[食糧計画]

 登山では、食糧計画というと、行程分の細かいメニューに予備食糧まできっちりと決めて無駄のないように用意するのがあたりまえですが、この項は、もう少しソフトな志向のアウトドアを対象にしているので、それほど厳密に食料計画を練る必要はないでしょう。もちろん、あれもこれもと欲張って詰め込みすぎると、ザックに収まりきらなくなったり、キャンプを撤収して帰るときに大量の余りものを持ち帰るはめになることもあるので、そのあたりはある程度見切りをつけなければならないわけですが……。
 食料計画は、何を目的として、どのようにアウトドアで過ごすかということとリンクしています。
 ずっとキャンプに停滞して豪勢な食事を楽しもうというのなら、朝から豪華メニューで酔いつぶれていてもいっこうにかまわないでしょう。また、朝は早起きして、ちょっと遠くまでトレッキングして、夕方キャンプに戻ってディナーといったオーソドックスなキャンプの一日を想定すると、3度の食事全てに手間のかかる料理を作るというのは合理的ではありません。
 アウトドアでは立派なキッチンがあるわけではありませんから、自宅で調理するよりもかなり手間がかかることを、まず念頭に置いてください。行きあたりばったりで考えるよりは、ある程度の計画をたてておいたほうが、時間を節約して、他の楽しみにさける時間も増やせるというものです。
 朝食はなるべく消化が良くて、調理も簡単なものというのがセオリー。スープにパン、コーヒーといったところでしょうか。トレッキング中にお腹が空いたら、温かい紅茶に、チョコレートやビスケットなどの行動食でティーブレイク。昼食はトレッキング先で簡単に作りたいので、フリーズドライのピラフや雑炊。
 そして、夜はレトルトのゴハンを温め、それにレトルトのカレーやシチュー、さらに味噌づけの肉の照り焼きなどを添えてちょっと豪華に。といったところが、ぼくのキャンプ生活の代表的なメニューです。
 毎度毎度同じメニューでは飽きてしまうので、朝のスープにハーブを散らしたり、昼食に途中で採った木苺のデザートを添えたり、夜は現場で仕入れた海の幸や山の幸を加えて、といった具合に、その時々で、思いつきの工夫を凝らしています。
「自然の中では何を食べても美味しい」なんてよく言われますが、なんの工夫もない冷めたバーベキューでそんな風に言ってのけられるのは、よほど寛大なできた人間なのでしょう。自然の中でもどこでも、不味いものは不味いと思いますよ、ぼくは。グルメ張りに凝らなくても、少しは味にもこだわりたいものです。とくに、秋口から冬にかけての夕食は、外気も下がって冷めやすいので、できたての温かいうちに食べられるメニューがいいでしょう。キャンプサイトのレイアウトの項で、アウトドアダイニングは、なるべくテントを風避けにしたほうがいいと紹介しましたが、食事が冷めないようにといった意味もあります。
 また、夏場の調理でとくに注意をしたほうがいいのは、ランタン等の光源を調理中の鍋に近づけすぎないことです。蛾や羽虫のダシを効かせた料理が特別お好みというのなら、話は別ですが……。それから、夜に調理する場合は、両手が自由になるヘッドランプがとても便利です。
●追記
 忙しい日常生活の中では、朝食はできるだけ簡単に済ませるか、あるいは朝食抜きという人が多いと思います。
 食事は、いわば肉体という機械を動かすための燃料です。日中のアウトドア活動を控えて、朝食が摂り足りないと、たちまち燃料切れを起こすことになります。登山の世界で『シャリバテ』といわれる状態ですね。どうしても、朝は食事の仕度がおっくうになため、つい簡単に済ませて、途中でシャリバテといったケースになりやすいものです。ぼくの場合は、朝食は胃にやさしいスープや味噌汁を主体にして軽く取り、動き出してから、小休止のときなどに、カロリーメイトなどの行動食を随時とる形にしています。トレッキング途中での昼食では、疲労回復のために、砂糖をたっぷり入れた紅茶を飲みます。そして、夜のカロリー補給は、もっぱらアルコールで……。

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