「ガソリンストーブは極めて引火性の高い燃料を使う上、プレヒートなどの手順が複雑で、初心者には取り扱いが難しい」と紹介されている入門書が多々ありますが、そう決めつけてしまうのはナンセンスです。今のガソリンストーブは、プレヒートを必要としないものがほとんどだし、取り扱いもさほど難しくありません。
ガソリンストーブの構造はいたって簡単です。ガソリンを入れるタンク、それにタンクの内圧を高めてジェネレーターにガソリンを送り出すための加圧ポンプが付き、それがジェネレーターで気化されバーナーに達する。火がついてから後は、ジェネレーターが温められて負圧を生み、ガソリンがバーナーに供給され続けるという仕組みです。ジェネレーター基部にはカットオフバルブが付き、これが火力調節バルブを兼ねているものと、火力調節バルブは別にあってカットオフバルブは点火と消化専用のタイプがありますが、いずれも、使用法には大差ありません。
「ガソリンストーブは使いにくい」という話は、ほとんどがポンピング不足で火力が安定しないことに由来します。とにかく、これでもかというぐらい(回数にすれば50回以上)ポンピングしてやれば、火力はすぐに安定します。ポンピングノブはふつうネジこみ式のロックがかかっていますから、これを時計回りと反対に回して解除し、引くときにはエア吸入口(ノブの中心の小さい穴)を押さえず、押すときにはこの穴を塞いでノブを押し込むようにします。十分にポンピングができたら、時計回しでノブをロック。バルブを開放して、バーナーに火をつければOK。はじめはくすぶったりしますが、次第に火力は安定してくるはずです。もしいつまでも火がくすぶっているようなら、ストーブをしっかり押さえて、そのままポンピングしてやれば安定するはずです。
ガソリンストーブはほとんどノーメンテナンスで使えます。バーナー部にスープなどをこぼして目詰まりしてしまったら、ゴトクを外し、バーナー部をばらして掃除してやればOK。構造がシンプルなので、クリーニングも容易なわけです。製品によっては、カットオフバルブを開放方向に回すとバーナーの内部に仕込まれた針が上がってバーナーをセルフクリーニングする機構がついたものもあります。このタイプなら、それでときどきクリーニングしてやれば、常に安定した炎で調理することができます。
●追記
ぼくは、長い間、コールマンのスポーツスターというガソリンストーブを愛用してきましたが、こいつは、最近、現役を引退させて、代わりに燃料タンクとバーナーが別体になったコールマンのPeak1APEXというモデルを使いはじめました。スポーツスターは20年あまり使って、トラブルは一度もありませんでしたが、APEXに比べるとかなり重さがあります。APEXのほうは軽量コンパクトな上、火力もスポーツスターを上回っています。現役引退といっても、それは、ザックに入れて持ち歩くというシチュエーションに限ってのことで、オートキャンプなどではまだまだ元気に働いてくれています。
●さらに追記
ちょっと裏技になりますが、寒冷地や高所で初期ポンピングの効果が出にくい場合などは、火をつける前に、バルブを開け、ストーブを傾けてわざとバーナー部の受け皿にガソリンを漏れさせ、それに火をつけてプレヒートするという方法がよくとられます。『Complete Walker』の中で、コリン・フレッチャーは、「火つきが悪いときは、ストーブにガソリンをまぶして、離れたところからマッチに火をつけて投げ入れろ」なんて、ワイルドなプレヒートの方法を紹介しています。これは、さすがに、あまり真似しないほうがいいと思いますけど……。