「サクラ大戦3外伝 巴里に巣食う怪人たちの宴」
 
 
 
 
 

■ 2 ■



 ライラック伯爵夫人の舞踏パーティーに集まっていた貴族の紳士淑女たちは、未だ屋敷に禁足させられていた。
 まだシゾーが暴れているため危険だと巴里市警のエビヤン警部に言われたからだ。
 庭では警官たちが現場検証を行っていたため、貴族たちは個室や大広間で雑談していた。

「ええい、表に出られれば、このダニエル様があんなウサギさんなど一捻りなのに」
「まあ、頼もしいですわ」
「ダニエル様、すてきですぅ」
 美女に囲まれて、ダニエルがにやついていた。
「皆様、お飲み物はいかがですか?」
 メイドがいくつかの飲み物を持ってきた。
「おお、気が利くな」
「おや?どうしました?顔色が悪いようだけど?・・・」
 どこぞの貴族の夫人がメイドの様子に首をかしげた。
 メイドが蒼白な顔で震えているからだ。トレイの上のグラスが時折カチャリと鳴る。
「い、いえ、なんでもありません。ご心配いただき、ありがとうございます」
 メイドは気丈に微笑んだ。怪人に襲われた恐怖からか、と判断して、夫人はまたダニエルの話に耳を傾けた。
 個室にいた客たちも大広間に集められ、コルボーと花火を除いて全員が集められていた。
 テーブルの上に軽食が置かれ、ワインやカクテル、ミネラルウォーターやジュースのグラスもあって、メイドたちが忙しく飲み物を客に勧めていた。
 内心の怪人に対する恐怖を隠そうとするように客はワインやカクテルに手を伸ばし、どのメイドもみな蒼白な顔なのにも気付くことはなかった。

「くっ、くっ、くっ。ちょろいもんだね」
 大広間の様子を深紅のドレスに身を包んだ若い美女が見つめていた。美人だが、貴族の娘にしては気品が感じられない。手の上に深紅のサソリを乗せている。
「あ、バカだねぇ・・・そんなに何杯も飲んだら、どうなってもしらないわよ」
 その美女のそばに仕事を終えたメイドたちが集まってくる。
「あ、あの、ナーデルさま・・・言われたとおり、皆様を大広間にお呼びしてお飲み物を運びました」
「お、お願いです! こ、これを・・・」
 メイドが自分のスカートをめくると、白いパンティの中央に赤いものが張りついていた。
「このサソリを取ってください!!」
 メイドの股間に張りついているのは、ナーデルと呼ばれた美女の手の上にいるモノと同じ紅いサソリなのだ。
「ナーデル。首尾は上々のようだな」
 長身の隻眼の貴族の男がやってきた。コルボーと共に屋根の上にいたもう一人だ。
「はい、レオン様。
 人間どもは何も知らずに媚薬入りのカクテルを飲んでいますわ」
 ナーデルがメイドの訴えを無視してレオンに答える。
「このメイドたちには最後にもうひと仕事をしてもらいます。
 さあ、あんたたちもそれを飲みな!」
「そ、そんな」
 レオンが手を貸し、媚薬入りワインのビンを手に、メイドを捕まえてはそれを無理矢理飲ませる。
「ぐっ、うぐっ・・・こくん」
 ナーデルが手の甲のサソリを見せつけたままだから、メイドたちは逃げることもできない。もし逃げれば股間のサソリに刺されて死んでしまうだろう。
「ん、んぐ・・・」
 またひとりメイドの喉が鳴って媚薬を飲まされていく。全員が媚薬を飲んだところで
「ナーデル、全員飲んだぞ。やれ!」
 レオンが命じる。
「やめて!」
    ぴゅぅう~
 ナーデルが口笛を吹くと、次々にメイドたちがうめいた。サソリはメイドたちの太腿を刺すと、スカートの下から這い出てナーデルの元に集まる。
「う、ああ・・・んあ・・・んはぁあ♪」
 サソリにさされたメイドたちはみな股間を押さえて悶えている。苦しんでいるのではなく、善がっているのだ。
   (この子たちの毒は特製の媚薬さ。もちろん即死の毒サソリもいるけどね)
 ナーデルはサソリを回収すると、毒の効き具合を確かめようと、近くのメイドのスカートをめくった。
「あっ! い、いやっ!」
「おだまり!」
 ナーデルはメイドを一喝する。びくっとメイドが震えて黙りこむ。背後からレオンが腕を掴んで抑え込んだ。
「動くんじゃないよ」
 鋭い爪でパンティのサイドを切って取り去る。パンティの底にはべっとりと愛液のシミができていた。
 股間に指を入れ、綴じ合わされた肉の門を開くと、
    つ、つぅー
と蜜がこぼれて糸を曳きながら床に落ちる。
「あぁ、はぁ・・・んっ・・・くっ・・・んはぁ」
 真っ赤になって恥辱に耐えるメイドの瞳は濡れて、赤い唇が熱いため息を吐いている。他のメイドたちも立っていられずに床にくず折れ、自分の乳房や股間を愛撫しているものさえいる。
    スパッ!
 メイド服を切り裂いて胸をあらわにする。
 荒い息に上下に揺れている乳房の頂点はぷっくりと乳首を腫らし、乳房自体も張り詰めてきた。
「さあて・・・」
 ナーデルが乳房を鷲掴みにすると、乳首から白い液体が染み出してきて、メイドを驚かせた。
「んあぁっ はぁ・・・あっ!お、お乳が!!」
 ナーデルがそれを指にすくってメイドの口に押し込み、舌になすりつける。
「ふふふ、これがアタシの特製媚薬の効果なんだよ。そしてこのミルクもまた媚薬でね。一口舐めれば女を犯したくなり、精液を膣奥に欲しくてたまらなくなるのさ」
「え!? そ、そんな・・・ああ・・・いやっ・・・はぁ・・・んはぁああ・・・ああ!欲しい! ふわぁ!」
 嗚咽を漏らすメイド。だが身体は火照り続け、さらに乳首からミルクが染み出して床にシミを作り、脚を擦り合わせながら愛液をほとばしっている。
「ぐはは、そら、脱げ!」
 レオンはその場にいたメイドたちに襲いかかり、次々にメイド服を破り捨ては無理矢理ミルクを舐めさせる。
「お、お許しを・・・ん、ぐ・・・あ・・・ぁはああ・・・熱い・・・はぁはぁ・・・ん、ん!」
 次々に自らの媚薬ミルクで身体が熱く燃えて善がるメイドたち。
 全員を剥いてしまうと、大広間のドアを開いて半裸になったメイドたちを投げ込んだ。
「きゃっ!」
「な、なんだ!?」
「ま、まあ! なんなのでしょう!?」
 大広間では突然半裸の娘が入ってきて、騒然となった。娘たちは胸を掻き抱き、あるいは股間を押さえ、高まりつつある性感に耐えていた。
 しかし、耐えることに慣れていない貴族の男たちの目は血走り、股間を大きく脹らませている。彼らも媚薬入りの飲み物を飲まされ、熱くなった身体を持て余していたのだ。
「なんですかな!? この娘たちは。ごくり。は、はしたないではないか!」
 ダニエルがふらふらとメイドたちに近づいていく。興奮して鼻息も荒く、それと分るほど股間が膨らんでいる。
 手近のメイドの腕を掴んで立たせる。
「お、お許しを!」
「何を許せというのでしょうね、このメイドは。躾がなってませんねぇ」
 じろじろとミルクを滴らせる乳房や愛液で濡れるパンティを眺める。
 他の男たちもだんだん半裸のメイドたちのそばに近づいていき・・・
「ふ、人間とはかくも浅ましい愚かな生き物なのだ。あれで『貴族』を名乗るとは、僭称も甚だしいわ!」
 鼻息も荒く、レオンが吠えた。
「ふー、さて、この部屋は封印して、やつらには死ぬまで盛っていてもらおう」
 レオンの身体から妖力が噴き出し、それを拳に集めて大広間のドアを封印してしまう。
「これで中から開けることはできなくなった」
『いやぁあ!』
『おお!このミルクがまた』
『ああ、なんだか私も身体が熱くて・・・』
『実は以前から貴女のことが・・・』
『んはぁ・・・皆さん、わたくしを見てぇ!!』
 大広間では早くも媚薬に冒された男女の狂宴が繰り広げられていた。

「ところで、ここの女主人はどう処理致しましょうか?そばにいたメイド2人とともに眠らせて厨房に閉じ込めてありますが」
「伯爵夫人か・・・そいつらも大広間に放りこめ!主人がいなくては宴も盛りあがるまいて」
「承知しました。レオン様」
「ナーデル、貴公はここで見張っていろ。誰も入れるな。だが、貴族ならば大広間に誘いこめ。宴に参加してもらうからな」
「仰せのままに」
 ナーデルがかしづいた。
 

    ・・・
 

    ガチャガチャ ダン!ダン!!
 貴族の少女が逃げ出そうとしたがドアが開かない。その背後に男が迫る。
「あ、開かない。い、いや、来ないで!」
「へっへっへっ、お嬢さん。どこに行くの?」
 少女をドアに押しつけて、男が少女のつつましやかな胸に手を這わせる。
「いや! あっ触らないで! あん・・・いや、はぁん! あぁ・・・」
 媚薬に冒されている少女は男が触れたところが熱を帯び、乳房を揉まれるだけで腰がくだけそうになる。
 男を知らぬ身体が、男の愛撫に未知の感覚を少女にもたらす。
「んはぁ・・・気持ちイイ・・・ああん・・・」
 すぐに愛撫の虜になって、貴族の少女は男の首に手を回して求めるのだった。
「ん、はっ!・・・あ!い、痛い!ああ!んあ! 痛いけど気持ちいいの!!」
「おおう! おお! キツイ! おおお!!」
 狭い処女地に男のペニスが突き立てられた。胎内を掻き回される痛みまでが心地よく感じ、少女が悦楽にのけぞる。
    どっくぅ! びゅくっ びゅくっ
 膣奥を精液で汚されて、床に投げ出された少女の股間から血と精液が流れ出した。
「んあぁ・・・もっとちょうだぁい・・・」
 処女を失ったばかりの少女がなおも男を求める。
「ごくり」
「お、おお!」
 果てた男を突き飛ばして男たちが少女に群がっていった。

 そこかしこで男女が抱き合い、男二人に挟まれて愛撫を受ける女性までいる。
 ズボンを脱いで自慢のモノを見せつければ、女がそれに吸いついてくる。

 大広間では乱交パーティが始まっていた。
 

    ・・・
 

 怪人シゾーを倒した巴里華撃団の面々は、また日常に戻っていった。
 エリカは大慌てで教会へと走っていき、グリシーヌはグラン・マに報告するため屋敷に向った。

「おお、グリシーヌさん・・・グラン・マはご一緒ではないですかな」
 エビヤン警部がライラック邸に戻ったグリシーヌを呼んだ。
「怪人も巴里華撃団とやらに倒され、先ほど現場検証も終わりました。本官たちはこれにて署に戻ります」
「ああ、分った。伝えておこう。エビヤン警部もご苦労だったな」
「いえ、これが任務ですからな。
 ・・・それにしても巴里華撃団とは、何者なんでしょうかな?
 上司には、『彼らに協力しろ。だが詮索するな』と言われているのですよ」
「さて・・・きっと彼らも、この巴里の街を愛する人間なのだろう」
「そうですな・・・きっとそうなんでしょうな・・・
 では、本官はこれで失礼します!」
 ぴっっと敬礼してエビヤンと警官隊が引き上げていった。

 エビヤンを見送ったグリシーヌは屋敷へと入った。
「ぬ!?・・・なんだ? この妖気は・・・
 グラン・マ! 花火!」
 屋敷に足を踏み入れると、あたりにただならぬ妖気が漂っていた。
「これは何事か!? くっ 大広間か?」
 グリシーヌは大広間のドアを開いた。もあっとした淫臭が押し寄せる。
「うわっ く、くさい!? む! な、なんだ、これは!?」
 大広間の中では信じられない光景が広がっていた。
 客の貴族たちが乱交しているのだ。
「・・・なぜ、こんな・・・うわっ!」
 呆然とするグリシーヌは背後から突き飛ばされて大広間に入ってしまった。
 振りかえると、下品な赤いドレスの女がドアの傍で手を振っている。
「あはは! 油断大敵だよ、お嬢さん♪」
 女はそう言ってドアを閉じた。
「きさま!」
 グリシーヌがドアのノブを回しても、押しても引いてもドアは開かない。カギではない。妖力で封印されているのだ。
「閉じ込められたか・・・だが!」
 グリシーヌも己の霊力を集中し、ドアにぶつける。
    ドガッ ピキッ
 ドアに亀裂が入った。これなら数回で封印を破れそうだ。そのとき、背後で声がした。
「ほお、その霊力・・・グリシーヌ=ブルーメール、きさまが巴里華撃団とやらだったか」
「む!?」
 振り向いたグリシーヌの視線の先に隻眼の貴族の男が立っていた。
「貴公は・・・リッシュ伯爵?」
「ふははは・・・その名は仮の物。我が名は『レオン伯爵』」
「レオン?」
「そうだ。見よ!」
 レオンの姿は、巨漢の怪人ライオンへと変化した。
「き、貴様も怪人だったのか!?」
「そのとおり! そして今、貴族を僭称する愚か者どもに罰を与えておったのだ。
 次はグリシーヌ、お前の番だ!」
 レオンは近くにいたメイドを掴みあげると、グリシーヌに向けて放り投げた。
「きゃぁああ!!」
「危ない!!」
 メイドを抱きとめたはいいが、勢いを殺せず、いっしょに床を転がるグリシーヌ。
「あ、これはメル!(メルがここに?グラン・マは?花火もここにいるのか!?)」
「どうした? シゾーとの戦いの勢いは?」
 起き上がったグリシーヌの目の前にレオンがいた。鋭いダッシュで一気に間を詰めたのだ。スピードの乗ったケリがグリシーヌのみぞおちをえぐった。
「ぐはっ うぐぅ・・・」
「がははは! 苦しめ! 巴里華撃団!!」
 悶絶して床に転がるグリシーヌの頭を床に踏みつける。
「おおっと、そこまでに願います、レオン様」
 空中に黒尽くめの男が出現した。黒い尖ったマスクで顔を覆われた様はまるでカラスだ。
「その娘を我が君がお待ちかねゆえに。是非この後の舞台は我にお任せを」
 ひらりと着地したその男は黒いドレスの少女を抱いていた。
「は、花火!!  大丈夫か!? 花火!!
 倒れて腹を押さえながらグリシーヌが叫ぶ。が、花火は何も聞こえぬように、空ろな瞳を空中にさ迷わせていた。
「きさま!花火に何をした!!」
「我が君は今、夢を見ているのです。恋人との甘美な夢を」
「他人の心配をしている場合ではなかろう?」
「ぐはっ!」
 レオンに蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられる。全身を襲う強い衝撃にグリシーヌの意識が飛んだ。
「・・・私は負けたのか・・・」

 グリシーヌの世界が闇に覆われていった・・・
 
 

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-ルドモ-