「飛ぶ鳥後を濁さず」とは、キャンプの現場でこそ肝に銘じておかなければいけない格言です。昨今の、キャンプ場のゴミ捨て場を覗くと、これが、仮にも自然を楽しみに来ているという人たちのしたことなのかと、暗澹とした気持ちにさせられます。ここに無造作にゴミを捨てる人たちは、「自分の目に入らない自然ならどんなに汚れていても気にならない」、「自分の家の中だけきれいなら、まわりの環境なんてどうだっていい」といった最低のメンタリティしか持ち合わせていないのではないかと思います。キャンプの絶対条件は昔も今も変わりありません。それは、"原状復帰"です。本来、キャンプは生態系を乱さないために、撤収の際にはその痕跡をまったく残さないようにすることが鉄則なのです。もちろん、ゴミ捨て場の完備したキャンプ場でも、痕跡はミニマムに押さえるのが鉄則です。
オートキャンプブーム以降、キャンプ場のゴミ捨て場や里を徘徊するタヌキやキツネなどの野生動物が多くなったといいます。山が切り開かれ、住処やエサ場を奪われたこれらの動物たちが、手近なところでかっこうのエサ場を見つけ、馴染んでしまったのです。動物写真家の宮崎学さんが著書『野生に生きる』(1992年 毎日新聞社)の中で紹介していますが、巣作りにプラスチックゴミを使う"文明化"された動物が出てきたと思ったら、今度はガンなどの"文明病"が動物界で流行り始めたとか。生態系が狂うとは、まさにそういうことなのです。
もちろんそのことが、キャンパーのみの責任であるはずはなく、人間社会全体の責任であるわけですが、残飯やゴミを無造作に捨てる、あるいはあたりかまわずRVを乗り回す心ないキャンパーがその一翼を担っていることは間違いありません。
生態系への影響をミニマムに押さえるため、それに後から来るキャンパーへのマナーとして、キャンプを撤収する際は、原状復帰を徹底しましょう。焚火をしたら、跡は均して痕跡を消します。ゴミはまとめて持ち帰る(たとえゴミ捨て場があっても、持ち帰りが鉄則)。もしRVなどで地盤を痛めたなら、それを修復するくらいの気遣いも必要です。
●追記
ぼくは、整備されたキャンプ場ではなく、オープンフィールドでキャンプすることが多いので、原状復帰にはとくに気をつかっています。
たき火をしたら、燃えあとの炭を均し、テントを張るために石などを動かしたら、元の位置に戻しておきます。
自分でも度々経験することですが、なるべく人の入っていない場所で自然と一体となったキャンプをしたいと思って、山深く分け入ると、先客が残していったゴミの山に出くわしたりすると、それだけでもう気分が台無しですからね。そういう場所では、どうも、人目につかないからゴミを放置してもいいやといった心理が働くようです。案外、深山に分け入るハンターや釣り師、登山者の中にも原状復帰ということに関して無頓着な人が多いのは考えものですね。