三人の王 第三章 神の塔 <6>
三人の王

第三章 神の塔

< 6 >


 シルファードが仲間に入ってから、ちょうど八日後、三人はよう
やく神の塔に着いた。
「へえ、これが神の塔か。けっこう、高いな」ジルファーが塔を見
上げて感心して言う。
「三十階ぐらいの高さらしいですよ」
「伝説じゃあ、神に近づくために何者かが造ったっていうが、嘘だ
ろうな。どこのえせ吟遊詩人が言ったんだか知らねえが……」シル
ファードが馬鹿にしたように言う。
「アウグス帝国が造った塔は神の怒りを買って、国ごと滅ぼされま
したからね」レングが同意する。
 その時、ジルファーはふとある事を思い出した。それは些細な二
つの言葉だった。
(そういえば、ティナは新人類と前人類って区別していたな。それ
にジャークとこの神の塔に住んでいる人間は、何か、共通点がある
みたいだし……)
「ジルファー。なに、ぼけっとしてるんだ?」シルファードがジル
ファーに声をかける。
「え? ああ」見ると、すでに神の塔の入口は開けられていた。
 ジルファーはもう一度塔を見上げると、塔の入口に近づいていっ
た。
 三人が神の塔に入ると、塔の入口は自動的に閉まった。
「いやに凝ってやがるな」シルファードが面白そうに言う。
 と、その時、どこからか声が聞こえてきた。
「冒険者達よ、引き返せ。ここに汝等の望む様な物は無い。まして、
この塔の秘密等は理解しえないであろう。死にたくなければ戻るの
だ」
「戻れと言われて、戻る冒険者がいるかよ。警備兵が盗賊に待てと
言うようなもんだぜ」シルファードが悪態をつく。
「そりゃ、そうだ。この塔の秘密とか言ってたな」
「さあな。冒険者を追い払うための、はったりだろ」シルファード
は全く、興味を示さない。
 その後、三人は塔の中を隈無く歩き回った。そして約三十分後、
三人はようやく上への階段を見つけた。
「ちょっと、待ってろよ。罠を調べてくるからよ」シルファードが
慎重に階段に近づいていく。
「罠はあったのか?」しばらくして、戻ってきたシルファードに、
ジルファーが聞く。
「あったにはあったが外されてた」シルファードが残念そうに答え
る。
「前にここを通った奴が外したんだろ」ジルファーが階段に近づき
ながら言う。
 その後、三人は二階へと上がった。二階は迷路になっていたが、
シルファードの人間離れした記憶力のおかげで、迷う事は無かった。
 そして、三人は一つの部屋に辿り着いた。その部屋には十匹の狼
の死体が飛散していた。
「こりゃ、当分、俺達の出る幕は無さそうだな」シルファードが呟
く。
 部屋の奥の扉を開けると、そこも同じぐらいの広さの部屋だった。
その部屋にも扉があり、その先の部屋に上への階段はあった。
 今度は罠も調べずに、三人はその階段を上へと上っていった。
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