし、拗ねた目つきで睨んで呟いた。
「絶対着ないんだから…」

日が暮れて、夕食の後。
結局、着せられた。
土蔵の鏡台に映る私は、今まで無縁だった妖しい出で立ちにされていた。
黒と紫のコルセットに黒いレースのパンティ、コルセットから伸びたガーターにはレース付きの黒い網ストッキングが繋がっていた。手には黒のフィンガー
レスロンググローブを着せられ、髪は紫色のリボンでポニーテールを結われた。黒いエナメル革のチョーカーを首に着けられ、マスカラやアイシャドー、ワ
インカラーのルージュ等できつめのメイクをされた私は、まるで別人だった。
パーティ等のフォーマルな席に出席する為に、メイドにメイクして貰った事は何度もあったが、それは年相応の薄化粧程度なものばかりだ。こんな濃いメイク
なんかされた事ないし、嫌らしそうな下着なんかも着た事がない。お洒落な下着は持ってはいるが、白や薄いピンクで、デザインも可愛らしいものばかりだ。
最後に叔母は黒いピンヒールを私に履かせた。
「こんな和風の土蔵には似つかわしくないけど、やっぱり葉月ちゃんはこっちのスタイルが似合ってるわ」
誉めたつもりだろうが、全然嬉しくなんかない。私はふてくされた顔を叔母から逸らした。
「その葉月ちゃんに合わせて見たんだけど…、似合うかしら…」
叔母が朱色の長襦袢を脱ぐと、いつもの亀甲縛りの麻縄ではなく、黒革のボンテージが叔母の躰を包んでいた。
これには思わずドキリとなった。相変わらず綺麗な躰だけど、官能的で妖艶な匂い。
初めて見た叔母の洋装がボンテージ姿って…。
私の知る範囲では、叔母の洋服姿の記憶が無い。普段着から着物で、庭の手入れや家庭菜園の畑仕事、絵のスケッチの為の山歩きでさえ筒袖に野袴、もしくは
もんぺだった。履き物は流石にゴム長や登山靴だったり、あるいは和装では無理な本格的な登山やスポーツの類い以外は、殆ど和装だったと言ってよかった。
「やっぱり、ちょっと恥ずかしいわね…、胸の鼓動がいつもと違う…」
頬を赤らめながら座り込み黒い網ストッキングを履き、自ら手足首に枷を、そして首に首輪と手綱を装着していく叔母は呟いた。その様を見下ろす私も、実は
胸がドキドキしていた。
普段の和服姿の叔母を縛ると、どうしても清楚な淑女が淫らな振る舞いをしてるみたいで、とっても嫌だった。ところが、今の叔母はまるで別人だった。セク
シーだけど上品で、はしたない印象が何故か全く無かった。
正直な話、この時ばかりは一瞬だけ叔母に一目惚れした。
だが、一瞬だけだった。次の叔母の言動が、その余韻をブチ壊したからだ。
「葉月ちゃん…、私に御クンニさせて下さいな…」
叔母は私の足元に跪き、足首を手に取り、靴にキスしながら呟いた。
「お、御クンニ…?? 」
私は叔母から、クンニリングスについて説明された。横目で視界に入っていた鏡に映る私は、見る見るうちに顔が真っ赤に紅潮し、口元と眉間が引きつって
いった。
「誰が、そんな事…、させるものですか…」
私は叔母の手枷の鎖を後ろ手に繋ぎ直し、柱まで引きずり、麻縄で手枷を柱に縛った。
「お願い、クンニをさせて…、おねが……」
そう訴える叔母の口に、ボールギャグを押し込み、うなじでベルトを留めた。
「お黙りなさい!! 」
そう言い放った後、土蔵にあったアンティークチェアを引っ張り出し、なるべく叔母から離れて座った。椅子の上に胡座をかいて座るのはちょっとはしたない
気もしたが、足首を手で掴んで座っていたので、丁度性器が隠れる姿勢になった。
「淫らで恥ずかしい事を言う叔母様には、私の大事な所は舐めさせません」
私は舌を出して、意地悪げな態度を取った。尚も切なげな呻き声を上げて、哀願する叔母から目を逸らし続けていたが、私は許さなかった。
「だ、ダメなものはダメなんだから…」
程なく、私は叔母の拘束を解き、土蔵から出た。
このまま、ここにいたら叔母にクンニリングスさせてしまうと思ったからだった。実際、叔母がちょっとだけ可哀想になりかけていた。

就寝時。
叔母の寝室に敷かれた布団には枕が二つ並べていた。
そして、私もここにいた。
私が借りた部屋にも布団はあった。しかし、
「葉月ちゃんが夜遅くまでお勉強してて、私の所で寝れなくなった時の為のものよ」
と、いう事らしい。つまり、普段は叔母と寝かされるという事だ。この人の事だ。どうせ向こうで寝ていても、自分から入ってくるか、抱っこしてこっちに
連れてくるかに決まっている。そう言えば、向こうの部屋の布団も、一人で寝るには大きかった気がした。
そう考えると、もう叔母に抗う気すら失せてしまった。私は叔母に背を向けて全裸になり、用意してくれた長襦袢に袖を通した。思い返して見たら、あの叔
父の四十九日後以来、叔母の所に泊まった日は、必ず長襦袢を着せられていた。寝間着代わりに着せられるので、着物の下に着る絹の物では無く、安いポリ
エステルの物が殆どだったが。お揃いの緋色の長襦袢を着ると、叔母が布団を開いて、私が横になりやすくしてくれた。
天井の灯りを消し、二人で布団に入ると枕元の照明も消された。私は直ぐさま寝返りをうって、叔母に背を向けた。
ところが、叔母は私に手をかけて向きを変えさせ、暗闇の中、唇を重ねてきた。
突然の事で抗えずにいると、舌が絡んできた。そして、私の顔を自分の胸元に沈め、がっちりと抱きかかえた。
私は、あろう事か叔母に抱きついていた。
先程土蔵で叔母に意地悪した事の後ろめたさからか、「血の繋がった同性の肉親」同士の禁断の関係をここで留めておきたかったからか。私は様々な不安に
苛まれながら一夜を過ごした。

次の日、私は叔母に連れられて、駅前広場にいた。叔母の住む町の最も賑やかな繁華街だった。叔母は山鳩色の付下げの上に桑の実色の道行を纏い、少し大きめ
なバッグを手にしていた。私は黒のロングコートを着せられ、コートの下は叔母が見立ててくれたワンピースを着ていた。これも黒の長袖のワンピースで、かな
り大人っぽいデザインだった。髪はシニョンを結われ、ベール付きの黒のミニハット帽を被せられた。ストッキングやヒールの低い革靴、手にしていたハンドバ
ッグまで黒だったため、喪服みたいだった。
道行く人達の視線が気になった。
「みんな、葉月ちゃんの凜々しい姿に釘付けよ…」
確かにそうだったかも知れなかった。髪を上げて纏めている事で、首筋のラインが見られるので、自然と首筋を意識せざるを得なかった。さらに、ワンピースの
下には、昨日の、あのコルセットを着せられていて、これは補整下着にもなっていたので、自然と背筋が伸ばされていた。ベールのおかげであまり顔が見られな
くなっていたせいもあっただろうが、ショーウィンドに映る私はどう見ても“背の高い少女”よりも“小柄な大人の淑女”だった。
「もうそろそろね…」
誰かと待ち合わせしているのか、叔母が時計に目を移した時だった。
けたたましいバイクのエンジン音と共に、私達の目の前の車道で750tクラスのサイドカー付きのオートバイが止まった。バイクにまたがっていたのは背の高い
筋肉質っぽい女性で、赤と黒のライダースーツに身を包み、真紅のヘルメットを外すと茶髪のウルフカットの浅黒く彫りの深い顔立ちが現れた。とてもボーイッ
シュで格好良い。これが彼女の第一印象だった。
「弥生姉さん、他のみんなは?」
「まだ私達だけよ。そのバイク、どこかに駐めてらっしゃいな」
「ああ、判ったよ」
その格好いい女性は再びバイクを発進させた。
「叔母様…、今の人…」
「私のお友達でね、深沢和美さんっていうの。後で紹介するわ」
どういう関係なのか、聞かされなかった。
「ごめん、ごめん、遅くなっちゃった」
声の方に目を移すと、叔母より若い小柄な女の人が駅から走ってきた。眼鏡をかけて、カジュアルスーツに身を包み、少し大きめなバッグを肩にかけていた。
さっきの和美さんという人よりは年上らしかった。セミロングの髪がカールしてて、可愛い感じの人だが、ちょっと野暮ったかった。
「今、和美さんがバイク置きに行ってるわ」
「そう、すると後は都夫人だけ?」
「ええ、そうよ」
「良かった、最後じゃなくて…。で…、弥生お姉さん、この子は?」
その人は、走って出た汗を拭いて、落ち着いた所で私の存在に気付いた。
「私の姪よ。この間、お話したでしょ」
「ああ、今度お姉さんと暮らす事になったっていう…。初めまして、曾根崎遙です」
「あ、こちらこそ。小早川葉月です」
ちょっと緊張していたが、にこやかな笑顔で互いに握手した。
程なく和美さんがスポーツバッグを手に戻って来た。そして遙さん同様、互いの自己紹介をした。
次に現れたのは、大きめな高級ワゴン車だった。そこから出てきたのは、叔母より年上らしい、見るからにセレブな婦人だった。
「みんな集まってるかしら?」
「都夫人がラストよ。もう」
遙さんがちょっと怒っていた。都夫人と呼ばれる婦人は気まずそうに苦笑いをしていた。
「ごめん、ごめん、さあ、皆さん乗って」
都夫人がワゴン車のドアを開いて乗せてくれた。身なりはちょっと派手だけど、案外気さくな人らしい。叔母が助手席に、私は和美さんと遙さんと一緒に後に
座った。
「弥生さん……、この子が…」
「はい…、お願いします」
叔母と都夫人の会話に訝しむ私に、脇の二人が話しかけてきた。都夫人については叔母が紹介してくれた。
リーナ・都・コスイギンという名で、ロシアの貿易商の奥様だとか。御主人は仕事の関係で日本とロシアを行ったり来たりだそうだ。それで日本には夫人が
残っているとか。
曾根崎遙さんは大手生命保険の生保レディで、和美さんの話だと見かけによらず、営業成績は常にトップだとか。
深沢和美さんはオートバイレーサーで、今、売り出し中の若手ライダーとの事…。
皆、それぞれ凄いなあと感嘆していたのだが、直ぐさま、はてと思った。

(この人達、どういう繋がりなんだろう…?)

その答えを出したのは、車の行き先だった。
繁華街の中の、風俗店の多い一画にあったホテル。
会員制のSMホテルだった。都夫人がここの会員だったらしく、本来なら私みたいな未成年が出入りする様な所ではなかった。
大人っぽい服装にさせたのは、この為だった。それに気付いた時には、すでに逃れる手立ては全て絶たれていた。いや、最初から逃れる術は無かった。
大の大人の女性四人に前後左右を囲まれて、私はホテルの一室に向かった。

そこは別世界だった。
まるで中世ヨーロッパの城の牢屋か拷問部屋の様だった。
赤茶のレンガの壁に取り付けられた幾つかの鎖と枷、十字架や×字架、革張りの木馬や木のベット、滑車のついた鎖、縄や鞭等、叔母の土蔵でも見慣れたも
のが幾つもあった。
「着替えてくるから、ちょっと待っててね」
そう言い残して、叔母達はシャワー室の方に向かい、私は部屋のアンティークチェアに座らされていた。
程なくして出てきた時、四人とも首輪と四肢の枷に鎖を繋ぎ、黒革の貞操帯とカップの無いブラジャーだけの姿になっていた。
それを見て、私は慄然とした。
「ま、まさか…」
四人は異様な笑みを浮かべ、叔母が口を開いた。
「そうなのよ。私達、マゾヒスト仲間なの」
叔母の話だと、皆、それぞれサディストの御主人様に調教されていたのだが、叔父を亡くした叔母の様に、死別もしくは離婚や別居等で責めてくれる人がい
なくなって、欲求不満だったらしい。マゾヒスト同士の付き合いの中、私に責めさせる話が持ち上がり、ここに連れてこられたのだった。
「だ、だけど私…、サドなんかじゃ…」
そんな抗弁なんか何処吹く風で、四人は私の服を脱がせ始めた。あのコルセットだけの姿にされると、パンティを小さめのショーツに、革靴をピンヒールの
黒い編み上げブーツに履き替えさせられ、紫色のロンググローブとシュシュを着けさせられた。
私にブレスやプラチナの首飾りを着け、メイクを施す遙さんと和美さんの後で、叔母と都夫人は互いに黒い全頭式のマスクを被せ合っていた。そのマスクは
口の所に太い男根型の突起が付いていて、漠然とではあったが、予備知識のあった私は恐怖を覚えた。マスクを被せ終えた叔母達は遙さん達と交代して、今
度は和美さん達がマスクを被せ合った。こちらの二人は細長い突起だった。丸い小さなボールが数珠繋がりしてる様な形で、これが何に使われるのか、私は
知らなかった。
その間、叔母達は私に2本の鞭を手に持たせ、自然とくっつく包帯で手をぐるぐる巻きにした。これで私は強制的に鞭を握らされ、手放せなくなった。
鞭と包帯で自由を奪われた手を見つめていると、叔母達が私の足元に跪き、縋り付いてきた。
「ちょ…、ちょっと…」
微かな呻き声を上げながら、叔母達は口の突起にローションを塗りたくり、それを私の臀部や付け根付近の太腿にこすりつけてきた。
「ちょっと、止めてっ! 」
私は手と鞭の柄で叔母達を引き離そうとした。しかし、四人は私の脚と腰にがっしりとしがみつき、離れなかった。それでも私は必死で四人を振り解こうと、
脚に力を入れた。しかし、不安定なピンヒールを履かされていた為、力が入らなかった。手も使えない為掴んで引き離す事も出来ず、力の加減をしながら掌
で叩いた。
「いやっ!!  止めてっ!!  離してっ!! 」
やがて叔母達はローションを私の性器や肛門付近に塗り始めた。この時、都夫人がショーツの横からでなく前から指を入れて来た。これで履かされたショーツ
が股間の性器部分にスリットが入ってる事に気が付いた。つまり、このショーツは履いたままで何かを挿入出来る。そう理解した時、力任せに叩き始めた。
「いやぁっ!!  止めてぇっ!!  離してっ!!  離れてぇっ!!  いやぁぁぁっ!! 」
マスクの太い突起は私の性器付近を撫で回し始めた。後の方も、臀部の割れ目に少しずつ細い突起を挿入しようとし始めた。
細い突起が何処に入るかを悟った時、激しい恐怖に苛まれた。
「いやぁぁっ!!  止めてぇぇぇっ!!  いやぁぁぁっ!! 」
前の二人の太い突起が性器に食い込みかけた時、私は遂に鞭を振るってしまった。
「ンムググゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!! 」
甲高い、乾いた音が響くのと同時に、叔母が後に仰け反った。
続いて都夫人に鞭を加えた。
「ウンムグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!! 」
悲鳴に近い呻き声を上げながら、夫人が仰け反った。
続いて直ぐさまに後の二人にも鞭を加えた。
「ウムグゥゥゥゥゥゥッ!! 」
「フングゥゥゥゥゥゥゥッ!! 」
二人も呻き声を上げながら仰け反った。
しかし、一人が仰け反っても、すぐに別の一人が私の性器や肛門に突起を突き立ててきた。今の私はまるで、リカオンの群れに生きたまま内臓を貪られる、
シマウマかインパラの様だった。
「止めてぇっ!!  止めてぇっ!!  止めてぇっ!!  止めてぇっ!!  止めてぇぇっ!! 」
私の鞭は、次第に激しくなっていった。しかし、それで四人の凌辱が止む事は無かった。
「止めてぇっ!!  止め……、あ……、ああ……、痛い……、痛いよぉ…………」
叔母の突起が膣内深く入り込んだ。後も遙さんの物が肛門に挿入されていた。私は鞭を振るう手が止まった。
肉体的痛みよりも、こんな処女の喪失の仕方になったショックの方が、はるかに大きかった。
「痛いよ…、痛い…、痛いよっ!!  離れてっ!!  離れてぇっ!!  離れてよっ!! 」
私は目に涙を浮かべながら、再び鞭を振るい始めた。
叔母達は鞭に怯む事無く、私の恥部を貪る様に責め立てた。鞭を振るえば振るうほど激しくなっていった。
「止めてぇっ!!  痛いっ!!  痛いぃっ!!  止めてぇっ!!  止めてぇぇっ!! 」
 前は叔母と都夫人が、後は遙さんと和美さんが、交互にそれぞれの突起を私の中に突き入れた。その動きは次第に激しくなっていった。
「止めてぇっ!!  止めてぇっ!!  痛いっ!!  い……、あ……、ああ…………… 」
その時、痛みを突き抜けた、不思議な感覚に襲われた。
絶頂に達してしまった。
鞭を振るう手が止まり、痙攣しながら天井を見上げた。
頭の中が真っ白になった。
不思議な絶望感が私を襲った。暗い闇に包まれるのでは無く、逆に目映すぎて目を開けられない強烈な光に照らされて、身を焦がされる様な感覚だった。
私の異変に気付いた四人の凌辱が止まり、顔を見上げた時、包帯の中の掌は鞭の柄を握りつぶさんばかりの力が入った。
「け……、けだ……、獣ぉぉっ!! 」
「ムグゥーッ!! 」
次の瞬間、私の脚は叔母を撥ね飛ばしていた。次に後に遙さんを、そして都夫人、和美さんと次々に撥ね飛ばした。
皆、濁った悲鳴の様な呻き声を上げた。
「変態っ!!  淫乱っ!!  牝豚っ!!  阿婆擦れっ!! 」
無我夢中だった。
私は聞くに堪えない様な、品の無い罵声を口走りながら、叔母達を鞭で滅多打ちにした。
叔母達も、獣の様な呻き声を上げながら、悶絶した。

我に返ったとき、四人は完全にグロッキー状態だった。ピクリとも動かなかった。
皆、全身鞭のミミズ腫れで赤くなっていた。
私は鞭を振るっていた間、終始口惜し涙を流し続けていたが、直ぐさま後悔と罪悪感の悲し涙に変わった。
「お、叔母様ぁぁっ!! 」
口を使って片方の手の、自由になった手でもう片方の手の包帯を取り、グッタリとした叔母のマスクを外した。直ぐさま他の三人のマスクを外し、皆に声を
かけた。
「しっかりしてっ!!  叔母様っ!! 」
特に叔母は、揺り起こそうと激しく揺さぶった。この時の私は叔母を殺してしまったんじゃないかという、激しい罪悪感に苛まれていた。
「は…、葉月ちゃん…」
目を覚ました叔母は、私に抱きついてきた。
「叔母様…、よかった…、御免なさ………」
叔母が目を覚ました事に、私は抱き返しながら安堵の笑みを浮かべた。
だが、笑みを浮かべたのはこの時だけだった。直ぐさま私は凍り付いた。
「よかったわよ…、葉月ちゃんの鞭…」
私は言葉を失った。
気が付くと、他の三人も意識を取り戻し、縋り付く様に抱きついてきた。
「ほんと…、葉月さんの鞭…、気持ちよかったわ…」
「もっと続けてもよかったのに……」
「あのまま天国に召されてもよかったかも…」
叔母を抱いてた手がダラリと下がった。
自分は四人を殺してしまったんじゃないかと、激しい不安と罪悪感に苛まれていたのに…。
それなのに、この人達は…。
再び涙か溢れ出した。そして、眉がつり上がっていった。
次に叔母の躰に触れた手は、叔母を押して離れさせようとした。
「離して頂戴…、汚らわしい…」
そう呟いた直後、私は斜め後ろの和美さんの太腿にブーツのヒールを突き立てていた。
「葉月ちゃん…、もっと強く…」
「離れなさいよ…、雌豚…、離れろ…」
和美さんを睨む私の表情が、物凄く醜かった事が想像できた。

この後、私は某一流ホテルのテナントの、有名なカフェでケーキバイキングを御馳走になった。
しかし、殆どヤケ食いだった。あんな処女の奪われ方をしたのと、自分の罪悪感に苛まれた私に対するこの人達の態度に、とてもケーキの美味しさを愉しん
でられる心境ではなかった。
そんな私の心中も察せず、四人はコーヒーや紅茶をすすりながら、笑みを浮かべて私をマジマジと見つめていた。
そんな叔母達と目を合わすのが嫌で、私は苦々しい表情でケーキを頬張った。
「葉月ちゃん、ここのケーキ、美味しくない?」
その叔母の一言に「誰のせいだと思ってるのよ!!!!」と、罵倒してテーブルをひっくり返したい衝動に駆られ、それを必死で抑えた。
その時、ふと叔母が何かに気付き立ち上がり、他の三人も立ったので私も思わず立ち上がった。
皆の目線の先には一人の婦人の姿があった。
都夫人より高級そうな身なりの、それでいてあまり下品な成金的でない、センスの良さを感じさせる、初老に近い中年の婦人だった。
やや小太り気味で、お世辞にも美人とは言い難かったが、印象に残る人だった。
叔母達はその人に向かって無言でお辞儀をし、向こうも気付いて会釈を返した。
「叔母様、あの方、どなた?」
「このホテルのオーナーさんよ。他にも幾つも系列のホテルやマンションを持ってらっしゃる方よ。同じ系列のホテルのギャラリーで絵の個展開いたり、お
茶会や箏の演奏会で、色々とお世話になってるわ」
私は、そのオーナーから目を離せなかった。彼女は店の隅で、カフェの店長らしき人と話をしていた。小声で話しているから会話内容は聞こえなかったが、
オーナーはやんわりと静かに諭している雰囲気だったのに、店長はまるで罵詈雑言浴びせられ、厳しい叱責を受けている様な表情だった。これから見ると、
都夫人の様な気さくな方ではないらしい。
「これで葉月ちゃんは、私達の女王様ね」
和美さんの一言に、視線が私達の席に戻った。
「え?」
「そうね。皆、葉月ちゃんがお気に入りになったみたいだし」
「私達、葉月女王様の奴隷よ」
「よろしくね。葉月女王様」
一応、小声で話しているが、大勢の人達が出入りしているカフェでする様な会話じゃない。それに私の意向そっちのけで話を進められて辟易していた。
「でも、まだ16歳、これから高校生の女の子なのに、女王様は早くない?」
「そうね…、それじゃ“葉月姫”」
「んーん…」
「どうしたの?  まだしっくりこない?」
「“お姫様”だとMっぽくない?  だって、お姫様の話って、あんまし良い目にあってないし」
「そうね、毒リンゴ食べさせられて死にかけたり…」
「紬針刺して眠らされたり…」
「悪魔の呪いで白鳥にされたり…」
「継母や義理の姉に虐められてこき使われたり…」
「それじゃ…、“王女様”ならどうかしら?」
「それ、いいかも」
「決定ね。葉月王女様」
ハッキリ言って、嬉しくなかった。

それから3年間、私の高校時代は、この人達に振り回されっ放しだった。
まず、叔母の家では叔母に土蔵で相手をさせられ、学校帰りには、時々和美さんや遙さんが校門で待ち構えていた。
二人は学校帰りの制服姿の私を、いかがわしい風俗店等の界隈に連れいてくなんて軽率な事はしなかったが、何らかの形で借りるか入手した空き屋や廃工場
に連れて行き、そこで私に縛らせた。
二人とも身なりは全くごく普通の人達だったので、町中を一緒に歩いてても不審に思われる事は全く無かった。
水泳の部活も休みな休日は休日で、都夫人が叔母の家に私を迎えに来た。そして夫人のお屋敷の地下に作られた、拷問部屋の様なSMプレイルームで相手をさ
せられた。
幸い、学校の友達を巻き込むなど、高校生活に支障の出る様な事は一切しなかった。
その為、プライベートよりも高校で勉強してる方が、はるかに気が休まった。
おかげで授業に集中でき、学友達との勉強もはかどり、成績は常にトップクラスだった。

そんな高校生時代も終わりを迎えようとしていた、高校最後の冬休み、始業式を三日後に控えたある日、大学受験前の息抜きと称して、叔母に一人の婦人を
紹介された。
その人は文子女王様だった。
文子女王様のお宅に叔母と訪ね、そこで彼女の奴隷の調教を目の当たりにし、慄然とした。
文子女王様が飼育されている奴隷共々、叔母も調教されたのだが、私とは全然違った。
美しかった。
責めてる女王様も、責められてる奴隷も。
そして、この人は見事に奴隷を御していた。
それに比べると、私は奴隷に責めさせられていた。女王様の奴隷を責めさせて貰ったが、全然ダメだった。
自分がやってきた事が何だったのかと思うと、涙が止まらなかった。
「いや、奴隷をコントロールしてるって意識、無いわ。私は自然体で奴隷の願望に応えているだけ」
女王様に尋ねると、そういう答えが返ってきた。以前の叔母の言葉を思い出した。
「弥生が最初に貴女を縛って、体で縛り方や責め方を教えたせいか、スジは良いわよ。ただ、まだまだ経験不足ね」
その指摘を耳にして、一つの事が脳裏に浮かんだ。それを口に出す事に少々躊躇いがあったが、少し間を置いて言葉にした。
「お願いします、女王様。私を調教して下さい!」
知らぬ間に背筋が伸び、表情が引き締まった。文子女王様は優しい笑顔を返してくれた。

調教で心身打ちのめされた私を、文子女王様は優しく介抱してくれた。
この時、私はとても後悔していた。
調教を願い出た事ではない。
今まで、私が叔母を始め、奴隷となってくれた人達に、如何に自暴自棄気味な態度だったかを、思い知らされたからだった。その事を叔母や女王様に語って
聞かせた。
「まあ、初動が初動だから…、貴女が悔いる事じゃなくてよ。貴女の叔母様も、最初に私の所に連れてくれば良かったのに」
女王様は呆れ気味だった。この方は私が叔母の王女になった経緯を知っていたらしい。
「で、弥生。貴女、この娘をこれからどうするの? 本気で貴女の女王様にしたいなら、私か…」
女王様の“私が教育してあげる”とでも言いかけた所を遮るかの様に、叔母が口を開いた。
「女帝陛下の所に行かせようと思ってますの」
その言葉に女王様の顔が強張った。
「私は反対よ!!  あのお方がどういう方か、貴女が御存知でしょ!!  この娘を女王に育てないなら、私か沙織女王の所に預けなさい!!  その方が安全で確実
よ!! 」
今まで優しかった文子女王が、かなり強い口調で叔母に迫った。
「有り難うございます。だけど、私達と接点を持った以上、あの方は避けられませんから」
「確かにそうだけど…、貴女の悪いクセよ。相手の事考えないで、いきなり無茶な事する…」
その時、私は思わす口を挟んだ。
「私、行きます! その女帝陛下の所に」
その一言に女王様が言葉を失い、叔母の瞳が輝いた。
「行ってくれるの!?  女帝陛下の所で“女王試し”を受けてくれるの!?」
私は頷いて答えた。女王様も諦めたのか、呆れ気味な笑みを浮かべた。
「そこまで言うなら、仕方ないわね。ただし、忠告しておくわ。女帝陛下の“女王試し”で女王に認められるのは並大抵の事じゃないわよ。奴隷に堕とされた
自称女王も多いから、覚悟なさい」
思わず、生唾を飲んだ。この後、女帝陛下がどんな人か訪ねると、叔母は笑顔で答えた。
「葉月ちゃんも知ってる人よ。あのカフェで会った、ホテルのオーナーさん」







小説の部屋に戻る!