深雪が口枷を持って近づいてくる。 「待って。」 と私が言った。 深雪が驚いて動きを止める。 「深雪。 悪いんだけど、髪の毛三つ編みにしてくれる?」 「…」 それを椅子で聞いていた葉月お姉さまが、 一瞬怪訝な顔をしたかと思うと、 「アッハッハ! いいわよそれ! 深雪、やってあげなさい。」 爆笑した。 怒られるかなと思ったら、思いきりウケてしまった。 私は激しく赤面した。 深雪も、一瞬吹き出しそうな顔をして、ニコニコ笑いながら、 「はい。」 と言って、私の座っている椅子の後ろにまわる。 「まあ、お互い髪長いから良くわかるわよ。 じゃあ、私が用意したシャワーキャップは無駄か。」 シャワーキャップを手に持って、ひらひら振って見せる。 「あっ。 申し訳ありません、お姉さま。」 お姉さまも準備してたんだ。 「いいわよ。 これは今回の調教にとって重要じゃないから。」 確かにシャワーキャップでも、髪がバラけないだけで、内側に溜まってぐちゅぐちゅしそう。 深雪が慣れた手つきで手際良く私の髪を編んでゆく。 最後に自分のリボンと、髪止めの輪ゴムを外して、私の髪に着けた。 「深雪、悪いわね。 借りておくわ。 汚すかもしれないけど。」 「気にしないでくださいお姉さま。 リボンだけでもお役に立てれば嬉しいです。」 髪がまとまったところで、 「深雪。 ん。」 と言って口をぱかっと開けた。 深雪が、再び口枷を手に持ち、筒を私の口の方に持ってくる。 何これ? U字形の金属の金具が筒の上下に付いている。 歯医者で歯形を採る時のU字形のトレーに似ている。 口を大きく開いて、むりやり口に含む。 深雪は、私の後ろにまわって革のベルトを締め、顎のベルトと、頭頂部のベルトも締めた。 こうゆう時、深雪は手加減なくベルトを絞るので、かえって嬉しい。 ユルユルの拘束具ほど、装着者をばかにしたものはないからだ。 奴隷がご主人様に拘束具を掛けるのは、深雪にしても相当抵抗あると思うが、 それをも排して、押さえるべきポイントを押さえているのは本当に賢いと思う。 くぅー。それにしても、傍で見ていたよりすごい拘束感があるわね。 歯すら微動だにできないなんて… 「フフフ。 どお? その口枷は。 普通の口枷だと筒の部分に前歯しか当たらないから、1日とかならいいんだけど、 4日になると歯の矯正と同じ力が働いて、前歯が少しずつゆがんでくるのよね。 それは睦月の歯形に合わせて作ったものだから、そのまま1ヶ月でも嵌めていられるわよ。 それ、睦月専用だから深雪には使っちゃだめよ。」 顔面をこんな風に拘束されて一ヶ月なんて…