ブラインド・テンション
[Blind tension]
〜あずさ完全拘束〜


キャラクタ原案:しみずまさかず
文:東之 青龍


自分が派手に撒き散らした汚物で汚れたコンクリートの床の上に、あずさの良
く鍛えられた健康的な裸体が転がっている。
間違い無く大柄。それでいて「ごつい」感じを受けないのは、すらりと伸びた
四肢と、それを包むしなやかな筋肉の流れの美しさゆえか。
この種の柔軟な筋肉の持ち主は概ねどんなスポーツにも器用に対応する。長丁
場になっても皆を励ましつつ戦い切り、時に爆発的な力で相手をねじ伏せる必
要のあるバレーには確かにこの身体にはうってつけだろう。この張り詰めた肌
の下には爆発力を秘めた赤い筋肉と、決して簡単には屈しない白い筋肉が渾然
一体となって息づいているはずだ。
さらにこの上背。驚いた事にほんの少しだが私よりも身長があるようだ。まだ
10学年だと言うのに。プロが注目しているのも頷ける。この娘に目をつけると
は流石に「あの方」ね。
そんな彼女だが、床の硬さや冷たさも、冷え切った汚物にまみれているのも、
そろそろ限界のはず。美人…とは少し違う気もするが、充分に個性的で覇気の
ある魅力的な表情を見せる貌も、今や力を失いうなだれている。
久しぶりに手応えのある素材に夢中になっていたけれど、もう時刻は夜明けに
近い。
合宿の道行きから拉致して運び込んだのがまだ午前中だったから、いかに体力
に優れるこの娘と言えど、憔悴の色が濃いのも無理からぬところ。
あずさほどではないにしても、私自身も少々疲労している。まあ程よい疲れね。
この感覚、嫌いじゃない。
「ふう。それじゃそろそろお休みにしようかしら」
そんな私の言葉に、憔悴し緊張しきった身体から、ほっと力が抜けるのが見て
取れる。
一応、誓いの言葉は言わせたものの、まだまだこれからだ。
凄く強い娘。肉体的にも精神的にも。
強い身体と行動力がその精神を支えているタイプね。
ちょっと鞭を当てただけで簡単に忠誠の言葉を吐く娘もいるけれど、多分この
娘は違う。
あれだけ責めただけに、私ですら勘違いさせられそうだが、この娘にとってあ
れは、普通の娘が「ちょっと鞭を当てられた」事に相当するのだ。まったく恐
れ入る。
でも体力を強さのよりどころにしてる娘って、逆に言えばその体力さえ削いで
しまえば驚くほど簡単に堕ちちゃうモノ。…体力が回復したとたんかなり元に
戻ってしまうものでもあるが…そこは堕ちた時にどれだけ新しい価値観が刷り
込んでおけるかが、分かれ目だ。ちゃんとやればほんの僅かな体力喪失ですぐ
に「スイッチ」が入るように仕込める。単純な娘ほど条件反射の刷り込みは容
易い。
その為にも、完全に回復させる訳にはいかないわね。
常に疲労状態において刷り込みを行いやすい状況を維持しないと。
となると、この娘の寝巻き(ナイティ)は「アレ」ね。


「あら?『奴隷になる』って、誓ってくれたんじゃなかったかしら?」
その「ナイティ」を見たあずさの反応はおおむね予想通りだった。
「あんなもん、方便やっ!」
それでも、なるべく意外で残念そうな雰囲気を作る。
「あらあら。嘘はイケナイって事も躾られてないのかしら? 情けない親御さ
んねぇ」
恐らくこの娘は同族や身内に対する非難や攻撃に激しく反応する。
「ボ、ボケェッ!!うちのおかんはちゃんと…」
こんな風にね。
「それにその言葉遣い。ちゃんと躾けてもらったのならそれらしくなさいな」
「くっ!」
悔しいでしょうね。お前にこれを否定する事は出来ないはず。
「別に私は良いのよ、お前が自分で撒き散らした糞と小便に塗れて裸のまま鎖
に繋がれてこんなコンクリートの上で寝たいって言うならね」
改めて自分の状況を教えてやる。多分身動きするだけでも身体が軋んで音を上
げそうになっているに違いない。枷は重く食い込み、全身にこびりついた糞尿
が放つ異臭と汚物に塗れていると言う嫌悪感は、それだけでも気がおかしくな

りそうだろう。
「…っ!」
噛み締めた唇がほんの少しだが、確かに、泣きそうに歪む。好いわ。ぞくぞく
する。
「別に責め殺すつもりは無いのよ。死んでもらったら困るくらい。だからせっ
かく寝巻きまで用意してあげたのに」
「そ、そんなモン…寝巻きと…ちやう…」
毒づくが、さすがに勢いが無い。私がいとも簡単に「死」と言う言葉を口にし
た事に怯えているのか?
「余りこれを汚す気は無いの。ちゃんと「寝巻き」を着てお休みしてくれるっ
て言うならそのクソまみれの身体を洗ってあげても良いのよ」
ちょっとした「飴」をちらつかせた。
「そっ…」
「約束してくれなくっても一向に構わないわ。無理にでも着せるから。そのク
ソまみれの情けない有り様のままでね」
そう言って「ナイティ」を指差す。私にそれが出来るって事くらい分るはずだ。
用意したそれそのものは、何の事は無い革製のキャットスーツ(ツナギ服)の
ような物だ。基本的にはあずさに合わせてあり、幾重にもベルトで締めつけら
れ固定できるようにおびただしい数のベルトループとDリングがダブルで取り
つけてある。足先は勿論のこと手先もそれぞれ指の無いミトン状で、一つだけ
でも体重が支えられるくらい特に頑丈なDリングが設けてある。さすが美希。
仕事が早いわ。
「そやけど…そんなん……革で出来た服なんか…着てんの…変態さんだけや…
…」
むずがるような拒絶。ほんの些細な突破口。
「あら、バイクに乗ってる人達とかは割と着てるわよ。割と変人さんが多いの
はそうかもしれないけど」
弱気になりかかっているときは無理に押さない。その代わりに「言い訳」がつ
くようにしてやる。
裸でいるよりはマシだと思わせる。汚れたままより洗ってもらった方が良いで
しょう?ってね。人は楽に流れるものだ。
「けど……そやけど……」
「さっさと決めてね。私もさすがに休みたいの」
突き放す。食いついて来たり、これ以上の無理を身体が受けつけられないのを
見越しての事だ。
「そっちが…ええ…」
この娘にしては少々長めの沈黙のあとでそう言った。
「どっちなの。はっきりおっしゃいな」
「その…革の変なん着て寝る…寝ます」
ワンステップクリアかしら?
「フフ良いわ。でもお前には選択権は無いの」
「なっ?!」
「覚えておきなさい。お前に出来る事が有るとするならそれは何かを希望する
事だけ。全ては私が決めるわ。希望を口に出しても良いかどうかって事もね」

両手に繋いだ鎖を再び引き上げてやる。
「そ、そん…ぁっ…痛っ…痛い…」
モーターの無慈悲な動きに引き摺られて、あずさの口からは珍しい弱音が漏れ
る。鎖の動きについていけずに立ち上がれないらしい。思ったよりも痛めつけ
すぎたか。反応の強さに身体の状態を読み誤ったわね。
「…あ?」
後ろから抱き起こしてやると、なんとか立ちあがれそうだ。私も少々汚れる事
になるが不用意に傷つけてしまう事を思えば、何ほどの事も無い。
ああ、かなり体温が下がってるわね。私の身体は相当暖かく感じるだろう。
きつい表情ばかりだった横顔に戸惑いが浮かぶ。冷え切り汚れきった身体が、
暖かな人の身体に抱きしめられる事は、相当効いているようだ。
最初の印象は少し修正しないといけないようね。体力だけが全てのよりどころ
と言うわけではない。何らかの矜持、自由でいる為の意地とか誇りとか…そん
な物を、この娘は確かに持っている。
ふふ。ますます面白くなってきたじゃない。捻じ伏せてあげるわ。
「さぁ、言って御覧なさい『あずさにあの革の寝巻きを着せてください』って」
鎖に吊り上げられ大の字に立たされた身体を、ちょっと力を入れて抱き締める。
「………」
もごもごと口を動かしかけたが、真っ赤になって俯いてしまった。
純粋な力には同様の力で反発するが、こう言った絡め手にはどう対応して良い
か分らないかな。ちょっとでも快く感じたのなら、無闇に反発する事はこの娘
の気性からして出来ないのね。ふふ、素直で良いわ。
「さあ…」
促すつもりでささやきながら、べっとりと汚れた身体をさらにきつく抱く。
「あ…汚れ…て…まう…で……」
流石に一瞬、反応できなかった。
なんて娘!?この期に及んで私のことを心配できるとは。
……そう、この娘の本質はこの強さと優しさか。確かにこの二つは対になりや
すい。
「身体洗おうか…」
ちょっとリズムを崩されてしまったが、ここはこのまま乗せられてしまおう。
「あ、ああ…」
「はい…の方が良いわよ」
「あ……、はい…」
「その後ちゃんと着替えてね」
「………………………………………………………は…い」
随分間があったが、そう答えるであろう確信はあった。
「ちゃんと言って。『あずさにあの革の寝巻きを着せてください』って」
「あ…あの…ウチに…」
「『あずさに』」
「あ、あずさに…」
「『あの革の寝巻きを』」
「あ…あの革の寝巻きを…」
「『着せてください』」

「…着…せて…くだ…さい」
「そう。ちゃんと通していって御覧なさい」
返答も待たずに暖かい湯を胸からかけてやる。御褒美を出し惜しみしない事を
教えてやるのだ。かたちの良いバストにこびりついた汚れを落としてやる。
一瞬の驚きのあと、暖かな湯の心地よさに少し灰色味を帯びた黒い瞳がうっと
りと細められる。
「……さにあの…の…きを……せて……ださい」
蚊の鳴くような声でそう言った。
「ふふ良いわよ。もっとはっきりと…」
「あ…あずさに…あの革の寝巻きを…着せてくださいっ」
一気にそう言って顔を伏せてしまう。凄い。あなたの心臓壊れそうよ。あずさ。
私自身もかなりキテる。そのまま後ろから身体を絡めて抱きしめ、洗いながら
胸先をあずさの背中に擦りつける。
ああ。イイわ。最高よあずさ。
お前から自由の翼を奪う事ができたらさぞかし素敵でしょう。


回復の時間を与えると厄介だ。
洗い終わった余韻が冷めないうちに、着せてやることにする。
「さぁさ、脚を上げてぇ」
流石に一人では骨が折れそうだったので美希を呼んだ。
調子が狂うのだが、この手のものを扱う手腕は確かだ。
あずさの足元にしゃがみこんで、拘束服の背中を大きく開けている。

ライダースーツのジッパーはほとんど前にあるけど何故なのかしら、袖を通す
の大変だろうに。後ろに腕を伸ばしてキャットスーツを着るなんてほとんどア
クロバットよね……等とあずさを後ろから抱いたまま埒のないことを考えてし
まった。
「ほら…身体が冷えちゃうわよ」
「…あ…ぁ……はい…」
小刻みにあずさの身体が震えている。フフ。いい感じ。
足元に広がる黒い皮革の衣装を見つめる瞳は、時に大きく見開かれ、時に恥ず
かしそうに伏せられ、時に潤んで細められている。純粋な恐怖、性的な器具を
身に着けられる羞恥、…そして…自分の旺盛な好奇心に対する後ろめたさか?
いや違うな。
と言うことは……そうか。
「どうしたの?顔が赤いわよ」
その予測を裏付けるべく「そこ」へ指をのばす。
「っそ、そんっ…?!…うあ…あかんっ!…あかんって!!」
私の指先にまとわり付く感覚は、予測を裏付ける物だ。
大柄な身体が、力無く跳ねる。
「あらぁ…あずちゃぁん…濡れてますよぉ!!」
好奇心よりもむしろ、性的な欲望。美希の揶揄がそんな事実を浮き彫りにする。
「ち、ちゃ……ぅ……ぅぅっ!」
スリットから恥ずかしそうにはみ出したラビアを指先で挟みこんで撫で上げる。
立ちあがったラビアの感触は割と固め。興奮初期ね。
指先の動きに合わせて、びくびくと身体が弾む。感度も申し分無い。
膣前庭にまで沈めてみる。鎖に繋がれた身体を爪先立ちにして逃れようとして
る。フフフッ。駄目よ。
今度は上から、親指の腹で割と強めにクリトリスを押してやる。
行き場を無くして身体は後ろに下がろうとするが、それは腰を私に押し付ける
だけの動きにしかならない。
「はぁっ…はぁっ……も、もう…堪忍してぇな……」
「なら認めなさいな。ほら…」

愛液に濡れた指で顎の下をなぞり、唇に触れる。少しだけ乱暴にこじ開ける。
「お前のイヤラしい蜜でヌチョヌチョになっちゃった」
愛らしく飛び出した八重歯には賛否両論があろうが、基本的には綺麗に整った
歯並びだ。
昼の段階なら噛みつかれたかもしれないが、今なら行けるだろう。自分の愛液
にまみれた指に歯茎を撫でられて、ぴくっと顎が引ける。私の指先を押し出そ
うとする舌の動きが少しくすぐったく、気持ち良い。
「ム…ぐ…ぅぅっ……変や……こんなん変や…ウチの身体どないなったんや!?
何をしたんや!?」
恐らく自分自身でも何が起こっているのかなど把握できはすまい。
「何もしちゃいないわ。これがお前の本性なのよ」
強度のストレスが性的な興奮を呼び覚ます事など、取りたてて珍しい反応でも
ない。
それでも拘束される事に対して、この反応は結構面白い。せいぜい利用させて
もらおう。
「そんな…ん……あら…へん……」
「さ、脚を上げて」
なおも何か言おうとするあずさを遮る。
待ちかねたように美希が拘束服の背中を広げてにじり寄る。
ぱくぱくとあずさの唇が何か言いたそうに動くが、言葉は出てこない。
「約束を覚えていて?」
「…あ……あぁ………そ…ん……………は…ぃ……」
気丈な顔が混乱と羞恥で真っ赤だ。
自分でもどう答えて良いのか、どう答えられるかすら判っていないかもしれな
い。
「ほら…」
ならば、道を示してやるのみ。
おずおずとすっきりとしまった脚が上がる。

その下にあずさを捕らえる罠を滑り込ませる。
あずさの顔がなんとも言えない感じでゆがむ。
しかめているとも、泣きそうとも、戸惑っているとも見える。
この装具はもちろん裏打ちなど施していない。肌に触れるのは、毛羽立った皮
革の裏面だ。普通の衣服とは大きく異なる、何かべっとりと湿った物が張り付
いてくるような感覚を味わっているはずだ。
その一種異様な感覚に戸惑い、それに包まれることに恐怖し、そして想像する
のだ。
「これに体中を包まれたらどんな感じだと思う?」
その想像を口に上らせてやると、当然の事ながらあずさの背中が明らかに反応
した。
「っ?!」
自由でいることは実は難しい。何もかもを自分で決め続けなければならない。
居所を持つことは普通幸せとされるが、同時に居所に縛られるのと同じなのだ
から。居所から自由ではなくなってしまうのだ。
「何も出来ないわ」
…何もしなくていいのよ…
この娘は奔放なまでに自由な娘だ。
「そんなん……イヤや…」その響きに否定の色は薄い。
それだけに、自由でありつづける為に、多くの犠牲を自分に強いているはずだ。
その拠り所も、今は相当に萎えている。
両足は既に少々厚めの皮革に包まれている。
唇を噛み、俯いて異質な衣服に包まれた自分の足を呆然と見ている。
身動きする事も忘れたように、呆然と。
黒に包まれた自分の身体を。
縛られることを是として来なかった事が、逆説的にあずさ自身を縛り始めてい
る。
足元では美希がくるくると動き、たくし上げ締めつけ、あずさの肉体を皮革の
檻の中に閉じこめていく。
「くぅぅ…っ!?」
俄かには信じられないほど可愛らしい声が、あずさの喉を震わせる。
あずさのその声が私の奥底をくすぐる。
…フフフ。もう少しよ…
美希の作業は既にすっきりとくびれたウエストまで緩く編み上げる所までいっ
ていた。
いよいよ上半身か。
念のため足先のDリングを床に打ち込んだアンカーに繋ぐ。
両手を吊っていた鎖から解放しても、暴れなかった。
心細そうに自分を抱きしめながら、異様な感覚に包まれた下半身をよじっただ
けだ。
それは、それから遁れようとしてもがいていると言うよりは、むしろ経験した
事のない感覚に包まれた肌と異質な衣服を、確かめるように擦り合わせたと言
う方が正しかろう。
「さ、着せてあげますわぁ」
美希がこの装具の開口部を大きく広げて持ち上げた。
「…ぁ…ぁ…ぁぁ……」
「ほら?」
背中をそっと押してやる。
壊れかかった玩具のようにぎこちなく、腕を上げ前のめりになる、あずさの鍛
えられた肢体。
その身体を犯すように包んでいく凶悪な黒。
美しい蝶が醜い蛹になる。あるべき時の流れの逆回し。
自然の摂理をこの手で捻じ曲げるような快感。
ゾクゾクと私の背中を言い知れぬ感覚が駆け上がって来る。
手ごわい的をモノにする、この感覚。
あずさが黒い皮革に閉じ込められた自分の手を改めて見て、唇をきつく結んだ。
奔放な獲物を檻に閉じこめる瞬間。
その先に設けられたDリングに鎖を繋ぐ。
かしん、と冷たい金属音。
至福の時。
美希の手がめまぐるしく動き、あずさの背中側に設けられたアイレットを次々
に編み上げていく。
「御免なさいねぇ」
そう言いつつ美希の手があずさの胸を皮革越しに持ち上げる。
「な、なんや?!…あ、あうっ!?……あ、あかん……あかん…って……!?」
軽く引っ張り、揺らす。押し付け、伸ばし、引き寄せる。
あずさの形の良い胸は、更に美希の手によって見事にかたちを整えられ、その
衣装の胸の部分を高々と持ち上げる。
鍛錬された身体に贅肉は薄いが、そこはやはり女の子だ。ピンと張切った膨ら
みが、更に強調され絞り出される。
「…こ、こんなん……」
恐らく今まではスポーツブラの類で無頓着に過ごしてきたのだろう。こういっ
た多分に性的な矯正具が、自分の肉体に与える効果を目の当たりにして、おろ
おろと子供のように戸惑い、乙女のように恥じらっている。
おっと。こんな、これ以上もない、れっきとした乙女に『のように』は失礼だ
わ。
「綺麗な胸よ」
本心ではある。
「う…ウチの胸が?」
普段よりもピンと張り出した自分の胸、そしてその上を這う私の指に、呆然と
目を落としている。柔軟に鞣(なめ)したとはいえ皮革越しにはほとんど覗え
ないが、その先端がきつく立ち上がっているのが判る。
間違いない。被拘束願望だ。
普段誰よりも自由なだけに、意識無意識はともかくそれだけの物を自分に強い
ているのだ。
何処かで自由からの解放を願っていたとして、なんの不思議もない。
「もっと綺麗にしてあげる」
「な…っ……あ…あっガァァァァッ!?」
耳元で囁くなり、割と緩く締められていた紐を締め付けてやる。
膝であずさの身体を押し出しつつ、壊してしまわない程度に力を込める。
美希の器用な指が、私がそうして作った緩みを手繰りよせ、形を整える。
「…カッ…かはぁっ……はっ…はっ……っつ、潰れる……潰れ…て……まう…!
…!…」
もがくが、もう遅い。
両手足の先に設けたDリングは既に頑丈な鎖で繋いである。
既にあずさに暴れる力などなく、何よりこの枷はそんな事を許しはしない。
「…う…う…う動けへん……ちゃんと…身体が…動け…へん!?」
そりゃ、これだけ締めつければねぇ。
「…っはぁ…はぁ………ゼッ………っむぅぅぅっ!?」
強固な締め付けにあえぐ唇。
奪いたくなって、そうした。
飛びきり自由な存在がこの手の中に閉じ込められてもがいてる。
熱く火照った柔らかな肉が私の唇の下で蠢く。
頭を振って逃れようとするのを強引に捕まえたまま、深く押し付けた。
軽く歯がぶつかり合って、頭の中に刺激的な音が響く。
閉じた歯茎を舐めまわし、あずさの唾液をわざと音を立てて吸い上げた。
少々強引に開かせ、舌を押しこもうとする…
「っ痛……」
舌先に痛み。ちょっと鉄臭い塩味。
ふふ。噛みつかれたか。元気だこと。
「ち…畜生…変態……?!」
罵りの最後の方は驚きに染まっていた。
つっとむず痒いものが顎に伝うのを感じる。手の甲で拭った。
おやおや。結構切れてるじゃない。
いつ見ても、誰の物でも、血の色は鮮やかで良いわ。
それにこれは良い口実だ。こんな「粗相」を許すわけには行かないもの。
「ふふふ。イケナイ娘ねぇ…」
私の中でずっとくすぶっていた暗い焔が勢いを増す。
この娘の気性から、いたずらに強硬になる事を避けていたのに、格好の理由を
くれたわ。
「ちゃんとおとなしくしていたら、横になれる位は考えてあげたのに」
「そ、そんなん……言うても……」
「美希。ベッドを用意しておやり。一番イイ奴よ」
「はいはぁ〜い。良く眠れるわよぅ」
半分は本気でそう言っている口調に、流石の私も軽い眩暈を覚える。それはお
前だけよ、と言おうとしたがそれは飲みこむ事にした。


「跪きなさい」
直径3pほどの金属のパイプをくみ合わせた物を前に置いて命じた。
暴れ出すかと思っていたが、まるで固まってしまった。
「…ひっ……」
本来血色の良いあずさだが今の顔色は蒼白だ。
直方体になるように組まれたそれの高さは、あずさの肩の高さより少し低いく
らい。奥行きと幅は肩幅を少し広くしたくらいだ。いや、奥行きより幅の方が
大きいか。
檻としては格子が少ない。よほどの大物を無理矢理押しこめるのなら話は別だ
が、人間程度のサイズなら楽に這い出てしまうだろう。横向きの格子は半分く
らいの高さにぐるりと設けられているだけだ。
「跪きなさいと言ったのよ」
ほんの少し苛立ちをのせてやる。
縦にあるべき格子も正面側が観音開きになっている関係で、そこにだけ2本が
並んで通る形になるが、後ろ側と側面にはない。
それでも、多分ロクでもない物だという事は感じたらしい。絡まるように取り
つけられた、数多くの革ベルトとバックルの類を見れば当然かもしれないが。
目が大きく見開かれ、唇がひくひくと震えている。
逃げようと体が動いたが、もちろん鎖に阻まれて転びそうになる。
「…あっ?!…ぁ…ぁ……ぁぁ……」
転びそうになって着こうとした手も、鎖に引き絞られ滑稽な格好で引っかかっ
た。後ろに引き戻されぺたりと座りこむ。
「無駄よ。さぁ」
反抗しようとしたのではない。本能的な恐怖で体が勝手に動いただけだろう。
その事は特に咎めもせず、後ろから彼女の「ベッド」を引いて近づいていって
やる。
脚の鎖は一杯に伸びきり、もはや一センチすらも前進を許すまい。
「ぁ…あぁ……堪忍や……そんなん…堪忍してぇ…な……」
首を一杯にねじり後ろから覆い被さる檻を恐怖の目で見つめている。
フフフ。この娘はこんな最後のあがきまでオイシイ。
後ろから両手に繋がった鎖をまとめて手繰り寄せ、その先端のDリング同士を
南京錠で繋ぐ。
「…あっ!?」
すかさず美希が脇の下にベルトをくぐらせ、肩の上であずさのスーツに設けら
れたベルトループに通す。両肩をあっという間だ。さすが美希。
更にそのベルト同士をあずさのバストの上下と背中にはわせたベルトで繋ぐ。
「くぅぅっ…ん!?」
引き絞る。
革ベルトが食い込み、元々絞り出されていた胸をさらに際立たせる。
そうして構成した即席のブレストハーネスをフレームにぶら下がったベルトに
四方八方から繋いでやると、あずさの上半身はその「ベッド」の中に完全に固
定された。
不安と苦しさにショック症状を呈したのか、身体は震え唇は紫色だ。
視野狭窄も起こしているかもしれない。
ウエストもベルトで固定し締め上げる。勿論がっちりとフレームに固定する。
足先に繋いだ鎖を外し、代わりに革ベルトを繋いで後方に引き上げる。
あずさの身体はついに宙に浮いた。
そうなってはじめて気が付いたようだ。
「いっ…嫌や…嫌や…解いてぇな……グスッ……解けぇ………」
内容とは裏腹にその響きが拒絶から哀願に変わって行くのを愉しみながら、太
股と脛を一まとめにして吊り上げる。
ぎしぎしともがくが、宙に吊られた芋虫と大差ないこの状態では、僅かに「ベ
ッド」を揺らすだけだ。
もしくは黒い蜘蛛の糸にがんじ搦めにされたつばさのある生き物。
黒い蜘蛛の巣に囚われ、身体を溶かされ、今まさに吸い尽くされようとする姿。
もしくは時を歪められて蛹の中に融かし戻される蝶。
思わず、唇を湿らせた。
…全て、もらうわ…
激しい、今にも弾けそうな暗い律動が私の奥で暴れている。
手はず通り美希があずさの前にしゃがみこみ、無防備に開かされている股間に
手をやる。
「厭やぁ……そんなとこ…触らんでなぁ……ッ…っふ……んんっ?!…」
ダブルファスナーになっている股間を開く。
「厭っ…嫌っ!…厭やっ…!止め…っ?!……ああああああーーーーーーーっ」
前にローターを押し込んだ。まだスイッチは入れていない。
そして私は、一本のベルトを手に取る。
そのベルトには、あずさの中心に打ち込むべき「毒針」がそそり立っていた。

後ろから近寄りいきなり…
「あっ!?…あっぐううううううううぅぅぅぅ!…うぅーーーーーーーっ!!」
あずさの後ろに指をつきたてた。
きゅっと窄まり、指を締めつけてくる。
「クククッ…」
カギ状に指を曲げ、こじる。
「あがぁ………ぁっ…………っは…………っ……」
ぱくぱくと口だけが開く。
別の指で愛液をすくって来ては濡らす。
腸液を引き出しては濡らす。
あずさは抗議すら出来ないのか、いやいやと首を振り、唇をわななかせている。
伏せられた瞼がぴくぴくと痙攣し、まつげを震わせる。青ざめた顔色が紅潮す
る。
頃合を見計らって、指の数を増やす。
きちんとほぐしたにしても今夜の所はこの辺が一杯だろう。
手荒な扱いから、穏やかなストロークに切り替えつつ、もう片方の手で「毒針」
付きのベルトを、半開きになったあずさの唇にねじ込んだ。
「っグぅ!?…ムゥゥーーーーーーーーーーーッ!!」
メチャメチャに首を振ってる。もちろん逃がしはしない。
三本目の指をアナルに突き立てた。
「…ゥァ……ヴ……っ…ウウウウウ……ぁ……」
広げる方向に力を込める。
完全にあずさの動きが止まる。
「ふふ。イイ子ね。ほらちゃんと舐めなさい」
指を2本に減らし、ゆっくりと浅い所を弄ってやる。
随分長い事そうしていたが、ようやくその舌が動き出そうとする。
それに合わせて、指を止める。
「…っふ……むぅううん…?」
むずがるような、甘えた声。
…そうよ…
自分自身の声にびっくりしたように真っ赤になって口をつぐんだ。
「イイのよ。ほら、舐めなさい」
軽く指を動かして促す。
舌が動く。
それに合わせて、指を動かしてやる。
「ンンンンッ?!」
舌の動きが乱雑なら、乱暴に、
「くうぅぅぅん……んっ…」
丁寧ならば、もっとも感じるように。
それがたっぷりと唾液をまとい、あずさのアナルが充分にほぐれたところで、
それを口から解放してやった。
「っはぁっ……はぁはぁ…はぁ…」
振り向くと言う唯一の自由を使って、私を不安そうに見上げてくる。
「フフ。イイ貌になってきたわよ」
「そ、そんなん………知る…か……」
多分もう想像はついているだろう。
その「毒針」を充分に開いたあずさのアナルの入り口にあてがう。
「力を抜きなさい」
「……ぁ……あああぁぁぅっぐぅぅぅ…………ぅあぁぁぁ?!…」
もはや、抵抗する力も残っていないあずさの中に、その「毒針」はずるりと入
り込んでいった。
後ろを横切る格子にその一端を固定すると
「それじゃぁ、閉めますよぉ」
観音開きになっていた前の扉(と言うか枠だけだが)を、美希が閉めた。
「あ……ぁぁ……」
絶望に満ちたうめきがあずさの喉から漏れる。
弾けそうになっていた、暗い欲望がついに高みに達した。
「…!」
熱い物が溢れ出すのが判る。
ねっとりとした物が、私の太股を伝っている。
その感触を愉しみながら、あずさの股間を割って前に伸びたベルトを、扉の側
の格子に固定し、更に高く吊り上げる。
「ぅぁ…ああぁぁ……っ!?」
…ふふふ。最高よあずさ…
美希は既に革の装具を準備している。
内側にバルーンのついた全頭マスクだ。

「さあ、最後の支度よ」
美希の持っているものが何かは恐らく判らないだろうが、自分に何かこれ以上
の事をされると言うことは判ったらしい。
「ふぐぅっ!?」
鼻をつまんでやった。
あずさ鼻つまみ

しばらくそのままにしていると、見る見る顔が真っ赤に染まっていく。
「ムウウゥゥゥーーーーー!!」
バルーンを押しこもうと近づけたが、きつく口を結んで拒む。
普通なら、限界まで息を堪えたところで、口を大きく開けちゃうんだけど…。
「おやおや」
唇だけを緩め、歯は食い縛ったままでシュウシュウと息を始めた。
賢くって根性のある娘はこういう工夫をする。
ホント、可愛いわ。絶頂にある私の奥が更に疼く。
こういう工夫はある程度は有効だが、もちろん無駄だ。
頬の奥、耳の付け根からちょっと前寄り、指一本分ほど下に指を添えてぐっと
押してやる。「あぐっ?!」
小さな苦悶の声。
…あ、またイッちゃいそう…
ちょっと力を込めてやる。
辛抱強い娘って好き。
「ぅぅーーっ!」
だって、決して抗えない筈の事でも、一生懸命に抵抗しようとするもの。
あずさの顔が苦痛に歪む。ふふっ可愛い。
僅かでも食い縛った歯が緩めば後は早い。痛みがやわらぐから口を開く。もう
一度食い縛ろうとしても口腔内を食い千切る覚悟をしないと無理だ。
そうして二つの事柄を秤に掛ける。痛い思いをするのか、苦しい思いをするの
か?って。
本当に較べるべきは、誇りを捨てるか否か?なのにね。フフフ。
「あぐ…」
僅かに隙間が開く。
…まだ…
ほんの少し力をこめる。
「ああっぐ…」
…もう少し…
「っぐ……あああ…」
…今…
「むぅぅぅぅぅっ!!」
バルーンを滑りこませる。
美希が手練の早業でストラップを止めた時には、私もバルーンを半分以上膨ら
ませていた。「むぅぅぅ…ぅぅぅ…ぅっ……ぅ…………っ…………………」
適当な所で注入を終える。
わざわざ、あずさの前に全頭マスクを一度展開しゆっくりと近づけていってや
る。
「…………ぅ……ぅーっ………………」
声にならないうめき。
恐怖に見開かれた目。
「2、3日ゆっくりすると良いわ」
そう言って、ヴァギナにいれたローターと
「…ゥゥゥ!!?」
後ろにつきたてたアナルバイブのスイッチを入れた。
閉じ込められた健康な肢体が黒い皮革の戒めの下で快楽と苦痛と恐怖によじれ
てる。
涙と涎と汗と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔に唇を寄せた。
涙を啜り取ってやる。
軽く鼻を甘噛みしてやって、鼻水も舐めてやろう。
「さ、おやすみなさい」
黒い繭に覆われていく顔が、この私に助けを求める。
…ふふふ。駄ぁ目…
絶望と快楽に満たされた瞳が、黒い帳の向こうに飲みこまれていった。
ひときわ烈しい暗い焔が、私の奥底からこめかみを震わせて突き抜けていく。。
後ろでは美希がせっせと、全頭マスクを編み上げている。
しばらくその様子を眺めながら、久しぶりの感覚の余韻に浸っていた。
「葉月さまぁ。何でお薬をお使いにならないんですかぁ?」
あずさのトレードマークでもあるアップテールにまとめた髪を引き出し、手際
良く形を整えながら美希が聞いてくる。
「趣味だからよ。商売なら美希が心配しなくとももっと効率良くやるわ。ん。
良いようね」
そこには、直立する檻の中に閉じ込められた、翼を持った美しい生き物が、黒
い繭に包まれ今まさにその全てを溶かされようとしていた。
檻の中





エピローグ

「まったく…。なんて娘だろう」
あの拘束から解き、体力が回復しない内こそ、それなりに従順であったものの、
一旦解放してしまったが最後、ほとんど元に戻ってしまった。
もちろん、拘束と肛虐には実に敏感に反応するが、それはこの娘の素質だ。
しかも、気持ち良い事は良いと割りきっての事だから始末におえない。
もっとも、再び呼びつけた時にきちんと応じたのだから、一応の前進と見て良
いか。
伝法な口調を崩さず、私の調教をここまで受け流すとは、いっそ爽やかで心地
よい。

目の前で幾重にも拘束されグリセリンを満たされたまま、アナルを犯され身悶
える躰を見ながら思う。
…餌付けをし、飼いならしてしまえば、この娘は「あずさ」でなくなる、か…
この子は何度でも立ちあがる。
何処までも飛んでいってしまう。
フフフ。
面白い。
何度でも堕とせる。
何度でもその翼を引き千切る事が出来るという事。

その濡れきったラビアを足先で弄りながら、ゆっくりと紫煙を燻らせた。


了


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