「フリーウェアとシェアウェア」
(第12回:'98年3月24日掲載)




このコラムでも、白熱するブラウザー戦争の話を書いたけれど、マイクロソフト社の独占禁止法を巡る裁判や、ネットスケープ社が「ネットスケープ・ナビゲーター」の無償配布に踏み切るなど、話題はつきない。これで「インターネット・エクスプローラ」とともに世界を二分するWWWブラウザーがフリーソフトウェアとして入手できるようになった。

フリーソフトウェアというのは、誰もが自由に使っていいソフトのことで、もちろん無料だ。同じ無料でも、パソコン関連の雑誌などに付属しているCD−ROMに収録された、「製品デモ版」あるいは「お試し版」のソフトがある。こちらは製品版と違い、いくつかの使用制限が付いている。これまでも「ネットスケープ・ナビゲーター」は、90日間の使用制限がついた製品デモ版を配布していた。

これに対して、混同されがちなのが「シェアウェア」と呼ばれるソフトである。ほとんどの場合、お試し期間として製品版と同じ機能を使うことができる。しかし、そのソフトが気に入り、長期間使用する場合は、ソフトの製作者、制作会社に代金を支払うしくみになっている。市販のパッケージソフトに比べると、印刷されたマニュアルが付いていなかったり、既存の流通を通さないぶん、価格も格安になっている。

インターネットには、非常にたくさんのフリーウェア、シェアウェアが登録されていて、こうしたソフトを一堂に集めたソフトウェア・ライブラリー、ソフトウェア・アーカイブ(書庫)と呼ばれるホームページも存在する。その中でも収録数の量、アップデートなどメンテナンス面での質ともに優れているのが、インプレスの「窓の杜」とベクターデザインの「Vector Software PACK」だ。

もともとインターネットは、「知の共有」という理念が根底にある。学術論文など人類の知的財産の共有はもちろんだが、コンピューターの黎明期においては、コンピュータープログラム開発のツールなども少なかった。誰かが便利なツールを開発すると、それを公開して共有してきたからこそ、今日の発展があるといっても過言ではないだろう。むろん知的所有権や知的財産はしっかりと保護されるべきだ。しかし「財」を分け与えると減ってしまうが、「知」はいくら分け与えても、本人の「知」が減ることはないのだから。


窓の杜
http://www.forest.impress.co.jp/
Vector Software PACK
http://www.vector.co.jp/