はじめに

 1997年9月、ぼくはWorld Wide Web上に、"Outdoor Basic Technic"というホームページを立ち上げて、公開しました。
 ぼくは、高校時代から20年以上、登山やオートバイツーリング、エンデューロレースなどを楽しんできました。そして、いつのまにかそういったアウトドア関係のことを紹介するライターという職業に就いていました。
 何冊か本を出し、たくさん記事も書きましたが、雑誌や出版社のカラーや思惑などに合わせた企画物は、いつもどこかに制約があって、食い足りなさというか書き足りなさを感じていました。そのうち、自分の思うままに書いたものを出版してみたいという欲求が募ってきました。
 WWWにホームページを立ち上げる数年前、ひょんなきっかけから、SEGAで大きなゲーム制作のプロジェクトに関わることになりました。それまでも、コンピュータ(とくにAIなどのサイエンスの側面)やインターネットには興味はあったのですが、本格的にそれに取り組むというところまでは至ってませんでした。
 SEGAで、最先端のデジタル技術と接するようになって、ぼくは、そこに途方もない可能性を感じました。今までは出版=紙というメディアで仕事をしてきたわけですが、デジタル表現の進歩のすさまじさや、デジタルコンテンツの自在な可変性やインタラクティヴ性は、今まで身を置いてきたメディアとはまったく異なるダイナミズムに溢れた世界でした。
 ゲーム開発は非常にスリリングで楽しい仕事です。ですが、そこは、企画、演出、脚本、ソフトプログラム、デザイン、サウンド、テクニカルリサーチ、デバッグ……といった多くのセクションが絡む高度に分業化された仕事です。
 ぼくは、自分なりにデジタルの世界で完結できる仕事はないかと考えました。そして、思いついたのが、かねてから20年あまりのアウトドアライフから得た経験をストレートにデジタルメディアで表現しようということでした。文章という形は旧態依然としたアナログですが、それを載せるWWW=インターネットというメディアは、生まれたばかりの純然たるデジタルメディアです。

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