三人の王 第三章 神の塔 <7>
三人の王

第三章 神の塔

< 7 >


 三階は二階とは打って変わり、大きな部屋が二つあるだけの簡単
な作りだった。上への階段がある方の部屋に、二人の戦士の死体が
あったが、敵のいる気配はなかった。
「何と戦って、死んだと思う?」ジルファーが二人に聞く。
「同士討ちじゃないな」傷口が無いのを見てシルファードが呟く。
「白い粉が落ちてますよ。ルシャードじゃないでしょうか」
「ルシャード? ああ、白い霧の化け物か。そうだろうな」
「何だか知らないが、要するに敵はいないんだろ? じゃあ、上に
行こうぜ」ジルファーが二人の間に割って入る。
 四階は特に目新しい物は無かった。が、所々の扉が魔法で破壊さ
れていた。
「こいつは盗賊が鍵を外せなかったんで、魔法で吹き飛ばしたって
やつだな」
「このまま、楽ならいいんだけどな」ジルファーが破壊されている、
扉を見ながら言う。
「そうは、いかねえな。冒険ってのはそんなもんだ。辛かったり楽
だったりの繰り返しさ」
 その後、三人は五階を調べる事になった。五階は迷路上になって
いて、扉は一つしかなかった。
 その扉も破壊されていて、扉の向こうには小部屋があった。その
小部屋は上が空洞になっていた。
「この部屋は何だろう?」ジルファーが上を見上げて言う。
「煙突じゃあないのは確かだな。たぶん、昇降機だ」シルファード
が答える。
「昇降機?」ジルファーが聞く。
「機械仕掛けで部屋が上に上ったり、下に降りたりする物ですよ。
グレンザードの王城、ベリフォスにあると聞いてます」
「誰かが使っちまったから、ここは意味が無いな。遠隔装置が扉ご
と壊されてるし……」
「しかし、上への階段が無かったぜ」
「隠し扉があるはずだ。俺の頭の地図に、すっぽりと穴が空いてる
んでな」そう言うと、シルファードは歩き出した。
「よく、そんな器用な事ができるな」ジルファーが感心して言う。
「俺は由緒正しい盗賊だぜ。それぐらいの事ができなくてどうする」
それがシルファードの答えだった。
 しばらくして、三人は巧妙に隠されていた扉を見つけた。その向
こうには予想通り、上への階段があった。三人はその階段を上り、
六階へと上がった。
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