三人の王 第三章 神の塔 <12>
三人の王

第三章 神の塔

< 12 >


 再び、三人が目覚めたのは、暗い部屋の中だった。三人とも両手
と両足を縄で縛られた状態であった。
「やっと、起きたようね」その時、部屋の隅から、女の声が聞こえ
てきた。
「誰か、いるのか?」ジルファーは声のした方を見た。
 よく見ると、そこには三人と同じように、手足の縛られている、
女性がいた。
「ジルファー。そんな事よりも、後ろを向け」ジルファーの所に、
シルファードが腕を揉みながら、歩いてきた。
「どうやって、縄を解いたんだ?」ジルファーが驚いて聞く。
「後で教えてやるよ。よっ、と……」シルファードがジルファーの
両手の縄を、短剣で切る。
 両手が自由になったジルファーは、まず、足の縄を解いた。そし
て、シルファードと一緒に残り二人の縄も解く。
「さて、女。ここは何階なんだ?」シルファードが女の方を見て、
聞く。
「十五階よ」女が極めて、簡潔に答える。
「十五階か。多少、楽ができたな」
「だけど、シルファード。なぜ、さっきのガスは、毒ガスじゃあな
かったんだ?」
「さあな。どっちかって言うと、この塔は侵入者を殺すよりは、追
い払うような罠ばかりだな」
「そうですね。吊り天井にしても、扉が機械兵と同じ硬さなら、爆
炎の呪文も効果なかったでしょうし……」レングが呟く。
「まあ、それは置いとこう。それよりも、あんたは一人でこの塔に
来たのか?」ジルファーが聞く。
「まさか。私の他に部下……。いえ、戦士四人、魔道士一人、盗賊
が一人いたわ」
「そいつらはどうした?」次に、シルファードが聞く。
「二人はルシャードに、残りの四人は龍炎を食らって火達磨よ。私
は気絶してこの様……」
「龍がいるんですか? 何色ですか?」レングが目を輝かせて聞く。
「緑、緑龍よ」
「緑龍だって? 一番、下等な龍じゃねえか。そんなのに、やられ
たのか?」シルファードが悪態を吐く。
「うるさいわね。不意を食らったのよ。でなければ、倒していたわ」
女がシルファードを睨つけて言う。
「まあ、今度は死なないように、気をつけるんだな。で、その龍は
どこにいるんだ?」シルファードが扉に近づきながら聞く。
「この部屋の目の前の部屋よ。階段もそこにあるわ」
「いくら、最弱の緑龍でも、呪文は効かないだろうな? よし、開
いた」扉の鍵を外しながら、シルファードが誰にともなく聞く。
「はい。龍は、地上最強の生物ですから」
「そうだ。緑龍の大きさは、どれぐらいだ?」ジルファーが思い出
したように聞く。
「体長は十五mぐらいよ」
「小さいな。まだ、子供じゃないか。緑龍の炎は直線的だから、全
員離れてろよ。行くぞ」そう言うと、シルファードは扉を蹴り開け、
部屋の外へと出ていった。
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