ここまで説明してきたことは、ほとんどそのままオートキャンプにも当てはまります。ただし、オートキャンプの場合は、持てる荷物の制約がほとんどありませんから、フリーズドライ食品やレトルト食品にさほどこだわらず、生鮮食品もクーラーボックスなどに収納して気軽に運べます。
オートキャンプの場合は、キャンプサイトに停滞して過ごす時間が長くなり、食事もそれだけ手間をかけることができます。テーブルやストーブなど装備も家庭で使うものにより近いので、調理作業もしやすいはずです。そういったメリットを生かして、ベーシックキャンプよりは少し手のこんだメニューを作ってみたい。キャンプサイトへ向かう途中で、より新鮮な素材を仕入れて、それに合わせてメニューを考えるなんて、フレキシブルなやり方もオートキャンプなら気軽にできるはずです。
オートキャンプでよく使われているのが、ガソリンのツーバーナーストーブです。このストーブの使用法でも、「しつこいほどポンピングする」というコンパクトストーブのコツがそのままいえますが、注意したいのは、一つのジェネレーターが二つのバーナーに燃料を供給する構造になっていることです。メインバーナーだけを使うときは、サブバーナーのバルブを閉じているので、燃料は100%メインバーナーに供給され、満足のいく火力が得られますが、両方のバーナーを使うと、燃料が二つのバーナーでシェアされるため、火力は低下してしまいます。炒めもののように大火力が必要なときは、メインバーナーだけで調理したほうが効率的です。
ちなみに、レギュラーガソリンでの使用も可能とされるデュアルフュエルタイプでなくとも、レギュラーガソリン(無鉛)を使用して支障はありません。その点でも、オートキャンプにガソリンストーブという組み合わせは合理的です。
登山や探検の世界では「デポ」という言葉がよく使われます。これは英語のデポジットを略した言い方です。「置く」とか「預ける」の意味で、すべての食糧や燃料をパッキングするのが物理的に不可能の場合に、事前に途中のある地点に必要な装備を「置いて」おいたり、あるいは、動物などから食糧を守るために、手の届かない場所に「置く」場合に使われる言葉です。
ふつうのキャンプレベルでは、途中補給のためのデポはありえませんから、デポが必要なのは、もっぱら動物避けということになります。とくに、クマの出没するキャンプサイトでは、食糧や残飯をクマの手の届かないところにデポする必要があります。スタッフバックなどに食糧をまとめ、匂いが漏れないように、その口をロープでしっかり縛ります。それを高い木の枝にロープを引っかけて吊るせばOK。
クマは食糧の匂いをかぎつけて来ますから、出没地でキャンプする場合は、残飯を不用意にテントの外に放置しておいたりするのは禁物です。残飯が出たら、かならずまとめて、テントから離れた場所に穴を掘るなどして処理するようにしましょう。