三人の王 第三章 神の塔 <17>
三人の王

第三章 神の塔

< 17 >


「ようこそ、ジルファーとやら」ジルファーが階段を上り終えた時、
一人の老人の声がした。
 ジルファーが声のした方を見ると、そこには椅子に座っている、
一人の老人がいた。
「何が知りたい? わしの知る限りの事なら、何でも答えるぞ」
「そうだな……。まず、この塔の事だ。なぜ、この塔は建てられた
んだ? そして、この塔とジャークとは何の関係があるんだ?」
「なるほど、レジンがおぬしを通した理由がわかったわい。ところ
で、なぜ、ジャークの事を知っておる?」
「古代遺跡で、ジャークを造ったという男が話したんだ」
「そうか。セルヴィス博士じゃな。よし。ジャークに関する、わし
の知る限りの事を話して聞かせよう」そこで、老人は言葉を切った。
「まず、わしの名を教えるが、ローランというんじゃ。おぬしたち
の言葉に直すとすれば、不死じゃな。そして、ジャークは神という
意味じゃ。奴は約十万年前、瞬間移動装置によって、宇宙の果てに
飛ばされたのじゃ。しかし、奴は再び、この星に現れるじゃろう」
「ティナは速くて三年と言っていた」
「そうか。三年か……。この塔はな。ジャークが再び、この星に現
れるのを阻止するために建てられたのじゃ」
「阻止するため?」ジルファーは聞いた。
「そうじゃ。おぬしは知らんじゃろうが、ここから上は一つの巨大
な砲台なのじゃ。しかも、最も凶悪な兵器である、空間破壊砲の初
期の、な。この塔はジャークがこの星から一光年の距離に近づいた
時、初めて動き出す。しかし、このままではジャークを倒す事はで
きないのじゃ」
「やはり、人間の力では無理ということか……」ジルファーは俯い
て呟いた。
「いや、理論上では奴を倒せる程の力はある。じゃがな。そのため
には、エネルギーが足りんのじゃ。この星で取れるエネルギーでは
全く足らんのじゃ。ギゲルフ石さえあればよいのじゃが……」
「ギゲルフ石?」ジルファーが顔を上げて聞く。
「うむ。絶えずその色を変え、どんな物質よりも密度の高い石。そ
れが、ギゲルフ石なのじゃ。その石が、そうじゃな、おぬしの拳大
程あれば良いのじゃが……」ジルファーの右手を指さして、ローラ
ンが言う。
「わかった。もし、見つけたら、持って来よう」
「期待はせぬが、待ってはいよう。おお、そうじゃ。おぬしに良い
物をやろう」そう言うと、ローランは懐から、白い石を取り出した。
「これは何だ?」白い石を受け取って、ジルファーが聞く。
「生の四聖石じゃよ。白の石とも、呼ぶがな」
「四聖石?」
「そうじゃ。四聖石じゃ。太陽と月、生と死の力を持つ四聖獣の宿
る、四つの石じゃ。伝説では四聖石が一つに集まる時、宇宙をも遥
かに越える、凄まじい力を発すると言われておる」
「そのうちの一つが、これか……」ジルファーは白の石をじっと見
つめた。
 そして、石の奥に刻まれている文字に気づいて、目を細めた。
「どうした?」それに気づいて、ローランが聞く。
「いや、奥に文字みたいな物が刻まれているんだ」
「たぶん、それはホルワインじゃな。生という意味がある」
「ふうん。しかし、誰がこんな凄い物を作ったんだ?」ジルファー
が白の石を小物入れに仕舞いながら聞く。
「知りたいか? なら、教えてやろう」
 そして、ローランは古い古い一つの神話を語り始めた。
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