葉月様ヒストリー4 葉月様の戴冠式
特別調教室で葉月の“女王試し”が始まって4日目の朝がきた。 ラブホテル“ホテル・カチューシャ”として使われているエリアと、秘密のSMクラブ“リリィ・プリズン”として使われているエリアの後者側。 その一画のテラスに面したリビングルームに三人の少女が寛いでいた。彼女達は女帝の娘達で、ここは三姉妹のプライベートルームだった。 女帝の娘達の部屋にしては意外な程シンプルなリビングだった。必要最小限の家具類しか無く、白を基調にした配色のレイアウトの為、広く明る い印象を与えたが、装飾性の無い、殺風景とも言える部屋だった。その代わり戸棚やその中のマグカップ等の食器類は派手な物が多く、テレビ台 の隅等、至る所に可愛い人形や造花やリボン等の装飾品が置かれていた。 女帝の娘達三姉妹は、上から晶、恵、香と言う名だったが、メイ奴や調教師を始め、奴隷達にはアナスタシア、エリザベート、キャサリンと呼ば せていた。 長女、晶はPHSでメイド長に連絡していた。20歳に近い漆黒の長い髪が美しい少女で、床まである純白のゆったりとしたスモック風のワンピースに、 小さなピアスとペンダントだけの姿だった。指輪もブレスもネイルも着けず、マニキュア一つ塗っておらず、配色は真逆ながらも虚飾性を排した 女帝の娘らしかった。まるで“天女様”と呼びたくなる様な清楚な美しさだった。 「以上です。それじゃ、お願いします」 「また特別調教室への補充? お疲れ様」 次女、恵が姉を労った。彼女はソファに横たわり、メイ奴にネイルを施せていた。姉とは正反対の派手な風貌で、セミロングの茶髪はカールが かけられ、Tシャツにキュロット、キャミソール、これらはオレンジや赤系統のコーデで纏めていた。余所行きでないがネックレスやブレス、 指輪も多く、結構着飾りたい性格が窺えた。 「ええ。あそこは第一調教室と違って、狭いから多めに物をストック出来ないのよ」 晶はPHSの電源を切ると、テーブルの横の腰掛けに座った。すぐ側に三女の香が床にクッションを置き、そこに胡座をかいて座っていた。10代前半 位の可愛い少女で、黒髪のツインテールに、フリルやレースが多いノースリーブの黒のゴスロリ風ブラウス、黒のドロワーズを纏っていた。香の 前にはボーイッシュなショートカットの少女が座っており、首輪と手錠を填められ、インナーのキャミソールにカボチャパンツという姿で、香か らメイクを施されていた。 「それにしても、多くない? そんなに消耗しちゃうかしら」 「長引いてるからそう感じるのよ。初めてよね、四日も持つなんて」 「いつもなら、今頃逃げ出してるのにね。お姉様方、一週間、乗り切っちゃうんじゃない?」 「でも、特別室で“女王試し”やって、女王になったのいないし…。そうなったら初めてよね」 「お母様から女王として認められるの大変よね。認められなければ奴隷に堕とされちゃうし」 「奴隷から女王に出世した人もいるし、女王として認められても自ら奴隷になった人もいるわよ」 晶の言葉に恵が少し驚いた。 「えっ!? そんな人いるの!? 」 晶はそれに答えず、座っているモノを愛おしげに撫でた。晶が座っていたのは一人の女性で、革の首輪と手足首に枷を填め、黒革の全頭式マスクに オムツカバーを身に着け、蹲った姿勢で微動だにしなかった。その背中に座布団を乗せ、晶は座っていた。 晶が椅子女を休ませる為に、リビング奥のキッチンで急須や湯飲み等を用意しようとした時、メイ奴がそれに気付き立ち上がりかけた。 「アナスタシア様、私が…」 すかさず、恵が側にあった雑誌で叩いた。 「ちょっと!! ネイルの途中でしょ!! 」 「し、しかし、皇女様方にお茶を入れさせるなんて訳には…」 「私は平気よ、それより、途中でネイルを投げ出す方が、エリザベートに失礼なんじゃなくて?」 晶がメイ奴の弁明を遮った。先程の涼やかさを通り越して冷たい眼差しと口調だった。それぞれ意識は無かったが、晶の、このメイ奴への態度には トゲがあった。 「アナスタシア様のおっしゃる通りです。申し訳ございませんでした」 メイ奴は引き下がるしかなく、頭を下げてネイルを続けた。 「お姉様、私にも。レモンティーがいい」 「自分で入れなさい」 姉にお茶を頼んだものの、あっさり拒否され、恵は口をとがらせた。 「ねえ、ヒロミ。後でミルクティー入れなさいよ。あんたと一緒に飲むんだからね」 香は目の前の、メイクしている少女に命じた。ポットのお湯が沸騰し、番茶の茶葉が入った急須に注がれた頃、恵のネイルが終わった。 恵はメイドを労いながらも、やや不満げな表情を浮かべた。以前からメイ奴達にネイルの勉強をさせようと言っても、メイ奴への負担増を理由に 晶が認めなかったからだ。 「アナスタシア様、後は私が…」 急須と湯飲みを乗せたお盆を手にした晶と、ネイルの道具を片付け、あくまで自分がお茶を入れようとしたメイ奴が鉢合わせになり、ぶつかって、 急須がひっくり返った。 「きゃあぁぁっ!! 」 急須の中身は椅子女の肩にかかった。 「んぐうぅぅぅっ!! 」 余りの熱さに椅子女は濁った悲鳴を上げた。晶は慌ててしゃがみ込み、自分のワンピースでかかった番茶を拭き取った。 「も、申し訳ございませんでした!! アナスタシア様っ!! 」 「いいから、氷と水っ!! 」 狼狽し、土下座するメイ奴に晶は氷と水を持ってくる様命じた。ところが…。 「氷と水…、ですか?」 その一言に晶の手が止まった。 「何言ってるの、冷やさないと。ヤケドしてるのよ」 「え?、椅子女なんかに…」 晶は横目でメイ奴を睨み付けた。 「どういうつもり…? 物であれ人であれ、大事に扱うのは当然でしょ」 メイ奴は自分の失言に気付き、改めて詫びたが手遅れだった。晶はPHSを手にした。 「アナスタシアです。調教師長を大至急よこしなさい。私達のリビングに。急いで!! 」 晶は調教師長が現れるまでの間、メイ奴を睨み続けていた。 「お呼びでございますか。第一皇女様」 晶は到着した調教師長に、キビキビとした口調で命じた。 「このメイ奴を廃奴にします。連行なさい」 その場に居合わせた者達が凍り付いた。あまりの一言に命じられた調教師長も躊躇った。 そして、廃奴を告げられたメイ奴が晶に食ってかかった。 「お、お待ち下さい、第一皇女様っ!! 確かに私は誤ってお茶を椅子女にこぼしました。その後、皇女様の御機嫌を損ねる様な事も言ってしまいま した。しかし、それらはすぐに謝り、頭を下げましたっ!! それなのに、廃奴だなんてっ!! 廃奴の扱いを御存知ないのですか!! 陛下や皇女様方 に愛でても御奉仕させても貰えず、ただ己の性欲に溺れる獣にされ、地下に閉じ込められ…、どうして私がそこまでされるのですか!! お答え下さ い、アナスタシア様ぁっ!! 」 そう喚くメイ奴を無視して、晶は椅子女の様子を見た。廃奴の扱いの酷さを知っていた調教師長は、メイ奴を抑えるものの連行を躊躇っていた。 「確かに、粗相があった模様ですが…、それだけで廃奴とは、やぶさかでは…」 だが、晶は戸棚の引き出しから、L判の写真らしき紙を数枚取り出し、二人の前に付きだした。 それを見た二人は絶句した。特にメイ奴はみるみる青ざめ、その場にへたり込んだ。 「私が何も知らないとでも…?」 へたり込むメイ奴は、晶が床に落とした写真を手にし、恐怖に怯えた表情で涙を流し始めた。 一方、写真を手渡された調教師長も、震えが止まらなかった。 「調教師長。まだ異議がありますか。母の留守中、貴女を更迭する位の権限は私にもあるのよ」 スイッチが入った様に、二人が動き出した。四つん這いで逃げ出そうとするメイ奴。馬乗りになって取り抑える調教師長。 「いやだぁぁぁっ!! 助けてぇぇぇぇぇっ!! 」 「貴様ぁっ!! 皇女様の目を盗んで、あんな事してて、タダで済むと思ってるのかぁっ!! 」 晶は見苦しく泣き喚いて抵抗するメイ奴を軽蔑の眼差しで見下ろしながら、PHSを手にしていた。 「いやぁっ!! 助けてぇっ!! 」 「黙れっ!! さあ、来いっ!! 」 メイ奴に手錠をかけ、連行しようとした調教師長を晶が止めた。人を呼んだと言う。 程なくして、調教師見習いの少女二名が大きな工具ケースを持参してきた。 「し、失礼します、第一皇女様。便所豚の用意をお持ちしました…」 調教師長が見習い二人の言葉に強張り、メイ奴の表情が更に歪んだ。 「その者をメイ奴姿でここを出す事、相成りません。今すぐここで便所豚にしなさい」 晶の指示に見習い達が凍り付いた。調教師長から写真を見せられて一応納得し、脱がせ始めた。 「いやだぁぁっ!! いやだぁぁっ!! 助けてぇぇぇっ!! 」 三人がかりで服を脱がそうとする調教師達に、メイ奴は半狂乱で抵抗した。 「何をモタモタしてるのっ!! 」 晶がメイ奴の服を引き裂いた。メイ奴は悲鳴を上げ、調教師達の手が一瞬止まった。 「こんな汚らわしいお下がりなど、着られなくして構いませんっ!! 早くなさいっ!! 」 すでに天女様は般若に変わっていた。 泣き叫ぶメイ奴の服が全て剥ぎ取られると手足と首に鉄製の枷が填められ、恥部が露出した鉄製のパンティとマスクが装着された。このマスクは、 口の部分の突起が猿轡になった。外に開いた空気口から呼吸も水や食糧の摂取も出来たが、喇叭の様な仕組みで“ブゥブゥ”という音しか出ない様 になっていた。開いていた穴から出た鼻に、2本のフックが引っ掛かり、豚の鼻の様にされた。それらは緩み止め接着剤が塗られたビスで固定され、 ネジの頭が電動ヤスリで潰された。 「ぶぅぅぅぅぅっ!! んぶぶぅぅぅぅぅっ!! 」 鉄のマスクは目の部分が開いておらず、内側には耳栓となる突起があった。哀れな元メイ奴は暗闇と静寂と悪臭の中、汚物や残飯等を餌に、便槽内 に拘束される運命が待っていた。濁った音を発しながらメイ奴が、いや、便所豚が連行されていくのを晶は終始険しい表情で見送った。 何故、ここまでしたのか訝しんだ恵と香が写真を手にした。二人はしかめっ面を浮かべた。 「これじゃあね…。お姉様、怒るわ…」 写真には先程のメイ奴が椅子女を蹴飛ばしたり、モップの柄で叩いたりする姿が写っていた。晶が自分の寝室に仕掛けたカメラで隠し撮りしていた のだった。 リリィ・プリズンでは、奴隷が奴隷を虐めたり痛めつけたりする事は最大のタブーだった。調教師ですら自発的に奴隷を調教する事は許されず、 あくまで女王以上の者達の補助に過ぎなかった。 ここでは奴隷は全て女帝と皇女達の所有物であり、各々の女王個人が所有する奴隷もある。これらを奴隷が無断で痛めつけるという事は“反逆行為” と見なされ、罪が重くなるのだった。 一悶着の間、機転を利かせたヒロミが椅子女の拘束を解き、氷と水で火傷を手当てしていた。 「有り難う、ヒロミ。もう大丈夫よ」 晶の笑顔は再び天女様に戻っていた。その笑顔にヒロミは顔を赤らめ、その様を香が睨み付けた。 すると突然、香がヒロミの手錠を後ろ手に繋ぎ直し、カボチャパンツの中を覗き込んだ。 「あーっ!! 勃起してるっ!! 」 「うわっ!! キャサリン様っ!! 」 香は涙目でヒロミを睨み付け、パンツの中の男根と睾丸を剥き出しにし、引き抜いて握り潰さんばかりの勢いで激しく揉み扱いた。 「お姉様の、あんな優しい言葉だけで、勃起するなんてっ!! どうせ私なんか、お姉様みたいに優しくないわよっ!! でも、これは私のロストヴァー ジンの為にあるんだからねっ!! それが嫌なら、こんな物引っこ抜いて、あんたをカンガンにしてやるーっ!! 」 「お止め下さーいっ!! キャサリン様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 」 末の妹の奴隷少年への仕打ちを、姉二人は苦々しく見ていた。 「ちょっと香、自分の部屋でやりなさいよ」 リビングでの騒ぎが収まってから暫くして、晶はPHSで女帝との連絡をとっていた。 「御母様。何か、ありましたでしょうか」 〈何かじゃないわよ。貴女もメイ奴達も、電話に出ないで、何やってたのよ〉 「申し訳ありません。実は先程重大な違反事案が発生しまして…、え? 詳しい報告は後でよろしいのですか」 〈貴女に留守を任せていたんだし、それにちょっと忙しくさせてしまうから…〉 「はい。有り難うございます、御母様。で、忙しくなる事って…、三日後に集まれる女王達を集めて…。ティアラと乗馬鞭の用意…。鞭にはネーム、 イニシャルは……………。それって………」 娘への連絡を終えた時、女帝は床に横たわる葉月を見下ろしていた。葉月は後ろ手で手錠をかけられ、全身鞭と熱蝋で真っ赤に腫れ上がり、息も絶え 絶えでグロッキー状態だった。 「かなり、熱持ってるわね」 葉月の体に手を当てた女帝は奥の戸棚を開いた。そこには一本の酒瓶が入っていた。 その酒は90度以上あるウォトカだった。女帝はボトルを開ける前に、蝋燭を水に浸け、他に完全に火気が無いのを確認した。 口の開いたボトルを葉月の真上で傾けると、ウォトカは葉月目がけて落下し、彼女にかかった。 こうして、アルコールの気化熱で火照った葉月の体の熱は奪われ、冷やされる筈だった。 だが、その前に葉月の傷にアルコールが染みて、猛烈な激痛となって彼女を襲った。 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 」 冷えて痛みが和らぐどころか倍増する事にしかならず、葉月は激しくのたうち回った。 「それだけ動けるなら大丈夫ね」 「ぐっ…、ぐぁ…、あ…、あ…、あ…、あ…」 葉月は必至で痛みに耐え、自分の額と爪先を床に立てて、のたうち回るのを抑えた。その葉月の腰を抱きかかえ、女帝は調教用ベッドに寝かせた。 掠れる様な呻き声を上げながらも、葉月は落ち着きを取り戻した。 葉月をベッドに乗せると、女帝は奥の清掃用シンクにモップを取りに向かった。モップを用意しているとベルが鳴り、手を止めて受け渡し用棚の引 き戸を開いた。 「遅かったわね、何を…」 補充の遅れを咎めようとした女帝の言葉が止まった。 「遅くなって、申し訳ございません。陛下」 「副メイ奴長…。メイ奴長は?」 補充品を持って来たのは副メイ奴長だった。 「メイ奴長は…、下で起きた事案の関係で、アナスタシア様の元に…」 副メイ奴長に緊張と困惑の色が浮かんでいた。そんな彼女を察してか、女帝は詮索しなかった。 「何かあった事、アナスタシアからも聞いてるわ。詳しい話はここを出た後であの娘から聞くから、貴女は与えられた仕事をこなしなさい」 補充品のチェックをしながら、女帝は彼女を労った。そして、補充品の確認を終えて片付け、再びモップを手にした。 部屋の中央に戻ると、葉月はベッドの上で正座していた。だが、女帝は目を合わせながらも声もかけずに、先程まで葉月が横たわっていた床の掃除を 始めた。その様を黙って見つめていた葉月だったが、女帝自ら部屋の掃除をしている事に違和感を感じて口を開いた。 「あの…、メイドに掃除とかさせないのですか…?」 すると女帝は、モップを片手に持ち直し、モップの柄を少し振り上げて葉月の肩に落とした。痛みで葉月の表情が歪んだ。 そして、不適な笑みを浮かべて葉月に答えた。 「ここは私と折檻される奴隷だけの聖域。責められない奴隷など、この部屋には存在しない」 つまり、この特別調教室は女帝が奴隷をマンツーマンで折檻、調教する為の部屋であり、ここに入る奴隷は、全て女帝に責められる為だけに入れられる のであって、例えメイ奴といえども掃除や洗濯、食事の用意等の仕事をこの部屋で行うのはタブーだったのである。 過去に誤って、この部屋の掃除をしてしまったメイ奴が女帝の逆鱗に触れ、特別調教室で調教されて、そのまま女帝のマゾペットにされてしまった例も あった。 その為、この部屋の中での事は全て女帝自ら行うしかなかった。掃除や洗濯、食事の用意等、全て女帝が行っていた。部屋そのもののメンテナンス等で、 どうしようもない場合は専門の業者や職人が補修等をしたが、それ以外は全て女帝一人で全て行っていたと言ってもよかった。 実際、この部屋の外では女帝が家事を行う事は、家族だけの時を除き、殆ど無かった。 そして、女帝は掃除を終えた後、キッチンで食事の用意を始めた。 「葉月、いつまでそこにいるの。床に降りなさい」 キッチンから出てきた女帝は、葉月に床に降りる事を命じた。床に降り、正座する葉月の前に食事が用意された。盛りつけは兎も角、白い御飯に肉ジャガ、 ツナサラダにお新香と、キチンとした料理だったが、ただ、盛られていたのは犬用のトレーだった。トレーは二つ用意され、もう一つの空のトレーには 緑茶が注がれた。 女帝もほぼ同じメニューだったが彼女は普通の茶碗や皿に盛っていた。自分の分をお盆の上に乗せて運び、先程まで葉月が座っていたベッドをテーブル 代わりに、折りたたみチェアに腰掛けた。 女帝が自分の食事の用意をしてる最中、葉月は後ろ手に填められた手錠を臀部にかけ、膝裏、踵まで通して、無理矢理手首を前に持って来た。そして、 トレーを手に持ち、正座した姿勢で手掴みで食事を取り始めた。 一部始終を見ていた女帝は呆れて箸が止まった。 「飽くまでも這いつくばる気は無いって事ね…」 「はい。犬や豚になるつもりはありませんから」 「もしも、高手小手縛りにされて、腕を前に回せなくしたら?」 「その時は…、強制給餌をお願いします」 「最初みたいに、喉にパイプを押し込まれて、苦しい思いをまた味わいたいの?」 「フォアグラのガチョウみたいな扱いの方がマシです」 思わず軽く吹き出した女帝は、再び箸を運び始めた。 「未だにブレてない…。良い心がけね。最高の奴隷になれるわ」 今度は葉月の手が止まった。 「陛下が私を奴隷になさりたいのなら、構いません。ただ、自分から奴隷になる気はありません」 「フフフ…。数多くの“自称女王”の“女王試し”をしてきたけど、貴女の様な娘は初めてよ。この部屋でやる場合、私と二人っきりになるんだけど、 大抵三日も持たずに奥の荷物の受け渡し口から逃げ出すのよね」 女帝は箸で部屋の奥を指した。葉月も目線を部屋の奥に移した。 「だけど、逃げ出したところで、裏の階段やエレベーターはメイ奴や調教師達の詰め所、作業場に出るから、そこで取り抑えられて、ここに送り返されて、 後は私に再調教されてお終い…」 「再調教…?」 「逃げ出した時点で“女王試し”は打ち切り。もう女王どころか奴隷としてもお粗末なものよ。今まで虚勢を張って女王気取りだった“自称女王”は。 メイ奴や調教師に連行されて、ここに戻って来た時の、泣き喚いて許しを乞う惨めな姿を私は何度も見てきたわ」 葉月は“女王試し”を全う出来なかった者の末路を黙って聞き入った。 「後は自分が如何にサディストを装って、マゾヒストを冒涜してきたかを思い知らせるの。人としても心が壊れれば、そのまま廃奴…、もう奴隷として の価値も無い扱いよ。マゾヒストに生まれ変われればマゾペットになって、私や娘達の愛奴として可愛がられる…」 「陛下に認められて、女王になられた方々は…」 「最初の謁見の段階で決まっていたわね。心構えがまるっきり違っていたわ。奴隷のマゾヒストを大事にしてた女王は、痛い目に遭う覚悟が出来てた。 だから厳しい“女王試し”を乗り切れた…。本当は貴女をここじゃなく、下の第一調教室で“女王試し”をするつもりだったんだけどね。ここより大き な調教室で、設備も整っているわ。調教師達にも手伝わせたり、メイ奴達に貴女の世話させたり、ここみたいな缶詰状態にはならない筈だったのよね。 その代わり、常に誰かが側にいるから、逃げようとする素振りすら見せられない。寝る時は一応ベッドに布団は付いてたけど、調教室内の牢の中で、し かも見張りも付いていた。ここより完全に逃げ場が無い分、“女王試し”を受ける女王は胆をくくれた。それでも、泣きながら跪いてひれ伏す者も多かっ たわよ。逃げ出さない代わり、あまりにも気負いすぎて耐えられなくなって、心が折れてしまうのよ。可哀想だけど、“女王試し”を乗り切れなかった 以上は、逃げ出した者と同じ扱いよ。ただ、奴隷としての扱いは逃げ出した者よりは格段に良くしてるけど」 「文子女王様も、同じ様に“女王試し”を受けられたのですか?」 「いや、彼女はちょっと事情が違うのよ。元々は私の奴隷だったのよ」 葉月は少し、驚きの表情を浮かべた。 「調教したり、奉仕させたりしてるうちに、漠然としたインスピレーションだけど、他の奴隷とは異なる物を感じて、試しに調教師をやらせながら、女王 に育ててみたのよ。そしたら、本当の女王に相応しくなったから、女王の地位を与えたのよ。彼女だけじゃなく、痛い目に遭う事を恐れない者じゃないと、 女王は務まらないわ」 その言葉に、葉月は今まで見えてなかった事に気付いた。女帝の体は気付きにくかったが、意外と傷だらけだったのである。 「他にも折角“女王試し”を乗り切って女王として認められたのに、奴隷になりたいなんて言ってきた者もいたわ。彼女、私の長女がとても気に入っち ゃって、椅子になって貰ってるわ」 「どうして、私をここで“女王試し”を…? 最初の粗相が原因ですか?」 「いや、貴女の眼よ。貴女の眼を見た時、マンツーマンで調教したくなったからよ。この娘なら、ここから逃げだそうなんてしないって、そう思ったか ら…」 女帝はタオルを手に、葉月の元に歩み寄った。 「女王を目指す者が、食べ物で顔を汚すんじゃないわよ」 少々乱暴な手付きで葉月は、顔を拭かれた。 拘束衣のベルトが留められていった。 「くっ…、重い…、」 葉月は厚手の生地の拘束衣を着せられ、ふらつきながら調教用ベッドに腰掛けた。この拘束衣は生地の中に砂や厚い板金が縫い込まれていて、約10sほ どの重さがあった。更に、足には厚底のブーツを履かされていたが、これは安全靴に手を加えた物で、靴の底が分厚いセメントだった。しかも、セメント の中に鉄球が混ぜられており、靴そのものの重さは片足だけで5sはあった。当然、歩くどころか立ってる事すら難儀な状態だった。 幸い、女帝は座って待っている事を許してくれていたので、腰掛けていたのだが、女帝が次の調教の用意をしている最中、終始表情を強張らせていた。 女帝が物品庫から引っ張り出してきたのは数枚の厚い木の板で、それを組み合わせていった時、そこには三角木馬が出来上がっていた。 何が始まるのかを理解した時、葉月は生唾を飲んだ。 「さあ、来なさい」 女帝に腕を取られ、重い足を少しずつ運びながら、葉月は三角木馬を跨せられた。この時点では木馬のエッジは股間に食い込んではいなかった。 だが、女帝は葉月の腰を?んで、ゆっくりと腰を落とさせ始めた。 少しずつ膝を曲げ、木馬が葉月の股間に触れた時、女帝が、葉月の片足を取って持ち上げた。 「ぎゃっ!! 」 葉月が悲鳴を上げた。バランスを崩し、片足では体重を支えきれなくなった為、葉月は倒れかかった。しかし、女帝がひっくり返らない様に彼女を?んだ為、 葉月は木馬に乗っかり、木馬のエッジが性器に食い込み、体重がかかった。葉月が苦しそうな呻き声を上げてる最中、女帝は手早く持ち上げた足首に麻縄を 縛り付け、余った縄を葉月のお腹に回した。そして、もう片方の足首も持ち上げられ、同じ麻縄で縛られた。こうして両足が床から離れ、全ての体重が股間 にかかり、三角木馬に食い込んだ。拘束衣と靴の重みも加わり、このまま体が真っ二つに割られそうな激痛が葉月を襲った。 「ぐっ…、ぐあ…、ああ…、あ…、あ…、あ…、あ…、あ…」 激痛に苛まれながらも、必死で声を押し殺して痛みを堪える葉月だった。顔が青ざめ、脂汗をダラダラと流し、眉を吊り上げ閉じた瞼の周りに何本もの皴を 寄せて、苦悶の表情を浮かべた。 「構わなくてよ、泣き叫んでも。無理に声を押し殺さなくてもいいのよ」 そう言いながら、女帝は葉月の両肩に手をかけた。その時の優しげな女帝の手付きに、一瞬葉月の気が緩んだ。 実は女帝はピンヒールを脱いでいた。そして、曲げて吊られた脚の脹ら脛に足を乗せ、肩に手をかけたまま葉月の体に飛び乗った。 女帝の体重が葉月の股間にかかった。 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 」 この時の葉月の絶叫は、調教室裏の階段途中まで届き、そこを掃除中だったメイ奴が驚き、怯え、モップを落としてしまう程だった。 葉月の“女王試し”が始まって一週間が経過した。 その日の朝。メイ奴達が謁見の間で忙しく動いていた。この日のメイ奴達は普段の貞操帯が見える様な短いスカートでは無く、膝上まである正装用メイド服 で首輪もリボンのチョーカーに換えていた。調教師達もジャケットにワイシャツ、ネクタイに制帽等軍服風の正装で微動だにせず、休めの姿勢で謁見の間に 配置されていた。そして、皇女三姉妹や来賓の女王達が謁見の間に入る度、敬礼で出迎えた。 晶はシンプルなボンデージの女王様スタイルだったが、ビスチェも網タイツも、ロンググローブも編み上げブーツのピンヒールも白で統一されていて、元々 色白な地肌も相まって、黒真珠のネックレスとブレスが夜会巻きで纏めた黒髪と共に映えていた。頭にはシンプルだが気品溢れるプラチナのティアラが飾ら れていた。 恵は姉とは正反対に赤を基調にした、派手なボンデージを身に着けていた。艶やかな金色の鋲が多く、金の首飾りや髪飾りが豪華さを際立たせていた。 香はフリルやレースが多い、黒を基調にしたゴスロリ風のボンデージだった。カールしたツインテールに結われたリボンや、チョコンと乗った金色の王冠飾 り等の幾つかの飾りがピンクや黄色で、これらが黒い色に映えた。妖しい可愛さだった。 皇女三姉妹に来賓の女王達が次々に挨拶をしていった。その中に文子女王がいた。 「文子女王、新女王の戴冠式にお越し頂き、有り難うございます」 「お招き頂き、光栄でございます。第一皇女様」 晶と文子はにこやかな笑みで談笑していた。その一方、恵と香は別の女王達と話していた。 「第二皇女様、新女王はどちらに?」 「それが、私にも判らないんです。母や姉からも聞かされてないので…」 「でも、いつもでしたら、もうここの末席に控えてるのですけど」 「陛下もお見えになってませんし。第三皇女様、何か御存知で?」 「わ、私も詳しい事は…」 他の女王達は、誰が新しい女王の位を賜るのか、聞かされていなかったらしい。ただ、弥生から葉月が“女王試し”を受ける事を聞かされていた文子と沙織 女王だけは、薄々気付いていた。 「文子女王様、弥生の姪が“女王試し”を受けたって話、本当だったんですか」 「ええ。だから、こうして戴冠式が開かれてるんじゃない」 「だけど、葉月…、でしたっけ。その子、いませんよ」 「そう言えば、いつもとちょっと様子が違うわね」 その時、ベルが鳴った。 「女帝陛下のお越しにございます」 メイ奴長の一声で、皇女達と女王達が席に着いた。玉座から見て、右手側が皇女達の、左手側が女王達の席になっていた。今日、この場に来ていた女王は七 人。序列では文子が一位で最も玉座よりだった。皇女達の背後に調教師達が、謁見の間の奥にメイ奴達が整列した。皆が席に着き、晶が頷くのを合図に、 特別調教室の扉が開けられた。全員が礼をした、次の瞬間、皆が凍りついた。 出てきたのは汗だくの女帝と、それに抱えられた全裸の葉月だった。その姿は見るも無惨なぼろきれの様だった。髪はボサボサで、体は全く入浴させられて いなかったのか、垢だらけだった。直前まで調教されていたのか、息も絶え絶えで、女帝の手が離れると、グッタリと倒れ、玉座の段から下に転がり落ちた。 晶と文子から笑みが消え、女王達がざわつき始めた。 (まさか、あの中で“女王試し”を…………!? ) (こ、こんなになるまで…………………………) 葉月は必死で体を起こそうとしていた。その様を見ていた女帝はメイ奴達に命じた。 「着替えてくるから、それまで清拭を済ませておく様に」 女帝は帳の中に消えていった。 「あの娘、特別調教室から出てきたわよね」 「戴冠式じゃなかったの?」 「だけど、アナスタシア様からは戴冠式のお知らせが来たわ」 「でも、あそこで調教されて女王になったの、いないわよ」 メイ奴達が葉月の体を清拭している間、女王達はヒソヒソと話していた。 清拭を終え、髪を梳き直された頃、再び女帝が現れた。化粧を直し、黒のボンデージ姿に金色のケープを羽織り、頭にはプラチナのティアラが乗せられていた。 後には二人の少女のメイ奴が控えており、一人は布を被せた物を持っていた。もう一人が布を取ると、そこには一つのティアラがあった。女帝はそれを手に 取ると、玉座の段を降り、葉月の元に歩み寄った。 何とか正座の体勢をとり、頭を下げていた葉月の首輪が外され、ティアラが被せられた。 葉月の苦しげな目つきが変わった。大きく見開き、輝きが戻った。 顔を見上げると、笑みを浮かべて見下ろす女帝の姿を目にした。 晶と文子に安堵の笑みが戻り、それ以外の皇女や女王は驚きの表情を浮かべた。 女帝が振り返り玉座に戻ろうとした時、晶が立ち上がり、一声を上げた。 「皆様方。葉月新女王の誕生です」 晶と文子の拍手に続いて、そこに居合わせた者達が拍手を始めた。葉月は当たりを見回し、疲労の色を浮かべながらも、正面の女帝に向かって手を合わせ、 頭を下げた。 「女帝陛下、有り難うございます」 拍手をしながら、晶とメイ奴長が目を合わせた。 「さあ、新女王様にお召し物を」 数名のメイ奴が葉月の元に詰め寄り、服を着せ、メイクを始めた。その間、一人の少女のメイ奴が葉月の背後に座り、葉月の椅子になった。 その様子を訝しんだ女帝が晶を呼び、訪ねた。 「メイ奴の数が少ない様だけど…。それにあの椅子のメイ奴は…?」 「先日お話しした違反行為の為、私が処分しました。あの椅子のメイ奴は個人的にペナルティを課した者です。僭越でしたでしょうか」 「いや、留守は貴女に任せてたんだから…。話は今夜にでも聞くわ。先ずは新女王の門出を祝いましょう。それに水差す様な無粋な話は無用よ」 女帝は実の娘に対する物とは思えない様な、冷たい眼差しを横目で向けた。 「かしこまりました…」 その間、椅子になっていたメイ奴は涙を浮かべて、怯え、心の奥で呟いた。 (神様、お助け下さい。無事に終わります様に………………) リビングの事件の直後、晶はメイ奴長を呼び出し、調教師長にメイ奴全員を第一調教室に集める様命じた。メイ奴長には事の詳細を、そして他にも悪質な虐 待を椅子女に加えていた者も含めて、上司たる彼女も処分せざるを得ないと伝えた。ただ、メイ奴長の誠実な人柄を熟知していた晶は、この人物が部下への 教育を怠る筈が無いと信頼していたので、軽い処分に留めたかった。 しかし、彼女は土下座して詫び、重い処分を申し出た。 そして第一調教室にて、メイ奴長は全裸で木板の首と手の枷を填められ、性器と肛門に太いバイブを挿入され、手に持たされた反省文の読誦を命じられた。 「私…、メイ奴長鞠亜は…、自らの…、あ…、ああっ!! 」 白のボンデージ姿で髪を三つ編みに結った晶が、情け容赦なく、メイ奴長に鞭を振るった。 「ああっ!! ああっ!! ああっ!! 」 「イくのは構いませんが、反省文の読誦を途絶えさせる事、相成りません!! バイブによがりながらでも読み上げなさい!! もう一度、最初から!! 」 「あ、は、はいっ!! 私、メイ奴長鞠亜は…、自らの監督不行届により…」 必死で読み上げようとするメイ奴長を見つめながら、晶は椅子に座った。同時に悲鳴が上がった。 「痛いっ!! 痛いよぉっ!! 」 悲鳴の主は晶の背後だった。椅子には一人のメイ奴が座らされており、その椅子は木のトゲが背と尻の部分に敷き詰められていた拷問用の椅子だった。それ に晶は座ったのだった。 「助けてっ!! お許し下さい、アナスタシア様ぁっ!! 」 「なりません。これ位、我慢なさい。それとも、そこで豚の刻印を入れられてる者と代わりますか」 もう一人は泣き叫びながら、拷問用ベッドに拘束され、下腹部に『淫豚』の文字のタトゥーを入れられていた。 これらはメイ奴全員の目の前で行われ、抱き合いながら震えて泣く者もいた。 この後、メイ奴長には三日間の資格停止と人型牢に拘束、メイ奴二人に三日間の懲罰箱入りと無期限の資格停止が命じられた。 その夜、晶の寝室を一人の少女のメイ奴が訪ねた。就寝前の白いネグリジェ姿の晶は穏やかな笑みで彼女の話を聞こうとした。 だが、深々と頭を下げた彼女の告白は晶の怒りを買った。彼女も椅子女を虐めていたと言うのだ。晶は無造作にメイ奴の首輪を掴み、床にねじ伏せ、頭を踏 みつけた。 口元を引きつらせ、憎々しげな目つきで睨み付けながらも、慈悲深い言葉を彼女に向けた。 「貴女は自らの罪を認め、頭を下げて詫びました。幸い、貴女が椅子さんを虐めていた写真等の証拠は無いので、貴女については聞かなかった事にします」 頭蓋骨を踏みつぶしそうな勢いで踏みつけながら、晶は続けた。 「そして、貴女には償うチャンスを上げましょう。三日後に新女王の戴冠式があります。そこで新女王の椅子を務めなさい。全う出切れば完全に不問にしま す。ただし、少しでも粗相があれば、即刻便所の蛆虫に堕としますから、そのつもりで」 便所の蛆虫とは便所豚以下の扱いで、四肢を切り落とされて便槽に入れられる処分だった。幸い、実際にそういう扱いになった者はおらず、噂話の領域でし かなかった。 椅子のメイ奴が怯えている間、葉月の着替えは進んでいた。黒と紫のボンデージとストッキングと長手袋、ワインカラーのピンヒールを履かされ、メイクと 首飾りの装着で完了した。 そして、晶から乗馬鞭が贈与された。 「第一皇女のアナスタシアです。母からの贈り物を授けます。おめでとう」 「有り難うございます、第一皇女様」 葉月は跪いて拝領した。そして葉月は女王達の末席に着き、カクテルグラスが用意され、全員が起立した。女帝達に飲み物が行き渡ると、葉月に末席の位置 から正面に立つ様に文子が指示した。 「それでは、葉月新女王の即位と今後を祝って、乾杯!! 」 女王達が乾杯した。その後、葉月は女王達に挨拶して回り、メイ奴長や調教師長からも祝いの言葉を贈られた。 そして、つつがなく戴冠式が終わり、第一調教室にてささやかな宴と余興の用意をしてると言うので、皆が移動しようとした矢先、晶が葉月を呼び止めて、 ある物を手渡した。 「これが貴女に母から賜った調教室とロッカーの鍵です」 葉月は晶から小さな箱を受け取った。 「有り難うございます。アナスタシア様」 「そう堅くならないで下さいな。貴女は母の厳しい調教に耐えて女王の位を賜ったのですから」 その涼やかな笑みに葉月の心が和らいだ。最初の謁見で聞かされた、叔母を調教の練習台にした女帝の娘の話から、彼女に対して負の感情を抱いていたのは 事実だった。 しかし、こうして直に会って話してみると、抱いていたイメージと違う事に気付いた。そして、 「貴女の叔母様には、とても感謝しておりますの。あの方にかかると、未熟なサディストは振り回されるのが関の山だと。それを思い知らされましたから」 叔母を尊敬している事を打ち明けられた時、敵意は好意に変わった。 「実際、私も振り回されましたから」 二人は笑いながら、第一調教室に向かった。 第一調教室では、女帝と来賓の女王達が晶と葉月を待っていた。簡単なオードブルやソフトドリンクがテーブルに並べられていた。 そこに入った葉月は表情を強張らせた。 「おめでとう、葉月ちゃん」 「叔母様…」 文子が座っていた席の床に、黒のハーネス等で拘束された弥生が座っていたのだった。 「私が連れて来てたのよ。貴女の晴れ姿を見せたくて」 文子が隣の席に座る様促した。葉月が座ると弥生はうっとりとした笑みで葉月の脚に縋り付いた。 だが、葉月は険しい表情で晶を見つめていた。 「まさか、余興って…」 晶の目が冷たく光った。先程の涼やかさが嘘の様な、残忍な笑みを浮かべた。 「貴女の最愛の叔母様を、この場で虐げるなんて、野暮な事はしませんわよ」 葉月が呆気にとられた表情を浮かべた。それと同時に、晶が調教室隅に置かれていた黒い布を取ると、二人の奴隷を閉じ込めた檻が現れた。 「お前達、出なさいっ!! 」 晶は檻の扉を開け、乱暴に二人を引きずり出した。二人は手は握りしめ、足は爪先を立てた状態で樹脂製ギプスを巻かれて固められ、もう物を?んだり立って 歩いたり出来なくされていた。口もギプスの猿轡をされ、黒いゴム栓が口に付けられていた。 「この者達は、先日大罪を犯し、メイ奴の資格を無期限で停止した者達です。二匹の雌豚を躾直す為に、女王の皆様方のお力をお借りしたいと思うのですが、 宜しいでしょうか」 晶は1人をピンヒールで踏みつけ、もう1人の首輪を直に?んで持ち上げた。2人は濁った悲鳴を上げて泣きじゃくった。 「そういう事でしたら、お言葉に甘えて…。葉月、来なさい」 文子が葉月を連れて名乗り出た。 「可哀想に、これじゃ立てないわね。今、立たせてあげるわね」 文子は葉月に麻縄を取りに行かせ、その麻縄を吊して奴隷の股に通した。葉月は奴隷に肩を貸して立たせ、それと同時に文子が縄を引っ張った。 「ンムググゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!! 」 奴隷の股間に縄が食い込み、濁った悲鳴を上げ始めた。もう一匹の奴隷は女帝母娘の傍らに座らされ、その様子を涙目で見つめていた。すると晶が優しげな 手付きで奴隷を撫で始めた。 「安心なさい。女王達を満足させて、愛でて貰えればギプスを外して、元のメイ奴に戻してあげますからね。だけど、満足させられなかったら…」 無造作に髪を?まれ、顔を晶の正面まで引き上げられた。この時の晶の表情は笑みを浮かべながらも、おぞましい位残忍そうだった。 「恥ずかしい姿勢で全身をギプスで固定しますから、覚悟なさい…」 奴隷はその言葉に恐怖し、涙を溢れさせた。 一方、葉月は文子の指導で鞭を入れ、奴隷は歓喜の呻き声を上げ始めた。 「歓び始めたわよ、葉月。続けなさい」 葉月は自信に満ちた表情で鞭を振るい始めた。