小学生の子どもたちとタバコの害について考えたい

 まゆみ先生、初めてメールを送ります。
 私は小学校で5年生の担任をしています。

 今度子どもたちと一緒にたばこの害について考えたいと思っています。
 子どもたちは,将来たばこを吸いたくないと言う子が多く,それはうれしいことですが,その理由は,煙が臭いからとか煙たいからと考えている子がほとんどです。そこで,たばこと健康(体への影響)について知ってもらいたいと思って,インターネ ットで資料を探していたところ,先生のホームページを見つけました。

 子どもたちの質問は次の通りです。
    たばこを吸うと
      1,肺にどんな影響があるの?
      2,血(液)や心臓などにどんな影響があるの?
      3,脳(頭の働き)にどんな影響があるの?

 小学生向きの易しい言葉で,メールでお返事くださるか,またはホームページに「小学生のみなさんへ」と載せていただけると幸いです。学習に利用したいので,できるだけ早くお返事がいただけるようお待ちしています。

 小学校での禁煙教育は最近重要視され始めたところなので,私の授業をもとに校内や校外からも先生方が参加して研修を行うつもりです。この機会に,実際の医療の現場にたたれている先生から情報をいただけると,わたしたちも子どもたちも大変勉強になると考えています。 勝手なお願いばかりですがよろしくお願いします。



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<まゆみ先生のアドバイス>
ご用件承りました。

 子供たちへの防煙教育は小学生から始めるべきですので、今度子どもたちと一緒にたばこの害について考えたいと思っています。
>  子どもたちは,将来たばこを吸いたくないと言う子が多く,
という時期を大切にして無理なく教育できたら、本当にすばらしいことです。

 最近私宛のメール相談も、本人ははっきりとは年齢など言わないのですが、吸い始めたばかりの子供から「どうしよう」というのも、ちらほら見受けます。本当に防煙教育がんばらなくてはいけませんね。

 タバコの害はまだまだたくさんありますが、今日はこの中からいくつかをご紹介しました。少しでもお役に立てたらうれしいです。
先生の率直なご意見を私にも教えていただけたらありがたいです。

 また、子供たちの意見など、もしこのホームページでご紹介させていただけるようでしたら送ってください。


たばこを吸うと
 1,肺にどんな影響があるの?
  タバコの煙の中にあるガンを引き起こす物質が、肺の奥に入っていきます。そうすると、長い時間をかけてガンの芽が育っていきます。
 特に皆さんのような子供の場合、大人よりガンの芽はできやすいのです。なぜならば、私たちの肺の細胞は、生まれたあとも分裂をくり返していて、大人になるまで少しずつ育っているからです。分裂している肺の細胞は、タバコなどの外からの影響をとても受けやすく、割合に簡単にガンの細胞に変わってしまったりします。

 家の人や周りの大人が吸うタバコの煙でも、同じことがおきると考えられています。家族が家の中でタバコを吸っているうちで育つと、本人は一生タバコを吸わなくても、もう2倍以上も肺ガンになりやすくなってしまうのです。こわいですね。

 それを受動喫煙(間接喫煙)といいます。
受動喫煙では、タバコを吸わない私たちでも、普通に呼吸をすることによって、タバコの煙に汚れた空気を吸ってしまうのです。だから知らずに肺の奥まで発ガン物質を吸い込んでしまうのです。
 また、ガンだけでなく、咳や痰の多い「慢性気管支炎」や、肺が壊れることによって一日中呼吸が苦しい「肺気腫」という病気も、タバコで起きたり、悪くなったりします。喘息もタバコの煙を吸うことで、喘息にかかる人が増えたり、発作が重くなったり、入院をくり返したりします。
 おうちの中でタバコを吸う人がいると、子供の喘息はとても悪くなります。タバコを吸う家族がいても、決して家の中で吸ってはいけません。


 気管の中にある、粘液線毛輸送系という、お掃除機構もタバコの煙で働かなくなってしまいます。粘液線毛輸送系は、空気と一緒に吸い込んだゴミや細菌などを、薄い痰にからめて、のどまで運んでくるのです。この線毛は、1秒間に20回以上たなびいているのですが、タバコの煙を一吹き吹きかけると、動きがピタッと止まってしまいます。また動き出すのにしばらくかかりますから、一日中タバコを吸っていると、肺の中はいつも汚い状態になってしまいます。


2,血(液)や心臓などにどんな影響があるの?
   一酸化炭素が赤血球のヘモグロビンと結びついて、からだに酸素を送る能力を低下させます。すると、タバコを吸わなかった頃には、苦しくなかったくらいの短距離走でも息が切れたり、激しい運動をすると、呼吸が苦しくなったりします。

   このようにタバコを吸って、酸素不足になると、体の細胞に酸素が充分にいきわたらなくなります。タバコを吸う人は、動脈硬化を起こしやすくなっています。人間の年齢は、実際のところ動脈年齢で決まるといわれています。タバコを吸うとこの動脈が老化しやすいのです。そして吸わない人より早く、心筋梗塞や脳梗塞などの病気で亡くなることが多いのです。

 また、タバコを吸うと全身の血管が細くなって、血液が通りにくくなります。そうすると心臓に酸素を送る冠状動脈という血管もとても細くなってしまい、心臓を動かすのに必要な酸素が足りなくなってしまいます。このようなことが起こると、中には胸がきゅっと痛くなって狭心症という病気になる人もいます。この病気がもっとひどくなると、心臓の筋肉が死んでしまう、心筋梗塞という病気になることもあります。

 タバコを吸う人では心臓の病気で死ぬ人がとても多くなっています。特に、十代からタバコを吸っていた人では、その何倍も心臓病で死ぬ人が多いのです。


3,脳(頭の働き)にどんな影響があるの?
 タバコの中に含まれるニコチンという物質は、脳を興奮させたり、抑制したりします。毎日タバコを吸う人が、タバコを1時間以上吸わないでいると、イライラしたり、落ち込んだり、考えがまとまらなくなったり、怒りっぽくなったりします。これが禁断症状(正式には離脱症状といいます)という、ニコチン切れの苦しい症状です。この禁断症状はタバコを吸うといったんは落ちつきますが、またタバコを吸ってから少し時間がたつとニコチンが切れて、同じ症状が起きてきます。

 もちろんタバコを吸わない私たちには禁断症状は起こりませんし、タバコを吸っても苦しいだけで、吸えば落ちつくなどということはありません。だから「タバコを吸ってストレス解消」というのは、ニコチン依存というタバコ依存の人だけが感じることなのです。


 タバコは、最初は1本だけと思って吸う人が多いのですが、知らず知らずのうちに、1本では満足できなくなってしまい、必ず、少しずつ本数が増えていきます。そしてたいていの人が、「タバコをやめようかな」と思ったときには、もう禁断症状のために苦しくて、禁煙できなくなってしまっているのです。一度タバコをやめられなくなると、吸わないでいると禁断症状が顔を出しますから、タバコを吸い続けなくてはならなくなるのです。そして一生タバコをやめられなくなるのです。

 そうなると、タバコを吸わないと考えがまとまらなくなったりしますから、試験の時や長い時間タバコを吸えない状況では本当に困ります。
 もちろん試験中はタバコは吸えませんから、タバコを吸う人は禁断症状を我慢したままで、答案用紙に向かわなければならなくなります。また、一酸化炭素のために酸素欠乏状態でもありますから、脳の働きは悪くなります。酸素欠乏の頭で答えを考えることになります。

 

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