さて、キャンプの夜の締めくくりは睡眠ということになりますが、アウトドアでは、睡眠も一つの技術であると言ったら不思議に思われるでしょうか? 翌日の活動のために十分に体力を貯えるのが睡眠ですから、その意味では食事と同じように重要です。
良い睡眠をとるために、必要なのは快適な寝床です。
テントの設営とも関係するわけですが、まずは寝床となる地面に傾斜がなく、細かい凹凸もないこと。そして、地面からの冷気を遮断すること。それが、最低条件です。
そして、より快適に眠るためにはもう一つ重要なことがあります。それは、暖かくすること。簡単に言えば、シュラフに潜り込むときに、「少し暑いかな?」と感じるくらい着こむのがポイントです(もちろん、夏のキャンプは別ですよ)。眠っているときには、暑ければ無意識に衣類を脱いで調整できますが、寒いとなると、整理してある衣類を探して着込まねばならず、無意識のうちにとはいかなくなります。夜中に寒くて目が醒め、暗いテント内をひっかきまわして衣類を探しているうちに目が冴えて眠れなくなってしまう。そんな経験が、けっこうあります。冷えきった体をガタガタ震わせながら朝を迎えては、体力を養うどころか、夜の間によけいに体力を消耗することになってしまいます。
秋口から冬にかけてのキャンプでは、ありったけの衣類を着込んでシュラフに潜り込んでも、まだ寒くて眠れないということがあります。そんなときは、あらゆる装備を動員して対処します。
まずもっともポピュラーな方法は、ザックにシュラフカバーがわりにして足元を温めること。やり方は単純、ザックを空にして、その中にシュラフごと足を突っ込んでしまうだけです。これは、案外効果があって、フォレストビバーク(不時露営)の際にはスタンダードな方法とされています。
それから、足先が冷えると、安眠できなくなりますので、これに対処するため、靴下を二重に履いたり、テントブーツを履いてシュラフに潜り込みます。また、セーターの袖に足を突っ込んで履いたり、下半身から足先に巻き付けたりしてもいいでしょう。とにかく、寒さを防ぐためには、周囲にあるものはなんでも利用することです。
でも、最終的な問題は、体の中の熱源に還元されます。たとえば、冬山の遭難では、最後に生死を分けるのは食糧の有無です。どんなに寒くても、とりあえず食糧が潤沢なら体はなんとか我慢できます。ところが、食糧が底をついてしまうと、たいした寒さでなくとも、あっさり根負けしてしまうのです。夕食をたっぷり摂り、満足してシュラフに入るのが、防寒のいちばんの秘訣といえます。
●追記
このごろ、寒い季節のキャンプでは、テントブーツが必需品になっています。以前は、足が火照って眠れないたちで、冬でもはだしの足をシュラフから出して寝ていりしたのですが、歳を取ってきて体質が変わったのでしょうか? ダウンの入ったテントブーツを履いてシュラフに潜り込めば、朝まで快眠です。
キャップといっても、寝るときかぶる帽子ではありません。「寝酒」のことをちょっとシャレた言い方をしただけのこと。未成年、もしくは下戸でなければ、体の温まるバーボンやスコッチ、ラムといったスピリッツを一口か二口(それが三口四口……と勢いついてしまうのも人情ですけど)すすって眠りにつくのもお勧めです。できれば、専用のフラスコに入れていきたいところです。小さなフラスコでは足りないという向きには、容器の匂いがつかないよう、内側にエナメル加工などが施されたカンティーンに移しかえていくといいでしょう。
●追記
ぼくは左党なので、オートキャンプなら、ほかに何を忘れても、酒だけは忘れずにたっぷり持っていきます。また、山登りでは、ステンレス製のフラスコを愛用しています。こちらに入れるのは、もっぱらスコッチ。それも最近はボウモア一辺倒です。かなり強いピート臭が、アウトドア気分にとてもよくマッチするのですよ。ちなみにオートキャンプでは、よりどりみどりのちゃんぽん大会です。