[レイヤード]

 この章の冒頭でも紹介したように、現在のアウトドアウェアは、実践的な装備としてレイヤードシステムがしっかり確立されています。これまでは、3レイヤーのそれぞれの機能を中心として紹介してきましたが、最期に、どのようなレイヤードが実際に行われるかを例示してみよう。
 まず初春のアウトドアでは、朝晩の冷え込みが厳しいことが考えられるので、冬のレイヤードを基本とします。アンダーウェアにポリプロピレンやジオラインの上下、ウールのカッターシャツにフリースのプルオーバー、シンサレートをインシュレートしたマウンテンパーカ。下はウールの厚手のトラウザーに、どうしても寒さが耐えられなければ、ゴアテックスの雨具の下を着込みます。これをベースにして、昼間はマウンテンパーカを脱いだり、フリースを脱いでカッターシャツに直接マウンテンパーカを羽織ったりと、レイヤードをその都度変化させて、快適に保つのです。
 夏は汗を逃がしやすいクールマックスやウィックロンのTシャツに薄手のウールもしくはオーロンのカッターシャツ、山でのふいの寒さに備えて綿やナイロンのウインドブレーカーを用意します。下は薄手のウールのストレッチパンツあるいは、軽く動きやすいチノクロスのトラウザーといったところが適当です。
 秋口は基本的に初春のレイヤードと共通です。
 そして冬期は、初春のレイヤードのマウンテンパーカをよりインシュレーター(中綿)の性能が高いものやダウンジャケットに変更します。積雪地へ行く場合は、雪が付着してもメンテナンスが容易なゴアテックス生地をアウターシェルに用いたものを選んでいます。下はアンダーの上に厚手のウールのトラウザー、さらにシンサレートなどのインシュレーターの入ったオーバーパンツで完全武装します。
 以上は、参考までにぼくの例を上げたまでで、これがすべての人に当てはまるとはいえません。暑さ寒さといった感覚は個人的に大きな差があるし、例えば天気が良くても風の強さによって体感温度は大きく変化します(ウインドチルチャートを参照)。要は、寒いと感じればインナーを足すかアウターを羽織り、暑いと感じたら脱いで、面倒がらずにこまめに温度調節することが大切です。
 暑さにしろ、寒さにしろ、体が不快に感じるということはそれだけストレスがかかり、体力を消耗していることを意味します。少しの我慢と思っても、これが積み重なると体は意外なほど大きなダメージを被ることになります。日射病や熱射病、それに低体温症や凍傷といった、命に関わる症状も、もとはといえば、レイヤードによる体温調節を怠ったことがその原因となっていることがほとんどなのです。

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