[テント]

 テントもザックと同じように技術革新でドラスティックな変化を遂げた装備です。グランドシートと本体が別で、設営には経験とコツがいった昔の家型テントはすでに過去の遺物。現在のテントは、グランドシートと本体が一体となりポールによって立ち上がるセルフスタンディング(自立)型となっています。
 グランドシートと本体との間に隙間がないので、家型のように、テントの周りに排水溝を掘る必要もなく、テントを立ち上げてしまっから設置場所を決定できるようになりました。
 オートキャンプの場合は別として、ベーシックなキャンプで使うテントは、軽く、かさばらず、設営も簡単なクロスフレームのドームテントがお薦めです(といっても、ほとんどのテントがこのタイプだから、そのうちのどれを選ぶかという問題になるわけですが)。
 こと、テントに関しては、安物買いの銭失いならぬ命を失うことにもなるケースがあるので要注意です。ふつう、テント本体はグランドシート部がウレタンコーティングの防水ナイロン生地で、ウォール部分は通気性のあるリップストップ(引き裂き防止)ナイロン生地で作られています。粗悪品のテントは、ウォール部の通気性が十分でなく、テント内で調理をしたときに酸欠や一酸化炭素中毒をおこしやすいのです。
 雨天などへの対処は、テント本体の上に張るフライシートが、その機能を受け持ちます。設営の仕方は別の章で詳しく説明しますが、テント本体との間に隙間を持たせてフライシートを張ることで、通気性と防水性を両立することができる仕組みになっているのです。
 最近では、ゴアテックスなどの防水透湿素材を使い、フライシートを省略したテントもあります。これは、総量で本体フライシート別体式のものより軽いというメリットはありますが、試したかぎりでは、別体式のもののほうが、本体とフライシートとの間のエア層ができることで温かく感じられ、また、フライシートが作り出す前室や後室のスペースが有効に活用できるので、こちらのほうがお勧めです。
 形で分類すると、シンプルなドーム型の他に、そのバリエーションで防風性と居住性を高めたジオデシックドーム型、さらにシェルタータイプ、簡易テントのツェルトなどに分けられます。オートキャンプ用では、頑丈なフレームで立ち上げるオーナーロッジタイプがずっと主流でしたが、ポールに使う金属材料の発達などにより、ドームタイプでも十分な強度をもたせられるようになり、オートキャンプ用テントも設営の簡単なこちらに主流が移りつつあります。
 テントには、普通、そのテント内に何人の人が収容できるか目安が出ています。ただ、この人数は、テント内のスペースをぎりぎりまで使ったときに収容できる人数なので、実際の使い勝手を考えると、収容人数+1程度の余裕をみておいたほうがいいでしょう。とくに山岳テントの場合は、保温性を重視して普通のテントよりタイトに作ってあるので注意が必要です。
 例えば、収容人員2〜3人用という表示のテントは、そこに3人が入ると、シュラフを三つ並べただけで目一杯になってしまいます。2〜3人用とあったら『快適に使用できるのは2人まで、場合によっては3人での使用も可能』という意味です。
 居住性はとりあえず置いといて、ソロで徹底して軽量化を図りたいというむきには、シェルターやツェルトの使用がお勧めです(ただし雨で終日テント篭もりになったりすると、じつに惨めな気分になるのが欠点。閉所恐怖症の人には凶器になるかも)。
 ぼくがとくにお勧めするのは、フライシートが大きく張り出し、前室として使用できるデザインのものです。それから、各論に入ってしまいますが、テントを地面に固定するペグは余分に用意すること。また、岩場などでペグが効かない場合に備えてアンカーを固定する張り綱も必需品です。

before
next
step1