三人の王 第三章 神の塔 <8>
三人の王

第三章 神の塔

< 8 >


 三人が出たのは広い部屋だった。その部屋には左右に扉があり、
中央に台座があった。その台座には、一本の剣が刺さっていた。
 その剣は金色の光を放っていて、柄には白い宝石が一つ埋め込ま
れていた。
「高そうな剣だな。ちょっくら、調べてくるわ」シルファードがず
かずかと剣に近づいていく。
 と、突然、立ち止まり、後ろに飛び退いた。
「どうした?」ジルファーが近づいていって、聞く。
「武器を構えろ」シルファードが短剣を取り出して構える。
 ジルファーもそのただならぬ様子を見て、シルヴィファルツを引
き抜いた。
 その三人の前で、剣の柄の白い宝石は一瞬だけ、光を発した。
 そして、黄金の剣はゆっくりと台座から抜け出た。その瞬間、そ
の宝石は眩いばかりの光を発した。
 瞬間、三人は目を開けていられなくなった。
「伏せろ!」シルファードが叫ぶ。
 その声に反応して、ジルファーは地面に伏せた。少し遅れて、レ
ングも伏せる。
 そのレングの頭上を、黄金の剣はとてつもない速さで通り過ぎて
いった。
 ジルファーが目を開けると、すでにシルファードが黄金の剣を牽
制していた。
「ジルファー、柄の宝石をねらえ!」シルファードがジルファーを
横目で見て叫ぶ。
「わかった」ジルファーはシルヴィファルツを構え直して、黄金の
剣の隙を探った。
 シルファードは黄金の剣の関心をできるだけ自分に向けさせるた
めに、わざと大袈裟に動いた。
 レングが柄の宝石を狙って、炎の矢を飛ばす。ジルファーも隙を
見て、シルヴィファルツを繰り出した。
 しかし、いい成果は得られなかった。
「しかたねえな。レング、後で治療してくれよ」突然、シルファー
ドは黄金の剣に近づいていった。
「何をする気だ、シルファード?」ジルファーが声をかける。
「見てな」シルファードはそう答えると、黄金の剣を挑発しだした。
 そして、黄金の剣の攻撃を避けずに、わざと右胸を貫かせた。
「シルファード!」ジルファーとレングが悲痛の悲鳴を上げる。
「来い、ジルファー……」シルファードが掠れた声で言う。
 そこにジルファーは飛び込んでいった。そして、柄の白い宝石目
掛けてシルヴィファルツを振り降ろした。
 次の瞬間、白い宝石は粉々に割れ、気味の悪い悲鳴が部屋全体に
鳴り響いた。
「くっ……!」シルファードがもう動かなくなった、黄金の剣を引
き抜く。
「あまり、無茶をすると、早死にしますよ。ナース・ラスト・ショ
ウキ」レングは呪文を唱えると、傷の上に右手を翳した。
 すると、シルファードの右胸の傷が、見る見るうちに塞がった。
「僕は、体力回復の呪文は知りませんからね」
「ああ、わかった。じゃあ、少し休んでいこうぜ。この手の敵がま
た出て来たら、やばいからな」シルファードが腰を下ろして言う。
「その方が良いな。十分ぐらい、ゆっくり休もうぜ」ジルファーが
その提案に賛成して言う。
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