「ZOIDS:海底の悪魔」
 
 
 
−海底遺跡−
 

 2つの月が天頂に昇り300年に1度の『月合』が始まった。
 ぴたりと寄り添った月が徐々に重なる度合いを深めていく。

 バンは海底遺跡を見下ろせる丘の上にブレードライガーを配置し、コクピットから暗視双眼鏡で周囲を警戒している。昨夕、フィーネがリーゼに襲われたからだ。しかし大事には至らず、回復したフィーネは後ろの席で重力波や電磁波を記録している。
「どうだ?フィーネ。何か変化は?」
「まだなにもなし。あ、でも月が重なったので、月の引力は強まっているわ」
「それで?」
「完全に重なった時がMAXになるけど……Dr.ディの話ではそのとき潮流が変り、潮が干ききって海底が陸になるそうよ」
 月は徐々に重なっていき、まもなく完全に重なる。バンはごくりとつばを呑み、計器と周囲に目を配らせる。
    ぎゃぁ ぎゃぁ ぎゃぁ
 突然森の鳥たちが飛び立った。鳥たちは警戒の鳴声を発しながら群れを整えると背後の海上へと飛んでいった。
「どわぁ!な、なんだ !?」
「バン!海底に異常な電磁波が!」
    どどどどど……
    ざざざざざ……

 地響きとともに正面の海が突然渦巻いた。見る見る潮が引き、遺跡の一部が姿を現し始めた。
「…バン……わたし…怖い」
「だいじょうぶ!俺がいるんだ。フィーネを心から愛するバン・フライハイトがな !!」
「くすっ ありがと、バン。そうね。わたしにはバンがいるものね♪」

    どどどど…ざばざば…ざば〜〜…ざっぱ〜ん

 海底を波が洗っていった。遺跡の島は完全にその姿をバンとフィーネの前に晒していた。
 Dr.ディが配したライトが点灯する。制御室ではディが情報を収集しているのだ。

「電磁波停止。ショータイムは終ったみたいね」
「いや、ショーはこれからなのさ。出るぞ!」
「了解」
「行け!ブレードライガー!」
『ガオーー』

 バンは遺跡に向って丘を駆け下り、ブースターを吹かすと、ジャンプ一番、遺跡から通じる回廊の上に無事着地した。
「それじゃあ、バン、フィーネ、記録を頼むぞ」
「了解。Dr.ディ」
「任せとけって、じいさん」
「嬢ちゃん、聞かん坊をよろしくな。オーバー」
「こら!だれが聞かん坊だ !!」
「くすくす、了解。オーバー」

 遺跡の中央に神殿らしき建築物を発見したバンとフィーネは、そこでブレードライガーを降りた。
 フィーネはライトを手に、バンは各種記録装置を背負い、神殿の中に入っていった。
 

続く