三人の王 第三章 神の塔 <14>
三人の王

第三章 神の塔

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「冒険者達よ。まだ、進むのか? もし、戻るのなら右の道を行く
が良い。進むのなら、左の道を行くがよい。死ぬ覚悟をしてな……」
四人が十六階に上がってしばらく進むと、再び、警告が聞こえてき
た。
「ここまで来て戻ったら、ただの馬鹿だぜ」シルファードが馬鹿に
したように言う。
「そうだよな。どんどん、行こうぜ」
 躊躇いもせず、四人は左の道を進んでいった。しばらくして、四
人は自分達の周囲が、緑の霧で覆われているのに気づいた。
「いつの間に、こんな霧が出て来たんだ?」ジルファーが不思議そ
うに言う。
「さあな。しかし、まだ害はないから気にするな」シルファードが
ジルファーの肩を叩いて言う。
 その後、何事も無く、四人は十七階に上がることができた。
 十七階にはだだっ広い部屋が一つしかなかった。その部屋にあっ
た物は、上への階段と黒い霧だけだった。
「レイシャードかよ。レング、呪文で片付けてくれ」シルファード
がレングの方を見て言う。
「わかりました。ラルン・ルレン・ショウキ」レングは呪文を唱え
て、レイシャードを杖で指し示した。
 が、何も起きなかった。
「そんな!」レングが信じられないかのように、レイシャードの方
を見る。
 そして、はっと何かに気づき、自分の掌を見た。うっすらとだが
緑がかっているのがわかった。
「そうか。さっきの霧だ」
「ちっ! 白兵戦かよ。俺は魔法の武器を持っていないから、見学
させてもらうぜ」そう言うと、シルファードは後ろに退いた。
「しょうがない、少し気合い入れてやるか」ジルファーがシルヴィ
ファルツを構え直して言う。
 しかし、ジルファーの思いを裏切るように、レイシャードはシル
ヴィファルツの一撃を食らっただけで、消え去ってしまった。
(おもしろいな。レイシャードを一撃で倒せる剣があるとは、な)
 シルファードはじっとシルヴィファルツを見ていた。
(あの盗賊……。何を企んでいるのかしら……?)
 そのシルファードの姿をリーファは横目で睨つけていた。
 四人は上に上がる前に、ここで一時間ほど休憩を取ることにした。
疲れていたせいもあるが、レングの体から緑色の膜が消えるのを待
つためである。
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