[メインザック]

 ザックといえば、かつてはキャンバス地でできた土色のキスリングザックが定番でした。これは横長な形のため、うまくパッキングしないとバランスを失ってヤジロベエ状態で歩くハメになったものです。
 ところが、いつしかザックは90度回転して、縦長型が主流に。
 縦長型ザックの登場で、キスリングザックほど重心を気にする必要がなく(もちろん、今度は上下方向の重心が問題になるわけですが=『パッキング』の項で解説します)、パッキングが非常に楽になりました。と同時にハーネスシステムが発達し、ショルダーベルトにすべての荷重がかかる従来のタイプから、ウェストベルトで荷重を受け止めるスタイルとなって、重い荷を担いだときの疲労が大幅に軽減されるようになりました。
 現在の縦長型ザックは、その構造から、ソフトパック、エクスターナルフレームパック、インターナルフレームパックの三種に大別できます。
 ソフトパックは文字どおりフレームなどを使わず、本体のパックに直接ショルダーベルトやヒップベルトなどのハーネスが取り付けられたものです。キスリングザックも構造からいえば、ソフトパックに分類されます。ソフトパックは、海外遠征のアタック用ザックなどに、よく使われます。ソフトパックは、文字どおりトートバックやズタ袋と同じようにシンプルな構造なので、パッキングの自由度が高いのが特徴です。しかし、裏を返せば、パッキングが難しいということにもなります。フィールドへ出かけるために初めて選ぶザックとしては、あまりお勧めではありません。
 エクスターナルフレームパックはバックパックと言ったほうがわかりやすいかもしれません(本来バックパックキングとはザックを背負って歩く行為全般を指し、"バックパック"は広義の"ザック"と同義なのですが、日本ではなぜかエクスターナルフレームパックの代名詞として定着しています)。
 これは背負子型の金属もしくは樹脂フレームにパックとハーネスをジョイントしたものです。昔、バックパックを背負って北海道を徒歩旅行する人たちを『カニ族』なんて呼んでいたことがありましたが、フレームむき出しのゴツいエクスターナルフレームパックを背負うと、甲殻類になったような気がしたものでした。
 エクスターナルフレームパックはザック本体が直接背中に触れないので、多少ルーズにパッキングしても背負い心地はあまり変化しないという利点はあります。しかし、フレームがむき出しで突起が多いこのスタイルでは、タイトな場所だと、木の枝や岩に引っかけやすいのが欠点です。
 ベースキャンプまで比較的開けたフィールドで、メインザックはベースキャンプまで必要な装備を運ぶコンテナと割り切れるなら、このタイプはベストでしょう。
 インターナルフレームパックは、ザック本体にフレームが内蔵され、これがザックの形を保つと同時に人間が背負いやすいように背中のカーブに合わせてフィットさせる機能を持っているものです。比較的パッキングしやすく、ウォーキングから本格的な登山までカバーしており、日本のフィールドの条件にいちばんマッチしているザックといえます。ユーザーの体型や荷物の容量に合わせてハーネスがアジャストできるので汎用性も高いのが、このタイプの特徴です。欠点をあげるとすれば、ザック本体にフレームが内蔵されているため、その分、外形のわりには容量が少なくなってしまうこと。それにザック自体の重量がソフトパックに比べて重くなることです。インターナルフレームザックは、同じ容量の他のザックに比べ、本体の外寸がやや大きくなります。
 日本のフィールドの条件を考えると、個人的には、メインザックとしてはインターナルフレームパックをお勧めします。
 どんな装備でも、実際にその品物を手に取っ手選ぶことが大切です。とくに自分の体に密着するザックは、ユーザーの疲労度を大きく左右するものですから、選ぶときは、実際にショップに足を運び、ダミーの荷物が入っているものを背負って、背中へのフィッティングやストラップ類の使い勝手を十分に吟味することが大切です。
 また、アウトドアの装備を選ぶ際には、"軽量性"がポイントだと申し上げましたが、それはザックも例外ではありません。とくにフレームパックは、ザック自体の重量がけっこうありますから、ショップで手にとるときに、重さもしっかりチェックしましょう。
 ソロでフィールドに出るよりは、グループで出かける機会が多いという場合は、テントやコッヘルといった大物装備は共同装備として分担できるので、必ずしも全員が大型のザックを使う必要はありません。例えばカップルでキャンプする機会が多いのなら、荷物をたくさん背負う男性は60g〜70g容量のインターナルフレームパック、女性は30g〜40g容量の中型インターナルフレームパック(ソフトパック)という組み合わせが合理的でしょう。

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