三人の王 第三章 神の塔 <10>
三人の王

第三章 神の塔

< 10 >


 その先で三人が見た物は鏡張りの通路であった。
「凄い。さっき、感じたより強力な魔法の力を、この鏡全てから感
じます。こんなに凄い魔法の掛かった鏡は、僕等なんかには作れな
いんじゃないだろうか?」レングが感動して、目を輝かせる。
「おい、レング。俺の姿が鏡に映っていないぞ」シルファードが不
思議そうに聞く。
「たぶん、自分の本質を映し出す鏡でできているんですよ。代わり
に何か映っているはずですよ」レングが答える。
「なるほど、俺の本質は狼か。灰色の……」シルファードが呟く。
「白は善、黒は悪、灰色は善にもなり、悪にもなる人間なんだそう
です」
「レングは何が映ったんだ?」シルファードが聞く。
「白い犬ですね……」
「犬か……。主人に忠実なんだろうぜ。ジルファーはどうだ?」
「……」ジルファーは答えなかった。
(いったい……。これは何を意味しているんだ? 俺が神々に選ば
れた理由の一つなのか……?)
 ジルファーは考えに耽っていた。その顔は多少、青ざめていて、
ずっと鏡の一点を見つめていた。
 ジルファーが見たその鏡には、ジルファーの姿の代わりに、眩い
ばかりの光が映っていたのだ。
「なっ……!」と、その光が金龍に変わったため、ジルファーは思
わず叫び声を上げた。
「どうした?」シルファードが心配そうに聞く。
「あ、ああ……」ジルファーは返事をしたが、自分が返事をした事
にすら気づいていないようだった。
「安心しろ……。その意味はいずれわかる」と、突然、声がしたよ
うな気が、ジルファーはした。
 しかし、他の二人はそんな事には気づいていないようだった。
「すまん。ちょっと、考え事をしていたんだ。さあ、先を急ごうぜ」
ジルファーはわざと明るく言うと、鏡の通路を一人で歩いていった。
 その後、三人は多少、迷いながらも上への階段の所に着く事がで
き、三人は八階に上がっていった。
< 11 >


戻る